表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
168/218

168話.惨劇の後、そして本当の敵

伯爵の城と城塞都市を酔った勢いで破壊する精霊神お猫サマ。


神様の前に”破壊”という言葉が付きそうな勢いです。


浮遊城が空を飛ばず地上を横に進んだことで建物の半分が破壊された伯爵の屋敷。


その破壊された屋敷の廊下から外を覗き込むカル達。


屋敷のあちこちからギシギシと悲鳴の様な音を鳴らし、いつ屋敷が倒壊してもおかしくない状態であった。


「とにかく浮遊城に戻ってこの場を離れよう」


そう言って屋敷の2階の廊下から下階へと向かう階段を探す。


精霊のトレントが廊下や下階への階段に陣取りカル達の安全を確保する。


廊下には、メリルにより石化された兵士達の成れの果てである崩れた石造が並ぶ。


階段を降りると遥か遠くに煙を噴き上げながら地上を突き進む浮遊城が見える。


「誰が浮遊城を操作してるんだろう」


「今、あそこで浮遊城を操作できるのは、精霊神お猫サマくらいでしょうか」


「妖精達も浮遊城の操作はできますが、妖精達はあんな操作はしないと思います」


カルとメリルとライラが破壊された伯爵の城と屋敷を前にそんな会話を続ける。


「とにかく浮遊城まで行かないと」


「でも浮遊城は、地上の建物を破壊しながら城壁に沿って進んでいます」


「もしかして、ここまで戻って来ると良いのですか」


メリルとライラの会話にカルが言葉を返す。


「でも、それはさすがに都合が良すぎないかな」


「ははは。そうですよねいくらなんでも都合が良すぎますよね」


そんな会話の最中も地上を進む浮遊城は、城壁に沿って街の建物を破壊しながら進んでいく。


城塞都市ラプラスよりも巨大な城塞都市を守る城壁は、恐らく幾度もの戦いにも耐えた代物だと推察できた。


だがそれを浮遊城は、易々と破壊しながら進んでいる。


「いたぞ、矢だ矢を射ろ!」


「魔術師隊、攻撃魔法を放て!」


カル達が、浮遊城の行方を目で追っている後ろから伯爵の兵士達がカル達をめがけて攻撃を始める。


多数の矢が飛び攻撃魔法により爆炎が周囲で炎の柱を作る。


「わっ、とっ、とにかく敵の攻撃から身を隠そう」


カルの言葉に破壊された屋敷の壁と瓦礫の山に身を隠す。そして大盾を構えるカル。


兵士達が放つ矢を身を挺して守るのは精霊のトレント達。


彼らは、身に受ける矢などものともせずに兵士達へと肉薄していく。


「ええい、トレントを焼き払え。魔術師達、火魔法を放て!」


兵士の怒号が響き渡る。


城塞都市の遥か彼方へと進んだ浮遊城に目をやると、城壁に沿って浮遊城はこちらに向かって進んでいるように見えた。


「こっちに戻って来てるみたい」


「ですが、敵の兵士の数も多くなっています。このままですと囲まれてしまいます」


メリルが石化魔法を放ち敵兵士を石の像へと変えていく。


精霊は、種を飛ばして敵兵士を次々とトレントに変えていく。


既にトレントの数は、100体を超えていて、この世界の奥深い森であってもひとつの森にこれ程のトレントは存在しない。


伯爵の兵士達は、100体を超えるトレントと戦いながらも善戦している。


だが、城を破壊され城塞都市を破壊された伯爵の兵士達は、次第に統制が取れなくなっていた。


本来であれば、城壁の上で敵を迎え撃ち、攻め手の数を減らしたところで追撃を行うのが常套手段である。


それがいきなり浮遊城が城を破壊し城壁を破壊してゆくのだ。


手練れの兵士であっても戦い方に戸惑うばかりである。


そして建物が破壊され、城壁が破壊される音がカル達の耳にも聞こえて来た頃、浮遊城が城壁の横で静かに止まった。


「あっ、おしい。もう少しこっちに来てくれたらよかったのに」


