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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第1章》 僕は、おかざり領主になりました。
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17話.資金不足、そして鉱山(1)

今になって都市の金庫にお金がないことが判明します。

村の視察から戻ってきたカルとルル。


要塞跡のサラブ村に腐葉土の集積所を作り、他の村々へ土を運ぶ計画を練っていた。腐葉土を集める作業は、村の獣人達に依頼するとして村を襲ったオークは、あれだけではないだろう。


ならば、村を守る兵士、土を運搬する馬車を護衛する兵士もいる。兵士が足りない場合は、冒険者ギルドに護衛の依頼を発注する必要がある。


それに村々を結ぶ道の整備も必要と考えた。いまの道では、時間がかかりすぎるし、雨の日はぬかるみ使えなくなることが目に見えている。


「ルル様、カル様、折り入ってご相談したいお話があります」


留守番をしていた鬼人族のリオとレオが神妙な顔つきでやってきた。


「金庫に金がないと」


「はい。おそらくここを統治していた鬼人族がルル様と戦った折に、負けると判断した時点で持てる金目のものを持って逃げたのではと」


「あと、どれくらい持ちそうか」


「もって3ヵ月です」


「・・・・・・」


「貯蔵してある穀物の数は?」


「2ヵ月分です」


「穀物の買い付けに行く予定はあったが」


「穀物の仕入れの資金がそもそもありません」


「領主が変わった時は、現金のみだったな」


「はい。出入りの商家に我々の信用がありませんので」


「次の税の徴収はいつだ」


「8ヵ月後です」


ルルの質問にリオが書類も見ずにスラスラと答える。


ルルは、頭を抱えた。


カルは、事の重大さが分かっていないため、ぽかんとルルとリオを眺めていた。


「城塞都市ラプラスには、これといった産業はなかったな?」


「はい」


「鉱山は?」


「30年前に廃鉱になったものがひとつあります」


「迷宮は?」


「城塞都市ラプラスにも周辺にも迷宮は存在しません。しいて言えば、カル様の盾の迷宮以外はないかと」


「・・・・・・」


「兄上や父上が言っておった。城塞都市は手に入れた後の方が難しいと」


「つまりこういうことか」


ルルは、椅子に座ったまま天井を眺めていた。


カルは、まだ事の重大さが分かっていないため、相変わらずルルとリオを眺めていた。


「各部署の予算で蓄財してあるものはないか。城壁の拡張工事だとか街道整備だとか年単位でかかる・・・」


「ありません。全て調べました」


「例えば各部署で緊急時に使う雑費・・・」


「微々たるものです。穀物の買い付けに使える額ではありません」


「・・・・・・」


ルルが言う前にリオが答えを言ってしまった。それくらい都市を運営する金が無かったのだ。


「売って金になる様な・・・、ある訳ないか。逃げた前領主が持って逃げたんだったな」


「・・・はい」


カルと同じ様に話に加わっていない者がひとりいた。鬼人族のレオだ。彼女は、ルルの護衛という役柄なので、頭脳労働には全く向いていなかった。だから、カルと同じ様に蚊帳の外という表情をしていた。




「カルよ、ちょっとよいか」


珍しく剣爺が話しかけてきた。都市運営の会議で剣爺が話しかけてきたのは初めてかも。


「剣爺どうしたの?」


「カルよ、数日前に視察にいったサラブ村じゃがな。あの近くに廃鉱があったぞ」


「あそこを掘ればミスリルが出るのじゃ」


「剣爺、ほんと!」


「まずは、行ってみないことには話にならんのじゃ」


カルが何やらひとり言を言い始めたが、カル以外には剣爺の言葉は聞こえない。ルル、リオ、レオもそれを知っているので、このことについては誰も何も言わない。暗黙の了解というやつです。


「えーとね。サラブ村の近くに廃鉱があるみたい。そこを掘ればミスリルが取れるって」


「ほんとうか!」


ルルが嬉しそうな言葉を発する。


「待ってください」


だが、リオはそう簡単には喜ばない。台帳をめくり過去に採掘された鉱山の記録を確認ていくが、そんな鉱山の記録は見つからない。


「サラブ村の近く・・・、サラブ村・・・、台帳にはその様な記録はありません。もしかすると無許可で採掘されたものかもしれません」


皆がしばし考えたが、答えなど出るはずもない。


「行ってみるか。このまま何もせずとも金は底をつく」


リオが地図を広げて大まかな鉱山跡の場所を確認する。


「えーとね。剣爺が言うには、この辺りだって」


広げた地図の上でカルが指を指した場所は、あまりよい場所とは言えなかった。月に1度は、冒険者ギルドの職員との会合を開き、依頼した案件の進捗状況を確認しているのだが、その中で長年棚ざらしになっているものが1件だけあった。


「まずいですね。冒険者ギルドの依頼に”石化事件調査”という依頼票が出ています。依頼票の内容ですが、この地域に向かった冒険者が帰って来ないと言うものです。また、石化した冒険者らしきものを多数見たという証言がいくつかあるようです」


