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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
166/218

166話.街おさ、そして伯爵へと続く

街へ買い物に出たカル達。


「トレント達。半分は、ここに残って浮遊城を守りなさい。残りは、私達を守りなさい」


精霊樹の精霊は、兵士をトレントと化して自身の兵として従えた。


矢と剣で射抜かれた精霊のドレスは、精霊が手を充てると同時に穴が修復されていく。


穴だらけのドレスは、新品へと姿を変えていく。


カル達の列の先頭を歩くトレント。その後ろを歩くカル達。


「精霊さん。その首・・・大丈夫なんですか」


「首、この首ですか。私は、浮遊城の庭に植えられた精霊樹が無事なら何度でも再生できます。まあ、首が取れたのは私の油断が招いた事ですのでお気になさらずに」


カルの横を歩く精霊。でもいつまた首が落ちるかと思うと気が気ではないカル。


崩れた城壁から街へと入ると先ほどよりも大勢の兵士がカル達めがけて弓を構える。


しかも先程の兵士達とは違い、明らかに金がかかっていると思われる装備をしている。


「お前達。ここは、男爵様の領地である。速やかに投降せよ。さもなくばお前達を殺す」


いきなりの死刑通告である。とはいえ、それに従うカル達・・・いや、精霊樹の精霊ではない。


「トレント達。あの兵士達を捕まえて来い。私が直々にトレントにしてやる」


カルの横でにやけた笑顔を浮かべる精霊。


「精霊さん。あの・・・戦いは避けるべきかと」


カルは、少し自重した意見を言ってはみるが思った通りの答えを返す精霊。


「カル様。何をおっしゃっているんですか。やつらが先に攻撃してきてるんですよ。ここで”腹を割って話そう”とでも言って来れば、精霊樹の精霊である私でも話し合いに応じますよ」


「まっ、まあそうだけど・・・」


「カル様。いいですか。世の中というのは、どちらかが強引に事を薦めれば、それ相応の結果が返って来るんです。自分達が兵を持っているから誰よりも強いなんて考えでは、命を削る事になるんです」


