いびり
「それと、加藤くんと大山くんも。」
「よー、こんな時間に1人で出歩いちゃ危ないぞ。」
「誰?」
「そう言う事だから大山くんは借りていくわよ。」
「何でだよ。」
「1人だと危ないんでしょ?」
「いや、むしろそいつが危ないんだけど。」
「大丈夫よ、彼にそんな度胸は無いから。」
「そういう意味じゃなくて…」
「大山くんの彼女さん?」
「いや、違いますよ。」
「そういう事なんでさようなら。」
「いや、違うよね。」
「まあ、誰が来ようとここから逃がさない。って話なんだけどさ。」
「彼女さんには悪いけど、大山くんはここで死ぬ。」
幽は笑った。
「いいえ、大山くんは死なないわ。」
「なんだ、邪魔するのか?
なら、一緒に死んでもらうぜ。」
「待って。
彼女からはそんな気配はしないけど。
なんとなくこっち側よりな...」
「ああ、当然だ。
お前がこっちに寝返った時に、あいつは向こうに寝返ったからな。」
「なら連れ戻すのは?」
「ならお前は向こうに帰るのか?」
「いや...」
「まあそういうことだ。
あいつは敵だよ。
今はまだ人を食ってないようだがな。」
「分かった。」
「さあピンチよ、大山くん?」
楽しそうな幽
「お互いさまだけどね。」
さて、どうしよう。
幽がどうにかしてくれるのか?
...いいや、きっと俺にかかってる。
幽の期待する顔。
それにはきっと答えられない。
だが、死ぬわけにはいかない。
勝てなくてもいい、負けなければそれでいい。
今はただ逃げることだけを。
逃がすことだけを。
体が反応した。
「ひゅー!やるねぇ!」
加藤は手に小銃のようなものを持っていた。
「どうなってんだその剣?」
「そんなことよりお前らは何者なんだよ?」
「あ?知らねぇの?
お前らよりも優る者、上位種って、
んまあ要はお前らを殺す者だ。」
体が反応した。
発砲したのは確かだが、音は鳴らなかった気がする。
「さあ、答えたんだからそっちも教えてくれよ。」
「その剣だよ。」
「知らない。」
「とぼけんなよ、どう見たってお前が反応する前に剣が勝手に反応して切り落としてるんだが。」
「それも知らない。」
「そんな物を振り回してんのかよ。」
「そうなるな。」
本当に勝手に体が動いているんだから仕方がない。
加藤に集中して先輩の存在を忘れていた。
ハッと上を見上げると拳を構えた先輩が降って来た。
またも体が勝手に反応して避けた。
脇腹が痛む。
拳は地面を突き、その衝撃で周りが凹んだ。
「嘘だろ。
どうするのコレ?」
「あちゃー。やっちゃったー。
まあ君は知らなくていいよ。
どうせここで終わりだから。」
「避けると痛いよ?」
どこから攻撃してくるか分からない。
ただ体に身を任せるしかない。
「っ!」
避けてるはずなのに身体中が痛い。
避ける度に痛む。
「終わりだよ。」
体は反応出来ていた。が、痛みで動作が遅れて避けきれない。
ああ、痛いな。
立ち上がるのも面倒だ。
それくらい痛い。
先輩が近づいてくる。
やり残した事もないし、やりたい事もない。
ああ、死ぬのか。
死ぬのか?
『なら代わってくれよ』
アイツならそう言うはずだ。
なら、
「ねえ、そこどいてくれないかな?
月上さん。」
「…。」
「トドメが刺せないんだけど。」
そういえばそんな苗字にしていた。




