朝牙
意識が戻ると窮屈さを感じた。
それと凄く良い匂いがする。
柔らかい?
目を開けると目の前に知らない顔。
それと凄く近い。
驚いて顔を仰け反ると後頭部を打った。
「あだ!」
「うっ!?っつ!?」
頭を押さえながら振り返ると
同じく頭を押さえて悶える幽がいた。
「何やってんだよ?」
「朝の挨拶にしては手荒じゃない?
DV?」
「お前がそこにいるのが悪いんじゃないのか?
狭いんだけど。」
「言ったね?逃さないから。」
「どういっっってぇえええ!!?」
左肩に重く鈍い痛みが走った。
「良い悲鳴あげるじゃない。」
目の前で寝ていた少女に噛み付かれている。
今にも噛みちぎられそうな程喰らいついてる。
「ほら、抵抗しないと。」
頭を引き離そうにも到底敵わない。
「あ、ああ゛あ゛あ゛!!!」
もう何も考えられない。
ただただただ痛い痛い痛い痛い
無意識に髪の毛を掴み引き剥がそうとしている。
それでも離れず猛獣に噛み付かれている。
ダメだ、このままだと死ぬ。
本気でそう思って、
剣を呼びよせ、自分の腕ごとその首を切らんと振り上げる。
きっと痛いんだろうな。
死ぬよりはマシな程度の痛み。
力を込めても腕が動かない。
そこでやっと、歯が抜かれた。
様子が変わったので目を開けると、
先輩がいた。
「おはよう。
もう大丈夫。」
頭を撫でられた。
「大丈夫だから、
それをしまってくれないか?」
呼吸を整えながら、言われた通りにする。
「なんで、居るんですか?」
「こうなる気がしたから。
少し遅れちゃったけど。」
「なんで、遅れたんですか?」
恨めしく問う。
「朝ごはん。」
笑って答えた。
「いただきます。」
和風な朝食。
夏だからか、涼しげな料理が多い。
「ありがとうございます、先輩。」
「まあ、気にしないで。」
「で。なんで、お前は助けてくれなかったんだ?」
「細かい男だね。
助かったんだからいいじゃん。」
「なんで、隣で寝てたんだ?」
「あー、うるさいうるさい。
黙って食べられないの?。」
「出来ない。
というか、そもそも、この人は誰なの?
この人も俺の隣で、
というか、この人に喰われかかってたけど。」
「うるさいなぁ〜」
「…。」
「まあ、気にしないで。」
まともな話し相手がいない、いつも通りの寂しい朝食だった。




