金槌を避けた先
俺の名前は佐野 一弼。
19才、絶賛就活中、彼女いない歴=年齢だ。
なんで俺はこんなことを話しているのかって?それは、俺が今…………
落ちてる真っ最中Da★Ka★Ra、だよ!
つまり、おそらくもうちょっとで生を終えるであろう俺に、女神様か何かが転生とやらをできるようにしてくれるようとりあえず自己紹介をしているというわけだ。
初面接中に上がりすぎて自己紹介を忘れてしまい、面接官の人に暖かい目をされたのは今でも頭に残っている。あの時は家に帰ってから、ベッドで泣いたものだった…………
よって、自己紹介は大切だ。
さて、前置きが長くなったが、俺が今落ち続けている理由をお話しよう。
ピピピピピ ピピピピピ ピピピピピ ピピピピピ
パカッ
ポチポチ
『拝啓 この度は、弊社の求人募集に際して、御応募ありがとうございました。
さて、慎重な選考の結果、貴方の入社志望動機には添いかね』
ブチッ
「もう嫌だああああ!これで何社目だと思ってんだふざけんな!あなたの入社志望動機には添いかねますだ?じゃあどういう動機なら添いかねないんだよ教えてくれよ!」
それがわかったら全員面接には受かると思うのだが、そう言わずにはいられない。なぜならこれで………
「78社目だね、おにいちゃん」
そう言ったのは料理中の俺の妹、中学2年生の真梨だ。
「もうそんないったか………嫌なもんだな」
「あ、じゃあ、おにいちゃんを面接で落とす見る目のない無能な面接官殺って」
「マリ?何を言ってるんだい?」
「………………」
はあ。うちの妹は時々こうだから困る。これさえなければ、完璧で可愛いパーフェクトマリになるんだが……
「おにいちゃん、ご飯できたわよー」
前言撤回。料理以外が完璧で可愛いパーフェクト(?)マリだな。だってこれ、冷凍餃子を焼かせただけなのに…
「どうかな?おにいちゃん」
そこにあったのは生焼けの餃子の具とモチモチした塊だったからだ。逆にどう料理したらこうなるのか教えていただきたいものだ。
「えっと、これは」
「ん?」
「……美味しいよ!とっても!」
「今の一瞬の間は?」
「あはは、何のことかな?」
「なら良かったわ」
「ごちそうさまでした」
さて、コンビニいくか。今のご飯で満足できるわけがない。妹が作ってくれたってことで心は満足だが。
「俺ちょっとコンビニいってくる
な」
「…私も行く」
まずい。マリについてこられたらご飯が買えない…まあいいか、新しい履歴書も買いに行かないとだしな!(涙目)
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「今日は暑いな………」
「そうね……今何度くらいあるのかしら?」
「見てみるか」
そう言って俺がスマホを開いた時だ。
「おにいちゃん、上!!」
「え?うおっ!」
あ、あぶねえ。一体なんだったんだ?
「これは……?」
「金槌…のようね」
すると上の方から
「ああ、悪い悪い!金槌を取り落としちまってよ…怪我はなかったか?」
「大丈夫です」
「危ないわね…おにいちゃんに怪我させてたら病院送りじゃ済まさなかったわよ」
「それはやめようね?」
と言って俺らが一歩踏み出した瞬間
「あと、そこに工事用の穴があるからな、気をつけろよ」
「「え?」」
既に足の下に地面はなかった。
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と、ここまでが俺が落ち続けている理由である。
ここで不思議なことに気づくだろう。
それは、
『なんで工事用の穴がこんなに深いんだ?』
ということ。
既に俺は、いや、俺らは5分ぐらい落ち続けている。
いい加減漏らしそうなので勘弁して欲しい。多分、俺の表情を見た奴がいたら、こう言うと思う―――病気か?と。だよな、女神様?いたら返事して、俺とマリを異世界に連れてってくれよ!
そうだよな、まあ女神様なんてもんがいるわけ……
「病気か?」
その声を聞きながら、俺は意識を失った。




