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僕の盾は魔人でダンジョンで!  作者: 純粋どくだみ茶
《第4章》ふたつの世界。繋がる世界。
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103話.守護妖精の戦い

カル達が城塞都市ラプラスへ戻ってみると、城塞都市が蔦で覆われています。


城塞都市ラプラスに隣接する精霊の森。


カル達が国境の精霊の森の精霊を助けるために旅に出る直前に誕生した守護妖精。


彼女?は、妖精ではあるが他の妖精よりも大きく人族の子供位の姿をしていた。


守護妖精は、妖精達を管轄する能力を持っているため、精霊の森に住む妖精達の記憶を集約しこの精霊の森が置かれた状況を瞬時に把握した。


それにより守護妖精は、この精霊の森の危うさを危惧した。


まずは、危惧した最大の理由が城塞都市ラプラスだ。精霊の森が城塞都市に街道を挟んで隣接するなどありえない。


もし、城塞都市を拡張しようとすれば、真っ先に破壊されるのは精霊の森である。


さらに城塞都市ラプラスの領主がカルという人族の弱々しい子供であった事にも憤りを覚えた。


城塞都市ラプラスで何かあれば、隣接する精霊の森もただでは済まない。


あの様な弱々しい領主では、城塞都市など守れるはずがない。


そう考えた守護妖精は、精霊の森を守るために城塞都市そのものを手に入れる事を決意する。


城塞都市の運営に関しては全く無知な守護妖精である。だが、それは誰かにやらせればよいのだ。


つまり守護妖精は、上に立つ領主は強く部下はそれに従えばよいという考えである。



守護妖精は、領主とその仲間達の能力を探るべく旅立ったカル達を空からずっと監視をする事にした。


結果として一部の者さえどうにかすれば勝てると判断した。




守護妖精は、カル達の帰りを待ちながら作戦を練り戦いに勝利する方法をひたすら考え続けた。


ただ、守護妖精は強い?が戦いの経験は無かった。それは致命的であった。実戦経験のない者が戦いで勝利する事はかなり難しい。


それを理解できぬままカル達が城塞都市に戻る直前に作戦を決行した。




守護妖精は、蔦を操る能力を使い城塞都市ラプラス全域を蔦で覆うと半ば住民を人質にした。


剣で切っても切れない蔦。例え剣で蔦を切ったとしても直に生生え変わる蔦。魔法で燃やしても燃えない蔦。


守護妖精の能力の強さは、精霊の森の精霊の力から得ている。つまりカルが精霊に与えたラピリア酒(薬)とライラの精霊治癒魔法が守護妖精の力の源なのだ。




巨大な城塞都市全域を蔦で覆い隠し城塞都市の住人達を人質にした守護妖精。その後ろには、数百にも及ぶ数の妖精達。


その妖精達は、守護妖精の命令によりカル達を待ち受ける。だがその顔は、あまり乗り気ではないといった表情が浮かんでいた。


精霊の森や城塞都市、或いは村々にラピリアの木を植え妖精達の食べ物を継続的に供給できる様にしたのはカルである。さらに定期的に妖精達にラピリア酒を振舞ってご機嫌を取っているのもカルである。


そんなカルと戦いを望んでいる守護妖精の命令を聞かなければならない妖精達は、お互いの顔を見合いながらどうしたものかと、守護妖精の後ろで身振り手振りで相談を始めていた。




そしてカル達が城塞都市ラプラスへと帰ってきた。


「なんだかラプラスが城壁ごと蔦で覆われている様に見えますね」


「私にもそう見えます」


「何かあったのでしょうか」


「ははは。そう毎回の様におかしな事が起きたら僕の体が持ちませんよ」


「「そうですよねー」」


カル、メリル、ライラの気の抜けた会話が続きながら馬車は、城塞都市ラプラスに到着した。


「遅かったな。待ち侘びたぞ!」


蔦で覆われた城壁の上で人族の子供くらいの妖精が、仁王立ちしながら大声を張り上げる。


「なんだかおかしな事が既に起きているようです」


「私にもそう見えます」


「僕にもそう見えます」


カル、メリル、ライラの気の抜けた会話がさらに続く。


馬車から降りた面々は、城壁の上で仁王立ちする妖精に目線を向けつつ、円陣を組んでひそひそ話を始める。


「あれって妖精ですよね。でもあんな妖精って森にいました?」


「いえ、初めて見ました」


「私もです」


「お猫サマは、知ってるにゃ」


思わずその発言の主の顔を見いる3人。そしてカルの頭の上に乗っている妖精の姿になった裁定の木の精霊。


「この旅が始まった時から空の上にずっといたにゃ。でも精霊の森に到着する直前に姿が見えなくなったにゃ」


「あっ、もしかして馬車の幌の上に天幕を付けて欲しいってあの妖精の件だったんですか」


「そうにゃ。あの妖精をずっと見張っていたにゃ」


馬車の幌の上に簡易天幕を張って寝ていたお猫サマは、旅の始まりからずっとついて来ていた妖精の姿を見ていた。何か悪さでもしようものならそれなりのお仕置きをするつもりでいたのだ。