悔しがるカル。


浮遊城は、カル達が隠れている瓦礫の山から500m程手前で止まってしまったのだ。


「仕方ありません。あそこまで走りましょう」


メリルがメデューサの姿で敵兵士を石化させながら浮遊城へと走る。


「トレント達、私達を守りながら浮遊城へ進みなさい」


精霊は、新たに敵兵士をトレントに変化させ、トレントを増殖させながらしんがりを務める。


カルの前でゴーレムのカルロスⅡ世が飛んで来る矢をその身で受けながらライラの盾となる。


カルは、構えた大盾で飛んで来る矢を避け攻撃魔法を避けていく。


ときたま建物の陰から剣を構えた剣士や槍を構えた兵士達がカル達に向かって突進して来るも、それらを目にも止まらない動きでなぎ倒していくレりアとクレア。


やがて城壁の横で動かなくなった浮遊城の近くまでやって来たカル達。


だが、浮遊城は既に敵の兵士に囲まれていて、浮遊城へと上る階段を駆け上がる兵士達の姿が目に入る。


「トレント達、浮遊城を取り囲む兵士達を薙ぎ払いなさい」


精霊の言葉に大群となって前進を始めるトレント達。


するとそこに攻撃魔法がまるで雨の様に降り注ぐ。


瓦礫の山があちこちに出来た伯爵の屋敷の庭が次々と火を噴き、辺りは歩く所さえな無い程の惨劇の場となる。


「さすがに僕達を生きたまま帰す気なんてないよね」


「これで手土産げ

でもくれて帰してくれたら、末代までの笑い話です」


戦いの最中、冗談を言い合うカルとライラ。


その時、城壁の横で動かなくなっていた浮遊城がゆっくりと動き出した。


「あれ、さっきと少し動きが違う」


「恐らく精霊神お猫サマではなく、他の者が浮遊城を操作しているんでしょう」


そして浮遊城は、ゆっくりと浮きながらカル達の前に来ると地上に降り立つ。


「みんな、浮遊城に乗り込んで。直にここから逃げるよ」


カルの声に次々と浮遊城への階段を上り出す。


最後にカルとゴーレムのカルロスⅡ世。それと精霊が浮遊城への階段を上り始める。


「トレント達、後は好きに戦いな。戦いが嫌なら森へと逃げな」


そう言い残した精霊は、カルと共に浮遊城の階段を駆け上がる。


浮遊城は、徐々に空へと舞い上がってゆく。


その光景を見上げるトレントの枝がゆっくりと揺れている。それはまるで別れを告げるかの様に手を振る様に見えた。


徐々に空高く舞い上がる浮遊城。もう敵の兵士が放つ矢も攻撃魔法も届かない高さだ。


浮遊城へと上がる階段を駆け上がると、レりアとクレアが浮遊城へと侵入した敵兵士を次々と倒していく光景に出くわす。


かなりの数の敵兵が浮遊城に侵入していた模様だが、それをゴーレムのカルロスⅡ世と同じ姿のゴーレムが敵の兵士を次々と倒していく。


「あれ、カルロスⅡ世がいっぱい・・・あっ、そうか」


カルは、ある事を思い出していた。ゴーレムのカルロスⅡ世の真似をして妖精達が作ったゴーレムの事を。


妖精達のゴーレムが浮遊城を守っていてくれたのだ。


レりアとクレア、それにゴーレム達に倒された敵の兵士達が縄で縛られ城壁の上に集められる。


「ざっと200人くらいが浮遊城内に入ったようです。まだ残っていないか妖精達が見て周っているそうです」


そう話すメリルは、既にメデューサから人の姿へと戻っていた。


「どこかに浮遊城を下ろして兵士達を開放しよう。そうしたら城塞都市ラプラスに戻ろう」


そして草原へと着地する浮遊城。


精霊が手から伸ばした魔法蔦で次々と縄で縛られた兵士達を草原へと放り投げていく。


「あの、精霊さん。もう少し優しく・・・」


「カル様。浮遊城に侵入した時点で命は無いものと諦めていただくのが普通です。それをトレントにもせずに開放するのです。遊びに来た友人ではないんですから、礼のひとつも言って欲しいくらいです」


