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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第1章》 僕は、おかざり領主になりました。
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16話.村の視察と魔獣集め(3)

魔人復活とか物騒な話ですが・・・。

「カルよどうした。言動がおかしかしいぞ」


「・・・活・・・復活。魔人」


「・・・魔人」


ルルの言葉にカルは何の返答もしない。だが、同行した魔術師の兵士は、カルの行動を見て何かを察したようだった。


「ルル様。カル殿ですが、魔人に取り込まれようとしているのでは?」


「あれだけの力を使ったのです。普通に考えれば、魔人が見返りもなく力を提供するなどありえません。恐らくですが、見返りはカル様の体なのでは、先ほどから”復活”とか”魔人”とか言っています。言動からして間違いないでしょう」


同行した魔術師の兵士がルルに助言を呈した。


「よく分かるな」


「はい。魔導書には、その手の話がいくらでもころがっています。前例も数多くあります。もしかすると魔人復活も近いのでは?」


「そうか、魔人といえば魔術師の方が詳しいのか、言われればそうだな」


「では、どうすればよいと思う?」


「そうですね。正気に戻すか、あるいは魔人が復活できない様に気絶させるくらいの衝撃を与えれば或いは」


ルルは、考えた。だが自分には魔人の知識もないし対処方法も分からない。ならば、できる事はただひとつ。


「ならば仕方ない・・・。カルよ恨むな!」


ルルは、体内の”気”を溜めると大盾の隙間からカルの腹にめがけて強烈な”拳”を放った。


「げふ!」


カルは、体を”く”の字に折り曲げながら崩れた城壁の上を遥か遠くまで飛んでいった。


大盾は、城壁の上に転がり、魔法スライムは、カルの頭から”ぴょん”と飛び降りた。だが、魔法スライムがルル達を攻撃するそぶりはない。


「ルル様!何を!」


「既に魔人に体を乗っ取られているならカルは立ち上がり、我々を攻撃するであろうな。だが、この程度のダメージで起き上がれないなら、まだ魔人に体を乗っ取られてはいまい」


「カルのジョブは”神官”だ。しかも魔法が使える”神官”なのに魔法スキルは皆無。さらにHPが”F”ランクと最低だ。あれでは、どんな魔人が体を乗っ取ったところで何もできまい」


「よっ、よくご存じですね」


「同じチームのメンバだからな。メンバのステータスは把握している」


要塞の崩れた城壁の周囲にいたオークは殆ど狩りつくされ、残るは数体のオークのみとなった。同行した兵士と獣人達が、オークと戦いを繰り広げているが、もう少しで戦いも終わりを迎えそうだ。


カルが魔人に体を乗っ取られそうになるという事態は、想定していなかったが注意深く言動を観察していれば対処できる範疇だとルルはそう判断した。


結局、ルルの渾身の一撃を受けたカルは、起き上がることはなかった。


「しかし、いつまでカルを城壁の上に転がしておくのもあれだ。誰か回復魔法でも・・・」


そう言いかけた時、倒れているカルの前に白いドレスを着た少女が現れた。その少女の姿を見た瞬間、ルルは手に持つ破壊槍を構えた。


少女の体からは禍々しい邪悪なオーラが放たれている。今まで出会った魔獣の中にもこれほどの邪悪なオーラを放っているものを見たことがなかった。悪寒が走り精神がゆらいだ。何とか足を踏ん張り立つのがやっとだった。破壊槍を持つ手に汗がにじみ、”ぽたり”と城壁の上へ落ちた。


目の前の少女がこの世の者ではないとすぐに”理解”した。今、目の前の少女が何か、いや攻撃を始めたら対処できるレベルの話ではないと悟った。


「・・・・・・」


白いドレスを着た少女は、城壁の上に倒れているカルの姿をしばらく見ていたが、ふりかえるとルルの顔を見て話し始めた。


「カルには、防壁を張っておいたのにカルを倒したの。あなたは・・・脅威なの。でも、カルを守れるのはあなたしかいないの。我慢するの。ちょっとだけ我慢するの」


「少しだけカルを預けるの。その間だけカルを守るの。もし、カルが死んだらあなたも、あなたの周りのの人も、あの街の住民も民殺しなの」


白いドレスを着た少女は、”ニッ”と口角を広げ作り笑顔でそう言い残すとルルの前から姿を消した。


だが、ルルは身構えたまま体勢を崩さなかった。冷や汗がどっと流れ出た。まずい、あの存在はまずい。あんなものがカルの大盾に封印されているのか。


最初は、カルを、いや、カルの盾の魔人を利用して兄上を、父上を超えようと思った。だが、そんな考えは甘い、甘すぎた。あれを封印する方法を考えなければ。あれは、邪悪すぎる。力が強大すぎる。もし封印が完全に解けたら・・・、解けたら?・・・解けたからと言って何だというのだ。


