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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
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179話.砂漠の街に降る雪(1)

中級ダンジョンから出て来たカル達は、城塞都市アグニⅡと砂漠の間に広がる精霊の森へと向かいます。


通称中級ダンジョンの周囲に広がる森から飛び立つ浮遊城。


城塞都市アグニⅡの上空から精霊の森を飛び越え砂漠との間に広がる荒地へと向かう。


浮遊城の制御室に設置してある大きなガラス板には、荒地でうごめく無数のスノーワームの姿が映し出されていた。


「凄い数のスノーワーム。でも・・・精霊の森に入って行こうとしないね」


「本当です。精霊の森の手前でラピリアトレントが侵入を防いでいる様に見えます」


「でも、いつ精霊の森に侵入してもおかしくありません」


カルと共に硝子板に映し出された絵を見つめるメリルとライラ。


城塞都市へのスノーワームの侵入を防いでいたのは、精霊の森の様である。だが、どうやってスノーワームの侵入を阻止しているかは分からない。それは、精霊の森の精霊に聞く必要がある。


「とりあえず、精霊の森の精霊に聞いてみようか」


カルは、浮遊城を精霊の森の入り口にある作業小屋の近くに着陸させると、皆で精霊の木へと向かった。


浮遊城の階段を下りるとそこには、膝よりも深い雪が積もっていた。


「えっ、こんなに雪が積もっているの」


「カル様。エレノアは、寒くて歩けません」


精霊エレノアは、甘い言葉を発しながらいつの間にかカルの肩に乗り肩車をされた状態であった。


「エレノア。いつの間に僕の肩に乗ったの」


「カル様の肩は、エレノアのためにあるのです」


それを見ていたメリルのライラもエレノアの行動の早さにあきれるばかり。


周囲は、吹雪といった状態で殆ど何も見えない。


だが、精霊の森の中であれば木々に遮られて冷たい風も雪もそれ程強くは感じない。


膝よりも積もった雪をかき分けながら精霊の森の中を進むカル達。


それに増してカル達の前を元気に走るレリアとクレア。ふたりが走ると雪かきをしなくても道が出来ていく。


精霊の木の前へとやって来たカル達。


そこは、他の場所よりも雪が少なく精霊によって守られているといった印象を受けた。


「カル。よく来たの」


「荒地にスノーワームが群れを成しています。でも精霊の森に入って来る気配がありません」


「大丈夫なの。精霊の森は、私が精霊力で守っている限り魔獣の侵入を防ぐ事ができるの。それにカルが植えてくれたラピリアトレント族も協力してくれてるの」


「もしかして他の精霊の森も?」


「そうなの。3つの精霊の森は、全て繋がっているの。だから城塞都市には、あの魔獣の群れを侵入させたりはしないの」


「ありがとうございます。僕も出来る事は何でも協力します」


「私は、カルに精霊にしてもらったの。だから協力する・・・の。でも何で精霊樹の精霊様がカルに肩車されてるの?」


「ははは・・・。まあ、いろいろ事情がありまして」


カルの前に立つ精霊は、片膝を降り積もった雪の上に付くと頭を下げる。


「精霊樹の精霊様。私は、この森の精霊なの。カルに妖精から精霊にしてもらったの。だからカルには協力するの」


「私は、カル様付きの精霊樹の精霊エレノアです。この難局に皆で協力して乗り越えましょう」


カルは、いつものぶっきらぼうな物言いとは異なるエレノアの言葉を聞いて少し違和感を覚えた。だが、こういった一面もあるのだと今更ながら気付かされた。


カルは、精霊の森の精霊が話をしていると服を引っ張る何かに気が付いた。


「あっ、妖精さん。どうしたの?」


カルの服を引っ張っていたのは、妖精達であった。その妖精達は、指を口にくわえて何かを欲しそうにしている。


「もしかしてお酒が欲しいの?」


妖精達は小さな頭を何度も縦に振る。


「ちょっと待っててね」


カルは、腰にぶら下げた鞄から折り畳みの机と、大小の杯と黄色いラピリア酒の入った小樽を取り出してお酒を杯に注ぐ。


小さい杯は精霊の森の精霊に、大きな杯は妖精達に。


精霊の森の精霊も妖精達も黄色いラピリア酒(薬)を美味しそうに飲んでいく。


「これを飲めばあんな魔獣なんて大した事ないの。必ず守って見せるの」


精霊の森の精霊の心強い言葉を聞き、安心して森を離れる決心がついたカルであった。




カル達は、精霊の森を後にすると浮遊城で各城塞都市の精霊の森の上空を飛びながら、スノーワームの状況を確認していく。


どの精霊の森もスノーワームの侵入を防いでいた。


カル達は、城塞都市ラプラスに戻ると、雪の降り積もる領主の館の近くに浮遊城を着陸させ、城塞都市ラプラスの状況を確認するべく領主の館へと戻った。


領主の館に入ると職員達が慌ただしく動いていた。


「お待ちしていました。精霊の森の向こう側に魔獣の群れが迫っています」


「精霊の森の精霊が守っているから大丈夫。でも、もし精霊の森が突破される事を想定して城壁の守りを固めておいて」


「城壁の上で警備隊が待機しています。それと偵察隊が精霊の森に入り荒地の手前で状況確認を行っています」


職員との話が終わると別の職員と変わる。


