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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第4章》ふたつの世界。繋がる世界。
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117話.盾のダンジョンと”闇を打ち滅ぼす者”達(2)

さて、カル達と”闇を打ち滅ぼす者”の面々が盾のダンジョンのボス部屋でボスと戦います。


スライムの絵が刻まれた両開きの扉を開け放ち扉の奥へと入る。


広い部屋には、何もなく魔獣のいる形跡も・・・いや、部屋の遥か奥の床に何か小さな物が置かれていた。


それを目を凝らして見てみると、何かの金属の塊の様なものであった。


「あれがこの部屋のボスでしょうか」


「分からん。だが用心しろ。何が出て来てもいいように魔法の準備をしておけ」


大盾を構えた重戦士チェスターが前進し、その後ろを剣士のバランとローガンが続く。


カルはというと既に大盾から金の糸を出して魔獣の所在を突き止めていた。


「へえ、この部屋のボスはスライムなんだ。しかも金属製みたい」


「以前、カル様のところにいたゴーレムのカルロスさんの様な感じでしょうか」


「そうだね。でも少し感じが違うみたい」


そう言うとカルは足を止め、メリルとライラに前進しない様にと合図を送る。


メリルとライラが急ぎカルの後方で待機すると、カルは大盾を構えて様子を伺う。


「恐らくだけど、近づいたら攻撃を始めると思う。少し離れて様子を見るから」


「「はい」」


カルの言葉に相槌を打つメリルとライラ。


だが”闇を打ち滅ぼす者”の面々は前進をやめない。


そんな中、剣を構えながらバランは、周囲の様子を伺うために視線を周囲に向けていく。


そこにカル達が大盾を構えたまま動かない光景が目に入る。


「止まれ。あのガキが何故か動こうとしないぞ」


「まさか、あの魔獣について何か知っているのでしょうか」


「分からん。だが俺達も警戒を・・・」


そう言いかけたバランの目線に魔獣の動く姿が飛び込んで来る。


「バラン。魔獣に動きがあります」


「よし、魔法を用意し・・・」


そう言いかけたバランの目線の先には、さっきまで小さな金属の塊の様に見えた魔獣が、いつの間にか樽程の大きさにまで膨れ上がっていた。


「ありゃ何だ」


「恐らくスライムですね。ですが大きくなるスライムは初めて見ました」


「さっきまで小さかったはずだがいきなり大きくなりやがったな」


「もしかするとあの子供は、こうなるのを知っていて足を止めたのでしょうか」


「くそ。だったら先に教えろっつうんだよ」


「ですが、先行したのは我々です」


「そんな事は、分かってるよ。くそ、ハーパー、バート、魔法を撃ち込め。魔獣の反応を見る」


バランがそう指示を出すと同時に魔術師のハーパー、バートが雷撃魔法を放つ。


樽程の大きさに成長したスライムにふたりの雷撃魔法が命中する。だが、魔獣が霧散する気配はない。


それどころか、スライムの体はみるみる大きくなり、いつの間にか家程の大きさにまで成長していた。


「くそ、魔法が効かないのか。一旦後退するぞ。皆下がれ」


大盾を構える重戦士チェスターがゆっくりと後ずさりを始める。ところが、チェスターの後ずさりよりも目の前のスライムの体が大きくなる方が早く、そのスライムの体はこの部屋の高い天井にすら届いていた。


