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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第4章》ふたつの世界。繋がる世界。
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119話.カルロス復活

やっとゴーレムのカルロス復活です。


”闇を打ち滅ぼす者”の面々と盾のダンジョンに入ったカル。


剣爺からゴーレムのカルロスを復活させるのに面白い材料だという事で、5層のボス部屋で流体金属のスライムを狩った。


だが、スライムから吸い取った流体金属を剣爺が調べたところ金属としてはいまいちとのこと。


あの流体金属を使うならやはりミスリルを混ぜる必要があるらしい。ただ、液体と固体の性質を魔力で制御できる金属というものを剣爺ですら初めて見たという。


さらにスライムが大きくなった様に見えたのは、表面積が増えただけで体積はちっとも増えていなかったという。それにしてもどこからあんな量の金属が出てきたのか謎のスライムである。



仮にスライムの流体金属をカルロスの体に使う場合、かなりの量を必要とするらしい。


それとゴーレムの核として巨大スライムを倒した時にドロップする魔石を何個か欲しいとのこと。


結局、あれから盾のダンジョンへ何度も足を運び巨大スライムを狩る事になった。


ただ、いくらスライムを倒しても地龍を倒した時の様な罪悪感をカルが感じる事はなかった。結局、魔獣の見た目に翻弄されているだけではないかとメリルやライラに諭されてしまうカル。


確かに歩いていて道端の蟻を踏み潰したからといってそれに意識を集中する事はないし、踏み潰した蟻に罪悪感を感じる事もない。


でも、そうやって魔獣を狩る事に罪悪感の欠片も感じないという風にはなりたくない。そんな思いも捨てきれずにいたカルであった。




盾のダンジョンに何度も足を運んでから幾日かが経過したある日。


領主の館にあるカルの部屋には、金属ゴーレムであるカルロスの姿があった。


ビキニパンツをはいた鍛え上げられた肉体美を晒す金属ゴーレムのカルロス。笑顔の口元で光る歯がとても印象的である。


「剣爺。カルロスだ。カルロスが復活した!」


腰にぶら下げてはいるが一度も使った事のない短剣。その短剣に宿る神である剣爺に頬ずりしながら感謝を伝える。


「結局のところ以前使っていたゴーレムの核は、再生できんかったんじゃ」


「えっ、それは・・・」


「カルロスは、同じ姿をしているが全くの別物じゃ」


「でも、最初に出会ったカルロスと同じって事なんだよね」


「言い換えればそうじゃな。出会ったばかりの真っさらなカルロスじゃ」


「ならば、また一緒にいれば同じ様になるよね。剣爺、本当にありがとう」


「ほほほ。ならば、新生カルロスの特徴をいくつか披露するのじゃ。まずはゴーレムの核を3つに分けたのじゃ。これであればゴーレムの核を壊されても代替可能じゃ」


カルは、カルロスの肩に乗って部屋の中をクルクルと回り、剣爺の話など聞いていない様子である。


「それにカルロスの体を構成している金属じゃが、盾のダンジョンの金属スライムとカルが持っていたミスリルの特品で造ってある」


「それは、もしかしてあのスライムの様に形を変えられるっていうこと」


「そうじゃな。それにゴーレムの核を3つも持っておるからな。そのうちのひとつで魔法を放てる様にしたのじゃ。まあ、わしは金属の神じゃから魔法はあまり得意ではないがの」


