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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
170/218

170話.寒い雪の大地(1)

魔法回路が壊れてしまった浮遊城。


妖精達が修理を始めますが・・・。


城壁の上で毛布にくるまりながら皆で焚火を囲みつつ干し魚を炙って食べていると、妖精が慌てた様子で飛んで来た。


カルに見せたメモ書きには、こう書かれてきた。


”近くを黒龍が飛んでる。絶対に魔法を使わないで”。


焚火を囲みながら皆が頷く。


妖精の話では、黒龍が何処にいるのかが分かる様にしてあるという。


ただ、妖精がそれを説明してもカルにはさっぱりであり、妖精も面倒になりカルへの説明をやめてしまった。


雪は、浮遊城がこの極地大陸に墜落してから延々と降り続いている。


浮遊城を隠すには丁度良いが、修理が終わったあとに飛び立てるか不安な程の雪に覆われている。


そんな時、浮遊城の周囲に見た事のない魔獣が現れた。


「カルさん。雪の中を魔獣が動いています。それもかなりの数が集まってます」


「本当だ。でもあれってワームに見えるけど、ワームって白い毛なんて生えてないよね」


「妖精達の話では、極地大陸の雪深い地域に生息するスノーワームという魔獣らしいです」


「へえ。そう言えば以前、サンドワームを狩った時に焼いて食べてみたけど、毒があって臭くて不味かったなあ」


「サンドワーム食べたんですか」


「うん。凄く不味かった」


浮遊城の城壁の上でカルとライラがそんな話をしながら、浮遊城の周囲に降り積もる雪の中を泳ぐスノーワームを眺めている。


「雪がもっと降り積もったらスノーワームが浮遊城に入ってきそうだね」


「でも魔法を使うと黒龍に見つかる可能性があります。とはいえ、雪原に降りて剣で戦って敵う相手ではないと思います」


「僕達だと雪に埋まってあっという間にスノーワームの餌食だね」


「魔法を使わないでスノーワームを倒せればよいのですが」


カルは、ふとある事を思い出した。最近は、あまり使っていないがカルの持つ大盾には、魔力など込めなくても使える武器があった。


「ちょっと試してみる」


そう言うとカルは、大盾を正面に構えると金の糸を出して雪原に伸ばしていく。


金の糸は、それ程遠くまで伸ばせないが浮遊城の周囲に集まったスノーワームであればどうにか出来そうであった。


「かなりの数のスノーワームがいる。まず1体だけ狩ってみようかな」


大盾から伸びた金の糸を1体のスノーワームの体に纏わりつかせると、金の糸をきゅっと絞る。


すると金の糸によりスノーワームが簡単に輪切りになった。


そして金の糸を手繰り寄せると城壁の上にスノーワームを引っ張り上げる。


「あれ、サンドワームに比べるとかなり小さいかな」


「妖精の話では、スノーワーム自体はそれ程大きな魔獣ではないとの事です」


とはいえスノーワームの大きさは、人を丸飲みに出来そうな大きさである。


カルは、城壁の上に横たわるスノーワームを輪切りにした切り口の匂いを嗅いでみる。


「あれ、サンドワームの様な臭みがない。これなら食べられるかも」


「・・・スノーワームを食べるんですか。白い毛皮は何かに使えそうですが」


小さなナイフを取り出すと、スノーワームの肉をささっと適当な大きさに切り分けていくカル。


そして城壁の上に火が灯ったままの焚火の上で焼き始める。


「焼ける匂いも何だか美味しそう」


「でもスノーワームのあの姿が・・・」


「ライラさんは、蛇とかワームとかダメですか」


「好きではないです」


「そろそろ焼けたかな。少し塩をふってみてと」


カルは、塩をふり焼けたスノーワームの肉にかぶりつく。


「臭みもないし柔らかくて美味しい。スノーワームいけますよ」


美味しそうにスノーワームの肉を食べるカルの姿を見て、少しばかりお腹の虫が鳴いたライラ。


