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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
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143話.捕虜返還交渉

妖精の国で捕虜となった魔王国軍の兵士達の返還交渉を行うべく城塞都市ガンドロワへと向かうルルとリオ。対して城塞都市ラプラスへと戻って来たカル。



妖精の国で捕虜となった魔王国軍の兵士約3000人の返還交渉を行うべくルルとリオは、浮遊城で再び城塞都市ガンドロワへと向かった。


カルは、妖精の国への物資の輸送をどうするかを思案していた。ルルの浮遊城を使う事も考えたが、元々浮遊城は、動く城であって荷物を運搬する様には出来ていない。


それに荷物の運搬に副領主を使うというのは、人材の使い方として間違っている。


妖精達が使う扉を利用する案もあったが、あれは妖精達のものである。妖精の国で妖精達が魔王国軍の兵士を捕虜にしたのだから扉を使わせてもらうというの有りなのだが、やはり物資の運搬ににはいささか使い難い。


カルは、精霊精界へと繋がる扉を守る精霊神お猫サマの元へとやって来た。


精霊界への扉の手前に作られた警備隊の詰め所に顔を出し、精霊の森の奥へと進むと精霊神お猫サマと神獣なめくじ精霊が守る精霊界への扉が現れた。


神獣なめくじ精霊の周りには、相変わらず妖精達が群がり何やら話をしているが、カルには妖精達の言葉は理解できないのでさっぱりである。


精霊神お猫サマはというと、精霊界への扉を守る様に作られた屋根の上で朝からのんびりと昼寝?を楽しんでいた。


「お猫サマ。お猫サマいますか。極楽芋のパイとラピリアのパイを持って来ました」


「にゃ。カルがここに来るという事は何かのお願い事でもあるのかにゃ」


「ははは。さすが精霊神お猫サマです。察しがいいですね」


「妖精の国の捕虜の話にゃ。それなら妖精達から聞いてるにゃ」


「はい。実は、捕虜達の食料や宿舎の建設に大量の物資輸送が必要なんですが、手配できる馬車にも御者にも限界があります」


「そういえば、子供達のところにも運搬の仕事の依頼が大量に来てるって言ってたにゃ」


「はい。それでご相談なのですが、お猫サマのところで馬車を増やしませんか」


「にゃ?」


お猫サマの頭の上の可愛らしい耳がぴくぴくと動く。


「実は、魔王国軍の兵士を捕虜にした時に、馬と馬車を大量に鹵獲したんですが妖精達は馬車を使わいので持て余しています」


「にゃにゃ?」


精霊神お猫サマの表情がどんどんほころんでいく。


「それで馬と馬車は、城塞都市ラプラスが引き取る事になったんですが、それを運営する事業体も人材も領主の館にはないんです」


「お猫サマは、遠回しに話をされるのが嫌いにゃ。つまり子供達に馬と馬車を貸すから荷物の運搬を頼みたいということにゃ」


「はい。馬車だけで50台以上もあるんです。馬にいたっては数百頭を超える数になるので城塞都市ラプラス周辺の牧場に話をつけて受け入れを依頼しているところです」


「それは凄い数にゃ」


「はい。それと妖精の国で作られたラピリア酒を城塞都市ガンドロワで売る計画もあります。お酒の運搬も必要ですし、お酒の倉庫の前で極楽芋のパイを売る売店もやれると思うんですよ」


「いい話にゃ。今すぐ子供達に伝えて来るにゃ」


そう言い残すとお猫サマは、精霊界への扉の守護の仕事をほっぽり投げて子供達が営むパイの店へと飛んで行ってしまった。




数日後、魔王国軍の捕虜の返還交渉が行われた。ルルの父親であるガハが仲介役となり、城塞都市ガンドロワの領主の館が交渉場所である。


魔王国の代表として”捕虜返還における全権大使”なる肩書を持つ者と数人の事務官がやって来た。


対して城塞都市ラプラス側はというとカルとルルのふたり。リオは、何かあった場合に備えて浮遊城で待機している。


カル達は、ルルの父親であるガハから事前に捕虜の返還交渉についての基礎を教えてもらっていた。こういった交渉事に何の知識もないカル達にとってガハの存在は非常にありがたい。