「凄いよ剣爺。魔法を放てるゴーレムなんて見た事ない」


「そうじゃろ、そうじゃろ、もっと褒めるのじゃ」


思わず浮かれるカル。早速、金属ゴーレムのカルロスを連れ、メリルとライラと共に城塞都市ラプラス周辺の視察に向かう。


担当官の案内のもと、新しく開墾した畑や水路などの状態を確認しつつ村々を見て周る。


途中、酒蔵に寄りドワーフのバレルにラピリア酒の生産状況や、警備隊に配備する新しい武具の生産状況についても話し合う。


さらにバレルが中心となって建てた剣爺の教会も完成していた。


金属の神として祭られた剣爺は、実際の10倍以上の凛々しい姿の神像として祭壇の上に祭られていた。


その祭壇には、なぜか2体の龍の像も祭られていて、剣爺は、2体の龍を従える神となっていた。


バレルに確認してみたところ、2体の龍はお酒を買いに来る氷龍と風龍とのこと。


「そういえば、風龍さんとはまだ会った事がないなあ」


「ははは。いつも酒を買いに来るからな。そのうち会えるわい」


周りの人に話を聞いてみたところ、氷龍と風龍はたびたびここにやって来ては、バレルと酒を飲んでいるらしい。


龍と飲み仲間のドワーフというのも凄いけど、氷龍や風龍がやって来ても村の人達は誰も驚かないらしい。


人の慣れって恐ろしいと思うカルであった。




数日後、いつもの様に城塞都市ラプラスとその周辺の村々に視察に出かけたカル。だがその周囲を飛ぶ妖精の姿がやたらと目に付くようになる。


妖精達は、カルを見ているというよりゴーレムのカルロスを見ている様に見える。


妖精さんに声をかけてみても口笛を吹いて誤魔化すばかりで何か悪だくみを考えているのではと察したカル。


案の定、それは起こってしまう。




カルに同行するゴーレムのカルロス。その周囲を飛び回る妖精達。


いつしか妖精達は、カルロスの金属の体をぺたぺたと触りはじめると、どこから取り出したのか小さな四角い箱の様なものをカルロスの体に充てていた。


するとなカルロスが突然飛び上がった。


小さな四角い箱をカルロスの体に充てていたのは、1体の妖精だけではなく複数の妖精達が同じ事をカルロスに対して行っていた。


「妖精さん。いったい何をしているの?」


だが、妖精達はカルの質問に答える事もなく小さな箱をカルロスに押し充てていく。


たまりかねかたカルロスは、妖精達から逃げ回りはじめる。すると今度は、妖精達が手の平から蔦を出してカルロスが自由に動けない様に蔦でグルグル巻きにしてしまう。


いったい何をやっているのかと妖精達に問い詰めるカルであったが、相変わらず口笛を吹いて誤魔化す妖精達。


そして蔦でグルグル巻きにされたカルロスが解放されるとその姿は、さっき迄の半分程の大きさになっていた。


「カッ、カルロス。どうしたのその体!」


カルロスは、身振り手振りで妖精達がカルロスの体を構成する流体金属を奪っていった事を教えてくれた。


「妖精さん達。カルロスに酷い事をしないでよ!」


カルの声に思わず逃げ惑う妖精達。気が付けば、さっきまでいた妖精達の姿はどこかえ姿をくらませていた。


それ以来、カルロスの周囲を飛ぶ妖精達の姿はなく、妖精達の行動に目を光らせるカルの警戒行動も空振りに終わる。



その頃、カルロスの周囲を飛び回っていた妖精達はというと・・・。


精霊界から持ち込まれた巨木の研究所の一室でとある研究を行っていた。それは、カルと行動を共にしている金属ゴーレムと同じ物を作ろうというものである。


妖精達は、ゴーレム製作の知識を精霊界のデータバンクから盗みだし、いつでもゴーレムを作れる状態であった。


だが、カルと行動を共にしているゴーレムを構成する金属の性質に手を焼いていた。それは、魔力によって金属の性質を持ったり、或いは液体金属と化したりと普通に製作されるゴーレムに使われる金属とは明らかに異なっていた。


さすがに精霊界の知識を盗んでゴーレム製作を始めた妖精達であったが、手に負えない金属に頭を抱えていた。


それからさらに数日がたった頃、セスタール湖の湖畔にある極楽芋の畑で芋の収穫を行うカルとそれを手伝うお猫サマの姿があった。


教会の子供達は、芋のパイ作りで手が回らないため、暇にしていたお猫サマが芋掘りへとやって来たのだ。


芋の精霊達といっしょに芋掘りを行い汗を流すお猫サマ。とても神様とは思えない光景である。


カル、メリル、ライラ、それにゴーレムのカルロスと精霊神のお猫サマが畑で芋ほりをしながらセスタール湖の姿を眺める。


すると、セスタール湖の湖畔にローブを纏った冒険者風の者達が現れた。その数3人。


最初は、セスタール湖に放した水龍を狩りに来た冒険者かと思ったカルは、少し緊張しながらその3人の動向を注視していた。


だが、その3人はセスタール湖ではなくこちらに向かっていた。


「にゃ、誰を狙ってるにゃ。でも人の気配がしないにゃ」


最初に反応したのは、精霊神であるお猫サマ。そしてゴーレムであるカルロスである。


カルロスは、身振り手振りで向かって来る3人がカルロスと同じゴーレムである事を告げる。


「えっ、ゴーレムですか」


以前カルは、城塞都市アグニⅡとの戦いで多数のゴーレムと戦ったが、それ以来ゴーレム使いと遭遇した事はなかった。


しかも城塞都市アグニⅡのゴーレムは、定番の土と金属でできたずんぐりとしたゴーレムで動きも鈍く、ゴーレムの核を砕くのも容易であった。


さらに操る魔術師を倒してしまえばゴーレムは動かなくなるなど以外と欠点の多いものであった。


だが、目の前のゴーレムはローブを着ているとはいえ、見た目の動きは人の動きと遜色なく、まるでカルロスを模した様な・・・カルロスを模したゴーレム?