「そんなに美味しいんですか。なら私も少しだけ・・・」


そう言うと、にやっとした表情を浮かべたカルが焼けたスノーワームの肉を切り分け皿に乗せてライラへと手渡す。


それを口に含み肉の味を確かめるライラ。


「本当に美味しいです」


「でしょう。これならラプラスで売ってもいいかも」


カルは、ライラがスノーワームの肉を食べる姿を見ながら、再び大盾から金の糸を伸ばし始める。


程なく浮遊城の城壁の上には、輪切りにされたスノーワームが山と積まれた。




妖精達の頑張りもあり制御室の魔法回路も一部ではあるが修理出来た。


だが、まだ使える魔石ははひとつのみ。それだけでは浮遊城を浮かせてゆっくりと進む事しかできない。


”あと12時間もすれば、ふたつの魔石が使える様になるよ”。


妖精の書いたメモ書きを見て表情が明るくなるカル。


「なら、明日にでも動ける様になるかな。ここは寒いし降る雪の量が多いからもう少し雪の少ない場所まで移動しよう」


カルの言葉に頷く妖精。


「さっきスノーワームを狩ったから、あとで皆で食べようか」


すると驚きの表情を見せる妖精。


”スノーワームを狩ったの。あれって美味しいって話だけど”。


「うん。かなり美味しかった」


”なら頑張る”。


カルの言葉に心を踊らせる妖精達。彼らは、12時間かかるという修理を1時間で終わらせてしまった。




次の日。


近くに黒龍がいない事を確認した妖精達の助言により浮遊城は、ゆっくりと浮上しながら移動を開始した。


馬車で移動する程度の速さだが妖精達が魔法回路の修理を行っているので、じきに元の速さで飛べる様になるはずだ。


”パチッ”。


その時、浮遊城の制御室で嫌な音が響いた。


妖精達のがっかりした表情を浮かべた。それは、実に印象的な瞬間であった。


「あっ、あのカル様。また魔石に魔力を送っても地上に向かって落ちていきます」


「はははっ、はあ。近くの山影に隠れる事はできる?」


「やってみます」


メリルが魔石に魔力を送り浮遊城を操作していた時、魔法回路がまた壊れてしまった。ただ、壊れたのは、昨日急いで修理した部分であった。


浮遊城は、なんとか山影に入ると静かに着地した。


「浮いているだけならなんとかできますが、移動は殆どできません」


浮遊城が着陸すると同時に妖精達が一斉に動き出す。魔法回路の修理は、意外と難しいようだ。


外では、相変わらず雪が舞っていた。だが、最初に墜落した山間部に比べると降る雪の量も減り少しではあるが寒さも和らいでいた。


浮遊城の上には、雪が積もったままである。空から見れば雪を被った小山に見えなくもない。


”カル。近くに村がある。気晴らしに行ってみたら。魔法回路の修理は、かなりかかると思う”。


妖精のメモ書きを読み頷くカル。


「近くに村があるから行ってみるけど、誰か一緒にいく?」


「私、行きます」


カルの言葉に直に反応したのはライラであった。


「私は、残ります。修理が早く終わったら浮遊城を移動させる必要があるかもしれませんから」


そう話すメリル。


「「私達も行く。ここに居るのも飽きた」」


レリアとクレアは、浮遊城の中で走り周って遊んでいたが、地龍のふたりには浮遊城は狭すぎた様だ。


カル達は、浮遊城の外壁に作られた階段を降りると、周囲にスノーワームがいないか警戒しながら雪原を進む。


雪は、膝程の深さで歩きにくいが歩けない程ではない。


大盾から金の糸を四方に向かって伸ばし雪の中にスノーワームがいないか確認しながら進むカル。


程なくして土塁に囲まれた村が見えて来た。


「止まれ。お前達、村に何の用だ!」


村を囲む様に作られら土塁の上に組まれた櫓。その上で周囲を警戒していた男達がカル達に向かって弓を向けている。


「僕達、冒険者です。この近くでスノーワームを狩っているんですが、泊まれる場所を探しています」


カルは、口から出まかせを言ってみた。だが、その言葉に村人が思わぬ反応を示した。


「何、お前達スノーワームを狩れるのか」