「バランまずいです。やつの・・・スライムの成長が早すぎて追い付かれそうです」


「分かった。壁際まで走れ。全力だ!」


”闇を打ち滅ぼす者”の面々は、隊列を組むのを諦めると全力で部屋の扉へと走った。


バランが周囲を確認するとカル達は、なぜか部屋の角へと移動しそこで大盾を構えていた。


「あいつ。あんな部屋の角で何やってんだ」


「バラン。あの子供、やっぱり何か知ってますよ。そうじゃなければ逃げ場のない部屋の角になんて行きませんよ」


剣士ローガンがバランに向かってそんな言葉を発した。部屋の角は、逃げ場の無い不利な場所である。いくらFランク冒険者であるカルでもそれくらいは知っていた。


なのにあえて部屋の角に移動して盾を構えるということは、その理由があるはずである。


「おい、お前はなぜそこにいる。部屋の角にいる理由を教えろ!」


バレルは、カルに向かって大声でそう叫ぶ。すると・・・。


「スライムは、この部屋くらいに大きくなります。扉の前にいたら大きくなったスライムに最初に圧し潰されますよ」


カルの言葉に思わず冷や汗を流すバレル。そしてバレルの目の前には、巨大化したスライムの体が迫っていた。


「くそ!知ってるなら教えろって言うんだよ。糞が!」


バランとローガンが剣を構えるとさらに大きくなるスライム。ふたりは、巨大なスライムの体めがけて剣を振り下ろす。


”カン”。


そんな乾いた音が部屋中に響き渡る。


さらに何度も剣を振り下ろすバランとローガン。


”ぷにゅ”。


今度は、さっきとは違う音へと変わった。


スライムは、固い体から突然柔らかい体へと変化すると、バランとローガンが振り下ろした剣を体の中へと取り込み始めた。


「糞!剣が抜けねえ」


「むっ、無理です。剣を捨てましょう」


ローガンがそう言った瞬間。誰かが引っ張る様にバランとローガンの剣がスライムの体の中へ沈んで行く。


「けっ、剣が飲み込まれた。下がれ。このスライムの体は、固いが柔らかいぞ。飲み込まれたら窒息死するぞ」


「むっ、無理だよ。この扉、開かないんだよ」


ハーパーは、この部屋の扉を必死に開けようとするが全く開かない。


「くっ、糞!また負けるのか!」


バランがそう叫んだ時、巨大化したスライムは、”闇を打ち滅ぼす者”の面々を体内に取り込もうとさらに巨大化していく。


既に体や足がスライムに飲み込まれ始めている仲間の姿がバランの目に入る。


「もうダメなのか」


バランがそう言った瞬間、カルから助け船の言葉が入る。


「バランさ~ん。助けた方がいいですか~」


何とも気の抜けた言葉である。だが、そう言ってくるという事は、助かる方法があるという事にバランは気がついた。


「ああっ、俺達を助けろ!もし俺達を助けたら何でも言う事を聞いてやる!」


「あ~、言いましたね。忘れませんよ」


カルとバランの会話が続く中、”闇を打ち滅ぼす者”の面々は巨大化するスライムの中へとさらに取り込まれていく。


「約束だ!」


バランのその声を聞いた途端。カルの表情が子供から男へと変わった。さらに・・・。


「カル、カルよ。やつは特殊なスライムじゃ。やつの体は流体金属じゃ。あれがあればカルロスを面白い体で復活させられるのじゃ」


「あっ、剣爺。お久しぶり!」


「どうじゃ。カルロス復活のためじゃ。やってみるのじゃ」


「カルロスが復活できるの。ならなんでもやる!」


「ならば、やつの体を金の糸で吸い尽くすのじゃ」


剣爺のその言葉で何をすべきか理解したカルは、大盾から出していた全ての金の糸を巨大化するスライムの下に潜り込ませた。


「次は、ミスリルの粒をやつに投げつけるのじゃ。やつは、触れた金属に同化する性質を持つスライムじゃ」


「剣爺。やけに詳しいね」


「なにを言う。これでもわしは神じゃ。魔獣の性質くらい見てば分かるのじゃ」


「失礼しました!」


カルは、腰にぶら下げた鞄の中から小さな袋を取り出すと、袋からミスリルの粒を取り出し巨大化するスライムめがけてぶちまける。


するとスライムの体が金属の様な光沢から鈍い灰色の光沢へと変化していく。


その瞬間を見計らいカルは、金の糸でスライムの体を吸収し始めた。


領主の館をも超える大きな部屋の天井にまで達し、部屋の壁に付く程にまで巨大化したスライム。だが、カルの金の糸が巨大なスライムの体を吸収し始めると、スライムの体がプルプルと震えだし、みるみるうちに体が小さくなっていく。


