榊 大団円end
「…ヨウト、悪魔を連れてきた」
「えっ悪魔どこっ!?どこなんだ」
ヨウトは嬉しそうに、あたりをキョロキョロしている。
やっぱりフラワロスは悪魔で、普通の人には見えないんだ。
と思ったらフラワロスがやたらとビクビクしている。
(フラワロスなにしてんの…)
ヨウトに近づきたくないのか、フラワロスが彼から一定の距離をとる。
「知り合いにリヴレという悪魔がいるんだが…人間界には女神に愛されている人間がいると聞く…」
つまりヨウトは女神に愛されている人間のようで、悪魔が神のたぐいを拒否しているという状況だろう。
ヨウトが年の割に若いのって、美の女神様の恩恵とかだったりして。
「花はあと三日程で咲くかもしれない」
「なら咲くまで目がはなせない」
ただ三日となると、弟の世話が…そうだフラワロスに頼もう。
「思い返せば、ここ半年足らずで色々と濃いイベントがあったね」
「…ストーカー女とか?あの人は結局なんなの」
結局彼女について、詳細はわからずじまいで、気になっていた。
このさいだから聞いてしまおう。
「驚かないできいてほしい。親戚で…彼女と私は神社の関係の家に生まれた」
「…へえ」
「神社のならわしで、妖神のようなものを宿す儀式があった」
「…ようじん?」
「強い化物のこと。生まれたばかりの頃、私は儀式を受けさせられそうになったらしいんだ」
「…受けなかったの?」
「両親が家を出て、別の所に移り住んだから」
「探されたり、連れ戻されたりしなかったんだ?」
「ああ…その代わりに彼女が儀式を受けたって」
「じゃああの人がああなったのは…」
「十中八九、儀式の…逃げた私のせいだね」
ヨウトは目をふせた。
いまだに儀式を受けなかったことを後悔しているようだ。
けれど、後悔したところで彼女が元に戻るのか、それは否だろう。
「でも逃げたのはヨウトの意思じゃないでしょ」
生まれたばかりの赤ん坊が、自力で判断して逃げることは出来ないだろう。
儀式から逃げたんじゃなく、ヨウトを大事に思う両親が逃がした。
そういうことになる。
「そうだね。後悔してもしかたないのはわかっているんだ」
「じゃあ今からでもその人に会いに行こう。
思っていることをそのまま言えばいいんじゃない」
「相手は刃物を持っている…もし華が怪我をしたら」
「…ライトシェイドも連れて行こう」
―――
「…あ」
茎ノ葉君がいた。
「園崎さんこんばんは」
「こんばんは」
「はじめまして、こんばんは」
ヨウトがずいっと、私たちの間に入る。
茎ノ葉君が何かをさとったように、笑う。
「…野暮なことは聞かないよ。さよなら」
「うん」
なんだか先ほどからヨウトの機嫌が少し悪い。
「どうかしたの」
「実を言うと、君が彼と親しくしているのを見て少し危なかった」
「何が」
「私もコノ弥の事を悪く言えないな…」
「だから何が」
コノミ、たしかあの人の名前。
どうしてそれが茎ノ葉君に関係あるのかわからないんだけど。
「あ!」
この前の刃物女がいた。
「二人とも、前はごめんね」
「えっ」
なんたる衝撃。
毒気が抜けて別人になっている。
なにか悪いものでも食べたのだろうか。
「あの…儀式のせいで色々と申し訳ないと思っているんだ」
「もういいの、そのおかげで彼と知り合えたんだから」
「彼?」
「都積くん。いま同じアパートに住んでるご近所さんなの
ライバルがたくさんいてこまってるわ」
「ああ…そう」
「ヨウト、知らない間に解決したみたいだから帰ろう」
二日後、あともうすこさで咲きそう。
「今さらだけど君は、私が好きなの?」
「…?」
本当に今さらだ。
好き、とか以前にいつの間にか付き合っていた。
「好き、たぶん好き、好きなんじゃないかな」
「だんだん説得力なくなってる…」
「じゃあ愛してる」




