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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第4章》ふたつの世界。繋がる世界。
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127話.鬼人族の里帰りと新しいスキル(8)

火を消そうと降らせた雨が意図せず洪水を引き起こしました。


そのため、城塞都市の復興の手助けをする事になった3人娘達。


リオの魔法で出現させた巨大積乱雲により大雨が降り、雹が降り、落雷が頻発した。そのため城塞都市ガンドロワでは、洪水に見舞われて生活のできる街ではなくなってしまった。


それによりルル、リオ、レオには、城塞都市の復興を体を使って手伝う事になった。


まずは、城塞都市の城壁の外に溜まった雨水をどこかに移動させなければ城壁内の雨水を抜く事もできない。


ルル、リオ、レオは、城壁の外に広がる荒地を魔法により深く掘る事で雨水をそこに流し込む事にした。


ただ、そんな穴をひとつやふたつ掘ったところでどうにかなるはずもなく、城壁の上から魔法でひたすら巨大な穴を掘る作業をひたすら続けた。


最初は、手間取ったルル、リオ、レオであったがカルから贈られた魔法剣は、”想像”と”思い込み”と”妄想”により魔法を具現化する。


何度か巨大な穴を掘っているうちに徐々に深い穴を掘る事に慣れていく。そして大穴に流れ込む大量の雨水。


さらに穴に向かって堀を作り雨水を流し易くしていく。


城塞都市の城壁の外には、3つの巨大な滝つぼとも言える大穴に大量の雨水が流れ込んでいく。


城壁の外にはまだまだ大量の雨水が溜まっているものの、ある程度の雨水の捌け先が出来たので、後は城壁内の水抜きに取り掛かる事になった。


では、どうやって大量の雨水を城壁の外に流すかでいろいろな案が出された。


最初は、炎魔法で雨水を蒸発させればよいとか、氷魔法で雨水を凍らせてから城壁外に運べばよいのではとか、雨水の流れを城門に向けれて逆流させればよいのではとか。


それらを実際に試した結果、どれも思いの外魔力を消費する事が分かった。結局のところ最も単純な方向が選ばれた。


雨水をそのまま大きな玉状に纏めて城壁外に捨てるというものである。


これでも並みの魔術師なら数回もやれば、魔力の枯渇を起こして動けなくなるのだが、ルル、リオ、レオの持つ魔法具であれば、殆ど魔力を必要としないため、日に数十回とこの作業を行っても魔力の枯渇を起こす事はなかった。


そんな作業をまる1日繰り返し、城塞都市の城壁内に溢れていた雨水もかなり減った頃、日の暮れかけた城壁の上でルル、リオ、レオが山間に沈む夕日を見ながら今日あった事を話し合っていた。