スライムに取り込まれかけていた”闇を打ち滅ぼす者”の面々だが、危うく難を逃れて床に倒れ込んでいく。


スライムの体は、みるみると小さくなると最後の欠片を金の糸が吸収し跡形もなくなっていく。


そして最後に残ったのは、人の拳程の大きさの魔石であった。


カルは、その魔石を拾い上げると”闇を打ち滅ぼす者”の面々が倒れているところへと歩み寄り、ねぎらいの言葉をかける。


「お疲れ様でした。スライムは、以外と弱かったですね」


「てっ、てめえ。俺達をおとりに使ったな」


「えーと、僕が警戒を始めた途端スタスタと進んで行ってしまったんですよ。言葉をかけるには既に遠かったんです」


「お前、どうやってあのスライムの事を知ったんだ」


「まさか神官なのに探査魔法や鑑定魔法が使えるんですか」


「そうですよ。神官が鑑定魔法を使えるなんておかしいです」


”闇を打ち滅ぼす者”の面々は、床から立ち上がるとカル達に詰め寄る。


「それは、僕のスキルに関わる事です。同じチームのメンバになら教えますが、僕は”闇を打ち滅ぼす者”のメンバではないですから言えませんよ」


確かにそうなのだ。自身のスキルは、本来チームメイト以外には口外しないのが冒険者の習わしである。


その言葉を言われてしまうと何も言い返せない”闇を打ち滅ぼす者”の面々であった。


「その手に持っているのがあのスライムのドロップアイテムですか」


「大きな魔石ですね」


「売ればかなりの価値がありそうだ」


「これ、皆さんに差し上げますよ」


そう言うとカルは、手に持っていた拳程の魔石をあっさりと魔術師ハーパーに投げてしまう。


その魔石を受け取ったハーパーは、大喜びである。


「凄い。凄いよ。こんな魔石なんて見た事ないよ。私の宝にするよ!」


あまりのはしゃぎぶりに何も言えない”闇を打ち滅ぼす者”の面々。


いつの間にか閉まっていたはずの両開きの扉は開かれており、ボス戦が本当に終了した事を告げていた。


扉を出た面々は、その扉の横にある龍の姿が掘られた扉へと目を向けた。


「バラン。どうしますか」


「いっ、行くに決まってるだろ。俺達が倒せなくてもあのガキならきっと・・・きっと倒せる気がするんだ・・・糞!」


バランの中で何かが変化していた。自身が絶対的な強者だと思っていたバラン。だが、目の前のFランクの神官のガキがバランですら倒せない魔獣を簡単に倒して見せたのだ。


それは、バランにとって初めての経験である。敗北とも違う何か。それが何であるかを言い表せないバラン。


それを拭い去るかの様に龍の姿が掘られた両開きの扉を開けるバラン。その後ろを黙ってついていく”闇を打ち滅ぼす者”の面々。


カルは、その姿を見て少し寂しく感じていた。リーダーの行動に従う”闇を打ち滅ぼす者”の面々。だが、自身の命を本当に他人に預けてよいのだろうかと。





両開きの扉が閉じられると、部屋の遥か彼方には大きな塊が眠っていた。


それは、まさしく巨体である。遥か先に小さく見える姿であってもその大きさを感じ取れる程の巨体。


「バラン。やはり地龍ですよ。しかもあの大きさの地龍は見た事がないです」


バランは、予備の剣を握ったまま、その手に流れる汗を感じていた。


今まで何度か地龍を狩った事はある。だがこの人数で狩った事などない。地龍を狩るなら最低でも50人のBランク以上の冒険者が必要だ。


「しかもあの巨体だ。今までに狩った地龍なんど蚊ほどに感じるかもな」


バランが剣を構えると”闇を打ち滅ぼす者”の面々がフォーメーションを組んでいく。


いつでも飲める様にポーションをベルトのホルスターに収納していく。さっきのスライムも凄いが、この地龍の威圧感とは比べる事もできない。


バランが目線を逸らすと相変わらずカル達は、少し離れた場所で大盾を構えていた。


「バラン。あの子供と共同戦線をとった方がよくないですか。あの子供・・・いやカルと言う名前でしたか、あの子供のスキルは分かりませんが、絶対に私達よりも強いと思います」


「おい。めったな事を口にするな。Fランクの神官が、Aランクの俺達より強いなんて事はねえんだよ」


「そうだといいのですが・・・。もし、あの子供が目の前の地龍を倒したのなら、私はあのカルという子供の名前にさん付けをします」


重戦士チェスターがそんな事を言い出す。すると・・・。


「私もそれに賛成」


「「「私も」」」


”闇を打ち滅ぼす者”の面々のカルを見る目が明らかに変わった瞬間であった。


「けっ、好きにしやがれ」


バランは、”闇を打ち滅ぼす者”の面々に捨て台詞を吐いた。だが、そのバレルの心にも明らかに変化が表れていた。


”ズン、ズン、ズン”。


眠りから覚めた地龍が起き出すと床が同じ間隔で揺れ始める。広い部屋の遥か彼方では、地龍がこちらに向かって歩き出している。


「いいか、地龍の防御力ははんぱねえ。魔法でシールドを二重に展開しろ。チェスターは、バートとハーパーを守れ。俺とローガン、それにブレアで地龍に攻撃を仕掛ける。アイリスは、皆に魔力の補給と回復を頼む」


