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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第4章》ふたつの世界。繋がる世界。
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121話.鬼人族の里帰りと新しいスキル(2)

リオは、カルから贈られた魔法杖で城壁と城を作ります。


ですが、それだけで終わるはずもなく・・・。


魔術師であるリオは、カルから贈られた魔法杖を用いて、城塞都市を守るべく城壁を作る土魔法の訓練に明け暮れていた。


副領主の仕事の合間をみては、城塞都市を抜け出し茫漠の地で魔法によりひたすら城壁を作る毎日。


最初は、曖昧な土くれの壁が出来るだけであった。だが、回数を重ねる事により徐々に城壁という形が出来上がっていく。


今では、通路、階段、城門、塔といったものまで自由に作れる迄になった。


だが、これでは何かが足りない。いくら城壁や城を作ったところで戦う兵士がいなければ、城などただの障害物でしかない。


とはいえ、兵士を作る事はできない。いや、できない訳ではないが数百の土くれのゴーレムを作ったところで使い物にはならない。


それは、カルの戦い方を見て悟ってしまった。カルは、盾から見えない何かを出してはゴーレムのコアを簡単に破壊してしまう。目の前でそれを見せられた時は唖然とした。


いやいや、カルを基準にして物事を考えてはいけない事ぐらいリオも理解している。カルは、特殊なのだ。


だが、カルの行動を超える力・・・、いやカルを超える想像力を発揮したい。そうすれば、どんな者をも寄せ付けない力を身に着けられる。


”魔術は、想像、創造、発想が大切である”。


魔術を教えてくれた師でもある母親の言葉である。


しかもカルからどんな属性の魔法でも放つ事ができる杖を贈られたのだ。剣士であるレオよりも使いこなせて当然、ルル様でもうなる程の魔法を使いこなせてこその魔術師。


リオのある意味、悲壮感を漂わせながら”想像、創造、発想”に全力を注いだ。




ある時、魔導書に精霊界を描いたという挿絵が載っていた。


精霊界などいうものが存在するのかは不明だが、その挿絵には、空に無数の山や島が浮いていた。


以前は、それをただ漠然と見ていた。だが、目の前に置かれた杖を見てその考えが徐々に変化していく。


もしかしたらこの杖があれば、魔導書の挿絵の様な浮島が作れるのではないかと。



まずは、手持ちの魔石に魔力を蓄えると土くれと石を集めて小さな塊を作り、それが宙に浮くかを確認した。


それは、あっさりと出来てしまった。


ならば、それがどれくらいの大きさまでできるのか、どれくらいの期間維持できるのか。魔石がどれくらいあればよいのか。


ひたすら試行錯誤を続ける。


その結果、手持ちの魔石では人が数人乗れる程度の土くれの塊を1週間程度維持できるのが限界であった。


それ以上になると魔石が魔力に耐えきれずに粉々に砕けてしまう。


魔道具屋や冒険者ギルドで扱っている魔石では、とても使い物にならない事もわかった。元々ダンジョンでドロップした魔石が魔道具屋や冒険者ギルドで売られているのだ。だからダンジョンでドロップする魔石も同様である。


