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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第4章》ふたつの世界。繋がる世界。
125/218

125話.鬼人族の里帰りと新しいスキル(6)

実家の屋敷に戻ったルルであったが・・・。


ルルが、実家である屋敷に戻ったのは、その日の夕刻であった。


事前に手紙で帰省すると連絡は入れてあったが、ルルの父親は魔王国の軍を従える将であり、母親は魔王城を守る魔術師である。


そんな両親がルルの帰省のために仕事を休むことなどなく、屋敷には父親も母親も不在であった。


それは、最初から分かってはいたが実際に使用人しかいない広大な屋敷は、流石に寂しく少しばかり辛くも感じてしまう。


さらにサンドワームによる二度の襲撃により浮遊城は破壊の憂き目にあい、修復に三日を要してしまった。


予定もだいぶ遅れてしまい、もし両親が帰っていても会える保証はなかった。




使用人が用意した料理をひとり寂しく食べるルル。


それを察した執事長のバートがルルの話し相手となり、ルルがいなかった間の出来事を話はじめる。


今度は、ルルがが城塞都市を治めた時の話を始めると夜遅くまで会話は続いた。


ルルは、以前の自室に戻るとベットに横になる。ベットからは、懐かしい匂いがしている。


この屋敷を出たのは、つい最近という感覚でいた。だが、世の中は短時間でも変わるのだ。


既にルルは、3つの城塞都市の副領主となり、万を超える領民の命と生活を守る責務を負っている。


責任と重圧に耐え仲間との生活に馴染んでいく。そんな生活が続いていつかは結婚をして子供を産むのか。


そんな事を考えながらルルは、いつしか深い眠りについていた。




朝、自室で目が覚めると廊下から聞こえる声が何やら騒々しい。


ルルは、着換え終わると自室を出て執事長のバートに状況を確認した。


「バート、何か問題事か」


「お嬢様、おはようございます」


「屋敷の警備の者が全員武装しているな」


「はい、実は軍の部隊で反乱があったとの情報がありまして、何でも近く街を占拠したという事です」


「反乱か」


「はい。魔王軍第2軍のティマーを中心にした部隊で、厄介な事が・・・」


「なんだ」


「はい、使役している魔獣がケルベロスなのです」


「本当なのか」


「はい、それも10頭以上を使役している部隊という情報です」


「それでは、城塞都市の警備隊で太刀打ちできない・・・という事か」


「しかも、城塞都市の警備隊は、反乱部隊が占拠した街を奪還すべく動いておりますゆえ、城塞都市の警備が手薄になっております」


「それで警備を厳重にしているのか」


「この屋敷街もいつ攻撃を受けるやもしません。他の屋敷の警備の者と合同部隊を組織して対処する所存です」


「分かった」


ルルは、鎧を装備し手には魔法槍を持ち、使用人が用意した朝食も食べずに屋敷を後にする。


「ご武運を」


ルルの後ろで執事長のバートと数人の使用人が頭を下げて見送る。


屋敷の門を出ると、そこには屋敷の警備20人が隊列を作り、屋敷の警備にあたっていた。


「ルル様。お出かけですか」


「ああ、私も武人だからな。黙って屋敷に籠っている気にはなれん」


「止めはしませんがお気をつけて」


「爺もな」


「ははは、これは手厳しい」


屋敷の警備隊の隊長を務めるワーウィックは、ルルが子供の頃から戦い方を仕込まれた武人である。


