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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
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164話.伯爵の依頼

迎えに来た浮遊城。そこにある人物がやって来ます。


街外れに着陸した浮遊城の城壁の上からメリルとライラがカルに手を振っている。カルもメリルとライラに答える様に手を振る。


「でも、どうして僕がここにいるいって分かったんですか」


カルの横でふよふよと宙を泳ぐ精霊神お猫サマ。カルの顔を見ながらにぱっと笑顔を見せる。


「それにゃ。カルが背中に背負っている鞄にゃ」


「えっ、この鞄は、地龍達の家ですよ」


「その中に妖精達が小さな扉を仕込んだにゃ。妖精達は、その扉を通って真夜中にカルの状態を確認しに来てたにゃ」


「えーーー。知らなかった」


「それにカルが何処にいるか全て浮遊城から見る事ができるにゃ」


「いつからそんな事に」


「詳しい事は、妖精達に聞くにゃ。でも何で精霊界からこんな場所に来たにゃ」


「それは、皆さんの前でお話しますね」


カルと精霊神お猫サマが浮遊城へ上がる階段へとやって来ると、カルのゴーレムであるカルロスⅡ世がお出迎えの敬礼を決める。


「カルロスも来てくれたんだ」


ゴーレムであるカルロスⅡ世は、言葉こそ発しないもののにこやかな表情を浮かべてカルを出迎えててくれた。




「お待ちください!」


カル達が浮遊城の階段を上りかけた時、背後からそんな声が響き渡る。


「お待ちくださいカル様。私、ラッセル伯爵様の屋敷にて執事長を務めておりますセバスと申します。実は折り入ってお願いがございます」


カルは、初老の執事を見てベント子爵絡みの解呪の件だと察した。


「解呪の件ですね。ベント子爵から話が行ったという事でしょうか」


「はい」


「そうですか、立ち話も何ですから浮遊城の中でお話をお聞きします」


「よろしいのですか」


「話を聞くだけです。解呪の件を受けるかは別の話です」


カルは、ラッセル伯爵の執事長だというセバスとその護衛らしき数名の者と共に浮遊城へと通じる階段を上がっていく。


街の崩れかけた城壁の上は、街の住民達でごった返していた。見た事もない浮遊城の突然の来訪に驚きつつも興味の方が勝っている様である。




カルは、ラッセル伯爵の執事長セバスを浮遊城の応接室に招き入れる。


執事長セバスとその護衛達は、浮遊城を物珍しそうに見ているが浮遊城といえどただの小さな城であり、作りも他の城と大して変わりばえしない。


基本的には、この浮遊城を作ったリオの趣味に依存した内装となっているので、他国の城との違いといえば多少魔王国の色合いの強い作りとなっているくらいだ。


メリルとライラがお茶を出しカルの後ろで控える。対して執事長セバスの護衛達は、廊下で待機している。


「ひとつお聞きしてよろしいでしょうか。ベント子爵の執事さんも”セバス”と名乗っていましたが・・・」


「ああ、その事ですか。実は、この国で執事を務める者は、皆セバスと名乗るしきたりがあるのです」


「皆ですか」


「はい。執事に名前は不要という事です。逆に申せばセバスと名乗ればその者は、貴族の執事であるという証となる訳です」


「なるほど・・・」


「では、早速ですが本題に入らさせていただきます。私がお使えするラッセル伯爵様のおふたりのご子息にかけられた呪いを解呪していただきたいのです」


「それでしたら、まずは冒険者ギルドに依頼するべきかと」


「冒険者ギルドへは、既に依頼済みです。ですがカル様はランクBからランクDへと降格されてしまい、解呪を出来る者はこの国には誰もおりません。ラッセル伯爵様のご子息にかけられた呪いの刻限は、あと3日に迫っております」


「もう時間が無いのですね」


「ですので冒険者ギルドには、カル様を指名でクエストを発注させていただきました」


「Dランクの僕宛てに指名クエストなんてよく発注できましたね」


「いえ、冒険者ギルドはごねました。ですが解呪を出来る者がカル様おひとりである事を感が見ると、この先も解呪を行える者は、出て来ないと考えこちらも強引な手に出ました」


