158話.精霊界へ(3)
いきなり火龍と戦う事になったカル。
山の中腹に開いた洞窟から少し離れた場所へとやって来たカルと火龍。
カルは、大盾を構えるとそれをノックする。それは、戦いの始まりを魔人達に伝える合図である。
カルの周囲には、魔法防壁と物理防壁が張られ、大盾の上には、書の魔人、鎚の魔人、指輪の魔人が小人の姿で並んでいる。
「まずいわね。今の私達では、火龍に勝てないわよ」
「ああ。あやつの炎のブレスは強力じゃからな」
「わしの指輪は、装備者の魔力を吸収して能力を発揮するからの。魔力が殆どないカルでは、宝の持ち腐れじゃな」
小人の姿で現れた魔人達。彼らは、好き放題に言いたい事を言っている。
「つまり火龍には勝てないということ?」
「「「ピンポーン」」」
「ぴんぽーんって?」
「まあ、あれだな。正解とでも思ってくれ」
カルは、しばし考え込む。そしてある事に気が付いた。
「以前、魔王城を踏み潰したあの巨人を出す事はできないの」
「カルの魔力では、あれを出せるのはほんの10秒だ。その後は、気を失ってしまうぞ」
「つまり巨人を出して10秒で火龍を倒せなかったら・・・」
「カルは気を失い、火龍の攻撃を受けて死んでしまうの」
「えーーーーーそんなぁ」
その時、火龍が放った炎のブレスがカルを襲う。
だが、書の魔人が張った物理防壁によりなんとか炎のブレスを防ぐ事が出来た。しかし・・・。
「熱い、熱い、熱い」
そう。火龍の炎のブレスを防ぐ事が出来ても炎のブレスの熱までは防げないのだ。
今の火龍の攻撃によりカルのHPがごっそりと奪われていく。
「えっ、あの攻撃でカルのHPが底をついたの」
書の魔人が思わずカルのステータスを見て驚きの表情を浮かべる。
「はあ、はあ。だって僕は、神官なんだよ」
「そうじゃった。そして回復魔法も光魔法も使えんのじゃったな」
「・・・・・・」
魔人の棘のある言葉に何も言い返せないカル。
「とっ、とにかく巨人を出してそれに望みをつなぐしか・・・」
カルの言葉に書の魔人が反論する。
「待ってカル。巨人と言ったけど、別に巨人じゃなくてもいいのよ。あの時は、私達が巨人だと言ったから巨人が出て来ただけよ。カルが思い描く強いものならなんでも具現化できるのよ」
「何でも?」
「そう何でもよ」
カルは、大盾を構えながら火龍の炎のブレスの攻撃から必死に逃げていた。カルは、大盾を持ちながらの逃げ足だけは誰にも負けない。
「強い生き物、強い生き物・・・」
カルは、書の魔人の言葉の意味を必死になって考える。考えながら大盾を構えて火龍の炎のブレスを必死になって避ける。
それでも火龍の炎のブレスの熱により徐々にHPが奪われていく。
仕方なく腰にぶら下げた鞄の中から黄色いラピリア酒(薬)の入った瓶を取り出すと、それを一気に飲み干した。だが、なぜか黄色いラピリア酒(薬)の味が全くしない。
「あれ、これってラピリア酒(薬)じゃない」
カルが飲み干した瓶の中身を見てみると、それは先ほど洞窟の泉で汲んだ水であった。
「まっ、間違えた!」
カルは、再び鞄の中から黄色いラピリア酒の入った瓶を取り出すと、一気に飲み干す。
その間も書の魔人が魔法攻撃を火龍に向かって浴びせるも殆ど効果がない。
「もう。なんて固さなのよ」
「わしの鎚では、あの火龍の鱗には歯が立たんからの」
そんな時、カルの動きが止まる。
「おいどうしたのだ。足を止めたら火龍の餌食じゃぞ」
魔人達がカルの顔を覗き込む。するとカルの顔色は青くなっていて、どう見ても何か問題を抱えている様に見える。
「おっ、お腹が焼ける様に痛い」
「なんと。この緊急時にか!」