元は、魔王軍の父親の部隊にいた精鋭なのだが、歳を取り軍隊を辞める時にルルの父親であるガハが屋敷の警備隊へと引き入れたのだ。


ルルの実家の屋敷があるこの街は、貴族の屋敷が点在する住宅街で城塞都市程ではないが、高い城壁に守られており、私設警備隊がこの住宅街を守っている。


とはいえ、その数ざっと200人。とてもケルベロスを使役する反乱部隊と戦える数ではない。


空を見上げるとうっすらと雲を纏ったリオの浮遊城が城壁の上へと移動していて、リオの従魔である鯰も住宅街の上空を旋回している。


「リオもレオも早起きだな。もう準備万端か」


ルルは、住宅街を取り囲む城壁へ上ると警備隊の責任者に状況を確認する。


「街の外でケルベロスに襲われた者が数名おります。恐らくこの住宅街も反乱部隊の目標のひとつと思われます」


「ケルベロス相手では、はやり厳しいか」


「ケルベロスは、この程度の城壁など簡単に飛び越えます。しかも魔法攻撃にも物理攻撃にも耐性があります」


「ならば私もできるだけの事は協力する」


「恐れ入ります。各屋敷からも警備の者が応援に来るとのことなので、少しばかり安心しております」


その時、ルルのすぐ脇に大きな鵂が舞い降りた。


それを見た警備隊が思わず腰の鞘から剣を引き抜く。


「すまん。これは私の従魔だ。共に戦うのでよろしく頼む」


ルルが微動だにせず、城壁の外を見ながら己の従魔の説明をする。


「じゅっ、従魔ですか。しかし大きな梟ですな」


「こいつは鵂だ」


「失礼・・・」


警備隊の隊員が会話をしながら腰の鞘に引き抜いた剣を戻そうとした時、隊員は剣を鵂とは別の方向へと向け直した。


その行動にルルも反応し、魔法槍を構える。


いつの間にか城壁の上には、3つの頭を持ち口から炎をたぎらせるケルベロス3体がこちらを凝視していた。


”グルルルルルル・・・”。


ケルベロスは、3つの顔が怒りと憎しみに満ちた表情を浮かべ、今にも警備隊の隊員に襲いかかろうとしていた。


「来たか。さすがにケルベロスというべきか。我らに悟られずに城壁に上るとは」


「皆、慌てるな魔術師は物理防壁と魔法防壁を張れ。ケルベロスには、魔法攻撃も物理攻撃も聞かないから持久戦だ」


警備隊の隊員が剣を構える隊員に指示を出していく。だが隊員の顔はどれも険しく半ば恐怖を感じているようにさえ見えた。


警備隊の隊員が隊列を組み盾を構え防壁を構築したその時、ルルの鵂がヒョコヒョコと歩き出すと無防備にケルベロスの前へと進み出た。


「鵂よ。ケルベロスに何か策でもあるのか」


ルルの言葉に鵂は、片方の翼を広げて見せた。恐らく”そうだ”と言いたかったのだとルルは思った。


鵂は、羽を広げてどこからか黒い玉を出すとケルベロスに向かってポンと投げ出した。


体調3mにもなる巨大な鵂をに思わず怯むケルベロス。だが、それも一瞬であった。ケルベロスは、3つの口から炎の塊を吐き出すとそれは鵂に向かって飛んで行く。


鵂に向かって飛ぶ炎の塊。


それを鵂が投げた黒い玉がまるで生きているかの様に炎の塊の前へと飛び出すと、黒い玉は炎の塊を吸い込んでしまう。


ケルベロスは、何度となく鵂に向かって何度となく炎の塊を吐き出す。だが、その度に鵂が出した黒い玉に吸い込まれていく。


ケルベロスは、炎の玉による攻撃を諦めると、黒い玉を避けながら鵂へと近づいていく。


鵂は、ケルベロスの動きを見ながらひょいと羽を動かす。その瞬間、黒い玉が鵂の羽の動きに操られいるかの様に動き出すと一瞬で3体のケルベロスを黒い玉の中へと吸い込んでしまう。


