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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
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176話.寒い雪の大地(7)

精霊の宿る森から村に戻ったカル達。


雪原で一夜を明かした後、ゴーレムのカルロスⅡ世の肩に乗り村へと戻ったカル達。


すると村に来ていた商人が村人を集めて何やら騒いでいた。


その横で村まで商人を護衛して来た冒険者達が、怪訝な顔つきで商人を遠巻きに眺めている。


カルの大盾の裏扉から出た村長達は、その光景を見て商人に駆け寄る。


「いったい何事ですか」


「村長。この大事な時にどこに行っていたのだ。わしとの契約はどうする気だ」


「契約とは?」


「これだ。前回この村に来た時に村長と交わしたこの契約書の事だ」


村長は、商人が差し出した契約書を見る。確かに冬を迎える前に商人と交わした契約書である。


そこには、スノーラビット100体の毛皮を納品すると記載されており契約不履行の場合は、違約金として村が商人に金貨100枚を支払うと明記されていた。


「ちょっと待ってください。以前交わした契約書に金貨100枚を支払うなんて記載は何処にも無かったはずです」


村長は、自身の家へと戻り商人と交わした契約書の控えを持って来た。


その契約書にも確かにスノーラビット100体の毛皮を納品できない場合は、金貨100枚を違約金として支払うと記載があった。


「そっ、そんな。あの時にはこんな記載は無かった」


「だがその契約書には、お前の名前が書いてある。それ以上の証拠が必要か」


「くっ・・・」


村長は、目の前にいるにやけ顔の商人のカを睨みつける。


するとライラと精霊エレノアが村長が手に持つ契約書の記載内容を確認していく。


「ちょっと失礼します。確かにそう書いてありますね。でも、この契約書に魔法で書き換えた痕跡があります」


ライラが鑑定魔法で契約書を調べていくと、金貨100枚と書かれた文面のところに魔法の痕跡があり、魔力を込めると文面が消えたり現れたりする。


「魔法に疎い人によくやる手口ですね」


それを聞いていた商人の顔色が途端に真っ赤に変わる。


「なっ、なんだと。私が不正を働いたとでも言うのか!」


「でもほら、魔力を込めると書面が書き変わりますよ。この契約書を領主様のところに持って行ったらどうなるかしら」


「くっ」


ライラの言葉に真っ赤な顔でわらわらと震える商人。


するとカルがその契約書を手にとり商人にこう持ちかけた。


「この契約書を僕に売ってもらえませんか」


「売るだと」


「はい。村の外はスノーワームがいます。とてもスノーラビットを狩れる状態ではありません」


「ふん。だが契約は契約だ。金貨100枚が払えなければ、村の者を何人か奴隷商に売って金を回収する」


「まっ、待ってください。村の者を奴隷商になんてとんでもない」


「では、金貨100枚をいますぐ用意できるのか」


商人の強い口調にたじろぐ村長。


カルは、腰にぶら下げた鞄から金属の塊を取り出すと、それを商人の前へと置いて見せた。金属の塊は、中くらいの木箱程の大きさである。


「これは、ミスリルの塊です。この塊ひとつで金貨数百枚になりますね」


カルが商人の前に置いたミスリルの塊におもわず目を輝かせる商人。


「たっ、確かに。鑑定魔法でもミスリルと出ている」


カルは、商人がミスリルの塊に手を伸ばそうとした時、その商人の手を遮って見せた。


「おっと。このミスリルの塊は、僕のものです。あなたのものではない」


「この契約書と交換でいいんだな」


「はい。僕がこの村からスノーラビットの毛皮を回収します。あなたは、このミスリルを市場で換金すればいい。そうすれば、スノーラビットの毛皮の何倍もの利益になる。あなたに悪い事などなにひとつありません」