魔人達は、慌てた。今は、カルの逃げ足で辛うじて炎のブレスを避けているのだ。それが腹痛で動けなくなったとしたら全てが終わってしまう。
だが、書の魔人がおかしな事を言い始める。
「うそ。カルの魔力が・・・MPが急激に増えているわよ」
「なんと。では、魔人を・・・」
カルは、腹痛の痛みで地面に倒れ込んだ。魔人達の言葉は、カルの耳には聞こえていない。
「「「カル、カル・・・・・・」」」
魔人達の呼ぶ声がカルの耳に微かに聞こえて来る。
火龍の炎のブレスがカルに向かって来る。
そして大盾を構える事が出来ないカル。書の魔人は、必死に防壁を張りカルを守ろうとする。
その時、カルの前に水の壁が現れた。水の壁は、火龍の炎のブレスを易々と退ける。
それを見た魔人達は、いったい何が起きたのかと驚き、倒れたカルを必死に起き上がらせようとする。
見るとカルの後ろには、水龍の姿があった。だが、ここは山の中腹であり湖も川もない。
そんな場所に水龍が現れるはずがないのだ。
「「「どこから水龍が現れた」」」
思わず驚く魔人達。
水龍は、火龍に向かって水のブレスを吐き出す。火龍も炎をブレスを放つもお互いのブレスが打ち消し合い決定打とはならない。
すると今度は、火龍の頭上に巨大な水の塊が現れ、水の塊が火龍めがけて落下を始めた。
まるで湖が火龍を飲み込んだかの様な形となり、さらに水の塊は、火龍の周囲から流れ出る事もなく火龍を水没させるかの様に火龍の体に纏わりつく。
さすがの火龍も水の中で炎のブレスを放つ事はできない。息もできずにもがき苦しむ火龍。
するとカルの後ろにいたはずの水龍の姿はなく、代りにそこにいたのは白い氷龍であった。
氷龍は、水の中でもがき苦しむ火龍に向かって氷結のブレスを放つ。それにより火龍の体を覆っていた水が凍結を始める。
みるみるうちに氷塊となる火龍。
今度は。白い氷龍の姿が消え、そこには黒い龍の姿があった。
黒い龍は、口から黒い炎のブレスを氷塊の中で氷漬けにされた火龍に向かって放つ。
すると氷漬けの火龍のHPとMPがみるみるうちに減っていく。
その光景をただ唖然と見つめる魔人達。
「これって、まさかカルがやっているの」
「そんなはずは・・・」
魔人達は、倒れているはずのカルの姿を探す。すると先ほどまで倒れていたはずのカルは、黒龍の脇に立ち黒龍の顔に手を充てながら立っていた。
「ぼっ、僕が強いと思ったのはこの龍達だ。今まで出会った龍達なら僕を助けてくれると思ったんだ」
黒龍の黒いブレスにより火龍のHPとMPは殆ど黒龍に奪われ、氷塊の中で身動きが取れなくなった火龍。
そして黒龍の姿はいつしか消えていた。カルは、倒れる事もなく氷漬けとなっている火龍の元へと歩み出す。その姿をただ黙って見守る魔人達。
やがて氷塊が溶け出し虫の息である火龍の口に黄色いラピリア酒(薬)を樽で流し込むカル。それにより息を吹き返した火龍は、カルに向かって弱々しくもその思いを言い放つ。
「わしが・・・負けたのか。火龍の・・・わしが。しかも同族である龍族が・・・次々と姿を変えてわしを攻撃しおった」
「あの龍達は、僕の街で生活している龍達です。僕は、今まで龍族を殺した事は一度もありません」
カルは、腰にぶら下げた鞄から小樽を取り出すとHPとMPを奪われ瀕死の状態となっている火龍の口へと流し込んでいく。
「お前、なぜわしを助ける」
「だって、僕は火龍さんと戦う気なんて最初から無かったんですよ」
「そうか・・・わしが勝手に勘違いをしてお前に戦いを挑んだのだったな」
氷塊が解け体の自由が戻って来た火龍。
「お前の名前はなんと言うのだ」