そう話すカルと精霊の目の前では、精霊の命令によりトレントが兵士達と戦いを繰り広げている。


しかもトレントの攻撃力は凄まじく、兵士達は一方的に押されていく。


「たっ、助けてくれ。命だけは」


トレントに捕まり精霊の前に連れて来られた兵士達。


「そう。私も命迄は取らないつもりよ。でも人族のまま生かしておく気もないわ」


そいう言うと精霊は、トレントにより拘束され身動きの出来ない兵士の顔に何かの種を埋め込んでいく。


「やっ、やめてくれ。お願いだから・・・」


兵士の顔に埋め込まれた種は、あっという間に根を生やし葉を生やすと兵士の体を覆いつくしていく。


やがて兵士の体は、木の姿へと変わると精霊の前に居並び命令を待つ。


「トレント達。この街の”街おさ”とその”娘”を探して私の前に連れて来なさい」


精霊は、居並ぶトレントにそう命令を下すと、街の中へと散っていくトレント達。


「あれ、精霊さんは、僕達とこの街の”街おさ”やその”娘”の事を知っているの」


「もちろんです。精霊界からずっとカル様の行動を見ていました。何もカル様を守ろうとしているのは、妖精ばかりではないんですよ」


その言葉に思わず顔を赤らめる。


「僕って皆に守られていたんだ」


「そうです。でもこうやって精霊の姿にならないと助ける事はできませんけどね」


そういってカルに抱きつき放漫な胸をカルの頬に押し付ける精霊。


「ちょっと。胸が少しばかり大きいからって見せつけないでよ」


メリルが精霊の顔を睨みつける。


それに応報する様に放漫な胸をメリルの前に突き出し、見下す様な表情を浮かべる精霊。


「あら、ホワイトローズのところの蛇女じゃない。精霊のくせにちっとも役に立たないホワイトローズが作った蛇女もちっとも役に立たないじゃないの」


「なんだと・・・」


メリルの髪が無数の蛇へと変わり目が赤く光り出す。


「あら、ホワイトローズのところの蛇女は、石化の術が精霊には効かない事をもう忘れたんですの。記憶力すら無いなんて所詮は、”蛇”ですわね」


その言葉に思わず掴みかかろうとするメリル。


「メリルさん。ここは自重してください。精霊さんもメリルさんと仲間なんですから、もう少し言い方を考えてください」


カルは、ふたりの間に入り喧嘩の仲裁を始める。


「カル様がそうおっしゃるならそれに従います」


「メリルさんも今は、我慢してください。僕が後で精霊さんに言っておきます」


精霊の言葉に納得できないメリルであったが、カルの言葉には納得したのか精霊に掴みかかろうとしたその手を引っ込める。




しばらくするとトレント達が太った中年の男と若い女性を引き連れ、精霊の前へと姿を現した。


「へえ、こいつが”街おさ”とその”娘”なのね」


「なんだ貴様。私は、この街の”街おさ”だぞ。私は、この街の領主であるセルド男爵様とも親しいのだ。お前如きなど男爵様にかかれば、簡単に殺せるのだぞ」


「そっ、そうですよお父様。セルド男爵様に直にこの者達を殺す様にお願いしてください」


トレントに身柄を拘束されているにも関わらず、まだ権力を盾に自身の都合のよい方向にしか考えが及ばない”街おさ”とその”娘”。


「あなた達、この期に及んでまだ自分達の権力に縋ろうとしているのね。ならは、それに見合う姿にしてあげる」


精霊は、放漫な胸元から取り出したふたつの種を”街おさ”と”娘”の額に埋め込んでいく。


「いっ、痛い、痛い、痛い。何をする。”街おさ”である私に無礼ではないか」


「そうよ。”街おさ”の娘になんて事するのよ」


種は、顔に根を張ると徐々に全身を覆いつくし”街おさ”は巨木へと姿を変えていく。そして娘は、華憐な花を全身に宿した美しい女の姿へと変わっていく。


「”街おさ”は、その巨木の姿でこの街を守り繁栄させなさい。それと”娘”。あなたは、ドリアードとなって街の男達から精気を分けてもらい街を守り繁栄させる力を集めなさい」