城塞都市ガンドロワの領主の館のとある会議室。


そこに魔王国側の代表と城塞都市ラプラス側の代表が居並ぶ。さらに城塞都市ガンドロワの領主であり、魔王国軍第3軍の将であるガハが捕虜返還の仲介役として双方の間に座る。


「では、捕虜返還に関する交渉を開始する」


まずガハがそう宣言する。


「今回の戦いにおいて魔王国は、城塞都市ラプラスに対して城塞都市ガンドロワを攻撃した事への謝罪及び

当事者の引き渡しを要求し、期限迄にそれが行われなかった事への報復として魔王国軍を派遣した」


全権大使は、紙に書かれた内容を感情を込めずに事務的に淡々と読み上げていく。


「我々は、城塞都市ガンドロワを攻撃などしていない。そもそも魔王国軍の反乱部隊が城塞都市ガンドロワを攻撃した事実を魔王国は知らないのか」


ルルは、事前に用意した紙に書かれた文章を読み上げる事もせずに話を進める。


全権大使と事務官は、なにやら小声で耳打ちをしながら相談事を始める。


「その件につては、魔王国の非を認めます」


「では、その反乱部隊の鎮圧の過程で生じた事象だけをとらえ反乱部隊はお咎めなしとし、反乱部隊の鎮圧に協力した我々を城塞都市ガンドロワを攻撃した犯人だと決めつけた件についての経緯と謝罪を要求する」


全権大使と事務官は、また小声で耳打ちをしながら相談事を始める。


「その件については、魔王国としても何か行き違いが有ったと認識している」


「行き違いだと。反乱部隊を鎮圧するのは魔王国軍の仕事だ。国内の治安さえ守れない輩が何が行き違いだ。しかも我々を攻撃すべく3000人の正規軍を送るなど言語道断ではないか!」


全権大使の事務的な態度とは裏腹にルルの言葉に徐々に力が入る。


全権大使と事務官は、またまた小声で耳打ちをしながら相談事を始める。その態度に思わずイラっとするルル。


「少し退席をしてもよろしいか」


全権大使は、仲介役のガハに対してそう発現した。


「よろしい。30分の休憩時間とする」


ガハの言葉に首を縦に振り同意するルル。


会議室から退席する全権大使の後ろ姿を目で追い、扉が閉まると同時に小言を言い始めるルル。


「あの事務的な物言いには実に腹が立つ。しかもこれ見よがしに何かを相談するあの態度もだ」


「まあそう言うな。城塞都市を運営するとなれば、こういった面倒事も増えてくるのだ。いい勉強になると考えた方がいいぞ」


「はあ、父上がそう言うのなら・・・」


しばらくして全権大使が会議室に戻り着席し、今までとは全く異なる姿勢でこう切り出した。


「魔王国は、城塞都市ガンドロワを攻撃したのは魔王国軍の反乱部隊である事を認める。さらに城塞都市ガンドロワを反乱部隊から守った件についても認める。そして魔王国が城塞都市ラプラスに対して魔王国軍を派遣した事も誤りであった事を認める」


