チェンジ
「おい」
寝ているアイドルに声をかけた。
その瞬間に周りの一部の男子たちの視線が集まった。
「zzz」
返事はない。
完全に寝ている。
机に伏せて寝るのではなく、遠目から見るとまるで起きているかのような姿勢で寝ていた。だが、頭が少し前のめりに傾き、下を見ているようだが、目は完全に閉じている。
静かにしていれば寝息も聞こえそうだった。
それでもお構いなしに声をかけた。
「おい」
さっきよりも大きめに呼びかけた。
一瞬ピクッっとしたのは気のせいか、それでも起きないようだ。
仕方なく、肩でも揺らして起こそうかと、手を伸ばした時、「うぉい!!」と、こちらを怒鳴りつける声がした。
またか、と思いつつ振り返ると、やはり、そこには彼女のファンらしき人物達の内の1人が、一歩前に出て、拳を強く握りながらこちらを睨みつけていた。
返事をしてやろうとしたが、強張っていた表情がすぐに慌てた表情に変わっていた。
振り返ると、その理由がすぐにわかった。
アイドルが起きてしまっていた。
危うくふきだすところだったが、笑いを心の中で抑えた。
「あ、ぁ、あの、その、すみ、すみますん」
「ぷっ」
耐えられなかった。
急いで手で口を抑えたが、掌の中ではにやけが止まらなかった。
アイドルは、らしからぬ顔でファンのリーダーを睨みつけていた。
(こいつら睨むの好きなwww)
内心でさらに盛り上がっていた。
そして、アイドルが目を閉じ、口を開いた。
「もう限界!あと5分だ…け…」
そう言って、俺の机に覆いかぶさるように寝てしまった。
おいおいおいおい
と口に出しそうだったが、これはこれでと、ファンのリーダーに目を向けると悔しそうにしていた。
「ふーふーふー」
笑いに堪えるそぶりをして見せると、こちらに気づいて、さらに悔しそうにしていた。
「絶対に起こすなよ!」
声を絞って、それだけを言い残し、去って行った。
これはいい土産話が出来た。そう思ったが、実際は得をしてはいなかった。
早くこいつをどかして、寝なきゃ。
午後の授業が耐えられん。ま、いつも寝てるが。
そういうわけで、学園のアイドルを無理やり起こし、自分の席に戻るように促す事にした。
まずは、5分待つ。時間は惜しいが、言い訳をさせないためだ。
その間は暇だったから、とりあえず、次の授業の準備を出来る範囲でして、隣の席に座って、次に旧友と会うことを考えていた。
あっという間に5分はたった。危うく眠り出すところだったが、ちょうど昼休みが終わるチャイムで目が覚めた。
「おい、もういいだろ。俺だって眠いんだ、自分の席で寝ろよ。」
アイドルの肩を揺らしながら言った。
「んぅ…」
まだ起きようとしない。
「もう5分経ったんだ。さあ、早く。」
「んぁ…だったら私の席で寝てもいいよ。」
顔を腕に伏せたまま返事をしてきた。
「どこだよお前の席。めんどくさいから早くどけよ。」
「んん…あとちょっと…席なら今座ってるじゃん…」
「は?ここがお前の席だったのかよ。」
そういえば、隣はこんな奴だった気が…しないな。いつもと何か違う様子だ。
第一、いちいち周りのことなんて気にしてないからそんなこと知らねーよ。
「すぐそこなんだから、どけよいい加減」
「嫌だぁー…動きたくないー…」
やる気のない返事しか帰って来ないので、反論されそうだが、一応事実を言ってみた。
「もうすぐ授業だから、どいてくれよ。」
「でも、あなたも寝る気なんでしょ?…」
ほら、やっぱり反論された。
「準備は必要だろ。余った少しの時間でもいいから寝たいんだよ。疲れてるからどいてくれ。」
確かに、気疲れはしているかもしれない。
「どうせ、あなた授業中も寝てるでしょ?…」
さらに疲れてきた。こうなったら、
「その机にじゃなきゃ寝れないんだよ」
「じゃあ、去年はずっと起きてたのね?…」
反論する気も失せた。論破されたなんて思いたくもなかった。
「ああ、分かったよ、しょうがないな。」
周りの視線が少し痛いが、彼女の机で寝ることにした。だが、最後に
「でも、授業中は「どうせバレないから安心して。寝心地は私が保証するわ。」
先読みされていたことに少しの苛立ちを感じ、寝て忘れることにした。
諦めて体中に力を抜き、眠気の誘うままに目を閉じ、机に張り付いた。
机に伏せたと同時に授業開始のチャイムが鳴った。
クラスのみんなが一斉に"自分の"席に着く中、2名だけ席を入れ替えたまま、授業が始まった。
そして、起立礼を怠そうに済ませて、その2名は眠りについた。
遅れてすみません。
いやー、書いてる途中に自分まで眠くなってしまいました。
今回も少々読みづらいところがありそうですが、ここまで読んでいただきありがとうございます。
それでは、また次週