街の中央の広場には、巨木と全身に花を纏った美しいドリアードが姿を現した。


ドリアードは、近くを通る男を魅了しその精気を吸い取り街を守り発展させる糧としていく。


精霊樹の精霊によりトレントと化した兵士達。彼らもまた精霊の命令によりこの街を守るための兵士となった。


その光景を見てにんまりと笑顔を見せる精霊樹の精霊。


「そっ、それじゃあ買い物に行こうか・・・」


「はい。そうしましょう」


「そっ、そうですね」


「・・・」


この精霊をどうすれば御する事ができるのか考えあぐねるカルとメリル。


カルやライラが持っている極楽芋の白い液体も有効ではある。だが、仲間となった精霊を殺す事を前提になどできない。


ならば、自身を作った精霊ホワイトローズに何か対抗手段がないか相談するしかないと考えたメリル。同じ精霊であれば何か対抗策を知っているのではと考えた。


カル達は、当初の予定通り街の小さな市場へと向かいこの地域で採れた野菜や果物を買う。


街で起こったこの騒動により、皆ひきついった笑顔でカル達に接する。もうこの街でカル達に歯向かう者は誰もいない。


そんな騒動の中。妖精達は、街の片隅にある冒険者ギルドの屋根裏にこっそりと小さな扉を設置していた。実に抜かりのない妖精達である。


岬の突端にある火龍の住処となっている洞窟の奥にも扉を設置していた妖精達。惑星の反対側にあるこの大陸への足掛かりを徐々に増やしていた。




次の日の早朝。


浮遊城は、街を後にすると若い執事の案内のもとラッセル伯爵の屋敷へと向かう。


森と草原が交互に現れ、時より街と村、そして畑が点在しそれらを結ぶ道が連なる。


そんな風景の中、雲の上を進む浮遊城。


カルの浮遊城は、メリルとライラが交代で魔力を送り制御し、浮遊城の詳細な位置の把握などは妖精達が行っている。


やがて大きな城塞都市とその外れに城壁に囲まれた大きな城が姿を現した。


「あそこがラッセル伯爵様のお城です。このお城を城壁の外に降ろしてください」


若い執事が示した場所に浮遊城を着陸させたメリルとライラ。


何もない草原へと着陸した浮遊城の前には、執事長のセバスと護衛の兵士達が居並びカル達の出迎えに来ていた。


「ようこそ。ラッセル伯爵様の居城へ。早速ですが解呪をお願いします」


カル達は、執事長に連れられて城壁の片隅にある屋敷へと通された。


そこには、ふたつの天幕付きの大きなベットが並べられ、左側にご婦人が寝かされ、右側には小さな男の子が寝かされていた。


ふたりともベント子爵のご息女と同じで顔に汗をかき荒い息をして苦しそうにしている。


「このおふたりの解呪を行えばよいのですね」


「はい。よろしくお願いいたします」


カルは早速、小さな黒龍を呼び出すとふたりの腹の中から、呪いがかけられた魔石を取り出した。解呪は、実に呆気なく終わった。


報酬を受け取り帰ろうとするカル達。


「お待ちください。ラッセル伯爵がぜひご昼食を共にされたいと申してあります」


「僕達、冒険者です。伯爵様とお会いする様な身分ではありません」


「いえ、伯爵様のご家族の命の恩人に身分など関係ありません」


解呪も終わり帰ろうとするカル達を引き留めようとする執事長。


仕方なく昼食だけという事になり、屋敷内の別の部屋に通されたカル達。


部屋に置かれたテーブルには、既に人数分の食事が用意されていた。


この時、カルと共に行動を共にしていたのは、メリル、ライラ、精霊樹の精霊。それとレりアとクレアとゴーレムのカルロスⅡ世。


メリルとライラは、カルが黒龍を呼び出せる様になった事をこの時始めて知った。精霊樹の精霊は、なぜかひと言も話すこともなく黙ったままであった。


それが妙に引っかかるカルであったが、口の悪さで伯爵の機嫌を損ねると面倒なので、あまり深く考えてない事にしていた。


「こちらからお呼びして申し訳ありません。伯爵様は、領地での問題がありました関係で少し遅れるとの事です」


執事長のその言葉に頷き席に着くカル達。


執事長に促されるままに食事を食べ始めようとするカル。


ところがライラが席を立つとカルの耳元でこう囁いた。


「この食事、痺れ薬が盛ってあります。でも料理は美味しそうなので精霊治癒魔法で痺れ薬を無効化します」


ライラの言葉を聞いて一瞬表情をこわばらせるカル。


今度は、メリルがカルの側に来ると耳元で囁く。


「両隣りの部屋に大勢の兵士が待機しています。何か裏があると思いますので、直に動ける様にしておいてください」


メリルが皆の前に出された料理に盛られた痺れ薬を精霊治癒魔法で無効化していく。それを執事やメイド達に悟られない様に小声で詠唱するライラ。


「この料理美味しいですね」


「本当です。私達の様な冒険者では、食べられない料理です」


いかにもといった言葉で料理を褒めるメリルとライラ。


それぞれが料理を口へと運び飲み込む。それを見た執事長とメイド達は、指で何かの合図を送り合う。


それを見逃さなかったカル。そろそろ痺れ薬が効き始めてくる頃だと判断してそれなりの演技を始めようとした矢先、全てぶち壊しにする言葉が精霊から発っせられた。


「あんた達。バカじゃないの。伯爵って私達に悪意剥きだして来てるのよ。何を呑気に牽制なんかしてるのよ」


メリルとライラの演技の後に迫真の演技で事の真相に迫ろうかと考えていたカル。それが、精霊の言葉で全てが台無しに終わってしまった。思わず頭を抱えるカル。


「なっ、なんとおっしゃいました。ラッセル伯爵様を侮辱されるとは」


執事長は、精霊の言葉にご立腹といった表情を浮かばせる。執事長も役者である。


「料理に痺れ薬を盛ったり、私達を捕らえるために両隣りの部屋に兵士を待機させたり、しかもカル様の浮遊城を取り囲む兵士達をどう説明する気なの」


「痺れ薬とは・・・何の事でしょう。それに兵士?さて」


その時、執事長の顔が一瞬だけにやけた。


「言っておくけど、私達に痺れ薬なんて効かないわよ。私の精霊治癒魔法で無効化してあるから」


「ちっ」


舌打ちをする執事長。


「仕方ありません。乱暴事は、あまり性に合わないのですが伯爵様のご命令です。貴方達を拘束させていただきます。


その時、廊下を走る多数の足音が響き渡る。


足音からして数百は下らないと思われる兵士達が廊下に集まっている。


席を立ち窓際に退避するカル達。


さて、伯爵の屋敷内で戦いの幕が切って落とされます。


解呪の依頼の裏では・・・というお話ですね。


私も浮遊城欲しいです。


今日は、病院で採血と検尿。例の肺炎を警戒してか人が少ない様な。



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