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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第1章》 僕は、おかざり領主になりました。
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14話.村の視察と魔獣集め(1)

カルの初めての視察が始まります。

2台の馬車に乗り込み村の視察に向かったカルとルル。


馬車には、御者4人、行政官1人、事務官2人、護衛の兵士8人が同行した。


ルル曰く今回は、2つの村を周り、穀物の育成状況、水源の状況確認、村の周囲に出現する魔獣対策を重点に確認するらしい。


領主になったばかりの僕に何ができるか分からないけど、ルルさんに付いて行って勉強をしないと。


城塞都市ラプラスの城門を出てしばらくは、家や畑が点在する風景が続く。目的の村は、馬車で2時間程なので思ったほど遠くはない。


ときたま、冒険者らしき人達が街道沿いでスライム退治を行っている。冒険者になったばかりの人達にとっては、重要な仕事らしい。


しばらくすると家も畑もなくなり、スライム狩りをする冒険者の姿も見えなくなった。でも、街道沿いにスライムの姿は見受けられる。


「ルルさん。歩きながらスライムを集めてこようと思います」


「わかった。何かあったら助けに行くから安心して行ってこい」


カルは、馬車と並走しながら大盾を持って走り回る。


「よくもあの大盾を持って走れるものだ」


「城塞都市戦の時、カル殿が気絶している間にあの大盾を持ってみたが、持ち上げる事すらできなかった。あれは、カル殿以外に持てない呪いか何かなのだろう」


カルが走りまわるというより大盾が走っているように見えるがそれはご愛敬。さらに大盾からは大蛇の様な赤い舌が伸びてスライムを次々と捕まえては大盾が飲み込んでいく。


その光景を見たことがあるルルですら異様な光景に見えた。


「あの副領主様。あの大盾から出る蛇の様なものはなんですか。あんな大盾は見た事がありません」


同じ馬車で移動中の行政官は、見たこともない異様な光景にいたたまれずルルに問いかけた。


「そうだな。そこはあまり詮索しないでくれ。ただ、これだけは言っておく。あれに私は負けた。城塞都市の兵士達も束になっても勝てなかった。そう言えば、あれがどんなに恐ろしいものか理解できるな」


「カル殿。いや領主の気分を損ねない様に細心の注意を払ってくれ。あれに食われたら命はないと思え」


「はい」


行政官は、馬車の後ろへと下がりそれ以降ルルに話しかける事はなかった。


カルが人族の子供なのをいい事に、新領主をバカにする風潮が行政官の中で少なくない。そこを見誤るととんでもない事になりかねないと釘を刺しておいたのだ。


馬車の周りを大盾を持って走り周っていたカルが戻ってきた。大盾を持って走り周っていたははずなのに息が全く上がっていないカルを見てルルは目を丸くした。


「カル殿。その大盾を持って走ったのに息が上がらいのか」


「あっ、本当だ。ちっとも気が付かなかった」


まさかとは思うが、冒険者証にあったステータスは本当の値ではないのではないか。魔人とやらの力がカル殿に影響を及ぼしているなら、とんでもない話だ。


カル殿に聞いて驚いた事がもうひとつ。


あの大盾を使い始めて1日で戦場に立ち、その日のうちに魔人が覚醒したらしい。


にわかに信じられない話だが、それが本当ならまだあの魔人とやらは、成長段階に過ぎないのではないのか。


ルルは、カルの後ろ姿をじっと見つめていた。これで終わりであればよいと思いながら。






馬車は、最初の視察地のエンブル村に到着した。


村長と数名の顔役が出迎えてくれた。まずは歓迎のあいさつをと村長が申し出たが、ルルがやんわりと断った。


「すぐに畑の作物を見たい。育成状況があまりよろしくないと聞いている。それと始めたばかりの治水工事の進捗はどうなっている。まず現場を見たい」


城塞都市ラプラスから同行した行政官が慌てて歩きながら説明を始めた。村の村長達も慌ててルルさんについていった。


ひとり取り残された形になったカルだが、できる事など皆無に等しい。仕方なく村で畑を耕していた時の事を思い出しながら、村の畑の土を手にとった。


あまり良い土とはいえなかった。これでは、作物もたいして育ちはしないだろうと思いながら、畑の土をあちこち見て周った。


「ルルさん、この土で作物を育てるのは限界です。山から腐葉土を運んで土を入れ替えた方がいいです。それと、肥料は何を使っていますか」


「肥料ですか、家畜の糞を撒いていますが、この村には家畜はあまり飼育していないので近隣の村から取り寄せてます」


「海鳥の糞が畑の肥料にいいはずです。城塞都市ラプラスでは、海に面した国から穀物を仕入れていると聞きました。ならば、そこから仕入れる事ができるはずです。魚の内臓や骨も肥料にできます。捨てるものなのでそれらも併せて仕入れることはできませんか」