全権大使は、あいかわらず事務的に感情の入らない言葉を発する。だが、その内容は魔王国側の過ちを全て認めると言ったのだ。


この捕虜返還交渉は、かなりもめると思われた。だが魔王国は、あっさりと自身の非を認めてしまった。


「ただ、ひとつだけ確認したい事がある。魔王国が城塞都市ラプラスに進軍した時、我々の知らない城が存在した。あの城は、城塞都市ラプラスのものか」


相変わらず事務的な感情のこもらない話し方をする全権大使。


「違う。あの城は、妖精達が作った妖精の国の城だ」


「ほう、妖精・・・ですか。そういえば、魔王国軍第1軍の将も妖精族でしたか」


「魔王国は、城塞都市ラプラスに軍を派遣したはずだが、何の事情も知らない魔王国軍は、宣戦布告もせずに妖精の国を攻撃したと聞いている」


全権大使と事務官は、なにやら小声で耳打ちをしながら相談事を続ける。だが、ルルは大使達の相談など気にせずに話を続ける。


「我々は、妖精の国と少なからず友好関係にある。そのため、妖精の国を攻撃した魔王国軍の兵士を捕虜にした妖精の国から捕虜の返還交渉を一任されたのだ」


全権大使と事務官は、ずっと相談をしたままだ。ルルの話を聞いているのかさえ怪しい。


「では、我々は妖精の国と捕虜返還について直接交渉する。城塞都市ラプラスに対しては、謝罪と賠償として以下を正式な回答としこの交渉を終了する」


①.城塞都市ラプラスは、城塞都市ガンドロワを反乱部隊から守った事を認める。


②.魔王国は、城塞都市ラプラスに対して魔王国軍を派遣した事が誤りである事を認める。


③.賠償として魔王国南域辺境の一部を城塞都市ラプラスの領地として譲渡する。


「では、詳細については事務方と詰めるという事で・・・」


全権大使と事務官は、そう言い残し交渉の場である会議室の席から立ち上がろうとする。


「お待ちください。先程、捕虜の返還については妖精の国と直接交渉すると言いましたが、妖精の国との国交もない魔王国がどうやって交渉を行うおつもりですか」


「そっ、それは・・・こちらで使節団を向かわせて何とか交渉の場を設けます」


何だか全権大使の雲行きが怪しくなっていた。想定にない問答に対してはどうも不向きであるようだ。


「そもそも、妖精の国の代表はこの会議に出席しています」


ルルの言葉に思わず眉間にしわを寄せる全権大使。


「何を言っているのか理解できかねるが」


「では、これをお飲みください」


会議室のテーブルには、先程から黄色い色の飲み物が入った小瓶と小さなグラスが置かれていた。


ルルの言葉に少し警戒しながらグラスを手に取る全権大使。


「ぷはー。美味いぜ。やっぱり城塞都市ラプラスで作られた酒は最高だな」


グラスに注がれた黄色い液体を見て躊躇する全権大使に対して、仲介役のガハは、そのグラスに注がれた黄色い液体を一気に喉に流し込む。


その姿を見た全権大使もグラスに注がれた黄色い液体を注意深げに飲む。すると・・・交渉相手である城塞都市ラプラス側の代表者の後ろに何やら小さな者の姿が見えて来る。


全権大使は、おもわず目をこすりその小さな者達を凝視する。


「見えますか。我々の後ろには先程から妖精の国の代表者がいたのです。我々は彼らから捕虜の返還交渉の全権を任されています」


城塞都市ラプラスの代表者であるルルとカルの背後には、100を超える妖精達がいた。彼らは、この会議が始まった当初からこの会議場にいて、交渉の一部始終をずっと見ていたのだ。


思わず椅子から転げ落ちる全権大使達。


捕虜の返還交渉は、あっけなく終わった。




捕虜の返還交渉が終わった会議室に残ったルルとカル。


「ルルさん。何だか話が簡単に終わった気がしませんか」


「私もこの話には裏があると思う」


「いきなり魔王国の全権大使が謝罪をするし、それに譲渡される土地って以前に砦の防衛に行ったところです」


「つまり砦を守る義務を負わせたという訳だな。価値の無い土地を押し付け褒美に領地をくれてやったと恩を売った気でいるのかもしれん」


「またお金がかかる話ですね」


「そうだな。しかも砦が領地になるという事は、魔王国の貴族として国境と砦を死守しつつ土地の開拓もせねばならん」


「はあ・・・」


「まあ、そんな辛そうな顔をするな。砦や城壁ならリオがいくらでも作れる。それに土地の開墾ならメリルがいるではないか。それに今ならルルの浮遊城もあるからな」


「・・・そうですね。後は、魔王国に後ろから刺されない様に気を付けるべきですね」


「そうだな。我らとしては城塞都市アグニⅠ側から魔王国軍が攻めて来ても対処できる様な対策を考える。それと国境の砦の拡張と背後から魔王国軍が攻め込んで来ても対応できる様に新しい城壁を作るか」


「出来る事を出来るだけ早急に進めましょう」


「そうだな。この魔王国で最も注意すべき人物は、魔王様と宰相だ。魔王様が直接出て来さえしなければ、我らでも何とかなるさ」


「こんな辺境の地に魔王様が来るなんてないですよね」


カルもルルも意外と楽天的であった。だが、辺境であってもここは魔王国である。それを領主として経験の浅いカルとルルはまだ理解していない。


なんだか怪しい動きをする魔王国。さて、まだ一度も姿を見せない魔王様。


作者は、何も考えてないけど本当に出て来るのか・・・魔王様?


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