櫓から降りて来た男達は、慌てて村の門を開け放つ。


「頼みがある。村がスノーワームに襲われて困ってるんだ。スノーワームを狩ってくれないか」


「そうですか、なら村長に合わせてください。ご相談しておくことがあります」


「そっ、そうか金か。当然だな」


男達は、カル達を村へと引き入れると慌てて門を閉じた。




村長の家に案内されたカル達。


村長と数人の村人と共に暖炉の炎にあたりながら村長が話始める。


「こんな雪深い村によく来てくれた。お前達は、冒険者ギルドの依頼を見て来てくれたのか」


「依頼?いえ、僕達は、スノーワームを狩るためにこの村の近くまで来ただけです」


「そうか、違ったのか」


村長の表情に落胆の色が垣間見れる。


「これが僕達が狩ったスノーワームです」


腰にぶら下げた鞄から狩ったスノーワームを取り出して見せるカル。


村長の居間には、人を丸飲みにできる程の大きさのスノーワームの輪切りが現れた。


「狩ってから少し立っていますから凍っています」


「おおっ、これは大物だ。この村を襲うスノーワームは、もう少し小さい」


「このスノーワームの肉は、差し上げます。かなり美味しいですよ」


「よろしいのですか。それは助かります。最近は、スノーワームのおかげでスノーラビットもろくに狩れないので困っていたんです」


村長は、カル達にそ話しをすると村人と相談を始めた。恐らくこの村を襲うスノーワームを狩って欲しいという依頼をするためだ。


「実は、相談した事があります。この村は、度々スノーワームに襲われております。

それでスノーワームを狩って欲しいのです」


「先程の話では、冒険者ギルドに依頼を出したというお話の様ですが」


「はい。村人を街の冒険者ギルドに向かわせたんですが、まだ帰ってきません」


「冒険者ギルドのある街というのは、かなり遠いのですか」


「村の者の足なら3日もあれば行ける距離です。街に出かけたのは、10日も前の事です」


「そうですか。僕達は、冒険者ギルドの依頼ではなくスノーワームを狩るために来たので、村を守る事はできませんがそれでよろしければ」


「お引き受けくださいますか」


「そうだ、この村に空き家はありませんか。僕達が狩りをする間に寝泊りが出来ればいいです」


「それなら村の者に案内させます。それと報酬なのですが・・・」


「僕達は、スノーワームを狩れれば良いので報酬はいりません」


「そっ、そうですか。それならこちらとしても助かります」


カル達が村長の家を出ようとした時、屋敷の廊下でレリアやクレアと同じ歳くらいの少女とすれ違う。


その少女は、咳き込みかなり苦しそうであったが、カル達に会釈をすると早々に屋敷の奥へと向かって行った。


「ご病気ですか」


「ああ、娘です。最近この村で同じ様な病にかかる者が多くて困っています。薬を飲んでも一向に治らないんです」


村長の不安げな表情からかなり悪い様子だと分かる。


「なら、この薬を飲ませてみてください」


カルは、腰にぶら下げた鞄から黄色い液体の入った小瓶を村長に渡す。


カル達は、村長の屋敷を出ると村人に空き家へと案内された。




村人に案内された家は、少し古いが手入れがされていてすぐにでも住める状態であった。


「ここを自由に使ってください」


「ありがとうございます」


カルが腰にぶら下げた鞄からいくつもの荷物を取り出していく。その姿を見て、ぎょっとする村人。


恐らく彼は、アイテムバックという物を初めて見たのだろう。


「あんた達、村長の家に来てくれ。村長が大至急会いたいってよ」


カル達が借りた家に慌てた様子の村人が駆け込んで来た。


恐らく先ほど村長に渡した黄色いラピリア酒(薬)を、咳き込んでいた少女に飲ませたのだと推察した。


さて、黄色いラピリア酒(薬)は、しっかりと効果を発揮したのか。


村に暇な時間を潰しに来たはすが、よくある展開へと発展しました。


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