いつも自信満々であるバランの表情が強張っている。明らかにこの戦いは不利なのだ。それを感じ取る”闇を打ち滅ぼす者”の面々。


だが、カル達はあいかわらず”闇を打ち滅ぼす者”の面々から少し離れた場所で大盾を構え、地龍の同行を注視していた。


「カル様。以前、”中級ダンジョン”で地龍との戦いを見た事がありますが、正直なところ地龍と戦って勝てますか?」


「さすがにカルさんでも龍を相手にするのは無理ですよね」


メリルは、中級ダンジョンで地龍狩りを見ていたが、その時ライラはまだ仲間ではなかったので、地龍の戦いというものを見た事はなかった。


「うーんどうだろう。この前、芋の精霊さんからあるアイテムを貰ったんだ。今日は、それを試そうと思う」


「という事は、勝算がおありなのですね」


「多分だけどね」


「それを聞いて安心しました」


メリルとライラは、大盾を構えるカルの後ろで笑みを浮かべながら地龍との戦いを見守る。




”闇を打ち滅ぼす者”の面々へ向かって地龍が突進する。体長は優に10m近い。こんな巨体の地龍などバランですら見た事も聞いた事もない。


魔術師ハーパーとバートが二重にシールドを展開する。その前では大盾を構えた重戦士チェスターが自らの防御スキルを発動し、地龍の突進に備える。


そして地龍の最初の突進が二重に展開されたシールドに接触する。


そして”闇を打ち滅ぼす者”の面々は、四方へと吹き飛ばされた。二重に展開されたシールドは、何ら意味をなさなかったのだ。


床に倒れ込み身動きのできない”闇を打ち滅ぼす者”の面々。


地龍の突進で頭を床に打ち付け、脳震盪を起こしながらも何かをしなければと立ち上がるバラン。


だが”闇を打ち滅ぼす者”の面々は、誰も立ち上がらない。


バランも目の前がよく見えない。剣を握っているのかさえも分からず、ただやみくもに剣を振っている様な感覚だけが伝わる。


「すまん。俺が皆をこんな目に合わせたんだ。この部屋に入るなんて意地を張ったばかりに・・・本当にすまん」


そう心の中で叫ぶバラン。そんなバランの耳元にカルの声が微かに聞こえて来る。


「助けた方がいいですか」


腑抜けた言葉だ。だが今はその言葉にすがるしかない。


「たっ、頼む。皆を助けてくれ。俺はどうなってもいい」


「その願い、承りました~!」


おちゃらけたカルの言葉が急に大きくなると巨大な部屋の中に響き渡る。


カルは、腰にぶら下げた鞄の中から魔石屑をいくつか取り出すと床にそれをぶちまける。


すると地龍は、”闇を打ち滅ぼす者”の面々が倒れている方へ向かわず、カルがぶちまけた魔石屑が散らばる床へとやって来ると、魔石屑を舌で必死になめ取りはじめた。


ふたつの国の国境にまたがる精霊の森で、地龍の幼生が魔石を食べているのを覚えていたカルは、きっと魔石屑でも地龍は大好物であると確信したのだ。


さらにカルは、鞄から小袋を取り出すとその小袋の中身を地龍の周囲へとぶちまけた。


そう、カルがぶちまけたのはミスリルの特品である。実に勿体ない事をしているのだ。だが、これはあくまで前振りであり撒き餌である。


地龍は、カルが撒き散らしたミスリルの特品が余程気に入ったのか、カルがミスリルの特品をばら撒くその手を見ながら首を振る様になっていた。


まるで猫や犬とじゃれている様に地龍を手名付けるカル。


そしてひときわ大きなミスリルの特品を鞄から取り出し、それを持つ手を高く掲げて見せる。するとカルに向かって突進を始める地龍。


カルは、掲げた手に持つミスリルの特品を地龍に向かって天高く投げつける。


それを大きな口を開けて受け止める地龍。


だが、そのミスリルの特品の塊には、紐で小さな瓶がくくり付けられていた。しかもその小瓶の蓋は、いつでも開く様に緩められていた。


”バリバリバリ”。


地龍がミスリルの特品の塊をかみ砕く音が広い部屋の中に響き渡る。