そう言い放ちながら200人の兵士を草原に放り投げる精霊。


「後は、自身の力でなんとかしなさい」


浮遊城の城壁の上で草原に放り投げられた兵士達に捨て台詞を残す精霊。


そして空へ静かに舞い上がる浮遊城。




カルが浮遊城の制御室へと入ると、顔を赤らめた精霊神お猫サマが床で倒れていた。


「もう飲めないにゃ・・・」


さらに何体もの妖精もお猫サマと同じく床に転がっている。


「いったい何があったの」


カルの言葉にメモ書きを見せる妖精。


”お猫サマと城壁の上で干し魚を肴にお酒を飲んでたの。そしたら兵士が浮遊城の階段を上って来たので慌てて浮遊城を動かした”。


妖精の書いたメモ書きを読んでカルは察した。


「あっ、お酒を飲んで酔ったまま浮遊城を動かしたんだ。だから空に舞い上がらずに地上を横に移動したんだね」


”僕達もお猫サマとお酒を飲んでいて皆酔い潰れていたから、誰もお猫サマの操作を止められなかったの”。


書いたメモ書きを見せながらしゅんとなる妖精。


「いいよ。僕達は、ケガのなく帰ってこれたから」


”それにこの浮遊城を守ってくれたのは、なめちゃんです。なめちゃんが物理防壁を張ってくれたおかげて浮遊城が壊れずにすんだの”。


「そうなんだ。後でなめちゃんにお礼を言わないとね」


カルと妖精との会話が続くなか浮遊城は、ライラが魔石に魔力を送り雲の下をゆっくりと進んでいた。


「それでは、城塞都市ラプラスに戻ろうか」


カルの言葉に笑顔で答えるメルやライラ。





そんな時、魔石に魔力を送るライラが最初の異変に気付く。


”カタカタカタ・・・”。


浮遊城が微かに振動する。


魔石に魔力を送り込んでいたライラは、雲のすぐ下を飛んでいたはずの浮遊城が徐々に地上に向かて降下している事に気付いた。


「カルさん。浮遊城がおかしいです。いくら魔力を送り込んでも雲の上へと上がるどころかどんどん下がっています」


お猫サマとの酒盛りに参加していないかった妖精達が浮遊城の制御室に入り、浮遊城の細かい調整作業を行っている。


その妖精達の行動が急に慌ただしくなる。


その妖精達の行動を見て何かの異変があった事に気づくカル。


「妖精さん。何か浮遊城に問題でも起きてるの?」


すると1体の妖精がカルにメモ書きを見せる。


”重力異常が起きてる。この浮遊城にだけ通常の1.5倍の重力が発生しているの”。


「じゅうりょくいじょう?」


当然ながらカルにその言葉の意味は分からない。


「妖精さん、それってどういう意味・・・」


カルがそう言いかけた時、空を浮く浮遊城がガタガタと大きく揺れ始める。


慌てて魔石に多くの魔力を送り込むライラ。さらにメリルも加わり魔石に魔力を送り込む。


だが、浮遊城は空へ浮きがらずにどんどん地上へと降下していく。


「いくら魔力を送り込んでも浮く事ができません。地上に向かって落ちていきます」


「それに体が重いです。立っているのがやっとです」


メリルとライラの言葉に浮遊城に何かが起きていると、制御室に多数配置された硝子の板に映し出されている絵を覗き込むカル。


「あれってまさか・・・」


その硝子板のひとつに巨大な黒い龍と多数の飛竜が映し出されていた。


大きな硝子板に映された絵を見てある事を思い出したカル。


子爵の屋敷で捕らえた飛竜に乗った魔術師が言い残した言葉。


”お許しください黒龍様”。


つまり、目の前に現れた巨大な黒い龍は、この国の貴族の子息や息女の体に呪いを込めた魔石を埋め込んだ張本人であると。


そしてその巨大な黒い龍は、既に浮遊城に対して攻撃を仕掛けている事に。


この大陸から逃げるつもりが、別の敵と遭遇してしまいました。


しかも厄介な相手です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