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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第5章》誕生と終焉と。
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139話.新たな浮遊城

新たな浮遊城を作りはじめたリオ。そして案の定・・・。


カルは、城塞都市ラプラスで起こった黒龍の件を報告するためにルル達のいる城塞都市アグニⅡへと向かった。


ゴーレムのカルロスⅡ世の魔法の具合が芳しくないため、カル、メリル、ライラ、それにゴーレムのカルロスⅡ世は、馬車でのんびりととした移動を楽しんでいる。


ただ報告をするだけなら手紙を送ればよいのだが、城塞都市アグニⅡへ向かう理由が他にあったため報告に行くという事を理由にして強引に出かけたのだ。


それを知った秘書官であるアリッサは、悔しがった。自身も城塞都市アグニⅡへ行きたいと駄々をこねたのだが、秘書官であるアリッサをカルが戻って来るまでの臨時副領主に任命して全ての仕事を押し付けた。


臨時で期限限定であっても副領主となったアリッサは、大喜びで領主の仕事にとりかかった。それを見てにんまりと笑うカル。


そして城塞都市アグニⅡへと到着したカルは、ルルに城塞都市ラプラスで起こった黒龍の件を報告する。


「なるほど捨てられた浮遊城で生まれた黒龍が城塞都市ラプラスにやって来て、住民の魔力を吸収していたが今は沈静化したという事か」


「はい。黒龍は、妖精さん達が教育をすると言ってました。僕は、それを資金面で支えようと思います」


「その辺りは、カルの思う様にやってかまわん。私では、資金を提供できる様な事業を行っていないからな」


「それともうひとつ。妖精さん達が自身の国を作っています。場所は、城塞都市ラプラスから砂漠の淵を通って魔王国に向かう途中の街道に・・・」


「ああっ、その件なら知っている」


するとルルは、カルに近づくとカルの耳元でこう囁いた。


「実はな、城塞都市ガンドロワから戻る時にその妖精の国とやらの城と城壁を作ったのは、何を隠そう私達なのだ」


ルルは、苦笑いを見せて半ば諦めた表情も浮かべている。


「それは、妖精さん達から伺いました。でも魔王国の中に妖精の国なんて作って後でもめたりしないでしょうか」


「それなんだがな。私達もそれを危惧しているのだ。だが、既に手を貸してしまった以上後戻りもできなくてな」


「そうですか。ならば妖精さん達から何か支援の要請があれば、対応するくらいで良いのではないでしょうか」


「そうだな、妖精の国に最も近いのは、カルのいる城塞都市ラプラスだ。何かあったらよろしく頼む」


「はい」


カルは、黒龍の件について知りうる限りの情報をまとめた書類をルルへと手渡した。


ルルも黒龍の件は、自分達が作った浮遊城が起こした出来事だという認識を持っているので、時間を見て廃墟となった浮遊城へ行ってみる事になった。


その後、カルは城塞都市アグニⅡの領主を館を出ると近郊にある中級ダンジョンへと向かった。そうマンドラゴラを採取するために。




その頃、リオはというと新しい浮遊城の土台となる柱状の岩の採取に向かっていた。


今回、新しく作る浮遊城はふたつ。ひとつは、ルルの父親であるガハの依頼によるもの。もうひとつは、裁定の木の戯れにより茫漠の地へ墜落し廃墟となった自身の浮遊城の代りとなるものを作るためである。


