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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第1章》 僕は、おかざり領主になりました。
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15話.村の視察と魔獣集め(2)

次の村の視察へと向かったカル達ですが・・・。


次の日。


馬車は、街道から外れて山に向かう道を進み、山がどんどん近づき大きくなっていく。


次の村までは、川や丘を避けて進む道のため馬車で3時間という道のりだ。


相変わらず道沿いにスライムが豊富に湧いているし、昼間だというのに遠くを歩くオークの姿をたびたび見かけた。


「これでは、山から土を運び入れるのは少々無理がありますね」


「確かに。かなりの護衛の数がいるな。これでは採算が合わないか」


「一度、オークの大規模討伐を行った方がよいかと。この数では昨晩の様に他の村々を襲いかねません」


長らく馬車は、荒れた道を進んでいたが、眼前に崩れかけた城が現れた。城壁もあちこちが崩れ、木を組んで補修をした後がうかがえた。あれが目的の村だ。


「元々は、要塞だったものが昔の戦で捨てられたものを村として使っていて、村の住人は全て獣人なのだ」


「ラプラスの街が人族と獣人で構成されておるとはいっても、獣人への風当たりが強くてな。獣人達が集団でラプラスの街を出て村を作ったのだが、この近くの山にオークの巣がある事が分かったがもう遅かったのだ」


「ここには、200人ほどの獣人がいる。だが、いまさらラプラスの街に引き返す事などできようがない。といって街からこんな遠くに部隊を派遣する訳にもいかずといった時に我らが城塞都市ラプラスを奪ったのだ」


「助けてやりたくても、まだ準備も整っていない。だが、今ならカル殿がいる。昨晩の様に盾の魔人でどうにかできないか」


「うーん。相談してみる」


馬車が要塞に入ると、獣人達が歓迎の宴を催してくれた。だが、カルにはやる事があった。


要塞に用意された小部屋の中でカルはひとりでいた。そして壁に立て掛けた大盾に向かって話はじめた。


「精霊ホワイトローズさん。お願いがあります。今いる要塞の近くにオークの集団がいて、その、夜になると要塞を襲うので住民の獣人達が困っているそうです。なんとか力を貸してあげたいのですがオークの数が多いらしくて、なんとかならないでしょうか」


すると大盾の前に精霊ホワイトローズさんが姿を現した。


「仕方ないの。改造したばかりのスライムを貸し出すの。攻撃魔法が使えるように改造したの。かなり強いの。でも、あくまでも貸し出すの。使ったら全部返すの」


カルは、最初スライムを貸し出すと聞いてがっかりした。でも精霊ホワイトーローズさんの話では、魔法が使えるスライムと言っていた。魔法が使えるスライムなんて聞いたことがないので少し驚いた。


「カルはバカなの。スライムを100体以上も納品されるのは嫌なの。あんなことはやめてほしいの」


そういえば、昨日村へと行く街道で街道脇にいたスライムを面白くて、いるだけ狩って盾の魔人さんに飲み込んでもらったからか。ごめんなさい。


要塞に移住した獣人達によって催された歓迎の宴は早々にお開きとなった。


やはりというか、夜になるとオーク達が集団で要塞を襲うらしい。それも毎晩。これでは、獣人達も安心して寝ることもできない。


ルルは、夕暮れの要塞の城壁の上で周囲を警戒していた。


今夜は、城壁の上でオーク達を待ち構えることになった。だが、私と8人の兵士では、オークとの数が違いすぎる。頼みの綱はやはりカルの持つ盾の魔人と盾に封印されているという精霊が用意した魔法スライムとかいう魔獣だ。


魔法スライムがどれほどの強さなのかは不明だ。カルが盾に封印された精霊から借り受けた魔獣なのできっと強いのだろう。


カルは私の横にいる。しかも頭の上、両肩に魔法スライムを乗せている。さらに足元にも数体のスライムがいる。


体をふよふよと震わせて実に可愛い。でもスライムは最弱の魔獣だが、それでも魔獣である。冒険者になりたての連中は、スライムによって命を落とすこともよくあると聞く。だがカルは、それを頭や肩に乗せて平気な顔をしている。怖くはないのか。