「住民の食料と暖を取る薪が不足しています」


「必要なら住民を領主の館に避難させて。それと備蓄してある穀物を使ってください。出し惜しみは無しでお願いします」


「城壁の外に住んでいる住民は、どうしますか」


「できるだけ城壁内に避難させて・・・とは言ってもこの雪じゃ無理かな」


「できる範囲でやってみます」


「お願いします」


職員が手渡してくれた防寒具を着込んだカルは、雪が降り積もる階段を上り城塞都市の城壁へと上がる。


城壁の上は、降り積もる雪でかなり足場が悪い。それでも警備隊は、城壁の上に天幕を張り薪を燃やして暖を取りながら魔獣の動きを警戒していた。


「警備隊の皆さんご苦労様です」


カルの言葉に敬礼で返す警備隊の兵士達。


城壁の上で指揮所となっている天幕に入り、警備隊長から現場の指揮について説明を受けるカル。


「僕もそうですが雪に慣れていない皆さんでは、かなり苦戦を強いられると思いますが頑張ってください。それに城塞都市ラプラスには、寒い時に頼れる氷龍もいます。伊達にただ酒を飲ませていた訳ではないですからね」


カルの言葉に、あちこちから笑いが上がる。重かった雰囲気が一気に明るくなった感じであった。


カルは、再び領主の館へと戻ると秘書官アリッサに城塞都市ラプラスの指揮を委ねた。


「えっ、こんな時に私が指揮を引き継ぐんですか」


「アリッサさんは、僕の不在の時も十分に城塞都市を指揮してきました。それに魔術師として能力を発揮できる良い機会です。このままだといつかスノーワームの群れに精霊の森が突破されると思います」


「まさか領主様は、あの大群の魔獣と戦うつもりですか」


「僕達は、極地大陸であのスノーワームの群れと戦った事があるんだ」


「ほっ、本当なんですか」


「恐らく砂漠の何処かにスノーワームが湧く魔石が置いてあると思う。それを無力化しないと全ての城塞都市、しいては魔王国も滅びかねないから」


アリッサは、カル達に向かって静かにこういった。


「死なないでくださいね。お帰りを待ってますから」


「大丈夫だよ。それと武具と魔法杖は、貸しておくから好きに使ってください。その方が武具も喜ぶと思うから」


「はい」


カル達は、再び浮遊城に乗り込むと吹雪の中を飛び立った。


既に精霊の森の向こう側にある荒地の上空では、氷龍と風龍がスノーワームに向かって攻撃を行っていた。


カルの浮遊城は、その脇をかすめる様に飛びながら砂漠の上空へとさしかかる。


カルが砂漠の上空へとやって来た理由は、ふたつある。


ひとつは、スノーワームを生み出す魔石を見つけること。


もうひとつは、鉱山都市デルタの状況を確認すること。


城塞都市ラプラス、アグニⅡ、アグニⅠの面前には、精霊の森が広がり精霊の森の精霊が自らの精霊力によりスノーワームの群れの侵入を防いでいる。


だが、鉱山都市デルタには、精霊の森は存在しないのだ。


恐らく鉱山都市デルタを統べる鬼人族のルルは、スノーワームと戦っているはずである。


ルルも浮遊城を持っているが浮遊城はあくまで移動手段であり、攻撃手段を持ち合わせてはいない。




吹雪の中を飛ぶ浮遊城は、吹雪で殆ど視界はなく妖精達による誘導で辛うじて進む事が出来ていた。


ただ、あの極地大陸で見つけた魔石を探す事は容易ではない。


視界の利かない吹雪の中で、何を頼りにすればよいのかと言った状況である。


まずは、鉱山都市デルタの状況を確認すべくそこへ向かう浮遊城。


雪は、浮遊城にも容赦なく積もり徐々に重さが増していく。


極地大陸で雪を被っていた時は、ずっと地上に着陸していたため雪の重さを考える必要など無かったのだ。


”そろそろ鉱山都市デルタの上空にさしかかるよ”。


妖精が書いたメモ書きを見てうなずくカル。


吹雪の中、砂漠に突き出た島の形を成すデルタ鉱山が見えて来た。


そこは既にスノーワームの群れに占領されていて、鉱山への入り口となっている狭い通路の両脇に並ぶ街並みは、スノーワームの群れに破壊されていた。


その上空を城塞都市の方向へと進むと、地上でいくつもの閃光が走り火柱が立つ。


それによりスノーワームが次々と灰になっていくも、さらにその上をスノーワームの群れが覆い隠していく。


「魔法による攻撃のようですが、スノーワームが多すぎて手に負えないようです」


「凄い。極地大陸で見たスノーワームの群れの何倍もの数だ」


すると城塞都市の方角から強烈な閃光が走る。


「あっ、強力な魔法が来そう!」


カルがそう言った瞬間、ライラは浮遊城の魔石に魔力を送り込むと浮遊城を一気に上昇させ雪雲の中へと進めた。


その瞬間、浮遊城が攻撃を受けたかの様に揺れに揺れた。何かに捕まっていないと転がってしまう程の衝撃が浮遊城全体を覆いつくす。


「凄い衝撃。リオさんの魔法かな」


「恐らくそうだと思います。この城塞都市でこれだけの強力な魔法を放てるのは、彼女だけです」


メルが制御室の硝子板に映し出された爆炎魔法を見ながらそう話す。


制御室に設置された無数の硝子板には、爆炎魔法により発生した巨大な火柱がいくつも立ち上っている。


「とにかく城塞都市に降りてみよう」


カル達の浮遊城は、吹雪で視界が殆ど無い城塞都市の中央に広がる公園に着陸した。


ルルの統べる鉱山都市デルタは、とんでもない事になっていました。


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