ルルは、ふと考えるのをやめた。自分ひとりでどうにかなる話ではないと思えたからだ。人族には、神の命を受けた勇者とかいう存在がいたはず。ならば、カルを抑えきれなくなったら、勇者にでも対処してもらおう。


魔人など一介の鬼人族に対処できるはずもない。そう考えると急に気が楽になった。とにかく、魔人がカルの体を乗っ取らない様にすることこそが自分の役目だと・・・そう理解した。そう考えたなければ、重圧に潰されそうに思えたのだ。






次の日。


カルは、ベットの上で目が覚めた。だが、昨晩の事はよく覚えていなかった。


「カルよ。目が覚めたか」


珍しく剣爺が起き掛けに話かけてきた。


「カルよ。魔人の言葉に注意するのじゃ。おぬしの体を・・・精神を乗っ取る気でおるのじゃ。カルに盾をやったのはわしじゃ。じゃがまさかカルと魔人があれほど親和性が高いとは思わなんだ」


「わしにあやつをもう一度封印する力は残っておらぬのじゃ。おぬしが、強い精神力であやつに対抗するしか方法がないのじゃ」


剣爺のは話は、そこで終わった。昨晩、何があったのか覚えていないけど、剣爺の話からすると、魔人に・・・精霊ホワイトローズさんに僕が取り込まれそうになった・・・そいうことなのかな。


そうか、精霊ホワイトローズさんは、魔人の復活を願ってるのか。僕がホワイトローズさんに取り込まれると、魔人が復活するのか・・・。でも、恐怖心とかそういったものが感じないのはなんでだろう。


「起きたか」


「昨晩は、オーク撃退お疲れ様」


ルルさんが部屋に元気よく入ってきた。


「ごめんなさい。昨晩の事は、よく覚えていないんです。けれど、剣爺から教えてもらいました」


「謝らなくてよい。あの数のオークを撃退できたのは、カルの盾の魔人と魔法スライムのおかげだ」


「その、盾なんだがな。8人がかりで持ち上げようとしたのだが・・・・・・無理だった。ところがだ、カルを運ぶと我らの後ろをひとりで歩いてついてきおった」


「大盾がですが?」


「ああ。大盾がな。あの盾は自分で歩けるのか?」


「・・・いえ、見たことないです」


「そうか、今はそこに置いて、いや勝手にあそこまで歩いてきおった。あの大盾は、カル殿から離れる気はないようだな」


「あの、スライムさんは・・・」


「オークを撃退した後、自分から盾の中に帰っていった」


「魔術師が言っておった。魔術師よりスライムの方が魔法に長けていると。あの魔法スライムで魔術師部隊を作ったら、どんな強国でも手に入ると笑っておった」


ルルさんは、ケラケラと笑いながら部屋を出ていってしまった。


ベットの脇のテーブルの上には”受領書”と書かれた紙が置かれていた。精霊ホワイトローズさんが注文してきた魔獣は無事納品できたみたい。でも、精霊ホワイトローズさんに体を乗っ取られるなんて嫌だけど、今更大盾を手放す気なんてさらさらない。とはいえ、剣爺ばかりをあてにもできない。


悩んでも出ない答えに頭を悩ますカルであった。




今後村には、オーク退治の冒険者を派遣する事や、兵士を配置することが決まった。


それと都市の周囲に点在する村々の畑に腐葉土を入れるため、この村を集積場所にしたいと申し出た。村からは、腐葉土を集める人手を出してもらうことになり、それだけでも村の収入はかなり改善されると獣人達は喜んでいた。


カルは、獣人達にあるお願いをしていた。それは、苗木を定期的に送って欲しいというもの。


城塞都市ラプラスの周囲は、荒地と草原ばかりで森がなく、森の中で育ったカルにあの景色は辛く見えた。荒地に植林をして都市の周囲に森を作れば、いつか豊かな土地になる。でも、木々が育ち森になるには何十年、何百年と途方もない年月がかかる。


カルは、そんな先を見ていた。



お読みいただきありがとうございます。


つたない文章ではありますが、これからもよろしくお願いいたします。


次話より1章の後半となります。


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