改めて
「意味が分かりません。」
「だろうね。」
愛想笑いを浮かべる先輩。
「見たでしょ、
元気に駆け回って、自分で自分の餌を狩るそんな
もう一人の僕の姉を。」
やっと引っかかりを覚えた。
「もう一人お姉さんが居るんですか?」
「そう、
見たら分かるでしょ?
君なら分かるでしょ?
『もう一人に姉さん』その意味を。」
「…意味はなんとなく分かりました。
でも、俺、何にも知らないですよ。」
「…本当に?」
「はい。」
先輩が俺の首に手をかける。
「隠してないよね?」
まだ力は入ってない。
「はい。」
「そう。
そっか。」
「信じるよ。」
未だに首を掴まれている。
俺の目を覗き込んでいるが視線は合わない。
「それで、君はどうやって『君』を殺したの?」
「俺は何もしてませんよ。」
首が締められた。
「それで君はどうやって殺した」
力が込められていく。
「俺、じ、ゃ、…、」
もがきながらも先輩の背後に人影が見えた。
「こうやって」
幽が笑っていた。
笑っている幽だった。
笑顔の幽が先輩の背中に包丁を刺していた。
「簡単でしょ?」
締め付けていた手が解けた。
「こんな程度で殺せるなら、
とうに殺している」
無表情だった先輩の顔に怒りの色が見えた。
俺に背を向けて、幽の方へ向き直った。
背中からは当然血が滲み滴っている。
こういうのってこのままにしておくんだっけ?
救急車はよんだほうがいいのか?
「どうやって殺した」
「私はトドメをさしただけ。
文字通り背中から、刺しただけ。」
「そんな程度で死ぬはずがない。
殺せるわけがない。
現に僕が死んでいない。」
「外してあげたのよ。
それとも死にたい?」
「…姉さんを死ぬまでは死ねないよ。
姉さんを殺すまでは死ねないんだ。
だから、教えてくれよ。」
「知らなーい。
ほんとに本当に知らない。
分からないけど、刺せば殺せるってミえたから。
それだけ。」
「その眼に誓えるか?」
指を3本立てて抉る構え。
「誓うほどのものじゃないわ。
そんな価値はない。
結局、殺すのはあなたでしょ?」
そのまま拳を握った。
「それでいいわ、なるようにしかならないんだから。」
「先輩?背中のは抜いちゃっていいんですか?」
「いいよ、そのまえに巻くものが有れば欲しいかな。」
「タオルでもいいですか?」
「ないよりはいいかな。」
「はい」
「怒ってないの?」
「え?」
家にある中で大きいタオルを包帯代わりに巻いた。
「首、明日にはアザになると思うけど。」
「あー、まあその分刺されてるんで。」
「それでいいのかい?」
「まあ飯の世話とかもして貰ってるんで。
むしろ目的が分かったんで、
隠されたままだと変に遠慮しちゃうんで。」
「君は大した奴、なのかもね。」
「まあそんなに言うなら」
背中を思い切り叩いた。
「これでいいですか?
最初から言ってくれれば協力してたのに。」
「っっっ…意外と痛いね…
うん、まあ、僕も疑心暗鬼だったから。」
「たしかに」
「遅くなったけど、そういう訳だから、
改めて姉共々よろしくね。」
「はい。」
バイオレンス姉弟の同居を
渋々改めて承諾した。