「なんとか城壁内の雨水も抜けましたね」


「まだ土地の低い場所では、膝くらいまで雨水が溜まっているからな。明日も引き続き頼む」


「ただ、水没した家屋がかなりの数に上ります」


「それなんだがな。副領主から城壁の外に一時避難用の家屋を作るという話が上がっている」


「避難用の家屋ですか」


「それをリオに作って欲しいという話だ。リオは、浮遊城の城や城壁を作っているからな」


「はっ、はい。腕が鳴ります」


「では、明日は私とレオは引き続き雨水の撤去。リオは、避難用家屋を作るという事で頼む」


「「はい」」




次の日。


リオは、領主の館の職員数人と城壁の上から住民が一時的に住むという避難用の家屋を建てる場所を確認していた。


相変わらず城壁の外には、大量の雨水が溜まっていて、とても土木作業などできる状況ではない。


だが避難用の家屋を建てる場所の近くには、昨日の大穴を掘った時に出た大量の土が山積みされている。


雨水を多く含んだ土でとても使える代物ではないが、リオの魔法にかかれば造作もない。


領主の館の職員が広げた図面を見ても、目の前に広がるのは大量の雨水が溜まった荒地ばかりで、どこがどこやらという感じである。


ならばと、リオは勢いに任せて土魔法で城壁を作っていく。そう、次から次へと。


城壁は、あっという間に完成した。さらに城塞都市の城壁と新しい城壁の間に橋を作り城壁の間を移動できるようにしてしまった。


「なんと、城壁をこの短時間で作ってしまうとは」


「これだけの魔力と技量があれば魔王城の防衛、いや魔王軍の将にもなれます」


「我らも人族の王国の侵略に恐れる事がなくなります」


領主の館の職員達は、こぞってリオを褒め称える。その言葉に思わずいい気になったリオは、城壁内に残った雨水を次々とかき出し、住民の避難用の家屋作りに入る。


同行した領主の館の職員は、持って来た住民のための避難用の家屋の想像図をリオに差し出す。だが、リオはそれに目もくれずに次々と城を作っていく。


ひとつ、またひとつ、またまた、さらに、どんどん・・・。


同行した領主の館の職員があっけに取られ何も言えない事など全く気にしない。もうリオの城作りを誰も止められない。


実は、浮遊城がワームの群れに襲われた時、修復に3日を要したのは装飾や部屋の配置に凝ったためであった。


それこそ、どこにでもありそうな構造の単純な城であれば、あっという間に完成させる事ができるのだ。


気が付けば、目の前には6つの城がそびえ立っていた。しかも本来なら絶対にあり得ない横に並ぶ形で・・・。


「どうです。これだけあれば住民の避難家屋には十分では!」


「「「はっ、はあ・・・」」」


領主の館の職員達は、困り果ててしまった。まさか短時間に城を作ってしまうとは、それも6つも横並びで。


どこの国へ行っても城が横並びに6つも建つ国など在りはしない。しかも姿形まで全て同じだ。


そんな時、リオの頭にげんこつが飛んで来た。


”ゴツン”。


「いっ、痛~い!」


「誰が城を作れと言いましたか。それも・・・6つも。あなたはバカですか」


リオにげんこつを見舞ったのは、この城塞都市ガンドロワの副領主でありリオの母親でもあるサラであった。


「でっ、でも・・・」


「言い訳は結構です。しかしこれだけの城をよくも短時間で作れるものです。中はどうなっているのですか」


リオは、手で頭をさすりながら城壁を降りると城の中へと案内を始めた。


「ほう、内装は殺風景ですが住むには問題ないですね」


「厨房やトイレは手を入れないと使えませんが、ただ住むだけなら明日からでも問題ないです」


「問題ないとかいう話ではないですよ。こんな城が作れるなら住民を全てこちに移して、城塞都市内の家屋の建て替えが出来ます」


「何なら城塞都市の中も全てこの城にしますか。10個くらいすぐにでも作れます」


「何を調子に乗っているのです!」


「ごっ、ごめんなさい。では、今すぐにでもこの城を取り壊し・・・」


リオの頭に本日二度目のげんこつが飛んだ。


”ゴツン”。


「いっ、痛~い!」


「あなたはどうしてそう事を急ぐのです。この城は、使わせてもらいます」


「えっ、よろしいのですか」


「それに・・・例の件は、この城で全て不問とします。よろしいですね」


「はい!」


城塞都市ガンドロワの副領主でありリオの母親でもあるサラは、リオが作った城を丹念に見て周る。まるで自身が城主にでもなるかの様に。


城の見学も終わり城壁の上へと上った時、荒地に斜めに傾いた岩の上に立つ城がサラの目にとまった。


「ときに確認なのですが、あそこで斜めになっている城は、貴方達のものですね」


「興味・・・ありますか」


「あれは、空に浮かぶ・・・浮遊城なのですよね」


「はい」


「あれに乗って砂漠を越えて来たと・・・」


「もちろん」


サラの目は、斜めに傾いた浮遊城に釘付けになっていた。それは、同行している領主の館の職員ですら分かる程であった。




リオは、レオに頼み鯰の背に皆を乗せると浮遊城へと移動した。


浮遊城は、斜めになったまま地面に激突したため、今も斜めに傾いたままであった。さらに大雨と落雷により城も城壁もボロボロである。


瓦礫が散乱し、いたる所に雨水が大量に残る浮遊城へとサラを案内したリオは、城の下層にある魔石に魔力を注ぎ込むと浮遊城を浮き上がらせた。


最初は、地面にのめり込んだ浮遊城がなかななか浮き上がらなかったが、徐々に空へ舞いがると、城塞都市ガンドロワを見下ろす高さへと浮上した。


領主の館の職員達は、崩れかけた城壁の上から眺める景色に恐る恐るではあるが目を輝かせていた。


「まさか城が空に浮くとは・・・」


「まだ試験運転の域を出ていません。それに砂漠を横断した時に二度もワームに襲われました」


リオの話を聞いたサラの表情が一瞬だけ険しくなる。


「ワームと戦ったのですか。つまり今ここに居るという事は、そのワームを退けたのですね」


「はい、一度目は巨大なワームでした。二度目は数百を超えるワームの群れでした」


「・・・そうですか、ワームの群れを倒したのですか」


サラは、若かりし頃に仲間と砂漠でワームの群れと戦い、パーティーが全滅しかけた苦い経験をしていた。


自身の娘もそれと同じ経験をした。だが娘は浮遊城で砂漠を横断し、ワームの群れを退け、しかも仲間が誰ひとりとして欠ける事なく生還している。


サラの目から見て娘のリオは若い時のサラを既に超える存在となっていた。サラには、空に浮かぶ浮遊城の城壁の上に立つ娘が何倍にも輝いて見えていた。




その頃、リオやリオの母親であるサラの足元の城壁のさらに下層にある小さな部屋では、背中に羽の生えた小さな者達が、窓から見える景色を飽きる事なくいつまでも眺めていた。


そう、窓から見える景色を眺めていたのは妖精達である。リオが浮遊城を作った直後から、とある一室に勝手に上がり込んみ、生活に必要な物資を大量に運び込んでいた。


妖精の数は、ざっと50体。城壁の下の小さな部屋には、鉢植えにされた黄色い実を成らせたラピリアの木がいくつも運び込まれ、ラピリア酒が入った複数の小さな樽さえも、それに枠付きの小さな扉が壁に立て掛けられていた。


妖精達は、浮遊城の持ち主がどこへ向うのかさえ知らずにいた。だが、それは些細な事である。


彼ら妖精達は、浮遊城の向かう先に新天地があると信じ胸を膨らませていた。そして、間もなくそれを実行に移そうとしていた。


妖精達の目的は、妖精の国を作る事。今の様に精霊ありきの妖精達ではなく、妖精達の国を作りたい。そんな思いから彼らは浮遊城に乗り込んだのだ。


そういえば、城塞都市に火を放ちケルベロスを放った反乱部隊は、いったいどこに行ったのやら。


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