山谷
だから?
だからと言って死ぬのか?
大人しく死ぬ?
自殺でもするか?
俺は弱いからな。
弱いらしいから死ぬ。
悪くない。
が、
いくら自問自答しても返ってくるのは自分だけ。
別の人格とやらに語りかける事は出来ないようで、
だからか、向こうからも何もない。
書き置きで会話出来そうな気がするが、
今まで無かったのだしなにより、
今になって眠るのが少し怖い。
あんな話をされた後だから余計に、
次に目が覚めるのは、
そんな事を考える。
今更になって死ぬのが怖い?
生きてる意味は殆どないが、死ぬ理由はもっとない。
生きる事は分かるが、死んだ後が分からない。
だから怖いのか。
死を理解しようが死んだのなら元も子もない。
どうしようもない未知。
ああ、そうか、自分は死ぬのが怖いのか。
そんな自覚をやっと済ませても状況は変わらない。
何だか余命宣告をされた様な気分だ。
実際にされた事はないので、コレがそうなのかは分からない。
殺されそうになった時とは別の感情。
人はいつか死ぬ。
頭では分かっている当たり前の事だ。
明日事故で死ぬかもしれない。
この後に巨大地震が来て死ぬかもしれない。
60、70年後に癌で死ぬかもしれない。
最後のだけが消されて、
残るのは近い将来の死。
夢も希望も何もかも。
コレが絶望?
なら希望って何だろう?
包丁を置いて家を出た。
死ぬ前にもう一度、
追憶だっけか?
果たして女々しいのか。
自分でも分からないが、
間近に迫る死に対して思ったことだ。
意志を持って何かをしたいと久しぶりに思った。
そんな事も久しぶりだ。
でも、これで最後だ。
とは言ったものの、
距離的にも時間的にも面倒なので、家から一番近い公園のベンチに腰掛けた。
あ、家の鍵閉めたっけ?
そういえば、明日は萌えないゴミの日だっけ?
そうだ。
そういえば、、、
思い出せばキリがない。
これは後悔なのだろうか?
ならこの中で一番惜しいものは?
そういえば、昔の友達、拓人から貰った死神のカードはどこにやった?
拓人は俺が贈った絵をどうしているだろう?
久しぶりに会いたくなった。
きっと会えば何かが変わるかもしれない。
もっと楽な気持ちで死ねるかもしれない。
そうだ、
そうだ!
そうと決まれば!
夏休み。
きっとこれが最後の夏休み。
悔いのない「ねえ」
「ん?」
呼ばれたので顔を上げると知らない男がいた。
顔に血みたいなのがついてる。
年下だろうか?
こんな時間に俺に何の用だ?
「お腹空いた。」
「おう。」
だから?
「だから食べていい?」
「あー…」
その目を知っている。
その言葉の意味も。
その空腹も。
「ダメって言ったら?」
「その喉を潰してもう1回聞く。」
「それでもダメなら?」
「…分からない。
でも食べていいよね?
だってお腹空いたし。」
「俺は不味いかもよ?」
「それは嫌だけど、
でもお腹空いたし。」
「俺は用事があるから帰るよ。
他を当たって。」
「待ってよ、だってお腹空いたし。」
「やだ。」
「お願いだから、
お腹空いたんだよ?」
「ダメ」
「おっと!」
来ると分かっていてもやっぱり怖いな。
「何で止めるの?」
迷いなく喉元を掴みに来た。
「ダメって言ったから。」
止める事は出来たけど、力では勝てそうにない。
なんせ相手は飢えているから。
「離してよ、お腹空いてるんだから。」
「いい加減諦めて他に行ってくれ。」
「ダメだよ…だってもう、お腹…」
声が震えている。
今更になって男の全身を見ると傷だらけだった。
「隠れて、隠れて隠れて。
隠れて隠れて隠れて隠れて!
やっと逃げられたのに!
なのに…お腹空いて…姉ちゃんも死んで…」
顔の血は返り血なのか?
共食いは身をもって知っている。
「何で!?何で僕ばっかり!こんな目に!!」
このままだと振りほどかれる。
掴んだ手を掴まれた。
さらにその手を俺が掴む。
「お腹空いた!お腹空いた…!
お腹空いた!!!」
きっと少しでもズレていたら自分も。
すると横から腕が伸びて来て、
男の首元を抑え込むと、
逆の手で隠された男の頭部が嫌な音をたてて目の前に現れた。
「大丈夫?」
男を髪の毛で持ち、ぶら下げて笑う男。
やっと解放された腕の感触を確かめる。
「はい、なんとか。」
「そうか、それは良かった。
って君は!」
そう驚かれたらこっちも何だか見覚えがある気がする。




