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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第1章》 僕は、おかざり領主になりました。
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13話.森を作る

カルは、都市の周囲が荒地と草原しかないことに愕然とし、森を作ると言い出します。

カルは、城塞都市ラプラスに来て愕然としていた。


要塞都市というものがどういったものかは知っていた。城があり、家が立ち並び、城壁で覆われた街で大勢の人達が暮らす街。


でも街の外には、森があり木々が鬱蒼と茂っていると思っていた。


カルが住んでいた家は、森の木々の合間に立っていた。木々があるのが普通だと。でも、実際は違っていた。街の外は瓦礫と草原がどこまでも続く見るに堪えない世界が広がっていた。


ここは、人が住む世界ではない。そんな思いがカルの心の中に広がった。ならば、どうすればいい?そうだ、木を植えよう。土は痩せているけど土を山から持ってくればいい。僕は領主だからそれくらいやってもいいだろう。


実のなる木も植えれば、食料が少なくなった時でも困らない。それに、城壁の外にも村や家や畑は点在しているから、そういった人達のために土を肥やすのは街のためにもなる。


何年かかるか分からないけど、僕は僕のやり方で街をよくしていこうと思う。


今までの領主とは違う考えを持ったカルの決意であった。






「城塞都市の外の土地は誰のものか?」


カルの質問に対して少し考えたあとルルは答えた。


「それは、領主のものだな。都市の外にある村や点在する家や畑も厳密には領主のものだが、彼らにも生活はあるからな。無理に取り上げる訳にもいかんから、帳簿と図面で確認するのがよかろう。担当部署に聞いてみるとよいぞ」


カルは、領主の館から土地の利用状況を管理する部署へと赴き、城塞都市の西側に広がる草原と荒地が誰の土地なのか確認をした。


「領主であるカル様。あなたの土地です」


城塞都市の土地を管理する担当官にあっさりと言われてしまった。城塞都市とはいえ城塞都市の外に広がる都市の数万倍の土地は、全て領主となったカルの持ち物だ。


まさか、鬼人族のルルさんに盾ひとつで勝った結果、あっさりと領主の座を手に入れてしまったが、いざ、それがどういう事なのかを今になって知ってしまったろころだった。


「つまり、街の西側に広がる荒地は何に使ってもよいのですか」


「はい。領主様が決めた事ならそれに従います。全て領主様であるカル様に決定権があります」


「では、この辺りの土地に簡単な柵を作って欲しいんだけど。人が間違って入らない様にするくらいの簡単なものでいいから」


「了解しました。では、土木工事部にそう伝えます。確認ですが、この辺りでよろしいですね」


土地管理の担当官が持ち出してきた大きな図面を何枚も見ながら、ペンで線を引いていく。あまり大事にならないように小規模にしたかったんだけど、以外と大きな区域が柵で仕切られることになった。


「柵は、どれくらいで出来るのかな」


「それは、土木工事部に聞いてください」






カルは、土木工事部へと赴いた。


「そうですね。柵は2週間もあればできます。ならば、作業場も作りましょうか。簡単な小屋なら1週間もあればできます」


「そんなに早くできるの」


「はい。豪華な別荘が欲しいと言われると設計、施工に1年は必要となりますが」


「作業場で十分です。道具の保管と手入れができて、休憩ができてお弁当が食べられる場所があればいいよ」


担当官は、カルが持ち込んだ大きな図面を広げながら、柵を作る場所と小屋を建てる場所、それにどこに道を通すのかを図面に書き記していた。


「でも、こんな場所で何をされるんですか」


「植林です。この荒地に森を作りたいんです。何年、何十年かかるか分からないけど、草原と荒地ばかりじゃね。土も痩せているし、数十年後でいいから土の肥えたいい土地になるように手を入れておきたいんだ」