「強引?」


「このクエストが発注できない場合、この国で冒険者ギルドの活動に制限を設けると申し上げました」


「そんな事できるんですか」


「はい、私の主人であるラッセル伯爵様は、この国で内務大臣を拝命しております」


「内務大臣が冒険者ギルドの行動に制限を設けたら冒険者ギルドは立ち行かなくなりますね」


「はい。ただ冒険者ギルドが無くなってしまうと我らも困るのです。これはギリギリの選択です」


カルは、少し考える素振りを見せた。ただ、解呪の依頼を受ける事については既に腹を決めていた。


「解呪の件は、お受けします。ですがこの国の政争に加担する気はありません」


「はい。その件については、ベント子爵様の手紙にもありましたのでカル様には、解呪のみをご依頼いたします」


「では、僕達はこの浮遊城で移動しますので誰か案内の出来る者を残してください」


「ラッセル伯爵様のお屋敷は、ここからですと馬車でまる1日かかります。私は、先に屋敷に戻り伯爵様にこの事をお伝えいたします」


ラッセル伯爵の執事長であるセバスは、解呪クエストを引き受けたカルとの話し合いが終わると護衛とお付きの者達と共に早々に浮遊城を出て屋敷への帰路へとついた。


浮遊城には、セバスと共に来た若い執事と護衛のふたりが残り、ラッセル伯爵の屋鋪への道案内をするという。




浮遊城の状態をメリルとライラに確認したところ、特に問題もないという。ただ、せっかく見知らぬ土地に来たのだからこの地でしか手に入らない野菜や果物を仕入れたいという。


ラッセル伯爵の屋敷まで馬車でまる1日の距離であれば、浮遊城でならあっという間である。移動は、明日の朝からという事になり、街の店で食料の買い出しを行う事になった。


さて、買い物の前にカルにはやる事がふたつある。


ひとつは、レリアとクレを皆に紹介すること。


「レリアとクレアを紹介します。ふたりは、人化した僕の地龍です」


「へえ、地龍ですか」


「私もメジューサだからとやかく言えないけど、変わったのが仲間になったわね」


「なんだか凄いのが来たにゃ」


思わず皆から驚きの声が上がる。


「レリアです」


「クレアです」


レリアとクレアは、顔も体形も同じで端から見てもどっちがどっちか分からない。


「カル様。おふたりをどうやって見分けているんですか」


「私達には、全く同じに見えます」


するとレリアとクレアがカルの周りをグルグルと回り出すと、カルに向かって質問を投げかける。


「どっちがレリア」


「どっちがクレア」


カルは、さっと答える。


「こっちがレリアでこっちがクレア」


「当たり。カル凄い!」


レリアとクレアを見当てたカルにレリアとクレアが賛美を送る。


「やっぱり分かりません。何か違いがあるんでしょうか」


そい言うメリルにカルは、耳打ちをしてレリアとクレアの特徴をこっそりと教える。


「あっ、ああ。なるほど」


するとライラの周りをグルグルと回り出し、不意に止まるとさっきと同じ質問をライラに投げかける。


「どっちがレリア」


「どっちがクレア」


すると少し考えた素振り見せながらライラは応える。


「こっちがレリアでこっちがクレア」


「正解。ライラも凄い!」


「へへへ」


思わず笑顔がこぼれるライラ。


「うーん。私にはさっぱり・・・」


するとライラは、自身の頭に両手を乗せると人差し指を立たせて見せた。


「指・・・角?」


メリルは、ライラの仕草を見てレリアとクレアの角を凝視する。すると若干ではあるがレリアとクレアの角の長さに違いがある事に気がついた。


「あー、成るほど。そういう事」


ライラの仕草に教えられたメリルは、レリアとクレアの見分け方をようやくと理解できた。


「「レリアとクレアをよろしくお願いします」」


ふたりの挨拶に答える様にメリルとライラも自己紹介を始める。


そんな光景を微笑ましく見ていたカルの服のポケットの中で何かが動いた様な感覚を覚えた。


カルは、服のポケットをまさぐると手の中に少し大きめの種を見つける。


そこでカルは思い出した。精霊界で精霊かたら種を貰った事を。


そう、もうひとつは精霊界で精霊から貰った種を植えたらどうなるかということ。


精霊樹の精霊の話では、カルを生涯守るという。恐らく種を植えると木が生え精霊が生まれるのではと推測したカル。


種を植えるなら城塞都市ラプラスか精霊の森に植える方が良いのだが、この浮遊城の中央にある庭に植えれば浮遊城で何処に移動しても精霊も移動できるとそう考えた。


早速、浮遊城の中庭に精霊樹の精霊から貰った種を植えるとライラに精霊治癒魔法をかけてもらう。


すると、種は芽を出し枝を伸ばし葉を生い茂らせて徐々に大きくなっていく。


一瞬、精霊界にある様な巨木になるのではと額から冷や汗を流したがカルであったが、5m程度の程よい高さまで成長すると、それ以上成長する事もなく青々とした葉を茂らせる。