「カル。カル・ヒューイ。この精霊界と違う異世界で城塞都市ラプラスの領主をしています」
「お前の事をカルと呼んでもよいか」
「はい!」
火龍とカルの戦いは、以外とあっけなく終わった。だが、その戦いを見て唖然とする魔人達。なぜカルの魔力が急激に増えたのか理解できずにただ唖然とするばかりであった。
火龍の背中に乗り山の麓の老婆の上の前へと降り立った火龍とカル。
「火龍お久しぶりね。それでは、私を精霊樹の森の最奥に連れていって」
「いきなりだな」
「そうよ。いま、新しい精霊樹の芽が出たの。その芽にあるが汲ん出来た泉の水を与えたいの」
「カル。あなたも一緒に来て」
「僕でも何かの役に立つなら喜んで!」
老婆とカルは、火龍の背に乗り空へと舞い上がりいくつもの山の峰を越えて行く。
火龍の背中から見渡すと緑と茶色がまだら模様となっている風景がカルの目に映る。
「あの茶色い部分は、草木が枯れている場所で青い部分は木々が生い茂っている場所ですね」
「この辺りの精霊樹は、これでも元気な方なのよ。他の場所に行ったら荒地で草木なんて生えてないの」
「僕も荒地を歩いて来て知ってます。あの栄養のない土では草木は生えないでしょうね」
「あら、そっちの方に詳しいの」
「それ程でも。だた、僕の住んでる城塞都市の隣りに僕が精霊の木を移植したんです。それが今では、4つの森に増えてしまいました」
「それは凄いわね」
「妖精達も増えて・・・、今では妖精の国を作る迄になりました」
「妖精の国・・・、この精霊界にもないものだわ」
「精霊界へと繋がる扉を守るなめちゃん・・・いえ、神獣なめくじ精霊が妖精達と何かをやっているようですが、僕にはさっぱりで・・・」
「神獣様が・・・そちらの世界に行ったという話は聞いています。そうですか、神獣様と妖精達がですか」
老婆は、火龍の背中の上でふと空を見上げながらしばらく考え事をすると、ふいにこんな事を言い出した。
「恐らくあなたの世界に住む妖精達は、ますます発展すると思います。妖精達と仲良くしてくださいね」
「はい。妖精さんは、いろいろ面倒事も起こしますが、とても楽しくお付き合いさせてもらっています。あっ、精霊の森の精霊さんや裁定の木の精霊さんともです」
カルの満面の笑みを見た老婆は安堵する。
「そう、何か本当に楽しそうね。この精霊界には無い別のものがあなたの世界にはある気がするわね」
「ははは。そうだといいですね」
火龍の背中の上で空の散歩を楽しんだカルと老婆。
やがて山深い森へと降り立った火龍。その背中から降りたカルと老婆の目の前には、精霊樹の古木が並ぶ。
「だいぶ樹齢のありそうな木々ですね。ぱっと見た感じですが、樹齢が他の精霊樹よりも遥かにある様に感じます」
「カルは、見ただけで樹齢が分かるの」
「いえ、そう感じるだけです。僕、職種が神官なんですが魔法も使えない役立たずなんです。でもなぜか精霊の森の精霊の声が聞こえたり、妖精達と仲良くできたんです」
「そう、やはり例の件に選ばれただけの事はあると言う訳ね」
「例の件?」
「いえ、こっちの話・・・」
老婆は、歩き出すと精霊樹の巨木が生い茂る森の中で、巨木が茂っていない日の光が差す場所へとやってきた。
そこには、小さな芽吹いたばかりの精霊樹の芽がひとつだけ生えている。
「この芽が新しい精霊界を担う精霊樹なの。でも精霊力が弱くて芽吹いてもすぐに枯れてしまうの」
「僕が汲んで来た泉の水が精霊の芽に力を与えるんですか」
「でも、泉の水だけではダメなの。カルが造ったあのお酒が必要なの」
「僕のお酒・・・赤いラピリア酒ですか」
