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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第1章》 僕は、おかざり領主になりました。
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18話.資金不足、そして鉱山(2)

廃鉱で魔人と遭遇したカルとルル。果たして・・・。

カルが大盾から出した金の糸は、大盾の前であばれるメデューサの大蛇の胴体の下に広がるとメデューサの体を拘束していく。


大盾の前で暴れていたメデューサは、金の糸で拘束されると廃鉱の中を転がり身動きできなくなっていた。


「カル殿。この金の腕輪はすごいな。まさか魔人メデューサの石化魔法を防ぐとは」


「実は、この金の腕輪の材料は、ルルさん達と戦った時に入手した武具が材料なんです」


「本当か!」


「その材料に剣爺が対石化防御魔法陣を書き込んだものなんです。僕も詳しい事は分からないけど・・・」


「これでメデューサは、大丈・・・」


カルがそう言いいかけた時、大盾に異変が起こった。


そう大盾の表面に魔人の”くち”が現れたのだ。大盾の”くち”から赤く長い舌が伸びると、金の糸で拘束されたメデューサに絡まり、大盾の”くち”の中へと放り込まれた。


”ゴックン”。


”ウマヒ、ビミ”。


魔人の喉を通るいつもの音が廃鉱内に響き渡る。


「魔人さん、メデューサを食べちゃった・・・」


思わずお互いの顔を覗きあうカルとルル。


その後、メデューサが盾の魔人の”くち”から吐き出されるかと思い待ってみたものの、そんな様子もなく大盾の表面に現れた魔人の”くち”も消えてしまった。


仕方なくカルとルルは廃鉱の奥へと進んだ。






「カルよ、この辺りじゃ」


剣爺の言葉に従い、カルは、大盾を廃鉱の壁に近づけると金の糸を出す。金の糸は、廃鉱の壁の隙間へと次々に入っていく。


魔法ランタンの灯りがゆらぎ、廃鉱の暗闇をほのかに照らす。廃鉱の奥は暗く何処までも闇が続いている。カルもルルも話すこともなく静かに事の成り行きを見守る。静寂が廃鉱を支配していく。


”ポロ”。


”ポロ”。


廃鉱内に微かに音が響く。水滴が落ちる音とは違う固い小石が落ちるような音が廃鉱に響く。


”ポロ”。


”ポロ”。


”ポロ”。


廃鉱の壁の隙間に大盾から伸びる複数の金の糸が波打つ。


魔法ランタンで金色の糸を照らすと、鈍い灰色の粒が小さな石の山を作っていた。カルもルルも灰色の粒の小石の山から目が離せなかった。


「こっ、これがミスリルか」


「私の破壊槍もこれを元に作られていると聞いた」


ルルは、思わず手に持つ破壊槍をまじまじと見つめた。


魔法ランタンで照らされた鈍い灰色の小石の山はどんどん大きくなっていった。


「カル殿。そろそろ良いのではないか。今回は、あくまで調査が目的だからな」


「うん、そうだね。あまり欲張っても仕方ないよね」


カルは、金の糸を大盾に戻すと、大盾を廃鉱の壁に立て掛けようとした瞬間、大盾の表面にまた魔人の”くち”が現れると、赤く長い舌が灰色の小石の山をかすめ取った。


「あっ、魔人さん!僕達、それがないと都市の人達が食べていけないの!返して!」


思わず叫んでしまったカル。


”・・・・・・”。


”ブー、ブー”。


”ケチ!”。


しばらく魔人さんの抗議が続いた。


だが、カルの説得を飲んだ魔人は、仕方なくミスリルを”くち”から戻した。


「あれ、なんだか飲み込んだミスリルより少ない気がする?」


”ブー、ブー”。


魔人は、最後に抗議の声を発しながら大盾の表面から消えていった。


カルは、腰に付けた小さな鞄から袋を取り出すと、灰色の小石の山を袋に詰め始めた。


2袋、3袋、4袋・・・・・・、全部で22袋にもなった。


袋が小さかったせいか、思いのほか袋の数が増えてしまった。


カルは、ミスリルの入った袋を腰の鞄に入れていく。


「カル殿、その鞄はアイテムバックなのか」


「うん、死んだお爺さんが残してくれた形見なんだ」


「そうか、お爺さんは良いものを残してくれたのだな」


「うん」






カルとルルは、廃鉱から出ると山肌を下っていく。辺りは薄暗くなっており、空には星が瞬いていた。


魔法ランタンの灯りだけでは、足元が見えづらく下るのに時間を要した。


遠くに焚火が見える。カルとルルは、他の魔獣と出くわすこともなく廃鉱から馬車へと戻ることができた。


「心配しました」


「申し訳ない。全て上手くいった」


「宿泊地の周りに魔獣は出たか」


「それが魔獣の気配が全くしません」


「あまりの静けさが怖いくらいです」


馬車を警護する兵士は、ルルの質問に答えながら魔獣の襲撃に備えて周囲の警戒を続けていた。


まだ、夜が明けきらないうちに馬車は城塞都市ラプラスへと出発した。


ごとごとと揺れる馬車の中で。


「カル殿。今回のミスリルの件、感謝する。あのままでは、ラプラスの住民に配る穀物が底をつくところだ」


「ルルさん。僕は城塞都市ラプラスの領主です。領民を飢えさせないのは領主の務めです」


「はははっ、そうであった。城塞都市ラプラスの領主はカル殿であったな」






「鑑定魔法で確認しました。ミスリルで間違いないです」


カルの大盾の金の糸で掘り出した鉱物が本当にミスリルなのか、リオさんの鑑定魔法で確認して初めてミスリルだと判明した。


「それも純度99.9%を誇るミスリルです。通常、どんなミスリルにも不純物は存在します。私の知る限り純度90.0%のミスリルで2級品、純度95.0%で1級品、純度98.0%で特品と言われます」


