表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
148/218

148話.カルの新しい領地(1)

魔王国から譲渡された辺境域に向かうカル。その時リオからある提案を持ちかけれます。


城塞都市デルタに浮遊城でやって来たルル、リオ、レオ。


当面の城塞都市デルタの運営は、ルルが行う。カルはというと、魔王国から譲渡された国境の砦とその周辺の変更地域の守備を行うため、国境の砦へリオと共に向かう事になる。


だが、リオはカルに対してある提案を行った。


「カル様もそろそろ浮遊城で移動されるべきです」


「えっ、でも僕には魔力が殆ど無いんですよ」


「それは、メリルさんやライラさんが居られるので問題ありません。それにおふた方ともカル様から贈られた魔法具を持っておいでです」


「でも・・・」


浮遊城を持つ事に躊躇するカルに業を煮やしたルルが話に割って入る。


「カルよ。我らも4つめの城塞都市を手に入れたのだ。もう馬車での移動やゴーレムの肩に乗って移動していては時間が勿体ないのだ」


「あっ」


ルルが何を言いたいのか何を期待しているのかを察したカル。


「もし移動に時間を費やす事で事態が取り返しのつかない事になったらどうする。我らは魔王様と対立する身なのだ。そこを考えて欲しい」


無言のまま首を縦に振るカル。


「聞き分けの良いカルは大好きだ」


頬を赤らめカルを見つめるルル。カルもルルの顔をじっと見つめる。


「ごほん。仲のよいところ申し訳ありませんが、カル様の浮遊城は既に城塞都市アグニⅡにて7割方完成しております。現状でも飛ぶには何の問題もございませんので、国境の砦へはカル様の浮遊城で向かいましょう」


見つめる二人の間に割って入るリオ。そんなリオに思わず口を尖らせて頬を膨らませて抗議をするルル。


カル達は、浮遊城で早々に城塞都市デルタを後にした。


浮遊城で城塞都市アグニⅡへとやって来たカル達。そしてカル達を送り届けたレオは、浮遊城で再び城塞都市デルタへと戻っていく。


城塞都市アグニⅡから少しあるいた茫漠の地にカル用の浮遊城はあった。リオの話では、7割方の完成と言っていたが外見を見る限り既に完成している様に見える。


浮遊城の外壁に沿って螺旋階段を上り浮遊城の城内へと入り、そこの浮遊城を制御する制御室へ入るカル達。


そこでなぜか小さな悲鳴を上げるリオ。


「また妖精達がやってしまったのですね」


いつの間にか浮遊城を制御する制御卓のある部屋には、妖精達が大きな硝子の板の様なものをいくつも運び込んでした。その硝子の板には、浮遊城の位置情報や動く地図が表示されていた。


それ以外にもいくつもの硝子の板が設置され、何かの文字や数字が表示されている。だが、それがどこの言語なのかさえカル達にはさっぱりであった。


妖精達は、満面の笑みで浮遊城の制御室へカルやリオを迎え入れる。


リオは、その光景を見て一瞬足が止まった。だがリオ自身も妖精達が設置した装置によって迷子から救われた身である。そのため、妖精達の行為に対して何も言わずにただ感謝を伝えるのみであった。


ちなみに妖精達が浮遊城に設置した装置は、カルが飼っている2体の地龍が排泄した”地龍の魔石”で棒引きとなった。


カルが城塞都市デルタへと向かった間は、妖精達に地龍の面倒をお願いしたカル。その報酬は、”地龍のうんち”である。


妖精達は、”地龍のうんち”が貰えると聞くとふたつ返事で地龍の面倒を見ると言って喜んでかいがいしく面倒を見ていた。




新しい浮遊城に乗り込み城塞都市ラプラスへと向かう道図柄リオの指導の下、メリルとライラは浮遊城の操作指導を受けていた。


浮遊城の操作自体は、それ程難しいというものではないが通常の魔力では魔力量が少なすぎて到底動かす事すらできない。


浮遊城を動かすには、魔力を引き出せる魔法具を持っている事が最低条件となる。


浮遊城を動かすための魔法具は、カルが精製したミスリルの特品をドワーフのバレルが成形し、それに精霊界の魔法陣と魔法回路を用いてカルが盾のダンジョンでドロップした魔石を埋め込んだものである。