「城塞都市を蔦で覆ったと言う事は、精霊の森の妖精ですよね」


「多分」


「こういった時は、妖精に話しかけるべきなんですよね」


「多分・・・」


「それとも精霊の森の精霊さんに話を通した方がいいのでしょうか」


「多分・・・・・・」


カル達は、円陣を組んだまま話し込み守護妖精に話しかける事もせずに延々と対策会議に花を咲かせていた。


それをじっと見つめながら城壁の上でカル達から声をかけられるのをじっと待つ妖精。しかし一向に話の終わらないカル達に痺れを切らしたのか大声で喚き散らす様にカルに声をかける。


「おい、お前達。私を無視するのか!」


カル達は、守護妖精の言葉を無視しつつ円陣を解くと馬車にに乗り込んだ。


「まてまて。何処に行く」


「精霊の森の精霊さんの所に行こうと思って。状況がよく呑み込めないからいろいろ聞こうかなと」


「精霊の所になど行かなくていい。私は、お前に決闘を申し出る。それも一対一の決闘だ」


「はあ。でも僕は強くないですよ」


「知っている。だから決闘を申し出たのだ。お前では、精霊の森を守れない。そんなやつが精霊の森の隣りで城塞都市の領主などやってもらっては困るのだ」


「もしかしてこの蔦って城塞都市の住民を人質に取ったっていうことですか」


「そうだ。一対一の決闘に応じなければ城塞都市の住民の命がどうなるか分かっているな」


「弱い僕に決闘を申し込むためにわざわざ城塞都市の住民を巻き込まなくてもいいのに」


「なんだと!」


「決闘なら受けますよ。僕一人でいいんですよね」


「随分簡単に受け入れたな」


「だって。僕弱いんだから負けて当然です。恐れる事なんて何もないんです」


「お前、なんかすごく割り切ってるな」


「ありがとうございます」


「いや、褒めてないぞ」


「そうなんですか」


「まあ、そんな事はどうでもいい。この場で一対一の決闘を行う」


カルの頭の上に乗っていた妖精姿の裁定の木の精霊が、カルに助太刀を申し出たがそれを丁寧に断る。


決闘が始まる寸前、カルはとても大切な事を確認していない事に気が付いた。そう、何を賭けて決闘するのかということ。


「そうだ忘れてました。ひとつだけ質問していいですか」


「なんだ」


「僕が負けたら城塞都市の領主の座を引き渡すという事でよろしいですか」


「ああ」


「では、仮にですよ。僕が勝ったらどうします」


「仮にも勝つ事などない!」


「いえいえ。万が一という事もありますよ」


「面倒くさいやつだな。そうだな、仮にお前が勝ったら精霊の森の妖精達の頭の座を譲ってやる」


「妖精さんの頭ですか」


「そうだ。数百もの妖精達の頭だぞ。凄い名誉なんだぞ」


「はあ」


「なんだ。嬉しくないのか」


「いえ、そんな事はないです」


「だったらもっと嬉しそうな顔をしろ」


カルも会話が面倒になったのか作り笑いをしてその場をごまかそうとした。


「なんだその作り笑いは。気持ち悪いやつだな」


両者とも会話が面倒になったのか、話す気にもなくなり最初の目的であった一騎打ちの準備を始める事にした。


カルは、大盾のみを構える。


対して守護妖精は、片手剣、小盾、軽鎧を装備し、剣を鞘にしまい込んだまま盾のみを構える。


そしてカルと守護妖精の一騎打ちが始まる。


場所は、城塞都市ラプラスの城門の外。城塞都市は、守護妖精の蔦で覆われてしまい、誰一人として城壁の内外に出入りする事ができない。


それを見守るメイル、ライラ、エレン。それにお猫サマと裁定の木の精霊。