”ゴックン”。


地龍の喉を砕かれたミスリルの特品が流れていく。


カルの目には、地龍の顔は微笑んでいる様に見えた。だが次の瞬間、地龍は思わぬ行動をとりはじめる。


地龍は、ゆっくりと目を閉じると床に大きな腹をつき、手足を丸めてまるで眠るかの様な姿勢をとりそのまま動かなくなった。


カルは、地龍に近づき地龍の体に手を触れてみた。


体は、既に冷たくなっていてその大きな目からは、大粒の涙がひとつだけこぼれ落ちると床を濡らした。


いくらダンジョンであっても、いくら魔獣であっても生きているものを殺す事に、決して喜びを見いだせないカルにとって目の前の光景は、とても辛いものであった。




しばしの間、永遠の眠についた地龍を眺めていたカル。いつしか地龍の巨体は、徐々に霧散していく。


そして残ったのは、小さな丸い物体であった。


「カル様。何かの卵の様ですね」


「それってまさか地龍の卵でしょうか。それもふたつもあります」


魔獣であっても生き物を殺したカルに与えた神の罰なのか、それとも精霊ホワイトローズの遊びなのか分からない。


だが、地龍を殺した者に何かの生き物の卵を渡すとは、何という罪を背負わす輩なのかとカルの心の奥に憤りの様なものを感じていた。


カルは、卵を拾うと鞄の中へと仕舞い込むと、床に倒れ込む”闇を打ち滅ぼす者”の面々にラピリア酒(薬)を飲ませていく。


”闇を打ち滅ぼす者”のリーダーであるバランは、立ったまま身動きすらできない。


カル達がメンバーに薬を飲ませている様をただ眺めているしかなかった。


”闇を打ち滅ぼす者”の2度目の盾のダンジョンの戦いは、こうして幕を閉じた。






盾のダンジョンから戻ったカル達と”闇を打ち滅ぼす者”の面々。


カル達は、自室へと戻り就寝するという。


領主の館の食堂に集まりラピリア酒を飲みながら盾のダンジョンの総括をする”闇を打ち滅ぼす者”達。


だが口数は少なく。殆ど誰も発言もせずただラピリア酒だけが減っていく。


「俺達って弱えな」


「まさか、あのガキ・・・いえカルさんがあんなに強いなんて」


「地龍をたったひとりで倒す領主ですか」


「そして氷龍と風龍と水龍と仲良しで龍に酒を売る領主」


「俺には何が何だかさっぱりだ。だが、俺はやつを認める事にした。俺も今からあのガキ・・・いや、この城塞都市の領主をカルさんと呼ぶ事にする」


「それはつまり水龍を諦めるという事ですか」


「俺らが敵う相手じゃねえよ。あのガキ・・・いやカルさんはよ」


「Aランク冒険者よりも強いFランク冒険者の神官ですか」


「この世界は、狭いようで広いってことだよ」


”闇を打ち滅ぼす者”の面々は、個々の部屋へと戻り明日の仕事に向けて休む事になる。だが、今日の盾のダンジョンでの出来事をそう簡単に忘れる事などできず、なかなか寝付けない夜を迎えていた。





”闇を打ち滅ぼす者”達が部屋へと戻り、食堂の灯りが落とされるとそこは神や精霊や妖精達が集まり、この世界の未来を議題にした会議が始まる時間である。


だが、その会議はいつもお酒を飲むための理由付けにされ、何かがその会議で決まった事はまだ一度もない。


その会議では、神や精霊や妖精達の楽しそうな声がいつも響いていた。


深夜の会議場となる領主の館の食堂のテーブルの片隅には、ラピリア酒(薬)と酒の肴が絶えず置かれていた。


それは、カルなりの神や精霊や妖精達への心遣いでもあった。


まだ何も決めてませんが、近いうちに卵がかえる気がします。


さて、どんな話になる事やら・・・。


※今日の残業中に奥歯が抜けました。富士スバルラインを自転車で下った時の様な爽快感。


はあ、いつまでもつやらこの体~。よよいのよい。


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