この世界でこんな魔法具を持っている者は、カルの周囲にいる者のみである。


浮遊城は、この魔法具を用いて魔力を増幅する事で初めて動かす事が可能なのだが、浮遊城を動かすために設置された魔石に魔力を送り込む作業は、かなりの繊細さを要求される。


リオが新しい浮遊城を作った時の様に供給する魔力量を間違えると、成層圏を超える高さまで飛んで行ってしまったり惑星の裏側まで飛んで行ったりととんでもない目に合ってしまう。


魔力を増幅する魔法具を使っていかに送り込む魔力量を少なく調整するか。それをリオは、メリルとライラに手取り足取り丁寧に教えている。


その光景の横でカルは何をしているかというと、ゴーレムのカルロスと妖精達と遊んでいた。


この浮遊城は、リオの浮遊城とほぼ同じ形をしている。そして御多分に漏れずと言うべきかやはり妖精達が勝手に部屋を占領していた。


もうその事についてカルもリオも何も言わない。妖精というものは、本来そういう生き物だという認識で一致した。そう考えた方が楽なのだ。




程なくして城塞都市ラプラスへと到着したカルの浮遊城は、ラプラスの警備隊200人と食料などの補給物資を積み込むと国境の砦へと向かった。


メリルとライラが交代で操作する浮遊城は、山間部を眼下に見渡しながら雲の上を浮遊していく。


流れる冷たい風と雲の湿気が心地よい浮遊城の城壁の上で妖精達と共に景色を眺めているカル。


すると雲の切れ間から魔王国の国境にある砦が見えて来る。だが、砦には見た事のない旗がいくつもはためいていた。


カルは、慌てて浮遊城の制御室へ走り込む。すると制御室の硝子の板には、砦がすぐそこにあるかの様な絵が映し出されていた。


「カル様。砦は既に敵の手に落ちているようです」


リオの説明と共に妖精達が何かを操作するとその度に硝子に映る砦の絵が刻々と変わっていく。


「恐らく砦が敵の手に渡ったのは最近ではないですね。敵は、魔王国側に城壁を築こうと準備をしているようです」


硝子には、狭い山間部に多数の兵士が石組みをしている作業風景が映し出されている。


「つまり僕にこの地を譲渡すると言った時には、砦は敵の手に落ちていたと」


「そう考えるのが妥当です」


「もし僕がこの砦を奪い返したら、魔王国はこの地を返せって言って来るなんて・・・」


「十分に考えられます」


何ともニガニガしい表情を浮かべるカル。


「おかしいと思っただんだよね。魔王国がいきなり領地を与えるとか訳の分からない事を言い出したから」


「この地は、辺境ですからここから魔王国の王都を攻めるには不向きです。ですが、魔王国内に睨みを聞かせる事は十分にできます」


「僕達がここで戦ったとして、その隙に城塞都市ラプラスや城塞都市デルタに魔王国軍が攻め込んで来る可能性は高いよね」