「おおっ。ケルベロスを一瞬で倒したぞ!」


思わず警備隊の隊員達からどよめきが起こる。


「隊長、あの方はガハ様の末娘のルル様です。最近、南の辺境地域の3つの城塞都市を支配下においたそうです」


「やはりそれだけの能力をお持ちということか」


そんな言葉が、ルルの耳にも聞こえてきて、思わず頬を赤らめてしまう。


「すまん。従魔が勝手な事をした」


「いえ、助かりました。3体のケルベロス相手に我々では力不足でした」


鵂は、ケルベロスを吸収した黒い玉を回収すると、その玉に片方の羽を押し込むと何やら探し物をするかの様に黒い玉の中をまさぐる。


そして何かを見つけたかの様に黒い玉から羽を引き抜いた。


そこには、さっきまでルル達に牙をむいていたはずのケルベロスが、従順な飼い主を見るかのよ様な目で首を掴まれて大人しくしている。


鵂は、3体のケルベロスを黒い玉から出すと城壁の上に座らせて頭をなでて、従順である事を見せつけた。


「まさかケルベロスをティムしたのか」


ルルの言葉に鵂は首を横に振り、ケルベロスの3つの頭の上に生えた華憐で小さな黄色い花を羽で指さした。


「花?まさか、その花でケルベロスを従えさせているとでも」


鵂は、コクっと頷く。


さらにケルベロスの前に羽を差し出した鵂に対してケルベロスが右の前足、続いて左の前足を出してお手とおかわりの仕草を見せた。


”ハッハッハッ、ワン”。


「おおっ、ティムされたケルベロスをあっという間に従えたぞ」


「信じられない」


「ケルベロスの顔が、先ほどとは違って穏やかな顔つきだ」


警備隊の隊員から思わずどよめきが走る。


「ほう、お前にそんな能力があったのか・・・まてまて、という事は、砂漠で遭遇した巨大なサンドワームも従えているのか?」


鵂は、ルルの言葉を聞くとなぜかあっちの方向を見ながら口笛を吹き始める。


「そうか、それがお前の能力なんだな。まあ、あれだ。お前の好きにすればいい」


鵂は、従えたケルベロスに羽を広げると何かの指示を出す。それを見た3体のケルベロスは、城壁の上を走り等間隔に並び城壁の外を監視するかのうよな行動に移る。


「見ての通りだ。ケルベロスがこの街の警備に入る。悪いが関係各所に連絡を頼む」


「はっ、はい。了解です。しかし従魔がケルベロスを短時間に従える事ができるとは、3つの城塞都市を短期間で治めた手腕に脱帽です」


そう言い残すと警備隊の隊員は、各部署にケルベロスが仲間である事を伝えに走し出した。


「城壁の外にティマーがいるはずだ警戒しろ」


伝令が警備隊の隊員に警戒するように促していく。


そこにレオの鯰が空を泳いで現れた。


鯰は、ルルの鵂よりもはるかに巨大な体をしているため鯰を見た警備隊の隊員は、今度ばかりは尻もちをつく者が続出した。


「ああ、すまん。私の仲間とその従魔だ」


もう警備隊の隊員は、誰も声を発しない。


「ルル様。城塞都市ガンドロワで火の手が上がっています」


「分かった。ここは、ケルベロスに任せて城塞都市ガンドロワに向かう」


ルルは、鵂に背中に跨ると大きな翼を広げた鵂は、音もなく城壁の上から飛び立っていく。


レオの鯰も音もなく空に向かって泳ぎ出す。


それを見ていた警備隊の隊員達は、ただ口を開いたまま動くこともできずにいた。


3体のケルベロスは、城壁の上で敵の侵入に警戒を続けていた。目の前に敵でもいるかの様に。


うっすらと雲を纏った浮遊城は、移動速度を上げると城塞都市ガンドロワへと向かう。


反乱部隊が待つ城塞都市ガンドロワで、ルル達と反乱部隊の戦いが始まろうとしていた。


ルルの従魔である鵂は、何かを隠しているようです。


ケルベロスを従えた鵂、もしかすると砂漠で遭遇した巨大なサンドワームも・・・。


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