ルルは、ある疑問を持っていた。それはカルが今まで魔獣を狩ったことがないと言っていた件についてだ。スライムやオークを見ても恐怖を感じているようにはとても見えない。カルは魔獣が怖くないのか。


これもやはり盾の魔人の影響なのか。


日が暮れた頃、地面を揺らす音が響いてきた。オーク達のお出ましだ。獣人達は、毎夜、火矢を射かけてオーク達をなんとか遠ざけてきたと言っていたが、それも最近は、あまり効かないらしい。オーク達も毎夜の様に同じ攻撃をされれば慣れてしまうだろう。


城壁に配置した松明に照らされオークの姿が見える。かなりの数のオークが集まっている。獣人達もよくも毎晩、これだけのオークと渡り合ったものだ。


オーク達は、手に大きな丸太を持ち、それを城壁めがけて投げてくると獣人達が言っていた。確かにあれを投げられては城壁が壊れるのも頷ける。


さっそくオーク達は、手に持つ丸太を次々と城壁にめがけて投げ始めた。それに連動するかのようにカルの頭や肩に乗っていたスライム達が魔法攻撃を始めた。


カルの頭の上に乗ったスライムは、体内の魔石が赤く光ると体からファイアーアローがオークへと飛んだ。


「おおっ、ファイアーアロー。スライムが魔法を使えるなんて聞いた事がない」


同行している魔術師の兵士は、初めて目にする魔法を放つスライムの姿に興味深々だ。目の前に集まるオークの集団など全く目に入っていない。


別のスライムの魔石が白く光ると体からアイスアローがオークへと飛んだ。


「おおっ、こちらのスライムは、アイスアローですか。素晴らしい」


さらに別のスライムの魔石が黄色に光るとスライムの体からは雷撃がオークへと飛んだ。


「なんと、スライム毎に放てる魔法が違うのですか。こんなスライムが100体もあれば、他の城塞都市などあっという間に制圧できるでしょう。実に素晴らしい」


魔術師の目はキラキラと輝き、目の前の魔法スライムは、垂涎の的となっている。


「スライムさん。精霊ホワイトローズさんからオークを捕らえてほしいって言われてるんだ。できれば攻撃はギリギリのところで押さえてもらえると嬉しいんだけど」


カルの言葉に別のスライムが体をフルフルと震わせながら、魔石を黒く光らせると漆黒の雷撃がオークへと飛んでいき、さらにオークからスライムに向かって漆黒の雷撃が返って来た。


「まさか、まさかドレインですか。スライムがドレインの魔法まで放てるのか、なんということだ」


「しかも、カル様の言葉を理解している様です。知性を持ち言葉を理解するスライム。これは研究してみたいものです」


魔術師の言葉を苦笑いしながら聞き流す。カルは、城壁から降りると大盾を構えて魔法攻撃により瀕死の状態で転がるオークの間を走り周る。盾の魔人は次々をオークを舌で巻き取ると大きな”くち”の中へと放り込んでいく。


30体以上もいたはずのオークは、あっという間に倒され、その姿さえも目の前から綺麗に消えていく。


ルルと同行した兵士達も、この城塞後に移り住んだ獣人達もその光景にただ口を開けて見ていた。


オークの回収が終わったカルは、再び城壁の上へと戻り城壁の上にいるスライム達の回収を始めた。その時、カルの名前を呼ぶ誰かの声が聞こえてきた。だがその声は、他の人達には聞こえてはいない様子だ。


「この声は精霊ホワイトローズさん?」


「カル」


「カル」


「カル」


「カルは、私とひとつになって私を封じ込めた封印を解くの。そうすれば、カルは世界で”いちばん”強くなれるの」


「僕と精霊のホワイトローズさんがひとつに?」


「そう、ひとつになれば怖いものなど何もないの」


「ひとつに」


「・・・ひとつに」


「・・・ひとつに。・・・活・・・復活。魔人の・・・魔獣を・・・集めて・・・復活」


急にカルの言動がおかしくなった。目はうつろで夜空を見上げたまま、おかしな言葉をとぎれとぎれに発し始めた。


魔法も使えないカルが・・・。


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