140話.魔王軍の侵攻(1)
城塞都市ラプラスに軍隊を派遣した魔王国。
魔王国の魔王軍が城塞都市ラプラスへと向かっていた。
魔王国の宰相は、魔王を魔法で操り人形と化し魔王国の乗っ取りを図った。殆どの大臣や貴族達は、既に宰相の魔法により無力化され宰相の言いなりである。
だが、そこに立ちはだかったのは、魔王軍第1軍の将と魔王国第3軍の将であるルルの父親のガハであった。
第1軍の将は、妖精賊であり宰相の魔法は効かなかった。
対して第3軍の将であるガハは、魔法防御の指輪を装備していた事で難を逃れていた。
宰相は、ガハの力を削るため領地の破壊工作を行うため、第2軍の兵士に魔法をかけ反乱部隊としてガハの領地へと送り込んだ。
そして見事に成功?した。いや、失敗したのだがルル達が意図せずにガハの領地を水没させてしまったのだ。
それは、宰相にとって別の敵の存在を知る事となった。ガハの領地を水没させる気象魔法を操る桁違いの魔力を持つ魔術師の存在。
さらにその魔術師は、浮遊城を操るという。その魔術師を手に入れる事ができれば、魔王国は、この世界を征服できると考えた。
宰相は、最強の気象魔法を操る魔術師がいると思われる城塞都市とその魔術師を手に入れるべく魔王軍を城塞都市ラプラスへと送った。
その魔王軍の行先には、とてつもなく面倒くさい存在である妖精達の作る妖精の国があるとも知らずに。
カルが不在の城塞都市に魔王国から手紙が届いた。
そこには、魔王城へ城塞都市ガンドロワが水没した当事者を連れて謝罪に来いと書いてあった。
それができなければ城塞都市ラプラス、アグニⅡ、アグニⅠを魔王国の国王である魔王の名において城塞都市を接収するというのだ。
しかも手紙が届いたのは、魔王城への呼び出し期限から1週間も後の事であった。
臨時の副領主となったアリッサは、その手紙を読んで卒倒してしまう。
臨時の副領主の手に余る事案に直面したアリッサは、その手紙に書かれた内容について領主の館の職員に意見を求めた。
そして職員達の回答は単純明快であった。
「領主であるカル様が戻ってきたら全てうまくやるから大丈夫ですよ」
その言葉に倒れそうになるアリッサとは異なり、領主の館の職員達は、実にあっけらかんとしている。
「うちの領主様は、凄く強いんですから。えっ、どれくらい強いかって。そりゃあ龍と友達になるくらいですよ。それに城塞都市の隣りに精霊の森を作ったのも領主様です。今、この城塞都市が妖精達が多く住むようになったのも全て領主様のお力です。何かあれば何とかしてくれる。それがこの城塞都市の領主様なんです」
領主の館の職員からは、無責任な話しか聞こえてこない。
ただひとり臨時副領主のアリッサだけがバタバタと慌てふためく姿が目につく領主の館であった。
魔王国から城塞都市ラプラスに手紙が届いて数日後にカルは、領主の館へと戻ってきた。
領主の執務室に入ると慌てふためくアリッサから渡された手紙読むカル。
「手紙が来た時点で既に期日を過ぎていたのなら最初から城に呼びつける気なんてなかったんですよ」
「えっ、それって・・・」
「手紙にも書いてありますけど、この城塞都市と気象魔法を操る魔術師が欲しいだけだと思います。恐らく気象魔法を操る魔術師というのは、リオさんの事だと思いますが名指しをしていないのでそこまで調査できていないんじゃないでしょうか」
「でも城塞都市を接収するとあります」
「城塞都市ラプラスは、魔王国の南の外れにあります。魔王国の中央とは、物資の売買も行っていませんから経済的な封鎖なんて意味がありません。そうなると恐らく魔王国の軍隊を送って来るでしょうね」
「せっ、戦争ですか」
「そうなるでしょう。魔王軍の規模にもよりますけど、こんなド田舎の城塞都市を接収するためにどれほどの軍隊を送ろうとしているのか察しは付きますよ」
「そっ、そうなんですか」
「だって城塞都市ラプラスなんて警備隊の数を最近になって増やしたとはいえ約1000人程度の警備隊ですよ。しかも城塞都市ラプラスの城壁を守るには、圧倒的に人数不足です。訓練された正規兵と城塞戦になったら一瞬で負けますよ」