成長の止まった木の前で暫く待ってみると、木からメリルやライラよりも身長の高い女性が姿を現した。


そして当然といえば当然なのだが、その女性は服を着ていない。


その光景を見たライラは、カルの目を両手で塞ぎ、メリルが精霊の元へ向かい女性用の服を差し出しす。


しばらくしてカルの目からライラの手が外されると精霊は、メリルが用意した服ではなく白いドレスの様な服を纏っていて、その服からは絶えずキラキラと光の粒がこぼれ出ている。


しかも精霊が来ているドレスは、陽の光を浴びて体形が手に取る様に分かる程に透き通っている。


そしてカルは、目の前にやって来た精霊の顔を見て唖然とする。


メリルやライラもかなり顔立ちのよい美人ではあるが、そのふたりとは全く違う絶世の美女という言葉に相応しい顔立ちと細い体に放漫な胸を有していた。


思わず見とれるカルの目に再び手の平をかざして目隠しをするライラ。


「カルさんは、分かり易すすぎです。いくら美人で胸もあるからってそんなに凝視してはいけません」


カルの分かり易い態度にライラが少し怒った表情を浮かべる。


「ごっ、ごめんなさい」


カルの誰に対してなのか分からない謝罪の言葉。


するとライラに目隠しをされたカルの手を取る精霊。そしてカルを自身の方へと引き寄せる。


それによりライラが手の平で作った目隠しが外されたカルは、おもわず精霊の顔をまたまた凝視してしまう。


「カル様。私は、カル様の命が絶えるまでカル様のおそばでお守りいたします」


精霊の甘い言葉がカルの耳に届くと精霊は、カルと唇を合わせた。


その光景を見ていたメリルとライラの表情が思わず強張る。


精霊とカルの抱擁はさらに続き、カルの頬が変に動き回る。


「ちょっとカル様の口の中で何をしているんですか」


メリルは、思わずカルの手を引いて精霊とカルを引き離しにかかる。


「カル様の口の中に舌を入れて口の中を弄っていたわね。私ですらまだやっていないのに!」


「えっ、舌を・・・ですか」


メリルの言葉にライラが頬を赤らめる。


カルは、上気した顔つきで放心状態となり何も答えられない。


「それは、愛し合う男女が行う行為です。その・・・お互いの舌を絡め合うなんて」


メリルの言葉に精霊は、とんでもない口調で言い返す。


「あら、貴方達。カル様とずっと行動を共にされているのにまだ未経験なんですか。・・・バッカじゃねーの」


メリルとライラは、一瞬耳を疑った。今のは確かに精霊が放った言葉だったと。


「お前らずっとカル様と一緒にいて今まで何やってんだよ。女として失格だろうがよ」


さらにメリルとライラが耳を疑う様な言葉を放つ精霊。


メリルが引いたカルの手を精霊が強引に引き戻すと、精霊は、服の上からカルの股間を弄りだす。


「こう見えてもカル様も男の子なんだから出すものを出してやらないとダメだろうが。本当に使えない女共だな」


ここでメリルもライラもようやく認識した。目の前にいる精霊は、とにかく口が悪いのだという事を。


「ちょっ、ちょっとカル様の股間を弄らないでください。カル様は純情なんです」


「そうです。私達も・・・その・・・我慢してるんです」


「はあ、好きな男の前で猫被ってどうすんだよ。男なんて女とやりたいに決まってんだろーが」


精霊は、乱暴な言葉を言い放つとカルのズボンの中に手を入れようとする。


カルは、精霊に呪いでもかけられたかの様に何の抵抗もできない。


「ちょっと。カル様に何をするんですか」


カルの手をメリルとライラが強引に引っ張る。すると精霊は、カルを取られまいと体を羽交い絞めにかかる。


まるでひとりの男を取り合う女の喧嘩である。その光景を見ていた精霊神お猫サマ。


「また随分と毒舌な精霊にゃ。えらいのが来たにゃ」


精霊界からカル達の住む異世界にやって来た精霊樹の精霊。その精霊は、実に口が悪かった。


どうなるカル。少年の貞操を狙う精霊に負けてしまうのか。

なんだかな~という展開ですね。


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