「ただ、作物の種類や肥料を投入する時期や回数もいろいろありますから、むやみに肥料を投入すればよい訳でもないので注意が必要です」


ルルは、ぽかんと口を開けてカルの話を聞いていた。カルがなぜ土や肥料に詳しいのか知らないといった感じだ。


「カル殿は、畑を耕した事があるのか」


「はい、数日前まで家の畑を耕してました。海鳥の糞や魚が肥料になるのは、死んだお爺さんから教えてもらいました」


「そうか分かった。近いうちに穀物の買い付けに行く予定だ。ならば視察を兼ねてカルも行くか」


「はい」





次に用水路の建設現場にやって来た。まだ、工事は始まったばかりといった感じだ。


「村の近くの川から水を引いているが、村が高台にあるためいくつかの水車を使って村の近くまで水を引いてそこにため池を作る予定だ」


ルルさんが工事の説明をしてくれた。


カルは、治水についてはさっぱりだったので、ルルの説明に素直に耳をか向けた。


「ぼく水車って初めて見ます」


「以外と作るのが難しいのだ。そもそも水車を知らない者が多くてな。水車を作れる者を探すのにかなり苦労した」


カルが何気に村長に質問を投げかけた。


「水は年間を通して豊富ですか」


「そうですね、概ね枯れない程度に豊富です」


「ならば、ため池として使うだけではなく魚の養殖もできますね」


「養殖は簡単にはできませんから、数年先を見越してやってみてはどうですか」


「養殖がうまくいけば村の食料になります。ラプラスの街にも卸せますし、内臓や骨は肥料になります」


ルルは、またまたぽかんと口を開けてカルの話を聞いていた。


「カル殿、まさか魚の養殖もやっていたのか」


「川魚を年間を通じて食べられるくらいの数です。川魚は、毎日獲れるものでもないので川の近くに生簀を作ってそこに放流していました。魚が釣れない時は、そこから獲ってました」


ルルは、村の生活に疎かった。畑を耕したことなどないし川で魚を釣ったこともない。まして釣った魚を食べずに生簀に放流して、後日に食べるとという発想が思いつかない。


カルにとっては、それが日常であり毎日の仕事でもあった。だがルルは、勉強と武道に明け暮れた。立場が違えば出来ることも違うのだ。






村を取り囲む堀と柵を見て周る。だが、これに関してカルは全くの素人だから何も言うことはなかった。


堀は深くなく柵も丈夫そうには見えない。こんなもので魔物から村を守れるのか不安に思えた。


「村長殿、村を守る柵が心もとないな」


「お恥ずかしい限りです」


「でも、オークでもなければこの柵は壊せまん」


「最近、この辺りでもオークを目撃したという話がある。冒険者ギルドにも討伐依頼は出したが、まさかな」


その夜はエンブル村に泊まることになった。村の中央に櫓があり、そこに交代で見張りが立つらしい。


村にはラプラスから防衛の兵士は手配されていない。もしオークが出れば村は壊滅するのは目に見えていた。


「カル、カル。起きるのじゃ」


「うーん、剣爺どうしたの」


「悪いしらせじゃ、村にオークが向かっておるのじゃ。数は6体じゃ。ルル殿でも倒せない数ではないが、いかんせん数が多い」


「皆を守りながらでは、ちと厳しいと思うのじゃが」


「じゃあ、ぼくが行く。この前、街の魔法アイテム屋で買ったものを試してみる」


村は大騒ぎになっていて、ルルと護衛の兵隊達がオークとの闘いにそなえていた。


「まずいです。オークが6体もいます。我らは8人。ルル様を含めても9人です。かなり厳しい戦いになります」


「まさか本当にオークが出るとは思ってもいなかった。リオやレオがいれば6体など何とでもなるが」


ルルと護衛の兵士達がそんな会話をしている時だった。


村近くの草原で大きな火柱が立ち上った。またひとつ。さらにひとつ。今度は、白い光が放たれるとキラキラと地面が光っていた。


「なんだ。何が起こってる」


兵士達は、村の防衛のために動けないでいるが、あの光は間違いなく魔法の光だ。


「そういえば、カル殿はどこにいる」


ルルは、オークが近づいているとの連絡を受けてからカルの姿をまだ見てはいなかった。






その頃、カルはというと・・・。


街の魔法アイテム屋で買った魔石筒をオークに投げつけては発動する魔法で倒れていくオークを眺めていた。


「魔法アイテム屋で買った魔石筒は、威力が凄い。オークでも簡単に倒せる。これは実にいい!僕にぴったり!」


カルが構える大盾の魔人もいつのまにか起きだし、カルが投げた魔石筒で発動した魔法により瀕死状態で倒れているオークを次々と飲み込み始めた。


”ゴックン”。


”ゴックン”。


”ゴックン、ウマヒ”。


6体のオークはあっという間に大盾の魔人に飲み込んでしまった。カルは、大盾を背中に担いてゆっくりと歩きながら村へと戻った。


「カル殿。何処に行っていたのだ。心配したぞ」


「ごめんなさい。オーク6体は、僕が倒しました。今は大盾のお腹の中にいます」


「まさか、オーク6体をひとりで倒したのか」


「うん。街の魔法アイテム屋で見つけた魔法具を買ったんだけど、それが思った以上に強力でよかったです」


「・・・・・・」


ルルは、村へとひとり歩いていくカルの後ろ姿見送っていた。カルは、大盾の魔人に頼りきだと思っていた。だが、いつの間にか戦う術を、戦いに使える道具を調達していたのか。


先ほどの炎魔法と氷魔法は、カルが使った魔法だったのか。自分には魔法は使えないと先日まで嘆いていたのに、今は道具とはいえ、それを使えるようになっていた。ルルは、それに驚きを隠せないでいた。



あっさりとオークを倒してしまったカル。でも・・・。

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