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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第1章》 僕は、おかざり領主になりました。
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12話.魔法アイテム屋

魔法が使えないカルの目の前にある店の看板が。

カルは、城塞都市ラプラスの路地裏にある見えないところに小さな看板を掲げている魔法アイテム屋を見つけた。


というか、店の前で転んだ。


転んだら店の看板が目に入った?歩いている時には目にも入らない看板だが、転ぶと目に入る看板ってなんだ?もしかして転んだのも罠か?罠なのか?


まあ、せっかく目に入った店なので入ってみることにした。


扉を開けると、棚には何に使うのか全く分からないアイテムが雑然と並んでいた。ぱっと見て興味をそそられる物はたいして無さそう。


店の中は狭く、商品らきき物に埃がたまっていて商品が売れていないことが一目で分かるし、店主も商売をする気が全くないことがよく分かる。


店主らしきおじさんもカウンターの奥で椅子に腰掛けて寝ている。


この店に入って失敗だったかなと思いながらも、狭い店内を見て周った。


すると、棚のすみに硝子でできた筒の中に水晶の様な石が入ったアイテムを見つけた。


硝子の筒の水晶は、透明なもの、赤色、白色、黄色など色とりどり並んでいた。でも、どの筒も誇りを被っているのでやはり汚く見える。


その誇りまみれの硝子の筒をひとつ手に取り、中の水晶の様な石を覗いていると・・・。


「坊主、気に入ったか。その硝子の筒に入っている魔石には魔法が封印してあるんだぜ。そいつを地面に投げると封じてある魔法が発動するんだ。だから、落とすなよ!」


そっと硝子の筒を元の棚に置いた。そんな危ないものを棚に雑然と置くとかありえないだろう。


「ははは。ビビりだな。店に置いてある”魔石筒”には保護の魔法をかけてあるから落としても魔法は発動しないよ」


棚に戻してはみたものの、店主が言った”魔石筒”?というアイテムから何故か目を離すことができなかった。


「おじさん、これってどんな魔法が封印されているの」


「お兄さんだ。俺はおじさんと言われる様な歳じゃない」


「おっ、お兄さん。これが発動するとどんな感じ?」


お兄さんは、椅子から腰を上げると立ったままカウンターに両手をついて商品の説明を始めた。


「その赤い魔石が”炎魔法”、白い魔石が”氷魔法”、黄色が”雷魔法”だな。魔法は中級魔術師の下位クラスが放つ魔法程度の威力があるな」


「そいつは”魔石筒”っていう商品名だ。それがあれば魔法が使えないやつでも魔術師になれるって代物だ。ただ、魔法は中級魔術師の下位程度だから、それなりの魔獣にしか効果はないがな」


カルは、魔法が使えない。だから魔法を使ってみたいという欲求にいつも駆られていた。


「ふーん。ひとついくらくらいするの」


「そうだな、ひとつ銀貨2枚。と言いたいが、この店を開いて半年ほど経つがまだ1個も売れたことがないんだ。だから半額の銀貨1枚にまけてやる」


「1回の魔法が銀貨1枚か」


「これって使ったら終わりだよね。1回の魔法で銀貨1枚は高くない?」


お兄さんは、カウンターに乗せた両手をバタつかせながら身を乗り出して興奮気味に言った。


「おいおい。そいつを使う場面を想像してくれよ。もしダンジョンで仲間の魔術師がMP切れを起こし、且つ魔獣に囲まれた場面だ。そいつで魔獣を倒しつつ撤退するんだよ。どうよ。普通なら魔獣に食われちまうんだぜ。でもそいつがあれば助かる。銀貨1枚で命が買えるんだぞ、安い買い物だろ!」