「そんなものですか」
「城塞都市の城壁って魔獣から住民を守るために有る様なものです。国同士の戦争になったら魔術師による遠距離攻撃魔法を撃ち込まれてあっという間ですよ」
城塞都市の領主とはいえ年下の少年が、案外とこの城塞都市の弱点を理解していた事に驚くアリッサ。
「では、この手紙にある様に黙って魔王国の宰相の言いなりに・・・」
「まさか。僕は、この城塞都市の領主です。領主は、領民を守る義務があります。いくらここが魔王国領内だとは言っても今まで魔王国の恩恵なんて受けた事は一度もありません。そんな連中に従う気は全くないです」
アリッサの話を途中で遮ったカル。それは、子供ではあるが領主としての決意の現れであった。
「僕は、ただ城塞都市の領主をやっていた訳ではないんですよ。精霊の森や城塞都市内に住む妖精さん達とも都市防衛や精霊の森の防衛について話し合っています。それに氷龍さんや風龍さんに見返りもなく毎日の様に”ただ酒”を飲ませている訳ではありません」
「領主様は、こういった事態を想定していたのですか」
「この城塞都市を接収する気なら魔王国の全軍を差し向けるべきです。もし一度でもこの城塞都市を攻撃して来たら逆に僕が魔王国を接収します」
「・・・・・・」
カルの表情からは、その言葉が本気である事がうかがえた。もう何も言い返せないアリッサ。
カルの決意とは裏腹に魔王国の宰相が送り出した魔王国軍は、3000人余り。そのうちの500人余りの補給部隊が先行して城塞都市ラプラスに向かっていた。
砂漠の淵に広がる茫漠の地に少しばかり馬車が通った轍があるだけで誰も使う事のない街道。その街道を20台の馬車と護衛の兵士が進む。
南の外れに点在する城塞都市など魔王国の地方都市にすら劣ると考えた宰相。
さらに城塞都市ラプラスの事など調べもせずに戦力を推し量った宰相の部下達は、3000人の兵士ですら戦力過多だと考えていた。城塞都市の領主など3000人の正規軍を見ればすぐにでも白旗を上げると高を括ったのだ。
魔王国軍は、本隊が到着する迄に補給物資を送り込み、城塞都市近くに前線基地を作る計画である。
だが、そこに誤算が生じていた。先行する魔王軍の補給部隊の目の前には、地図にも記されていない城が現れたのだ。
「隊長。こんな場所に城があるなんて聞いてないですよ」
「しかも城壁の規模がかなり大きいですが城壁の上には誰もいないようです」
先行した斥候の報告に戸惑う補給部隊の隊長。
「城門は、空いているのか」
「はい。ですが城門にも誰ひとりとしていませんでした」
「まさか廃城ではあるまいな」
「いえ、開け放たれた城門から見えた木々は、手入れされているようですし城内へと通じる道には、落ち葉もなく雑草も生えていません」
「この城が目的の城塞都市ラプラスのものである可能性はあると思うか」
「分かりません。やはり誰かを行かせて城主に話を聞いた方が早いと思います」
「分かった。護衛部隊を送れ。抵抗する様なら容赦はするな。我々が魔王国軍であると分かる様に軍旗を上げよ!」
兵士達は、一斉に動き出す。重武装の兵士が補給部隊の前方で隊列を組み前進を始める。
その光景をラピリアの実をかじりながら城壁の上でのんびりと眺める妖精達の姿。
重武装の兵士の隊列は、城門をくぐると城壁の中へと入っていく。遠くには立派な城がそびえ、そこに通じる道は、手入れが行き届いている。
重武装の兵士達は、隊列を崩さずに魔王国軍の軍旗を掲げて行進を続ける。
やがて兵士達が城の扉の前へとやって来た。城の扉は、開け放たれているが城を守る兵士の姿は見えない。
「この城の城主に話がある。我らは魔王国軍である」
ひとりの兵士が、開け放たれた扉の前に立つと大声で城主への面会を求めた。だが、その呼びかけに返事をするものは誰もいない。
「返答がないですね。どうします」
部下の言葉に少しだけ判断の時間を費やした隊長は、城に入る決断を下す。
「第1隊は、私と共に城に入る。第2隊は、ここで待機。攻撃があった場合は、各々の判断で応戦しろ。もしこを死守できないと判断した場合は、速やかに本隊と合流しろ」
