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春の徒花  作者: たい
第一章 一学期編
18/40

秘密

18

 俺は先生に連れられてカウンセラー室に入る。クーラーのおかげで涼しい。


「飲み物は何がいい? ちなみにアイスコーヒーしかないわよ~」

「じゃあ聞くなよ……」

 先生に対する口調としてはどうかと思うが、この人ならいいだろ。


「は~い、どうぞ~」


 ゆる~い声と共に氷とアイスコーヒーが入ったコップが置かれる。


「最近の調子はどうかしら~?」

「可もなく不可もなくって感じですね」

「お友達とはうまくいって……ふふ、ごめんなさい。いつもの癖で」


 先生はクスリと笑うとコップにさしたストローをすする。


「先生はどうなんですか?」

「う~ん……最近は重い相談もないから楽だけど、少し退屈ね。ちーちゃんにも会えないし」

「千代さんと先生っていつから友達なんですか?」

「え~……小学校から……高校まで一緒だったわね」


 先生の目線が左上から右上へと移った。


「陽介くんは? 茜ちゃんとはいつから知り合いなの?」

「俺らは家が隣なんで、物心ついたときからですかね」

「幼馴染みって勝ちフラグ? それとも負けフラグなのかしら……」


 何やらぶつぶつ言っている。俺はアイスコーヒーを飲みながら、自分の世界に入っている先生を観察した。


◆◇◆◇


「陽介くんって不思議よね~」


 会話を重ねていると、不意に先生がそう言った。


「ボッチを自称している割には普通って言うか……コミュニケーション能力が低い訳でも無い。むしろ私とかちーちゃんとコミュニケーションがとれるんだから平均より高いわよね~」


 俺のことをジロジロ見て言う。


「まぁ、端的たんてきに言うと、キャラがブレてるわよってこと」

「うぐっ……」


別に俺のキャラなんてどうでもいいが、そう言われると少し傷つく。存在を否定されたみたいだ……。


「先生。俺は精神的なボッチなんです。コミュニケーション能力の有無うむは関係ないんです」

「どういうこと?」

「俺は会話のキャッチボールを口だけでしてるっていうか、心ではキャッチボールしてないっていうか……」


 うまく説明できず、少し歯がゆい。


「つまり陽介くんは上辺だけの会話をしてるってこと? でも何で? それなら会話なんてしなくてもいいんじゃない?」


 とてもカウンセラーの台詞せりふとは思えない……。


「会話をするのは情報を集めるためです。取捨選択するにしても、集めなきゃダメですから」

「なるほどね~。対人スキルは? これも陽介くんは高いと思うけど」

「あぁー……それは磨いたっていうか……身に付けたっていうか。とにかくそれだって上辺だけです。相手と自分の間にキッチリ線を引いてます」


 先生がした質問には、俺の日々の自問自答で答えが出ている。俺だって自分に疑問をいだいた。

 便利だなと思った奴とは、それなりに会話をする。だが、会話を重ねても心の距離は縮ませない。

 コミュニケーション能力が低いからボッチ、高いからリア充という訳ではないだろう。俺は心がボッチなのだ。精神的に一人なのだ。

 結局、俺は、自分の利益のために必要最低限のコミュニケーションをとっているのだ。

 まぁ、そのお陰で先生や千代さんといった大人とも不自由なく会話が出来るのだけども。


「ふふふ、陽介くん、あなたって屈折してるわね。私も人のことは言えないけど」


 先生は俺と目を合わせて微笑ほほえむ。その瞳に狂気が宿った気がしたが、すぐにいつものほんわかとした瞳に戻る。


「私はね~、ちーちゃんが大好きなのよ~」

「え、あっ、それってどういう……」


 突然のカミングアウトにうまく言葉が出てこなかった。


「なに驚いてるのよ~。もちろん友達としてよ~?」

「え、あぁ、そうですよね……」


 俺が動揺する様子を先生がクスクスと笑う。疲れるなー

……。


「でもそれなら普通じゃないんですか?」


 それに二十代の女性はパーソナルエリアが一番小さいらしい。


「う~ん……ただ好きっていうのとは違うのよね」

「もういいですよ。先生達の関係にそこまで興味ないですし」


 加えてこの話題は心臓にわるすぎる。男子高校生の想像力をなめてもらっちゃ困る。

 サイドテールのゆるふわ巨乳と黒髪ロングの巨乳がくんずほぐれずしているとか……うん、やめよう。俺の理性がブレーキをかける。

 これ以上想像すると、自己嫌悪じこけんおもだえることになりそうだ。


ひどいな~。ちーちゃん可愛くない?」

「え、まぁ……綺麗だとおもいますよ」

「私はね~ちーちゃんの……」


 先生がそこで言葉を切る。気になって先生に目と意識を向けた。


「悲しんでる顔が大好きなのよ」


 背筋に寒さがはしった。先生の目は手元のストローを見て、それを手でもてあそんんでいる。

 その目にはさっきも感じた狂気がうつっていたが、頬は少しあかく染まって、どこか妖艶ようえんな雰囲気だった。


「な~んてね~。そんな訳ないでしょ~」


 俺の方を向いて微笑む。瞳はしっとりと濡れていた。


「今日はありがとね。楽しかったわ~」


 先生がいつものほんわかした雰囲気に戻ると、部屋の空気も弛緩しかんした気がする。この人すげぇな……。


「そんじゃ、俺は失礼します」


 そう言って俺は立ち上がる。


「またね~」


 首だけで会釈えしゃくして部屋をでる。

 クーラーが効きすぎたのか、コーヒーの体温を下げる効果なのか、どちらにしても冷え過ぎたな。

 あの言葉は本当なのだろうか。千代さんの言葉がよみがえる。

 俺は熱を失った手をこすりながら、誰もいない新館の廊下を歩いていった。

どーも、「たい」です。


今回は字数は少なめですが、重要な話となっています。


読んで下さりありがとうございました。


感想、ブクマ、評価などお待ちしてます。


では失礼します。

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