「恐らく魔王国は、それを成すために我らにこの地を譲渡したと考えるのが妥当です」


「なら、この砦を早く奪い返して城塞都市の守りに徹しないといけないか」


「そうなのですが、ではどうやって砦を奪い返すかです。この浮遊城には魔法武器など装備していません」


カルとリオがこの戦いの背景と対処方法について議論をしていると、妖精がカルに対してメモ書きを見せて来た。


”僕達が砦を奪って見せる。報酬は、敵の城でいいよ”。


妖精が書き記したメモ書きを読んだカルは唖然とする。敵の城を報酬として欲しい?まだ奪ってもいない敵の城が欲しいとはどういう事なのか。


「妖精さん。敵の城が報酬ってどういう事?」


”この砦は、僕達が奪ってカルに譲渡するから、その後の事は見て見ぬふりをして欲しい”。


妖精が書き記したメモ書きを読んだカルは、妖精達に何か策があるのではと察する。


「分かった。この国境の砦の指揮権は、全て僕にあるから妖精さんは自由に行動してください。僕は、何も知らない・・・という事でいいんですよね」


妖精は、ニンマリを笑顔を浮かべてカルの肩を叩いて見せる。


”それじゃ、浮遊城を砦の上に移動させて”。


妖精の指示の元、浮遊城は雲の上からゆっくりと降下を開始していく。




元魔王国ものであった砦を守る敵軍の兵士達。


「この砦を奪った日以来、この砦の争奪戦になるんじゃないかってヒヤヒヤしていたが、あれ以来敵の姿が全く見えないな」


「今、城壁を急いで作っているがあの城壁が完成すればこの地は我らのものだ」


「ここでの戦いが終われば故郷に帰れるな」


「ああ、早く戦いが終わって故郷に帰り・・・」


兵士がそう話していた時、視界に妙な岩の塊が入って来た。それは、徐々に大きくなり砦へと近づいて来る。


「・・・おい、何か近づいて来るぞ」


「どっ、どこだ。城壁を作っている部隊に警報を出さないと」


兵士は、周囲を見渡すと敵の出現しそうな場所に目線を移していく。


「いや違う。上だ。上を見ろ」


兵士がそう言った時には、浮遊城は既に砦の上にまで来ていた。砦には浮遊城が作る陰により日中にも関わらず薄暗くなり兵士達の心に恐怖心を植えこんでいく。


「なっ、何だあれは」


「しっ、城が空を飛んで・・・いるのか」


砦を守る敵の兵士達は、突然現れた浮遊城に驚き尻もちを付いて動けなくなる。




浮遊城の中では、妖精達がどこからか運び込んだのかゴーレムのカルロスⅡ世に似せたゴーレム50体を浮遊城の城壁の上に並べていた。そして妖精達のゴーレムは、浮遊城の城壁から一斉に飛び降りると砦めがけて降下を始める。


ゴーレムは、砦の中に着地をすると一瞬スライムの様な姿に変形して着地の衝撃を吸収していた。そしてスライムの様な姿からまた人型のゴーレムの姿に戻ると手から魔法蔦を出し、敵兵士を次々と拘束していく。