確かに。お兄さんは口が上手いのか、その場面なら銀貨1枚は確かに安いと思う。


「お兄さん。この魔法筒って取っておいたらずっと使えるの」


「無理だな。魔石に魔法を封印するための魔法を施してあるが、効果は半年がいいところだな。それ以降は、魔石から自然に魔祖が漏れて使えなくなる」


「半年の期限付き、1回こっきりの使い捨てアイテムに銀貨1枚か」


カルが、腕を組んで悩みながら唸っていると。


「坊主、試しに使ってみるか。だったら3個で銀貨2枚でいいぜ。気に入ったらまた買ってくれ。でも、坊主金持ってるのか」


カルは、棚から赤い魔石、白い魔石、黄色い魔石の魔石筒を手に取ると、店のカウンターへと運び袋から銀貨2枚を取り出した。


「おう、お前、ガキのわりに金持ってるな。今、保護魔法を解くからな」


まあ、あれかな。社会勉強だと思もえばいいかな。でも銀貨2枚は高い気もするけど。


カルは、買った3つの魔石筒を手に持ち、城塞都市を出ると荒地を歩きながら期待に胸を膨らませていた。


城塞都市ラプラスの西側には、住む人もなく畑もなく荒地と草原が斑模様に広がっているばかりの土地が延々と広がっていている。


それでいて魔獣といえばスライム程度しかいないので、武器といえば死んだお爺さんが愛用していたショートソードくらいしか持っていないカルには、魔法の試し撃ちには絶好の場所であった。


荒地の遥か遠くには、数匹のスライムが見えているがいきなり魔獣相手というのも怖いので、とりあえず魔石筒を投げて威力を試してみることにした。


まずは、赤い魔石が入った魔石筒を遠くへと投げた。魔石筒は、空を弧を描く様に飛んでいくと荒地の石に当たり粉々に砕けた瞬間、”ドン”という轟音とともに赤い火柱が空へ向かって立ち上った。


「・・・・・・!」


あまりの炎の大きさと勢いに口を大きく開けたまま声が出なかった。


立ち上った炎は思いのほか大きく、荒地の枯れ草が勢いよく燃え始め、さらに火はどんどん広がっていった。


「まずい。火が広がってる火事だ。大事になる前に消さないと。そういえば、白い魔石は氷魔法だって言ってたっけ」


カルは、左手に持っていた白い魔石の魔法筒を勢いよく燃えている枯草の中心へと投げた。すると、轟音と共に地面が白い氷で覆われ、さっきまで荒地で燃えていた火が何事も無かった様に消えしまったではないか。


「・・・・・・!」


閉じた口がまたまた開いたまま声を出すこともできず、凍った荒地を茫然と見ていたカルは、その場でしばらく呆けていた。


店の店主は、中級魔術師の下位クラスだと言っていた。だが、その魔法がこんなに威力が大きいとは思っていなかったカルは、改めて魔術師が使う魔法に魅了されていた。


少しの時を経てカルは、なんとか我に帰り、左手で握り締めていた最後の黄色い魔石の魔法筒を投げてみた。魔石筒は、地面に落ちると粉々に砕け雷撃を四方に放ち地面を黒く焦がした。


「・・・・・・!」


魔法が使えないカルにとって初めての魔法体験は、思いのほか衝撃が強すぎた。カルは、荒地を全速力で城塞都市ラプラスへとへ向かってひた走っていた。向かった先は。


”ドン”。


魔法アイテム屋の扉が勢いよくあけ放たれた。


「お兄さん。お兄さん。魔石筒使ってみたけど3個ともすごく良かった!」


「おう、そうか・・・・・・えっ、3個全部使ったのか」


「うん。炎の魔法も氷の魔法もすごい威力だった。あれで中級魔術師の下位クラスって魔術師ってすごいね」


あれ。魔石筒に封じた魔法ってそんなに威力はなかったはずだが・・・・・・まあ、ガキの言うことだからなあ。


「で、また買ってくれるのか」


「うん。赤と白と黄の魔石筒を各10個ずつ」


「おい、いきなり30個かよ。すると金貨3枚になるぜ」


「えっ、3個で銀貨2枚だから30個で金貨2枚でしょう」


「あれは、お試しの価格だろ。この価格が本当なんだよ」


「お兄さんケチ臭いな~。ここで安く売ってくれたら、もっと買いに来るんだけどな~」


店のお兄さんは、カルが言った”もっと買いに来る”を”また買いに来る”と言い間違えたと思って聞き流していた。まあ、子供の言い間違いなんてよくあることくらいにしか思っていなかった。


「30個かあ。悪いが在庫がないんだ。すぐに必要ならなんとか準備するが」


「えーとね。3日後に遠くの村に行く予定なんだ。そこで魔獣と出くわしたら使いたい!」


「よし。なら知り合いの魔術師に声をかけてなんとか揃えてみるか」


「お兄さん。ありがとう。ならお金は前金で払っておくね。3日後にまた来るから!」


そう言うとカルは、勢いよく店を後にした。


魔法が使えないカルでも魔法アイテムで魔法が使えるようになりました。


でも、お金がないと買えない魔法アイテムです。普通の初級冒険者なら買えません。

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