はずだった
「なんでしばられてるんですか?」
「逃げたから。」
「にげろ っていったじゃないですか?」
「言ったね。」
「え?」
「え」
「ぁ、あの後どうなったんですか?」
「ん、どうにかなったよ。」
「どうやって?」
「君がどうにかしたんじゃないか。」
「…なんか怒ってます?」
「いや、怒っちゃいないけど。」
「じゃあなんでそんなに冷たいんですか?」
「逃げたから。」
あー、めんどくさいやつだなー
とは思いつつも縄を振り解けないから大人しくするしかない。
何で自分の家のリビングで縛られてるんだ。
それにしても硬いなコレ。
「今も逃げようとしてるよね。」
「…はい」
「まあ、今はいいんだよ。
振り解けたなら逃してあげる。」
「これ結構キツいんですけど。」
「そうだね。」
あー、あー
「もー、なんなんですか!ハッキリ言ってくれないと分からないですよっ!」
「君は、あの時、あの2人に勝てると思った?」
「いいえ」
「勝てないなら普通どうする?」
「逃げる?」
「そう、そうだね。」
あー、もしかして、、
「で、君は逃げたかい?」
「……。」
ユウジに変わった後は記憶がない。
だから、どうしたかは分からないが、
先輩が怒ってるって事はそう言う事だろう。おそらく。
「分かったみたいだね。
僕も分かったよ、月上さん達がわざわざ君に修行をつける理由が。」
「言ってしまえば、あの後キミは負けた。
殺されそうになったところに、ちょうど月上さんが来た。
と言うよりは、そうなるまで見ていた。」
「悪趣味だなぁ。」
「君のためだってば。
それでその後、なんとか退いて今に至るわけ。」
「いや、それでどうして縛られるんですか。
ここが俺の家な以上逃げ場は他に無いんですけど。」
「そう、君はね。
でも、キミは違う場所に行こうとした。
それを止めるためにわざわざ縛ったんだよ。」
「何処ですかソレ。」
「分かんないよ。
けど、行かせたらたぶん、キミは二度と君には戻れなかっただろうね。」
「どういうことですか?」
「まあ、それは絶対に僕たちがさせないから、忘れていいよ。
それにそうさせないための修行でもあるから。」
全く容量を得ないが、
「とりあえずいいかげん解いてもらっていいですか?」
「他に質問はない?
ないなら解いてあげる。
ただし解いた後は何も答えないよ。」
「え、なんで。
あー、じゃあ、先輩のお姉さんの事で。」
「…じゃあ解くからじっとしててね。」
「え、え?」
無事縄は解かれた。
「お腹空いてる?」
「え、あ、まあ、」
言われてみれば空いている。
作り置きのカレーを2人分温め直してる間、ただ座って待っていた。
その正面に、当人、先輩のお姉さんが来た。
「おはよう、姉さん。」
「…。」
「はい、お待たせ。」
てっきり自分の分だと思っていたが、お姉さんの分だったようで、それぞれに配膳される。
「さあ、どうぞ。」
先輩に促されるまま食事を始めた。
「美味しい?」
「、はい。」
「よかった。」
全く笑っていなかった。
それとして、お姉さんは一口も手をつけていなかった。
ただ立っているだけ。
そこに佇むだけだった。
「あの、食べないんすか?」
「…。」
「無駄だよ。
姉さんは耳が聴こえないんだ。」
「え?」
「鼻も効かないし、目も見えてない。
いや、少しだけ、少しだけ見えてるのかもしれない。」
「どう言うことですか?」
「言ったまま。
触感は〜…まだ生きてるかも?」
」でもそれ以外は死んでる。
『生きているけど
死んでいる。』
かつての君が、いずれこうなった。
そしてこれが君がなるはずだったモノだ。「