ルルの父親であるガハの注文した浮遊城は、前回リオが作ったものと同様のものを作る。ただし、浮遊城の規模は前回の8割程度に縮小する。


以前の城は、規模が大きすぎたため取り回しが面倒で、しかも動きが鈍く思った様に動かすのに苦労した事への反省から規模を縮小することになった。


浮遊城に使う魔石もカルから入手済みであった。


そしてリオの新しい浮遊城だが、こちらは自分達だけで使うので多少実験的な要素を取り入れる事にした。


まず規模を前回の浮遊城の6割程度に縮小する。これも浮遊城の動きを軽くするためだが、裁定の木という脅威に少しでも対処できる様に身軽にしたいという思いからであった。


さらに浮遊城の城の部分に関しても、以前の様な城というよりも砦に近い形に変更する。これも裁定の木からの攻撃により普通の城では対処できないという所からである。


巨大な柱状の岩を採掘したリオは、城塞都市アグニⅡの茫漠の地にふたつの柱状の岩を降ろすと、早速城の構築にとりかかる。


魔法杖に魔力を注ぎ柱状の岩の上に土魔法で城壁と城を築いていく。


ルルの父親であるガハの浮遊城は、以前のものより多少豪華な飾り付けを施した。魔王軍第3軍の将であるガハの威厳を見せるためである。


ただ、それを見たルルから苦言を呈された。


「あまり豪華にすると魔王国の大臣や貴族から苦情を言われるので程々に頼む」


そうは言ってもリオが仕えるルルの父親からの依頼である。リオは、少しばかり気合を入れて装飾を完成させた。


対して自身の新しい浮遊城だが端から見れば武骨な形になった。それは、大きな亀の甲羅な実にそっけない形であった。


ただ、リオなりのこだわりもいくつかある。


ひとつは、ルルのホムンクルスの鵂が休める様にと止まり木の代りになる塔を中央にひとつだけ作り、塔の周囲には塔を囲う様に穴を作りその中に庭を設けた。


その庭には、レオのホムンクルスである鯰がつくろげる大きめの池を作った。


そしてリオの新しい浮遊城の魔石は、なるべく周囲が見渡せる場所がよいという事で城の中央ではなく先端に置かれた。


形としては、亀の甲羅から亀が頭をもたげた様な形の場所に魔石は置かれた。


これも前回の浮遊城では、周囲の状況を把握する事が困難であったという教訓からでる。


数日をかけて完成したふたつの浮遊城。


実は、問題がひとつ残されていた。それは、リオの新しい浮遊城の魔石である。


ルルの父親であるガハの依頼で作られた浮遊城は、以前と同じカルの盾のダンジョンからドロップした魔石を使った。


対してリオの新しい浮遊城の魔石は、カルが試しにと渡した地龍のうんちの魔石である。


リオは、新しい浮遊城を作る時は、以前渡された魔石を用いた。そして新しい浮遊城が完成した時点で魔石を”地龍のうんちの魔石”へと・・・。


いや言い方を変えよう。いくらなんでも”地龍のうんちの魔石”と連呼するのはいささか問題がある。そう”地龍の魔石”と呼ぶ事にしよう。


リオは、完成した新しい浮遊城に地龍の魔石を設置するといそいそと試運転へと出かけた。


場所は、いつもの砂漠の空の上である。


徐々に魔法杖に魔力を蓄えるとそれを城を浮上させ飛ばす役目を負う地龍の魔石へと送り込む。


徐々に浮遊する新しい浮遊城。その途端、凄まじい状撃と共に新しい浮遊城は一気に砂漠の上空に広がる雲を突き抜け急上昇をはじめた。


あまりの急上昇にリオは、床に体を押し付けられ動くことすらできない。


浮遊城は、ひたすら上昇を続けると城の気温がみるみる低下し、そして城の床に氷が付着しはじめる。


リオは、呼吸ができず苦しさのあまり意識が遠のきそうになるのを必死にこらえた。


やっとの思いで立ち上がり地龍の魔石へと地上へと下降する様に魔力を送り込む。


そこでリオは、想像を絶する光景を目の当たりにする。


浮遊城の城の窓にはめられた硝子の向こうに見える光景は、下半分が青く上半分が黒いのだ。まるで地平線を見ている様な光景だが、こんな景色を見た事がないリオにとってそれは、想像を絶する光景であった。


リオが見たものは、この世界で誰も目にする事のないはずの成層圏である。


もう少し上昇していれば、精霊界からやって来た精霊達が放った探査機が周回する衛星軌道へと達する程の高度である。


そこが成層圏であるなどという事を知らないリオは、ゆっくりと地上へと降りて行く。


殆ど呼吸ができず、あらゆるものが凍り付く氷点下の極寒の浮遊城で必死に耐え魔力を送るリオ。




なんとか砂漠の上空に浮かぶ雲の上まで戻って来たリオは、今度は浮遊する状態を確認すべく地面と水平に”ゆっくり”と進む様に地龍の魔石へと魔力を送り込む。


最初は、ゆっくりと動きだす浮遊城。その動きに安堵したその瞬間、案の定である。リオの命令など無視を決め込むかの様に突然速度を上げて飛ぶ浮遊城。


リオは、魔石を埋め込んだ卓に事前に体を紐で縛っていた。きっとこうなると予想していたからだ。リオの体は後ろへのけ反り前を見る事すらできない。


そんな体勢がしばらく続き、やっとの思いで体を起こし窓の外の景色を見ると、今までに見た事もない速さで飛ぶ浮遊城があった。


ときたま龍らしきものが空を飛んでいるが、それを一気に抜き去り見えなくなっていく。


いくつもの山脈を飛び越え気が付けば視界は全て海であった。


やっととの思いで魔法杖から地龍の魔石へと魔力を送りみ空中で停止する浮遊城。


リオは、魔石を埋め込んだ卓に自身の体を縛っていた紐をほどくと、浮遊城の城の塔へと上り周囲を見渡す。そこで目にしたものは、周囲に陸が全く無い光景であった。しかも陸はおろか島さえもない。


