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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
152/218

152話.魔王(3)

精霊神お猫サマの能力で子供に戻った魔王。そして・・・。


子供の姿へと戻り魔力が消滅した魔王。それにより宰相が施した精神干渉魔法の呪いも解呪された。


人族の5歳程度の子供となった魔王は、ルルに抱きかかえられられ甘え放題に甘えてルルから離れようとしない。


さらにリオもある者と再開?を果たした。それは黒龍である。リオは黒龍と会った事はないのだが、黒龍からすればリオの魔力が溜め込まれた魔石により誕生したため、同じ魔力を発するリオの事を母親と思っていた。


「ピィーーー、ピィーーー、ピィーーー」


黒龍は、リオの顔や頭にすがりついて泣きわめくばかりで離れようとしない。


「妖精達も言っていたが、黒龍はリオを母親と思っているのだ。リオには、私の様にホムンクルスを従えていないから丁度よいではないか」


ルルの言葉に困惑するリオ。


「でも、私が母親だと突然言われても・・・」


「まあ、そのうち離れるさ。お前も母親なら子供の教育くらいしないとな」


そんなルルの足元にも子供と化した魔王が抱きついて離れない。


「ルル様も人の事が言えない立場ですね」


「ははは・・・はぁ」


リオの言葉に笑ってみせたものの、子供と化した魔王とどう接すればよいのか途方に暮れていたのはルルの方であった。


そんな時、彼らを遥か彼方の山の上から見ている者達がいた。


魔王国の宰相とその護衛達である。


「ほう。魔王を倒しましたか。魔王なら彼らを倒すと思ったのですが・・・、やはり魔王に立てつくだけの力量を持っていたという訳ですか」


宰相は、しばし考えこむと今までとは、方針転換ともとれる決定を下す。


「彼らが我らに歯向かうのは、ほぼ確実です。ならば、この国で我らが出来る事はもうないと考えるべきです。魔王に勝てる輩と戦って勝てる算段などする気もありません」


宰相は、山の上からすっと体を浮かせると魔王城へと引き換えしていく。護衛達も宰相の後を追っていき、やがて空の彼方へと消えていった。




魔王を倒した事と城塞都市ラプラスを守ったという安堵感からかルル達は、戦いの場所となった茫漠の地で宴を催していた。


宴で振る舞うお酒は、カルの鞄の中にいくらでもあるし、妖精達もお酒を自身の浮遊城から運んでくる。さらにどこからか妖精達が都合をつけた食べ物と椅子とテーブルが並び始める。


子供となった魔王は、美味しそうに目の前に並ぶ料理を食べると、ルルの膝枕でぐっすりと寝始めてしまった。


対してリオの頭の上には黒龍が乗ったままである。黒龍もうとうとしてはいるものの、リオが身動きする度に頭に抱きつくので仕方なく黒龍を膝の上で抱きかかえる事でようやく安心して眠りに付いていた。


カルはと言うと、魔人達がいつ世界を破壊するかという日取りを決める会議を始めた・・・のだが、酒を煽り愚痴ばかりを言い合って何も決まらない。


「仕方なないわね。ならば、明日にでも会議を再開しましょう。今日の会議はお開きという事で」


書の魔人がそんな発言をするも他の魔人は誰も何も聞いてはいなかった。


あきれ顔の書の魔人は、我関せずといった態度でカルが出した極楽芋のパイを頬張っている。


カルは、地べたに座りながら魔人達の様子を眺めている。するといつも間にか現れた精霊ホワイトローズがカルの横に座り話しかけて来た。


「以前の魔人達となんだか様子が違うの。前は、もっとこの世界を破壊するっていう熱意に満ち溢れていたの」


「でも以前は、失敗したんですよね」


「・・・・・・」


カルの問いかけに何も答えない精霊ホワイトローズ。


「本当に世界を破壊するにしても方法がいくつかあるんじゃないでしょうか。精霊ホワイトローズさんが言っているのは、物理的に破壊するって事ですよね。例えば経済的にとか政治的にとか、例えば神様の行いが気に入らないのなら、神様の行いとは正反対の行いを広めるとか・・・」