カルは、そこである事を思い出した。数日前に妖精達がカルロスの周りを飛び交い、カルロスに執拗に何かをしていた事を。


まさか妖精達がカルロスを模したゴーレムを作った?


極楽芋の畑の周囲を見ても妖精達の姿はなく、妖精達がゴーレムを操っているのかは定かではない。


だが今までの経緯からすれば、このゴーレムを作ったのは妖精達でほぼ間違いない。


「妖精さん。そこにいるんでしょう。カルロスを真似たゴーレムを作っていったい何をする気?」


だが妖精達は、姿を現さない。


ローブを纏ったゴーレムは、極楽芋の畑へとやって来ると、身に纏っていたローブ脱ぎ捨てその姿を晒した。


「そっ、そんな。本当にカルロスにそっくりなゴーレム」


カルは焦った。もしカルロスと同じ性能であれば3対1でカルロスに勝ち目はない。


そして3体のゴーレムがカルロスに襲い掛かる。


ところが3体のゴーレムの動きが妙である。あきらかに微妙な動きをするのだ。


さっきまで自然な動きで歩いて見せた3体のゴーレムであるが、今は変にぎごちない動きでカルロスを攻撃している。


3体のゴーレムは、カルロスに対して武器を持たずに体術による攻撃を行っている。


その体術による攻撃のひとつひとつの動きがぎこちないのだ。ゴーレムとして見れば、とても自然な動きだと拍手喝采できるのだが、人の動きと比べると明らかにぎこちない。


対してカルロスの動きは、人が行う体術を遥かに超える動きを見せていた。


しかも新生カルロスには、新しい能力が備わっている。


カルロスが相手のゴーレムの繰り出す体術に相対する様に受け身を取りながら、相手のゴーレムの腕を掴むとその瞬間、カルロスの腕から雷撃が発生し相手のゴーレムの体へと雷撃が流れる。


それにより相手のゴーレムから白い煙が噴き出すとゴーレムは地面へと倒れ込んでしまう。


さらに別のゴーレムがカルロスに襲い掛かるも先程と同じ様にカルロスが相手のゴーレムの腕を掴むと雷撃を発する。それにより腕を掴まれたゴーレムは白い煙を噴き出しながら地面へと倒れていく。


3体のゴーレムは、あっけなくカルロスに倒されると地面に倒れたまま白い煙を吹き出し動かなくなっていた。


「カルロスが勝った!」


喜びのあまり思わず叫んでしまうカル。


すると草原の中から何十体もの妖精達が顔を出し、白い煙を噴き出しながら地面に倒れる3体のゴーレムをかかえて忙しなく運び去っていく。


そしてカルの前に1体の妖精が現れるとメモ書きした紙を差し出した。そこに書かれていたものは・・・。


”ごめんなさい。ゴーレムがどれくらい強いのか確かめたくて・・・”。


妖精は、そのメモ書きをカルに渡すと慌てた様子で草原から飛び去っていった。


そのメモ書きを見て茫然とするカル。


「妖精さんゴーレムを作ったから、戦わせてみたかったんだ・・・」


「へえ、妖精がゴーレムを作ったにゃ。ならどれくらい強いか見てみたいと思うもんにゃ」


お猫サマは、宙をぷよぷよと浮きながら白い煙を噴き出し妖精達に運ばれていく動かなくなったゴーレムをずっと眺めていた。


「多分また来るにゃ。きっと妖精達は、カルのゴーレムに勝てるその日まで諦めないにゃ」


「えー、そんなあ」


「妖精は、好奇心旺盛で諦めが悪いにゃ。自分達が負けたならなおさらにゃ」




この後も妖精達は、ゴーレムを改良する度にカルロスに戦いを挑んで来た。


最初は面倒な事に巻き込まれたと思ったカルであったが、戦う度に強くなっていく妖精達のゴーレムにカルロスを作った剣爺も負けじとカルロスに改良を加えていく。


カルロスを改良する剣爺のやる気が日々増していくのがカルの目から見ても分かる程であり、剣爺も妖精達との戦いを楽しんでいるように思えたカルであった。


”お猫サマ”。いつも文章の誤りをご指摘いただき本当にありがとうございます。


お礼にチャオチュールと猫缶の詰め合わせを送りたいです。


※やはり残業で遅くなってからの修正と更新作業は、骨が折れます。


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