「泉の水とカルのお酒を一緒に与えると、精霊樹の芽は精霊力を回復する事ができるのよ」
「なら、やってみます」
カルは、腰にぶら下げた鞄から赤いラピリア酒(薬)の入った瓶と火龍の洞窟の泉から汲んだ水の入った瓶を取り出す。
それを少しづつ精霊樹の芽の周囲にかけていく。
すると精霊樹の芽の周りにまいた泉の水と赤いラピリア酒(薬)からキラキラと光る粒子が立ち上り始め、ゆっくりと精霊樹の芽に集まり出していく。
カルは、ゆっくりと精霊樹の芽から離れて成長を見守る。精霊樹の芽は、徐々に葉を広げ枝を増やしていく。
さらに幹が太くなり徐々に・・・その瞬間、爆発的に精霊樹の芽は、巨木へと成長を加速させた。
あまりの成長の速さに周囲に茂っていた精霊樹の巨木達が自身の根を地面から引き抜くと、自らの根を足の様に動かして逃げ出す程であった。
「わっ、わっ、わっ、まずいまずい。こっちに精霊樹達が走って来る」
カルと老婆は、慌てて火龍の背中へと退避すると火龍は一気に空へと舞い上がっていく。
空に舞い上がった火龍の背中から見える精霊樹の森は、巨木へと成長を続ける木を中心に精霊所樹達が移動を始めていた。
「凄い。精霊樹の大移動だ」
「でも泉の水とあなたのお酒の威力は凄いわね」
「僕も精霊の森で精霊の木やラピリアの木を何度も成長させて来たけど、まさかここまでとは」
火龍は、巨木に成長した精霊樹の周囲を旋回しながら成長が落ち着くのを待つ。
やがて精霊樹の成長が止まった様に見えた時、精霊樹の高さは雲に届く程にまでに成長していた。
「ここは、山の中腹だから雲が近いとはいえ、雲に届く程の高さにまで精霊樹が成長するなんて」
老婆の驚きぶりは、開いた口が塞がないその表情で想像がつく。
火龍は、成長した巨木の根本近くへと降り立った。火龍の背中から降りたカルと老婆は、雲にまで届く程に成長した精霊樹をただ唖然と見上げている。
「精霊神様。この世界を救っていただき感謝の言葉もありません」
気が付くと巨木へと成長した精霊樹の前には、見た事のない綺麗な女性がいて老婆に向かって膝を付いている。
「私は、何もしていません。ほんの少しだけ助言をしただけです。あなたを助けたのは、異世界から来た少年”カル”ですよ」
精霊は、カルの顔を見ると膝を付いたまま頭を下げる。
「カル様。この精霊界を救っていただき感謝の言葉もありません。精霊界は、この期を逃したら復活の芽はありませんでした」
「えっ、そこまで深刻な状況だったの」
「そうなのよ。私もかなり焦っていたのよ」
ニコニコと笑顔で話す老婆。だが、その笑顔とは裏腹に精霊界の状況は、終末の時を迎えていたのだ。
「私には、感謝の気持ちを込めてカル様が望む物をお送りしたいのですが」
カルは、腕組をして頭を少し傾げると、何か欲しいものがあったかと考えてみた。だが、城塞都市の領主であるカルには、お金や物で困っているといった事はない。
「送り物・・・特に欲しい物はないかな」
「そうですか。ならば、これをお持ちください」
精霊が差し出したのは、小さな種であった。
「この種は、精霊の種です。この種から生まれる精霊は、カル様を生涯守ってくれます」
「まさか精霊が僕の仲間になってくれるとか」
「そう考えていただいて構いません」
「ありがとう。大切にするね」
その後、老婆と精霊は今後の精霊界について話し合っていた。カルには、話の内容が難しすぎて分からなかったので火龍の元に来て火龍との雑談に戯れる事にした。
「さっき飲ませてもらった酒は美味かったぞ。あの酒は、どこで手に入るのだ」
「あっ、火龍さんも気に入ってくれたんですね」