「それでは、らちが明かないの」


「そう言うと思いました。でも、それで前回は失敗したんですよね。なら、別の方法を考えましょう」


カルの物言いは、神ではなく精霊ホワイトローズが言う世界の破壊に協力しようとしている様に聞こえる。


「カルは、ホワイトローズに協力してくれるの?」


「・・・分かりません。ですが妖精さんがこの世界で何かをしようとしています。それを見届けてからでも遅くはないかなって考えてます」


「そう・・・なの」


カルの言葉に考え深げにする精霊ホワイトーズ。


そこに妖精達が現れると、カルにメモ書きを見せる。


”宰相が近くにいた。今は逃げたみたいだけどまた攻撃してくるかもしれない”。


「そうだよね。魔王まで差し向けて負けたからはい終わりなんてあり得ないよね」


”僕達は、宰相を撃つつもり。カルはそれに協力してくれる?”


カルは、妖精達が書いたメモ書きを見てしばし考えた後、こう返した。


「その宰相とかいう人の精神干渉魔法がどういうものか僕には分からないけど、何もしないでいるより行動する方がいいと思う。それに城塞都市ラプラスや妖精の国がいつまた攻撃されるか分からない。だったら妖精さんに協力する」


妖精は、カルの言葉を聞くとメモ書きにその返答を書き、大きく胸を張ってそのメモ書きをカルに見せた。 


”分かった。僕達妖精とカルは、協力するって事でいいね”。


言葉には現さなかったが静かに頷くカル。そしてその決断をルルやメリルやライラに告げる。


「そうか、決断したのか。カルがそう覚悟を決めたのなら行くしかあるまい」


ルルは、カルの覚悟をあっさりと受け入れる。


「ただ、我らだけでどうにかなるとも考えにくい。ならば、宰相を撃つ前に父上のところに行って助力を得るべきだな」


「ルルさん。それって魔王国に対しての反逆行為にルルさんのお父さんを巻き込む事にならない?」


「なに、魔王様はこちら側にいるのだ。しかも先々代様もいる。反逆者は、むしろ宰相の方だ」


涼しげなルルの顔が妙に心地よく見えたカルであった。


皆が宴に酔いしれている時、その場にある者が現れた。その者の着ている服は焼け焦げていて目に涙を浮かべボロボロと大粒の涙を流している。


「だっ・・・だれか・・・お願い・・・僕の・・・木を助けて・・・」


「あっ、裁定の木の精霊さん!」


立ち上がり焼け焦げた服を着た裁定の木の精霊の元へと駆け寄るカル。


「ぼっ、僕の裁定の木が魔王に・・・魔王に負けた・・・焼けて燃えて・・・うわーーーーー」


泣き叫ぶ裁定の木の精霊。その時カルは思い出していた。浮遊城で城塞都市ラプラスへ向かう途中に茫漠の地に火だるまとなって落下していった存在の事を。


カル達は、浮遊城に乗り込むとボロボロと大粒の涙を流す裁定の木の精霊をなだめながら、その場所へと向かう。


宴が開かれている場所から少しばかり離れた茫漠の地へと向かうと、真っ黒に焼け焦げた裁定の木が横倒しになっていた。周囲には焦げ臭い匂いと未だにあちこちから炎と火の粉を噴き上げる裁定の木。


カル、メリル、ライラは、浮遊城を着陸させると、まだ火がくすぶっている裁定の木の周囲を見て回る。だが、ここまで燃えて炭化した木を魔法やラピリア酒(薬)で元に戻せるとも思えない。