「ほう、前任の領主様は、そんなことには全く興味をし示しませんでしたね」


「僕は、最近まで田舎の森の中に住んでいたから、森の方がおちくつんだ」


「分かりました。いろいろ準備もありますので、工事の進捗状況は、逐一ご報告いたします」


土木の担当官は、さっそく数人の部下を集めると詳細な工事の見積もりを始めた。






カルは、予算会計部に来ていた。


「城塞都市の西側の荒地に柵と作業場となる小屋を作りたいので予算を割り当てて欲しいということですか」


「そう。場所はこの辺りでこんな感じで柵を作って、ここに作業場の小屋を建てる予定で、作業場は木造の簡単な作りで構いません」


カルは、持ってきた大きな図面を広げてそこに書き記された柵の場所、作業場を立てる場所を示した。


「少々お待ちください」


予算の担当官は、そう言うと部署の担当者数名と話をして戻ってきた。


「この規模であれば、土木工事の雑費として計上いたします。細かい部分は、土木工事部と詰めますが、規模も小規模ですし、工事期間も2週間と短期間ですので、それほどの費用もかかりません」


「ありがとうございます。忙しいにに急に仕事を増やしてごめんなさい」


「いえ。私達は、領主様の元で働いているのです。領主様のご命令であれば、最優先で実施させていただきます」


今までお茶を飲んでのんびりしていた部署内が急に慌ただしくなり、他の部署へと走り周る人達が溢れていた。


「他に優先する仕事があれば、そっちを先にして構いませんよ」


会計の担当官は”ニコリ”と笑顔を見せたあと、真顔でこう答えた。


「領主様がこの様な部署へ足を運んでいただいたのは初めてなのです。領主様のお声がかかった以上、私達は、全力でこの案件に当たらせていただきます」


「これからも我々にどんな些細な事でもよいので言ってください。なんでもいたします」


担当官の顔がものすごく怖かったです。






その後、領主からの直接命令ということで”第1級プロジェクト”がスタートした。


いや、荒地に柵を作り、作業小屋を作るだけなのに”第1級プロジェクト”はないよね。


ルルさんから領主が各部署に足を運んで指示を出すということは、それだけ大変な事だということを教えてもらいました。


忙しいところに変な仕事を持ち込んでごめんなさい。


「大丈夫。あいつらは、暇で毎日椅子を温めながら茶を飲んでいるだけだからな。カル殿が直接行けば緊張感を持って仕事が出来るというものだ」


ルルさんがそんなことを言って笑ってました。ともかく、2週間後に作業場ができるのが楽しみです。






2週間後、城塞都市の城壁外の西側に柵と木造の作業小屋、それとそこに通じる馬車が通れるほどの道ができていた。


土木の担当官の案内でカルは、その場所へと案内された。


植林の作業場所となる小屋は、以外と大きく20人程度でも入れるくらいの広さがあった。


「作業場は、とりあえず雨風がしのげる程度の木造の簡単な作りですが、本当にこれでよろしかったんでしょうか」


「すごいです。短期間でこれだけのものを作っていただけるなんて思ってませんでした」


「少し離れた場所に井戸も掘る予定です。井戸については、職人の手配がつかなかったので後日となります」


「もし、人手や道具が必要であれば言ってください。それも手配いたします」


「分かりました。まずは植林する苗木と土を村の視察の時にでも頼むつもりですから、その後にお願いすると思います」


カルは、土木工事の担当官へ自分の夢を話しながら城塞都市ラプラスへと戻った。


だが、森は以外と早く完成することなる。


それはまた後日のお話ということで。


城塞都市ラプラスには、産業らしいものがありません。


森を作ることがその後のラプラスを支える産業のひとつを生み出します。それは2章、3章で語られる”はず”です。


昔、市役所といえば窓口をたらい回しにするのが仕事でした。管轄が違うとかなんとか言って。週末も空いてなくて。

今はそんな事はないですが、今回の話は、昔のイメージが元になっていて、領主であってもあちこちの部署に書類を持っていかないと対応してもらえないというお話でした。まあ、普通は、領主の部下が対応するんですけど、カルに部下はいないので。


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