「おそらくですが、石化の魔術を使える魔獣がこの地域にいると思われます」


「石化は、やっかいだな」


「状態異常半減の腕輪はあるが、石化を完全に防ぐことはできない。これは賭けだな」


ルル、リオ、レオは、覚悟を決めた表情をしているが、石化の怖さを知らないカルだけが、ひとりポカンと口を開けてまま、状態をいまひとつ飲み込めていなかった。






次の日、まだ暗いうちに城塞都市ラプラスを出発した。


馬車には、カル、ルル、御者1人、護衛の兵士3人が同行した。


数日前の視察と比べると同行者の数がだいぶ減ったが、廃鉱を調査することが目的なので人手はいらない。


本来であれば、数名の鉱山技師を同行させる必要があるのだが、こちらには剣爺という隠し球がるので問題ない。何が問題ないのかって?それは廃鉱に行ってからのお楽しみ。


エンブル村の前を素通りし、サラブ村へと向かう道に入る。程なくして途中でサラブ村へ向かう道とは別の道を進む。


山がだいぶ近い。時折、崩れた石造らしきものが道端に転がっている。崩れた石造は、人の姿をしていたり、オークの姿をしていたり別の魔獣のものだったり。


「剣爺、この辺り?」


「そうじゃな、ここから山に向かって半時程のところじゃ」


「ルルさん、ここで馬車を止めてください。ここからは山を登る必要があるそうです。馬車では無理だと思います」


ルルの腕には、状態異常半減の腕輪が装備されていた。ルルからは、カルも装備するようにと言われたがあえて装備はしなかった。


「廃鉱には、私とルルさんのふたりで入ります。他の人達は、ここで野営の準備をお願いします」


「えっ、我々の護衛なしで廃鉱に入られるのですか、危険ではないですか」


「逆に今回は、そこまで危険はないんです」


「皆さんには、アイテムをお配りしますので、絶対、体から外さないでください」


「この紐を外したら命の保証はありませんから」


カルは、馬車に残る御者、兵士に金色に光る紐の様なものを手渡した。


馬車を引く馬の首にも金色に光る紐の様なものを巻き付ける。


この金色に光る紐の様なものとは、カルの盾から出る金の糸をそこらへんにある金色の紐に結ったものだ。石化防止には、気休め程度の威力しかないが、有るのと無いのでは安心感が違う。


「それと、もし僕とルルさんが明日の朝までに戻らなければ、ラプラスに戻ってください」


「絶対に廃鉱に探しに行ってはいけません」


草の生い茂る荒れた道に馬車と兵士達を残してカルとルルは山へと入っていった。


「ルルさん、これを腕にはめてください。剣爺特性の状態異常耐性アイテムです」


手渡されたアイテムは、金色のなんとも心細い腕輪であった。


「これを装備していれば、相手の石化攻撃にも耐えられるそうです」


「本当か。こんなちっぽけな金の腕輪で大丈夫なのか」


「剣爺を信じましょう。もう城塞都市ラプラスを救う方法は、これ以外にないのですから。剣爺が言うには、ルルさんがしているその状態異常半減の腕輪より効果があるそうです」


段々と険しくなる山肌を上ると、目の前に廃鉱らしきものが見えてきた。廃鉱の周辺には、石化して崩れた魔獣達の残骸がいくつも散らばっている。


「やはり、こうやって見るとすごいな」


「冒険者ギルドで聞いてきたお話の通りですね」


カルは、背中に担いでいた大盾を構えると、廃鉱の中へと入っていった。廃鉱は、思った以上に広く崩れた様子もない。時折、石化した魔獣と思しき石造が立っており、その表情は、みな苦しそうだった。


カルが先頭に立ち大盾を構え、ルルが右手に破壊槍、左手に魔法ランタンを掲げて廃鉱を照らす。


ときたま、水がしたたり落ちてきて服が濡れる。微妙に生暖かい廃鉱は、とても快適とはいえないところだった。


「カルよ。ヤツがお出ましじゃ。打合せした通りにやれば問題はないのじゃ」


「はい。剣爺。」


「ルルさん、前方に魔獣がいます。覚悟を決めてください」


その言葉にルルは、左手に持つ魔法ランタンをさらに高く掲げた。


すると、何かのうめき声の様なものが廃鉱内に響いた。


カルとルルが一歩、また一歩と廃鉱の中を進むと、前方で赤い何かが光る。しかし、大盾を構えるカルもその後ろを歩くルルも、何の影響もない。


”バン”。


突然、大盾に何かがぶつかる音がした。


カルが大盾から顔を出して廃鉱の先に広がる暗がりを覗き込んだ。


すると、上半身が人の姿で下半身が大蛇の魔人が大盾に向かって体当たりをしていた。


ルルが左手に掲げる魔法ランタンが何度もゆれ、廃鉱の暗がりが何度も揺れる。それに応じて魔人の上半身が、大蛇の下半身が一瞬だけ見え隠れする。それが返って恐怖心を煽った。


いくらルルが、魔獣との闘いに慣れているとはいえ、見たこともない人と大蛇の姿をした魔獣を見ては動揺する他ない。


「わっ、なんだあの魔獣は。しかもでかいぞ。カッ、カル、大丈夫なのか」


「ルルさん落ち着いてください」


カルは、剣爺に事前に言われた様に、大盾から無数の金の糸を出すと人の上半身と大蛇の下半身を持つ魔獣の下へと潜り込ませた。


大盾に向かって体当たりを行っているのは、限りなくS級に近いA級の”魔人メデューサ”だ。


メデューサは、”魔獣”ではなく”魔人”に分類される。本来なら鬼人族のルルでも敵う相手ではない。


メデューサの赤い目と目線を合わせてしまうと、例え魔獣であっても石化してしまう。


さらに街の道具屋で売っている対石化対策アイテムでは、メデューサの石化には全く対応できない。


そもそもメデューサと戦った事がある者が少なく、さらに生還できた者が極端に少ないため対処方法が全く不明なのだ。



カル達は、廃鉱からあれを採掘できるのでしょうか。

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