城壁の上には、数百の妖精達が見守る。


守護妖精は、手からいくつもの蔦をカルに向かって伸ばす。


カルは、その蔦に向かって大盾から金の糸を伸ばして絡め取り蔦を切断していく。


「ほう。それも大盾の能力か。覚えておこう」


守護妖精が伸ばす蔦とカルの大盾から繰り出される金の糸の攻防は、一進一退を繰り返す。


そんな時、守護妖精が城壁の上で待機している妖精達に向かって目配せをする。だが、妖精達の腰は重いようで動く気配がない。


それを見ていた守護妖精は、思わず妖精達に叫ぶ。


「何をやっている。早くしろ!」


その言葉で妖精達は、仕方なくカルに向かって飛び立ちカルの周囲へとやって来ると、やさしくカルの腕を掴む。


それを見ていた守護妖精は、まだ怒鳴り声を上げる。


「妖精達。それは何の真似だ。遊んでいるのか!」


その声に怯える妖精達。その光景を見ていたカルは、なんとなく事情を察してしまう。


つまり守護妖精は、一騎打ちを申し込んでおきながら妖精達に命令をして自由を奪うつもりでいたのだと。


そう考えた瞬間、気が緩んでしまったのか妖精達に大盾を奪われてしまう。だが、それも一瞬でしかなかった。


重量が一気に増した大盾は、妖精達の力では持ち上げられれなくなり大盾が地面に転がり落ちる。


「妖精達。お前達は、何をしている。本当に使えない妖精達だな。もういい私がやる」


守護妖精は、そう叫ぶと地面に転がる大盾を蔦で絡めとると自身の方に向かって引っ張り出した。


だが、カルの持つ大盾は、カルの手から離れると人族の大人が10人掛かりでも持ち上げるのに困難な重さに変わるのだ。


地面に倒れている大盾を蔦で必死に手繰り寄せようとする守護妖精。


それを黙って見つめるカル。そう、カルはなぜか大盾を取り戻そうとはしなかった。


すると蔦でグルグル巻きになった大盾が地面から立ち上がると守護妖精の元へと歩き出した。


カルの大盾は、カルの手元から離れると地面に付いている角を足の様に使って器用に歩くのだ。


以前、大盾を盗もうとした泥棒の手から歩いてカルの元へと戻って来た事があった大盾。だが今回は、敵に向かって歩き出した。


その光景に思わず見入ってしまう守護妖精。


そして守護妖精の前に歩いてやって来た大盾の上には、魔導書が開かれていてその上には、魔術師の姿をした小人が立っていた。


「はいはーい。私が書の魔人ですよ。貴方ね。カルに喧嘩を売ってきたバカな妖精って」


「なっ、何だと」


「そりゃカルは、弱いわよ。でも私達魔人が付いているのよ。まあ、貴方もこの大盾を奪えばカルは、戦えないって思ったまではよかったわよ。でもね、カルの手からこの大盾が離れたからって、大盾が無力になるって誰かが教えたの?」


「まっ、まさか・・・」


「そうよ。私達は、カルの手から離れても戦えるのよ」


その瞬間、書の魔人の手から光の弾が現れると守護妖精に向かって何百という光弾が飛び出した。


守護妖精は、持っていた盾を構えてるとその光弾を避けようとした。だが、盾はあっという間に割れてしまう。仕方なく蔦を盾代りにしてみたもの、盾で避けられるものではない。


守護妖精は、数十発もの光弾を浴びてしまい体中が煤で真黒くなっていた。


「けほっ、けほっ、けほっ。なっ、なんだこの煙い魔法は!」


書の魔人は、蔦の盾を破った辺りから守護妖精に対してちっとも威力のない煤ばかりが付くしょぼい魔法を連発していた。カルが相手の命を奪う事を嫌っているのをよく知っていたからだ。