「しかし、純度99.9%のミスリルなんて聞いた事がありません」


「2級品のミスリルで1グラムあたり金貨10枚、1級品のミスリルで1グラムあたり金貨20枚、特品のミスリルで1グラムあたり金貨30枚が相場と聞き及んでいます」


「通常の武具に使われるミスリルは全て2級品です」


「純度99.9%のミスリルにどれだけの値が付くのか想像ができません」


「このミスリルはどれくらいあるのですか」


リオの質問にカルは、テーブルの上に腰の鞄からミスリルの詰まった袋を出し始めた。


1袋、2袋、3袋・・・・・・、20袋、21袋、22袋。


「・・・・・・22袋です。1袋だいたい10kg前後です」


「にっ、22袋、220kg!」


「220kgだと特品で金貨66万枚になります。これが全て純度99.9%のミスリルだと仮定すると・・・金貨100万枚は大げさではないかと」


「「!」」


リオがざっくりと目の前のミスリルの山の価値を金貨の枚数で提示した。それを聞いたルルとレオは、聞いたこともない金貨の枚数にただ驚いた。


「採掘できるミスリルの量にもよりますが、あの廃鉱から永続的にミスリルが採掘できるとすると・・・、税収を全くあてにせずに城塞都市ラプラス程度の都市を複数運営できます」


「・・・・・・」


リオの説明に言葉も出ずただ説明に聞き入る面々。


「しかも、精錬した状態で採掘できています。通常であれば、精錬には相当の技術と専用の精錬所を作る必要があります。その精錬所を作り、ベテランの技術者を雇うとなると、それにかかるお金がどれほどのものか」


リオの説明は続いた。目の前にあるミスリルの価値。それによる城塞都市ラプラスへの恩恵は計り知れない。


ルル、リオ、レオは、目の前に置かれたミスリルがパンパンに詰まった袋の山から目が離せなかった。


「とっ、とにかくだ。半分は金庫で保管だ。残りは、穀物や肥料の買い付けに使う。これだけあれば年単位で民を食わせられる」


「この事は極秘事項とする」


ルルが珍しく震えた声でミスリルとミスリル鉱山について裁定を下す。


「もし、あの廃鉱の存在が他の城塞都市に知られたら・・・・・・」


「「戦争になります」」


ルルの問いかけにリオとレオの声が重なる。


「ああ。ミスリル鉱山の奪い合いになる」


「あの廃鉱は、さらに掘ればミスリルがその・・・・・・採掘できるのか」


ルルは、カルの顔を覗き込むと、その問いの答えを注意深く待った。


「剣爺の話では、できるみたいです。ただ、ミスリル鉱脈がある場所がかなり深いみたいで、鉱脈まで普通に掘ったら数年はかかるそうです」


「なるほど。鉱脈が深すぎて採算が合わないという事か」


「だが、あの廃鉱でカル殿が掘れば」


「うん、僕が掘ればすぐにでもミスリルは採掘できます」


「そうか。カル殿あってのあのミスリル鉱山か」


「他にもミスリルが採掘できる場所があると剣爺は言っていました」


「!」


思わずカルの顔を覗き込むルル、リオ、レオの鬼人族3人娘。


「いや、今はあの廃鉱だけに注力しよう。あまり手を広げ過ぎても敵を多く作るだけだ」


全ては、カル、ルル、リオ、レオだけの秘密となった。だが、それはあっさりと破られることとなる。




その夜遅く。


「カル」


「カル起きるの」


「起きるの。起きるの」


精霊ホワイトローズさんは、ベットで寝息をたてて熟睡しているカルの前へと現れた。


だが、いつも深夜に登場するためカルは必ず寝ている。もしかすると精霊ホワイトローズは、”あれ”をやりたくてわざと深夜に登場するのかもしれない。


あれとは・・・。


精霊ホワイトローズは、呼びかけても起きないカルの寝顔を見ながらニターと笑いベットを勢いよくひっくり返した。


カルは、寝たまま床に転げ落ちた。カルの横には、ベットが下を向いて倒れている。


「おわっ、えっ、なに?何が起きたの!」


カルは、寝ぼけたまま何がおきたのか理解できずにあたふたするばかり。


「おほん」


「カル。ありがとうなの」


「メデューサ、面白い魔人なの」


「だから、役に立つように改造するの。魔改造するの。複製して量産するの。ふふふ、楽しみなの、すごく楽しみなの」


そう言い残すと満面の笑みを浮かべて精霊ホワイトローズはカルの前から姿を消した。


「えっ、何?何なの・・・・・・」


だがカルは、寝ぼけているため精霊ホワイトローズの姿を見ることもなく、その言葉を聞くこともなく、ただあたふたしているだけであった。精霊ホワイトローズがお礼を言いに来ることなど未来永劫ないかもしれなかったのに。実に残念なカルだった。


「なっ、なんでベットがひっくり返ってるの、なんでー!」



なんとか採掘もできたので、領民に食べさせる穀物を買付に行くことができます。


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