「てっ、敵襲。敵襲だ!」


慌てふためく敵兵士は、どこから砦に侵入したか分からないゴーレムに対して場当たり的な対処をするばかりで混乱を収める事ができない。


「増援だ。増援を要請しろ。それと残った兵士は、砦の下層に集まれ!反攻を行う」


砦の敵指令官が部下にそう告げる。部下は、各部隊に伝令を送るべく兵士に命令を伝えていく。


だが、時は既に遅く妖精達のゴーレムは砦の司令官の目の前にまで迫っていた。


砦の狭い通路で敵の魔術師がゴーレムに対して炎魔法や雷魔法を放っていく。それをゴーレムは、姿を変形させ避けつつ前進を続ける。


剣や弓による攻撃も体が液体金属で出来ているゴーレムには全く効かない。


程なくして砦の司令部は鎮圧され、ゴーレムが放った魔法蔦により拘束された兵士達が何百と床に転がされ魔法蔦の山をく築いていた。


敵の兵士が川向うの城に援軍の要請を行った時には、既に砦は妖精達のゴーレムにより占領され砦の外で城壁の構築を行っていた部隊もゴーレムにより呆気なく拘束されていた。


浮遊城を砦の横に着地させるとカル達は、城壁に上り川向うに立つ敵の城を見渡す。


「以前と変わってないですね。魔導砲で破壊された城壁も修復が終わってないようです」


「砦は、妖精のゴーレムでこちらの手に戻って来ましたが、また敵の城を魔導砲で攻撃するんですか」


「魔導砲は、妖精さんが城の攻略に失敗した時の奥の手として取っておきます。きっと妖精さんは、僕達が考えつかない方法を使ってくると思ってます」


「それは妖精にしか分からないという事ですね」


「はい」


砦の城壁の上でカルとリオは、川向こうの敵の城を睨みながらこの先、妖精がどういった戦い方をするかを探っていた。


すると敵の城の前に広がる河原に敵の部隊が集まり隊列を組み始めた。これからこの砦を奪還すべく乗り込んで来るのだろう。


「あっ、妖精さん達。城の上で何かをやってますよ」


「本当ですね。やはり飛べるという事だけでも私達とは戦い方が異なるという事でしょうか」


城壁の上でカルとリオが妖精達の行動を見守る。


妖精達は、敵の城の上空に等間隔に円を描く様な配置に着くと何かの呪文を唱え始める。


程なくして敵の城の上空には、巨大な魔法陣が浮かび上がる。それに気が付いた敵の魔術師が空に向かって攻撃魔法を放つ。


だが、攻撃魔法が届く距離ではなく魔法は空しく霧散していく。


程なくして妖精達の魔法陣は完成した。その魔法陣の上に現れたのは、自身の根を足の様にして歩く巨木であった。


巨木は、魔法陣をすり抜けると敵の城へと一直線に落下していく。




「でっ、でかい。なんてでかい魔法陣なんだ」


ひとりの敵の魔術師が妖精達の造った魔法陣に見とれていた。すると魔法陣の上に巨大な木が現れ城に向かって落下を始めた。


「おい。おいおいまじか!」


その光景を見ていた敵兵士達は、慌てて城から逃げ出していく。魔法陣から落下する巨木は、城の屋根に着地するとそのまま城の屋根を突き破り城を破壊していく。


さらに魔法陣の上に次々と現れる巨木。結局、巨木は5体となり次々と城に落下して城を圧し潰していく。


城は、城壁にりより守られている。一旦城壁内に侵入を許してしまうと、途端に守り難い場と化してしまうのだ。


高さ50mを超える歩く巨木が城壁内を自由に歩き回り次々と城の建物を破壊していく。もう敵の城は、城に形を成しておらず塵と埃を巻き上げるただの瓦礫の山と化していた。


その光景を目をまるくして見ているカルとリオ。


「城が城として機能していません」


「妖精さんにかかれば城なんて意味がないんですね」


残った敵兵士達は、ちりじりになりながらも瓦礫の山と化した城の裏山へ集合し始めていた。そこに新たな拠点を移して兵力の再編を行おうというのだ。


「敵もこの状況でよく兵力の再編をする気になりますよね」


「私なら心が折れています」


城壁の上でカルとルルは、この後の戦いがどう動くのか興味津々といった感じである。


5体の巨木は、敵の城を瓦礫の山と化した後に城壁を内側から突き破ると、敵の兵士達が集まる裏山の前に横一列になって並ぶ。


「凄いですな。あれが妖精達の戦いですか」


カルと共に浮遊城でやって来た城塞都市ラプラスの警備隊。その警備隊の部隊長がカル達のいる城壁へとやって来た。


「普段、城塞都市でラピリアの実を食べてラピリア酒に酔い潰れているだけの存在だと思っておりましたが、妖精達は我らの何十倍も強かったという訳ですな」


砦の中に残っていた敵の残存兵士の捜索が終わった兵士達が、次々と砦の城壁の上に集まりはじめると戦いの成り行きを見守る。


妖精が出現させた5体の巨木は、横一列となり再編途中の敵部隊に向かって侵攻を開始する。


巨木の歩く速度は徐々に早くなり、やがて馬が走る全速力よりも早い速度で敵部隊へと襲いかかる。


敵部隊は、巨木の移動速度のあまりに早さに何の対処もできず四方八方に攻撃魔法を放ち、味方の兵士を巻き添えにしながら再びちりじりとなっていく。


戦いは、ほんの数時間で終わりを迎えた。実にあっけない戦いであった。


この後、リオの土魔法により砦の修復と破壊された敵の城を修復していく。砦はカルのものとなり敵の城は、妖精達のものとなる。


さらに妖精達は、敵の城だけでは飽き足らなくなり、ちりじりに逃げていく敵兵士達を追って敵国内部へと進軍を続けていく事になる。


案の定というべきか魔王国は、なぜカルに辺境域を譲渡したのかという話でした。


※うーん、足と膝と腰の痛みがどうにもならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