そしてカルは、商人が忘れているある事を言った。


「商人さんは、スノーワームが俳諧するこの地域からどうやって街に帰るんですか。あなたをこの村まで護衛して来た冒険者さんを解雇しましたよね」


「あっ」


「街に無事に戻るには、冒険者さんか僕達が街まで護衛しなければ、スノーワームの餌食になりますよ」


「私を脅すのか」


「とんでもない。この村から出て行くのは自由ですよ。僕は止めたりしませんからいつでもどうぞ」


「くっ」


カルは、睨み付ける商人から今迄のやり取りを遠巻きに見ていた冒険者達の元へと近づく。


「冒険者さん。この村の護衛を行っている間なんですが、狩ったスノーワームを売ってもらえませんか」


「肉も旨いですし、毛皮も加工すれば売れそうです。売ってもらえる分だけ買い取りますから」


「それは、こちらも願ったりかなったりだが、街まで肉や毛皮を運ぶにも馬車かアイテムボックス持ちがいないと厳しいと思うが」


それなら、村の家を買う予定です。そこに狩ったスノーワームを置いてくれれば、僕達が回収します」


「つまり、この村に誰かが残って街まで馬車か何かで運ぶという事ですか」


「いえ、村には誰も残りません。ですが、スノーワームのお肉と毛皮は、毎日回収しに来ます」


冒険者達は、カルの言っている事が理解できずにいた。


「まあ、後々種明かしをします。それと狩ったスノーワームの代金を先払いしておきます」


そう言うとカルは、冒険者達の目の前にミスリルと魔石のふたつの塊を置いて見せた。


「まさかこの塊が本当にミスリルと魔石なのか」


「はい。何でしたら鑑定魔法で調べていただいてもいいですよ」


カルにとってこのミスリルと魔石の塊は、元々レリアとクレアがスノーワームの体で作り出したので、元手は殆どかかっていない。なので、いくら出しても懐は痛まないのだ。


「わっ、分かった契約しよう。だが、これだとスノーワーム何百、いや千を超える数を狩らないとな」


「いえ、ひと冬にスノーワーム100体は、多すぎます。その辺りも追々お話して決めましょう」


今度は、村長と話を付けて借りた村の家を買う事にし、さらに村長にスノーワームの毛皮の加工とスノーラビットの毛皮の買い取りも依頼したカル。


カルは、村の家に妖精達の扉を置くつもりでいた。いや、既に家の中には、妖精達の小さな扉が設置済みであった。


これで極地大陸の村には、いつでも来れるという訳だ。




村の空き家を買い、スノーワームの買い取りや毛皮の加工を村に依頼した後、早々にこの村を後にした。


そして護衛がいなくなり帰るに帰れなくなった商人達は、どうしたかというと・・・。


カル達の後をつかず離れずついて来るという作戦に出た。


商人達は、カル達が街から来たと思っていた。だからついて行けば街に戻れるとふんだのだ。




村を出たカル達は、雪の降る雪原をゆっくりと歩き出す。わざとゴーレムであるカルロスⅡ世の肩に乗らずにゆっくりと歩いていく。


こうすれば、商人達がついて来ると考えたのだ。


「あいつら街とは反対の方角に向かってませんか」


ひとりの商人がぼそっとそんな事を言った。


「この先には、村はない。きっと街に行く近道があるのだ」


商人は、何も知らないのだ。カル達がこの極地大陸にどうやって来たのかを。


雪の降る雪原を歩くカル達。その間もレリアとクレアが走っては狩ったスノーワームを持ち返る。


そしてとある山の麓へとやって来たカル達は、山肌に作られた階段を上り始めた。


「こんな山奥に階段があるだと。まさか古い協会か砦でもあるのか」


商人達は、降り積もる雪を被った木々の間からカル達の行動をじっと覗き込む。


すると不意に山が宙に舞った。そして雪を被った山は、天高く雪雲の中へと消えて行った。


その光景を驚きの表情で見つめる商人達。


「あっ、あれは何だ」


「わっ、分かりません。ですが、我々はこんな雪山に護衛の冒険者もなく孤立してしまいました。村に戻らないとスノーワームの餌食です」


商人達は、慌てた表情で歩いて来た雪の降る雪原を必死に帰って行った。




商人達は、何度かスノーワームに出来わすも荷物を捨て身軽になり雪の降る雪原を必死に走った。


そして命からがら何とか村へ戻る事が出来た。


息を切らせて村に戻った商人達は、驚くべき光景を見てしまった。


雪の積もる山ごと雪雲の中へと消えたはずのカル達が村に戻っていたのだ。


「おっ、お前達。どうやって村に戻った!」


商人の言葉に面倒だと思いながらも、カルも言いたい事を言ってのける。


「僕達は、スノーワームを狩りに行っただけですよ。それに僕達に勝手について来た人達の命を守る義務も義理もありませんよ」


カルの言葉は、最もである。その言葉に何も言い返せない商人達。


「では、村長さんスノーワームの毛皮の加工の件、よろしくお願いします」


「わかりました。スノーワームの肉は、言われた様に木箱に雪を敷き詰めて家の中に置いておきます」


「では、よろしくお願いします」


カルは、村長との話が終わるとそそくさと家の中へ入っていく。


その光景を目で追った商人は、今度は冒険者達にぶっきらぼうな物言いでごう言ってのけた。


「お前達、この村に来られたのは私がお前達を雇ったからだ。だから街まで送っていけ」


「はあ、我々は、既に解雇されたんですよ。あなた方に従う義務も義理もない」


そう言い残すと、冒険者達は雪の積もった土塁の上に上がりスノーワームが村近くに出没していないか警戒にあたる。


「仕方ない。あのガキに護衛を頼むか」


商人は、いやいやながらもカルが入っていった家へと向かいその扉を開けた。


「おい。我らを街まで護衛しろ。おい、何処にいる」


商人達は、家の中を歩き回りカルの姿を探す。だが、家の中はもぬけの殻であり誰ひとりとしていない。


「あいつら何処に行った」


「家の中に入っていったはずですが、どこにもいませんね」


家の居間には、空の木箱が積まれているだけでカルの姿はない。


そして並べられた木箱の近くには、小さな扉が壁に立て掛けられていただけであった。


結局商人達は、雪が降らなくなり暖かくなる季節を迎えた頃にようやくと街に戻る事ができた。


雪がなくなる頃には、スノーワームの姿を見る事もなくなり平和な村が戻って来た。


この極地大陸の夏は短い。


夏とはいえこの村からさらに奥地へと向かえば雪の残る雪原や雪山も多く、そこには未だにスノーワームが数多く生息していた。


この極地大陸にスノーワームを生み出した闇属性の黒い魔石を置いたのはいったい誰なのか。


それが精霊エレノアの言っていた精霊なのかは未まだ分からなかった。


体調が悪くて土曜日中に書けませんでした。


4月からシフト勤務になります。早番や遅番になるため、水曜日の投稿は無理そうです。


そのため土曜日のみの投稿になります。ご了承ください。


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