では、ダンジョンの遥か最下層でドロップする魔石ならどうだろうか。


いや、無理である。そんな最下層に行ける様な力をAランクのリオですら持ち合わせてはいない。


しかしながら目の前にある魔法杖。そこに埋め込まれた魔石は、ダンジョンでドロップする魔石とは、明らかに異なっている。


この魔石と同等。或いはこれよりも大きな魔石があれば、あの魔導書の挿絵にあった様な浮島を作れるのではないか。


つまるところ魔石の入手が全てであり、それを持っていそうな人物となるとただひとり。


それはカル・・・。


ならば、それを少しだけ分けてもらう事はできないかと。




とある日。


城塞都市アグニⅡにある仮の領主の館の会議室に集まったルル、リオ、レオ、それにカルが久しぶりに顔を合わせる。


その席上でレオがカルに対して魔石が欲しいと言い出した。いや、それは私が言いたかった事なのだ。こういった事に関しては、レオの方が素直だ。


するとカルもこんな事を言い出した。


「ありますよ。ゴーレムのカルロスを作るために何度もダンジョンに入ったので、大きな魔石が沢山あります」


やはり持っていた。しかもカルは、剣を持たずに大盾だけで魔獣相手に戦って勝ってしまう不思議な存在だ。


会議テーブルの上に出された魔石は、今までに見た事もない様の大きな魔石である。しかもそれをカルが鞄から次々と出しては並べていく。


欲しい。この魔石なら絶対に浮島が作れる。そうリオは確信した。


すると、レオがテーブルの上の魔石を3個も自身の胸元へと移動させた。


なっ、なんという強欲。だっ、だが強欲と言われても欲しいものは欲しい。


しかも、レオが魔石を取るのは1回だけとは限らない。さらにルルの腕が一瞬動きそうになる。

まずい、ルル様も魔石を欲してる。ここでルル様に後れを取ってしまうと浮島を作る夢が潰えてしまう。


ならば、先手必勝・・・。


リオは、目の前の魔石を両腕を広げて囲えるだけ囲うとごっそりと自身の胸元へと引き寄せた。


「おい、リオ。それはレオよりも強欲だぞ」


表情を引きつらせたルルの声がリオに向かって放たれる。


「いえいえ、私が研究している土魔法による城壁と城の構築には、これくらいの魔石が必要かと」


リオも負けじとルルに言い返す。


結局、ルルもテーブルに置かれた残りの魔石を全て持ち返ることになった。





その日の夕刻。


副領主の仕事を終えたリオは、茫漠の地でカルから貰った魔石を使って浮島を作ってみた。


最初は、テーブル型の平たい浮島を思い浮かべ作ってみたのだが、浮島に乗ってみると風が吹く度に浮島が左右に上下に揺れる揺れる。


「なっ、なんでこんなに揺れるんだ。しかも風に煽られて立っていられない」


思わず浮島の地面に四つん這いになり、落ちないようするのが精いっぱいである。


あの魔導書にあった浮島の挿絵は、もっと大きな島であった。つまり、小さな島では使い物にならないということか。




数日後。


リオを考えを改めた。土や石を集めて浮島を作るのではなく、元々ある岩を浮かせるという方法に。


この城塞都市群が点在する地域を囲う様に広がる外輪山。場所によっては岩山となっている場所も多数点在する。


そこへ出向いては、よさそうな岩山を見て周る。すると巨大な柱の様な岩が立ち並ぶ場所を見つける事ができた。


目の前には、思い描いた様な岩がある。後は、その岩が魔石で浮かす事ができるのか。恐らくあれだけの大きさの岩ともなれば城ひとつ分の重量を軽く超えるであろう。


まずは、地上と繋がっている岩の底部を魔法で亀裂を入れて行く。これが思った以上に骨の折れる作業であった。


何十回、何百回となく炎魔法を放ち岩の底部を砕いていく。通常なら魔力切れを起こすはずだが、カルから贈られた魔法杖なら殆ど魔力要らずで魔法を放てる。


それでも1日では、どうする事もできずに何日もこの場所に通い、岩の底部を魔法で削る作業に明け暮れた。


そんなある日、いつもの様に柱状の岩のある場所へ足を運ぶと、柱状の岩は根本から折れて他の柱状の岩に倒れかかっていた。なんと好都合であろうか。


浮遊魔法で倒れかけた岩の頂上へと移動したリオは、そこに4つの魔石を埋め込み魔石に魔力を送り込む。


すると徐々に柱状の岩が動き出した。


「ほっ、本当に岩が動いた」


巨大な柱状の岩は、思いのほか宙を早く移動する事ができ、風が吹いても揺れる事もなく静かに空を浮きながら進んで行く。


リオは、岩の上に城壁を作り、小さな城を作った。




次の日の朝。


城塞都市アグニⅡの近くに空に岩山が浮いていた。しかも岩山の上には、築城中ではあるが城が築かれていた。


城塞都市アグニⅡの城壁の上でリオがカルから送られた魔法杖を持ち、巨大な浮遊城の前で

仁王立ちをする。


「ルル様。レオ。これがカルさんから送られた魔法杖と魔石に対する私なりの答えです」


「凄いな。これは本物の岩なのか」


「はい。あちこちの岩山に行って気に入った岩を見つけるのに苦労しました」


「あの岩の上の城は・・・」


「あれは、土魔法で作った城と城壁です。まだ築城中です」


「いや、さすが魔術師と言っておこう。私ではこうはいかんな」


ルルのその言葉に思わず恥ずかしそうに顔を赤らめるリオ。


「こんな浮遊城を作れたのは、全てカルさんのおかげです。あの魔法杖と魔石がなければできませんでした」


「だが、それがあっても私には作れる代物ではない」


そんな会話を続けるルルとリオの間に、レオが割って入る。


「でも、岩など使わなくても他のものでもよかったのでは。例えば海に浮かぶ大舟とか」


「いえ、やはり城を作るなら岩の上です。岩なら魔法攻撃にさらされてもびくともしませんし、難攻不落の城はやはり岩の上です。それは、私なりのこだわりです」


リオは、高さ50mもの柱状の岩の上に城壁と城を築いた。浮遊城を地上に降ろした時に城まで上がれる様に岩の壁に階段も設けた。


少しづつ、すこしづつ浮遊城は完成してしていく。リオは、この浮遊城で皆と一緒に里帰りをするつもりでいた。


だが、この浮遊城を見た魔王国の大臣達は、ルル達にあらぬ疑いをかける。


「あの小娘共は、目の届かぬところで反乱を企てている」


そんな事になるなど考えもしない鬼人族の3人娘であった。

浮遊城を構築したリオ。ですが、それを疎ましく思う者が大勢現れます。


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