リオは、洋上の上で迷子になっていた。


ただ来た方向へ戻れば良いという訳ではない。少しでも方向を間違えれば、城塞都市アグニⅡのある場所から数百キロ、あるいは数千キロもズレてしまう可能性があるのだ。


そうなってしまえば最後、迷子となってずっと洋上の空の上を浮いている羽目になり、食料のない城でひとり干からびて死んでいくしかない。


浮遊城の城の中に戻り地龍の魔石の卓の前で途方に暮れるリオ。するとなぜか目の前をフヨフヨと飛ぶ妖精の姿が目に入った。


思わず目の前を飛ぶ妖精を両手で力の限り掴むリオ。


「お願いだ妖精。お前ならこの場所がどこだか分かるはずだ。教えてくれ」


リオの両手に捕まれてジタバタと暴れる妖精。その姿に思わず両手の力を抜いて謝る。


「ごめん。いきなり力いっぱい掴んだりして悪かった。でもここがどこだか分からない。頼むからこの場所を教えてほしい」


リオは、城塞都市ガンドロワからの帰路で妖精達が現在地を移す硝子の板を見せてもらった事を忘れていなかったのだ。


そしてリオの言葉を聞いて考え込む妖精。


そしてメモにある言葉を書いてリオに差し出す。


”場所が分かればいいの?”。


「ああ、この浮遊城が迷子にならない様にしてもらえれば尚可です」


少し考えた妖精は、メモ書きを残してリオの前から姿を消す。


”なら、少しだけ待って・・・”。


リオは、妖精が書いたメモ書きを見つめながらしばらく待っていると、複数の妖精達が現れ手に大きな硝子の平らな板を何枚も持って現れた。


さらに金属でできた様な四角い箱をいくつも持ち込んで来る。


それをさっと魔石を設置してある部屋の天井や壁のあちこちに設置し、さらに天井や壁に穴を開けて何かの太い紐の様なものを通していく。


妖精達が何をしているのか理解できずにただ茫然と眺めるだけのリオ。


そして待つ事数時間。


太陽が水平線へと沈みかけた頃、妖精がリオにメモ書きを見せた。


”完成したよ。この浮遊城に衛星軌道上の探査機とのデータリンクシステムを設置した。この惑星の上にいる限りいつでも場所を把握できるよ”。


そう書かれたメモ書きを見たリオは、妖精の言っている事の全てを理解できずにいた。


きょとんとするリオを見た妖精は、浮遊城の城に設置した装置を起動させる。


すると天井から吊り下げられた硝子の板に丸い姿の何かの絵が映し出され、その丸い絵の上に赤い点が映し出された。


”これが今、浮遊城のいる場所。そしてここが城塞都市アグニⅡの場所”。


妖精のメモ書きに記された内容と、天井から吊り下げられた硝子に映し出された絵を見て愕然とするリオ。


目の前に映っている絵には、この惑星が描かれていた。そして城塞都市アグニⅡと浮遊城のいる位置を描く絵を見ると、丁度惑星の真反対に浮遊城はいる事になる。


「まさかあの短時間にこんなところまで飛んで来たというの」


”そうだね。お代は、その地龍のうんちの魔石ひとつでいいよ。その地龍のうんちは凄い価値のあるものだから”。


思わず呆けたまま”地龍のうんち”を差し出すリオ。


それを手に取ると喜んでどこかに行ってしまう妖精達。


”この装置の使い方は、メモ書きをして後で渡すからね”。


そう書かれたメモ書きだけがリオの前に残されていた。


リオの作った浮遊城は、試運転で成層圏へと行き、次にこの惑星の反対側にまでやって来ていた。




魔石に微量の魔力を送り込みながら、魔石を埋め込んだ卓の魔法回路から地龍の魔石の半分を取り出す。


地龍の魔石の力を制御できないと考えた結果の決断である。


夜の帳が降りた外洋の上空をゆっくりと飛ぶ浮遊城。まもなく城塞都市アグニⅡが存在する大陸空へとさしかかる。


夜空の遥か彼方には、煌めく星達の姿。


この世界で意図せずに最速の乗り物を作り上げてしまったリオ。そして浮遊城の位置を把握できるシステムを設置した妖精達。


風の音だけが響く城のどこからか微かに宴の声が響き渡る。その音に誘われるかの様に浮遊城の下層へ足をむけたリオ。


以前、どこかであった様な光景だと思いながらもその音が漏れるてくるとある部屋の前で足を止めるとその扉を開ける。


そこには大量の荷物の中で妖精達が呑気にラピリア酒を飲んで楽しそうに宴を開いていた。さらに部屋には、鉢植えにされた大量のラピリアの木が置おかれている。


いったいこれ程の荷物をいつ運び込んだのか。


妖精達に助けてもらったリオであるが、この世界にいる限り妖精達からは逃れる事はできないと悟ったのであった。


もう妖精達がいれば、なんでも出来る気がしています。


すごいぜ妖精!でも雪風じゃないよ。


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