「わっ、私をバカにしているのか!」


守護妖精がそう言葉を発した時、盾の上にいたはずの書の魔人の姿はなく、代わりに小さな鎚を持ったドワーフの様な小人が立っていた。



「ふむ。復活後、初めての初陣じゃな。思いっきり暴れてやろうぞ」


そう言ったそばからうしろにいるカルから声がかかる。


「鎚の魔人さん。守護妖精さんを殺しちゃだめだからね。手加減してあげてよ」


「そうなのか。殺してはいかんのか。ならば仕方ない」


鎚の魔人は、手に持っていた鎚をどこからか取り出した”ハリセン”に持ち直すと守護妖精の頭の上へと一発食らわす。


ハリセンによる攻撃ダメージは大した事はない。だが、このハリセンの凄いところは状態異常という状態異常を攻撃に付与できるのだ。


頭にハリセンの一撃を受けた守護妖精は、麻痺、睡眠、沈黙、暗黒、混乱、呪い、etcとあらゆる状態異常を付与され何も出来ないまま地面に倒れ込んでしまう。


さらに鎚の魔人は、”ハリセン”を”打ち出の小槌”へと持ち替えると倒れている守護妖精の頭に一撃を与える。


すると守護妖精は、人族の子供くらいの姿から小さな妖精の姿へと小さくなっていく。


さらに大盾の表面には盾の魔人の口が現れ、倒れている妖精を長い舌で絡めとると口の中へと飲み込んでしまった。


守護妖精との一騎打ちは、あっけなく終わりを告げた。


「わしの初陣にしては、ずいぶんと弱い敵だったな」


「鎚の魔人さん。ありがとうございます」


「できれば、もっと強い敵と戦う時に呼んで欲しいものだな」


「はい。その時はお願いします」


鎚の魔人は、そう言い残すと盾の上にある書の魔人の書棚の横に小さな鎚の姿となって戻っていく。




一騎打ちを見ていたメリルやライラがカルの元へとやって来る。


大盾も盾の角を足の様にしてカルの元へと帰って来た。


「この大盾って生きてるみたいですね」


「僕は、生きてると思ってます」


メリルもライラも不思議な顔で大盾を見つめている。すると盾の表面に大きなくちが現れると、先ほど飲み込んだ小さくなった守護妖精が吐き出されて来た。


吐き出された守護妖精は、いつもの様に粘液まみれだ。しかもまだ麻痺や諸々の状態異常が続いている様で立ち上がる事もでない。


そんな粘液まみれの守護妖精を他の妖精達が抱きかかえると精霊の森へと連れて帰る。


城塞都市ラプラスを覆っていた蔦は、徐々に姿を消していき危機は去った?ようだ。


そんな中、妖精達は消えかけていく蔦から何かを取り出し、妖精達の手の平に置いて遊びを始めた。


それは、蔦から取り出した種に魔力を込めて蔦を伸ばすという遊びであった。


それを微笑ましく見ていたカルに、妖精が手の平に小さな種をいくつか置いていく。


「これってさっきの蔦の種?」


妖精達がカルに向かって首を縦に振る。


「へえ。あんな蔦が僕にも出せるのかな」


妖精達は、小さな手から蔦を出して面白そうにはしゃいでいる。


「僕もやってみよう」


カルも手に力を込めてみる。すると手が少しだけ熱くなったと感じた瞬間。いくつもの蔦が勢いよく空に向かって飛び出していく。まるで水が勢いよく空に向かって湧き上がるように。


それを見て思わず感動した瞬間。カルの目の前が真っ暗になり地面に倒れてしまう。


カルの手から伸びた蔦は、あっという間にカルの手の平に戻ると元の種の姿へと戻ってしまう。


「カッ、カル様」


「カルさんどうしたんですか」


思わずカルを抱き起そうとするメリルとライラ。


「大丈夫にゃ。ただの魔力の枯渇にゃ。ラピリア酒(薬)を飲ませば治るにゃ」


「まさかあの蔦の影響ですか」


「そうにゃ。蔦に魔力を全て奪われたにゃ。カルは、魔力が殆どないにゃ。でもほんの少しだけある魔力を全て蔦に吸われたにゃ」


カルは、蔦の種に全ての魔力を吸われ、魔力の枯渇を起こして意識を失ってしまったのだ。


実は、守護妖精が勝負にこだわった事が守護妖精の敗因であった。カルには魔力が殆どない。その事を見落とさなければ決闘勝てたのだ。


つまり蔦の成長比べを持ちかけていれば守護妖精は簡単に勝てたのだ。


馬車に乗せられて領主の館へと向かうカル。


一対一の決闘に勝ってしまったばかりに思ってもみなかった妖精達の頭となってしまった。果たして人族のカルに妖精達の頭が務まるのだろうか。


さらに、カルは自由に出し入れできる蔦という能力?を手に入れた。


だが、せっかく手に入れた能力も魔力が殆どないないカルにとっては、ただの宝の持ち腐れであった。


それでも意識を失ったカルの手には、蔦の種がしっかりと握られていた。


守護妖精との決闘に勝ってしまったカル。意図せず妖精達の頭と蔦の種を手に入れました。


でも、妖精とは言葉が通じず、蔦の種は魔力を必要とします。果たしてこれからどうなることやら。


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