逃走
「いやー、まさか君がそっち側だったなんて。」
「…。」
「どけよ、あんた。
さもないとまとめて殺すぞ。」
「まとめちゃっていいよ。
残しておくと後々面倒になるから。」
「……。」
「ほら、大山くん。
ここは彼女に任せて逃げるわよ。」
「いいのかよ?」
「いい加減気付かない?
あなたは足手まといなのよ。」
「…」
「分かったらさっさと行くわよ。
自覚して落ち込んでる暇なんて今はないから。」
手を取られ引っ張られる。
力強いその手に引きずられるように走る。
本当にこれでいいのか?そんなことを考えてる暇も惜しいほど、さっさと逃げるのが静江の為だと。振り返らず手を引かれながら走った。
途中で静江の悲鳴が聞こえた気がした。
「さあ、今日はもう寝ましょう。
あれは悪い夢よ。」
「ここ俺の家だけど。」
「余ってるからいいでしょう?」
「、まあな。」
さっさと寝よう。
そして長い長い夢から覚めるか、そのまま永遠に眠ってしまいたい。
「俺以外の部屋なら好きに使っていいから。
それじゃ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
嫌な夢を見たのだけは覚えている。
「おはよう。」
何でこいつが居るんだ。
「おう、おはよう。」
そういえば助けられたんだっけか。
「重いんだけど。」
「失礼ね。」
いっそあのまま死んでいれば良かったのに。
「死なせないよ。」
「ならそれを退けてくれ。」
のしかかられて包丁を向けられている。
「俺何かしたか?」
「何もしてない。」
「じゃあ何でだ。」
「何もしていないから。」
「じゃあ何すればいいんだ?」
「静江を助ける。」
「じゃあ退いてくれ。」
「もう遅い。」
「は?」
「もう静江は…!」
「は?いや、だって逃げろって」
「それでも後でやっぱり助けに行くもんでしょ!?
それでも男か!?」
「俺が居たって足手まといになるだけだろ。」
「言い訳ばっかり!
そのせいで、静江は…」
幽の瞳が潤む。
「勝手に殺すな。」
そこに当の本人がやってきた。
「まあさすがに戻ってきた時にお前の呑気な寝顔を見たら殴りたくはなったが。」
「あっはっはっはっは」
幽は子供のように笑ってる。
「結局俺が居ても居なくても変わらないじゃん。」
「いや、居たら確実に足手まといだった。」
「あっはっはっはっは」
大笑いする幽は持ったままの包丁を布団に何度も突き刺す。
「お、おまえ!危ないからやめろって!」
「少しくらい痛い目にあえばいい。」
「だってさ。」
「やめろー!」
あけましておめでとうございます。
しばらく空きましたが、今年もやれるだけ頑張ります。