隊長と第1隊は、城の扉をくぐり城の中へと入っていく。第2隊は、扉の前で防御陣形を築き大盾を並べていつでも見えぬ敵からの攻撃に備える。
城の広い通路の両脇には、いくつもの調度品が並べられている。それらは、金や銀で装飾された壺や武具であった。
思わず通路の脇に並べられた調度品に目が行ってしまう兵士達。
「凄いな。これ程の調度品を警備の者すらいない通路に置くなど考えられません」
「いいか。この調度品には絶対手を触れるな。万が一にもそれでもめ事になったら、我ら魔王国軍の恥だぞ」
隊長の言葉が城の通路に響き渡る。だが、その言葉は既に破られていた。
隊列を組む兵士の最後尾にいた者が、通路の脇に並べられた金製の小さな器を武具の隙間に押し込んでいた。
その瞬間、城の中で何かざわつく音が響き渡った。
瞬時に状況が変化したと察した兵士達は、腰の鞘から長剣を抜き大盾を構える。
「隊長。何かまずい状況になったようです。周囲にもの凄い気配がしますが・・・誰もいません」
「ドルトン。探査魔法で周囲を調査して状況を報告しろ」
隊長は、第1隊の魔術師であるドルトンにそう命令を下した。だが、ドルトンは、何かを呟くばかりで探査魔法を使う気配がない。
「おい、ドルトン。隊長の命令が聞こえなかったのか」
「・・・囲まれてます。姿は見えませんが100体以上の何かが我々の目の前にいます」
魔術師ドルトンは、既に探査魔法を使い周囲の状況を把握していた。そして見えない敵に囲まれている事に気が付いていた。
「敵はどこにいる。全く見えないぞ!」
「我々の目の前です。しかも数がどんどん増えています。数は・・・300を超えています」
魔術師ではない兵士達は、ドルトンの言葉に焦りの色を見せながらも長剣と大盾を構え、防御陣形をとりつつじりじりと後退を始めていた。
「隊長。目には見えませんが何か強い威圧感を感じます。強い魔獣を目の前にした時の感覚と同じに感じます」
「そうだな。この城は、目には見えない魔獣の巣窟なのかもしれんな」
「まさかレイスの類しょうか。まずいですよ。部隊に神官の兵士はいません」
大盾を構えながらゆっくりと後退を続ける第1隊。
すると先ほど入って来た城の扉が徐々に閉まり始める。
城の扉の前で防御陣を敷いていた第2隊の兵士達は、慌てて扉が閉じない様にと必死に扉を押さえにかかる。
「凄い力です。このままでは長くは持ちません」
「隊長。戻ってください。扉が閉じかけています!」
その言葉に反応し、一斉に走り出す第1隊の兵士達。
「全力で走れ。遅れるな!」
第1隊の隊長の声が通路に響き渡る。
第1隊の兵士達は、必死に城の通路を走り第2隊の兵士達が押さえる扉を通りぬける。
その瞬間、城の扉が勢いよく閉じられた。
「第1隊。第2隊。防御陣形をとりつつ本隊へ戻る。敵はみえないから気を・・・」
隊長は、命令を途中まで言ったところで声が出なくなってしまった。先程まで存在しなかったはずの全長50mを超える巨大な木が己の根を足の様に動かしながら歩き、兵士達の目の前に現れた。
それは、絶望という言葉で言い表せる最も適した光景であった。
その光景を見ながら大笑いをする妖精達。彼らは、どうやったら魔王国軍の兵士達に絶望と恐怖を与えられるかの演出を必死に考え実行していた。
妖精達は、魔王国軍の兵士達相手に遊んでいたのだ。
妖精の国の城に入った魔王国軍の兵士達。
妖精達にとって魔王国軍の兵士ですら遊び相手であったようです。
今日。地元のグランベリーパークに行ってきました。
昔は、駅前にレジが1台しかない東急ストアがあっただけの南町田が変わったものです。
そして目的は、Mon't BellとSnow Peakです。
Snow Peakは、少しくらい値引きがあるかと期待したのですが定価販売でした。アメニティドームが欲しいのですがもう少し様子見します。
Mon't Bellは、以前にMavic kishirium Disk(ロード用のディスクブレーキホイール)を買った事があります。Mavicは、フランスのホイールメーカーですが、ホイールはルーマニア製でした。