メリルもライラも首を横に振るばかりである。カルも目の前の状況をどうにか出来ると楽観的な言葉を裁定の木の精霊にかける事は出来なかった。


「裁定の木の精霊さん。ここまで燃えてしまったらこの木を復活させるのは無理です」


カルの追い打ちをかける言葉にさらに泣き叫ぶ裁定の木の精霊。


思わずメリルやライラの顔を見つめながら途方に暮れるカル。


「あの・・・、燃えてしまった木を元に戻す事はできませんが、種とか苗木とかがあればなんとかできますが、そういったものは無いんでしょうか」


ライラの言葉に裁定の木の精霊は、大粒の涙を流しながら焼け焦げた服の胸元から小さな苗木を取り出す。


「燃える最中、裁定の木がこれを僕にくれたんだ。でも、この苗木が大きく育つまで最低でも500年かかる。それまで僕の・・・精霊としての命が持つか・・・分からない」


カルは、浮遊城を城塞都市ラプラスの裏山へと向かわせた。そして裁定の木が毎日根を休める場所へとやって来ると、裁定の木の精霊から受け取った苗木を地面へ優しく植える。


そしてライラが精霊治癒魔法を唱えると苗木は、みるみる成長・・・する事は無かった。ライラの精霊治癒魔法でもほんの僅かしか成長しない裁定の木。


「おかしいですね。殆ど成長しませんね」


「他の木々ならもっと成長するはずなのに」


カルとライラは、殆ど成長しない裁定の木の苗木を見て首をかしげるばかり。


「なら、これを試そうか」


カルは、腰にぶら下げた鞄から黄色いラピリア酒(薬)の入った小瓶を取り出すと、瓶の蓋を開けてラピリア酒(薬)を苗木の根本にかけていく。


すると徐々にではあるが裁定の木の苗木が成長していく。


「あっ、ラピリア酒(薬)なら効果あるんだ。だったらこっちも試してみようか」


鞄の中から赤いラピリア酒(薬)が入った小瓶を取り出すカル。


それを裁定の木の苗木の根本にかけてみると・・・。


裁定の木の苗木は、先ほどとは比べ物にならない程の成長を見せた。あっという間にカル達の身長を超え近くに生い茂る木々の高さを超えていく。


「すっ、凄い。赤いラピリア酒(薬)の方がこの苗木との相性がよかったみたい」


「木によって精霊治癒魔法の方が効果があったりラピリア酒(薬)の方が効果があったりと相性があるんですね」


裁定の木の苗木の成長を見上げながら驚くカルとライラ。裁定の木の精霊も苗木の成長ぶりにただただ口を開けて見つめるばかりである。


やがて裁定の木の苗木・・・いや、目の前に立つ木はもう立派な成木となりとても苗木とは呼べない程の大きさに成長した巨木であった。


ただ、以前の様な巨木にまで成長したかというとそうでは無かった。裁定の木は、以前に比べてもまだ3割程の大きさに留まっている。


それでも山に生い茂る他の木々に比べれば遥かに巨大な木が一瞬にして誕生したのだ。


「これくらい大きくなれば、後は時間が解決をしてくれるかな」


「そうですね。後は、静かに見守った方がいいと思います」


カルとライラは、そう言うとその場を後にしようとした。


「あ・・・ありがとう。本当にありがとう」


裁定の木の精霊は、大粒の涙を流しながら成長した裁定の木に抱きつきながらそう言った。


カル達は、黙ってその場を後にすると浮遊城へと乗り込み山を後にした。


山から離れる浮遊城の窓からは、成長した裁定の木に寄り添う精霊の姿がいつまでも見えた。




次の日。


カル達の乗る浮遊城。ルル達の乗る浮遊城。そして妖精達の乗る浮遊城は、城塞都市ラプラスで水や食料を補給した後、ルルの父親が領主を務める城塞都市ガンドロワへと旅立った。


城塞都市ラプラスや妖精の国をいつまた攻撃するとも限らない宰相を撃つためカル達は、最終目的地を魔王国の魔王城に定めた。


宰相の精神干渉魔法がいかなるものかは誰にも分からない。だが、それを恐れていては何も出来ないと覚悟を決めて宰相を撃つと決めたカル達。


だが魔王城を守るのは、魔王国最高の魔術師とうたわれるルルの母親である。ルルの母親が宰相の精神干渉魔法により操り人形と化していない事を祈るルルであった。


さて、ルルとルルの母親との親子対決が実現する・・・のかな。


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