「気に入ってなどおらん。ただ、ちょっと・・・ほんのちょっとだけ飲みたくなったらの話だ」
「僕の城塞都市ラプラスに来てきださい。そこで飲ませてあげます。でもタダという訳にはいきませんよ。氷龍さんと風龍さんがいるのに、さらに火龍さんまで入り浸ったらお酒が無くなってしまいます」
「そうか、まあ仕方なかろう。気が向いたらそのラプラスとやらに行ってやる」
「うん。楽しみに待ってる」
「では、そろそろ戻りましょうか」
老婆は、精霊との話が終わりカルと火龍の雑談の輪の中へと入って来た。
カルと老婆は、火龍の背中に乗ると火龍の背中で雑談をしながら老婆の住む家へと向かう。そしてしばしの間、火龍の背中で空中散歩を楽しんだ後、火龍は老婆の家の前に降り立った。
「カル。精霊界を救ってくれて本当にありがとう」
「僕は、大した事はしていません。それよりお婆さんは、精霊神様だったのですか」
カルの言葉に老婆は、口の前に人差し指を立てる仕草をした。
「私は、ただのお婆さんです。それでいいじゃない」
「はい!」
「そうでした火龍。私から頼まれ事を引き受けてくれないかしら。カルを元の世界に送って欲しいの」
「仕方ない。カルには、ラプラスで酒を飲ませてもらう約束をしているからな」
短い期間であったが精霊界での出来事を思い出しながら、火龍の姿を・・・老婆の姿を。そして精霊界の景色を目に焼き付けていくカル。
「そういえば、この首飾りですが・・・」
「ああっ、それならあげるわ。精霊界を救ってくれた恩人への送り物にしては、少々安いものかもしれないけど」
「いいんですか。この首飾り気に入ってたんです」
「そう、それならよかった」
カルは、老婆に分かれを告げると火龍の背に乗り空高く舞いがる。
「落ちるなよ。カルの住む異世界に転移するからな」
火龍の言葉に思わず鱗にしがみつくカル。そして空に現れた巨大な魔法陣へと突入していく火龍。
その光景を家の前で見上げている老婆。
「精霊神様。なんとかこの精霊界を救う事ができそうですね」
その老婆の後ろには、さっきまでいなかったはずのいくつもの人影が現れていた。
「そうね。まだ予断は許されない状況だけど、精霊界は救われたと考えてよさそうね」
「まさか異世界の少年がこの精霊界を救う鍵だったとは想像も付きませんませんでした」
「私もそうでした。でも神獣様の言葉は、本当でしたね」
「神獣様がこの世界から姿を消した時、本当に見捨てられたと思いました」
「神獣様に感謝の言葉しかありません。それとあの異世界の少年にもね」
空に浮かび上がった魔法陣に突入する火龍。やがて空から魔法陣が静かに消えていき、精霊界の空に日常が戻っていく。
火龍の背中で鱗にしがみつき空に現れた巨大な魔法陣に突入したと思った瞬間、風景ががらりとかわり海の上を飛んでいる火龍。
「ここがカルの世界だ」
目の前には、どこかの岬が見える。
「あの岬の先端に洞窟がある。この世界でのわしの家だ」
火龍は、岬の先端にある洞窟の前に降り立つとカルを地上へと降ろした。
「そのうちカルのラプラスとやらに行くからな」
「はい。楽しみにしています」
「わしはこの洞窟へは、あまり来んが何かあれば、ここで待っていろ」
「はい」
「では、わしわ行く」
火龍は、そう言い残し空へと舞い上がり空に現れた魔法陣の中へと消えていった。
それをただ黙って見送っていたカル。そして岬の周囲を見回してふと気が付いた。
「ここは・・・どこ?」
火龍は、カルを元の世界へと送り届けてくれました。
そこは、城塞都市ラプラスではなく見知らぬ土地でした。
カルは、いったい何処に連れて行かれたのでしょうか。