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生活モニュメント[9]

花弁という汚れ

作者: 袋小路 めいろ

昔タバコを吸っていた

じいさんに

聞いた事がある

煙を吸って煙を吐いてるけど

何が良いの?

大人になったらわかる

と一言

静かに穏やかに

何かを忘れる為に

呟かれた瞬間が

張り付いた写真みたいに

頭蓋骨の裏側に今もある



大人と呼ばれる年齢になって

わかりたくないモノばかりで

大人になったらわかるって言葉が

空中分解して螺旋になった

あの頃突き付けられたモノの

大きさと

手渡されていた冷たい

空虚の箱が浮かび上がった

首の裏側にかかった重力が

いつかブラックホールに

変化しないか不安だった



多様化の末に

僕等は自由を手に入れ

多様化の末に

意見の不一致が進行し

桜の花が散るかのように

意味の無い不安だけが

道の片隅に醜く固まっていた

桜が青葉になる事だけが

唯一の救いだった



人はいつから黒くなる?

子供達の顔を見てもわからない

小さな善人だったと思うけれど

人は人と擦れ合うから

黒くなるのかな?

お互いの汚れを身体に

染み込ませるみたいに



大切にしていたモノは

手の中に無くて

胸の中にも頭の中にも無くて

神様に奪われたんだと思った

人の形をした空間が

動いている

服だけが歩いている

僕は僕の顔だったモノを

忘れかけている


多様化の末に

多種の選択肢を手に入れ

多様化の末に

選ばれなかった人が

取り残された

桜の花が散るかのように

意味の無い不安だけが

道の片隅に醜く固まっていた

桜が青葉になる事だけが

唯一の救いだった



歪な平穏に

飽き飽きしているのに

拒絶反応が

散らばっている

生産性 上昇志向 自然に平和

僕等の世界の当たり前は

今だから有能なだけだ

僕等は選ばなければならない

明日に残すモノを

次の世代は粗大ゴミみたいに

捨てるかもしれないけれど



桜の花が散るかのように

意味の無い不安だけが

道の片隅に醜く固まっていた

桜の花が散るかのように

価値の無い希望達が

道の片隅に醜く固まっていた

桜の花が散るかのように

平和に健康にエコロジーと

良い事かのように

囁かれながら

世界の片隅に醜く固まっていた



全ての命に

一定の価値があるなんて

思い上がりだ

そう認識しているのは

人だけだから

生き物は自分の命だけを

抱きしめて生きているんだ

だからこそ生きられる

だからこそ弱いモノを

切り捨てられる

僕等だって同じなんだ

生きていくことに

桜を綺麗だと思う心は

人を大切だと思う心は

邪魔なのかもしれない



桜の花が散るかのように


桜の花が散るかのように














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