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贈りもの  作者: lycoris
2.覚醒
60/73

山谷

だから?

だからと言って死ぬのか?

大人しく死ぬ?

自殺でもするか?

俺は弱いからな。

弱いらしいから死ぬ。

悪くない。

が、


いくら自問自答しても返ってくるのは自分だけ。

別の人格とやらに語りかける事は出来ないようで、

だからか、向こうからも何もない。

書き置きで会話出来そうな気がするが、

今まで無かったのだしなにより、

今になって眠るのが少し怖い。


あんな話をされた後だから余計に、

次に目が覚めるのは、

そんな事を考える。

今更になって死ぬのが怖い?

生きてる意味は殆どないが、死ぬ理由はもっとない。

生きる事は分かるが、死んだ後が分からない。

だから怖いのか。

死を理解しようが死んだのなら元も子もない。

どうしようもない未知。

ああ、そうか、自分は死ぬのが怖いのか。

そんな自覚をやっと済ませても状況は変わらない。

何だか余命宣告をされた様な気分だ。

実際にされた事はないので、コレがそうなのかは分からない。

殺されそうになった時とは別の感情。

人はいつか死ぬ。

頭では分かっている当たり前の事だ。

明日事故で死ぬかもしれない。

この後に巨大地震が来て死ぬかもしれない。

60、70年後に癌で死ぬかもしれない。

最後のだけが消されて、

残るのは近い将来の死。

夢も希望も何もかも。

コレが絶望?



なら希望って何だろう?



包丁を置いて家を出た。


死ぬ前にもう一度、

追憶だっけか?

果たして女々しいのか。

自分でも分からないが、

間近に迫る死に対して思ったことだ。

意志を持って何かをしたいと久しぶりに思った。

そんな事も久しぶりだ。

でも、これで最後だ。


とは言ったものの、

距離的にも時間的にも面倒なので、家から一番近い公園のベンチに腰掛けた。

あ、家の鍵閉めたっけ?

そういえば、明日は萌えないゴミの日だっけ?

 そうだ。

そういえば、、、

思い出せばキリがない。

これは後悔なのだろうか?

ならこの中で一番惜しいものは?


そういえば、昔の友達、拓人から貰った死神のカードはどこにやった?

拓人は俺が贈った絵をどうしているだろう?

久しぶりに会いたくなった。

きっと会えば何かが変わるかもしれない。

もっと楽な気持ちで死ねるかもしれない。


そうだ、

そうだ!

そうと決まれば!


夏休み。

きっとこれが最後の夏休み。

悔いのない「ねえ」

「ん?」

呼ばれたので顔を上げると知らない男がいた。

顔に血みたいなのがついてる。

年下だろうか?

こんな時間に俺に何の用だ?

「お腹空いた。」

「おう。」

だから?

「だから食べていい?」

「あー…」

その目を知っている。

その言葉の意味も。

その空腹も。

「ダメって言ったら?」

「その喉を潰してもう1回聞く。」

「それでもダメなら?」

「…分からない。

でも食べていいよね?

だってお腹空いたし。」

「俺は不味いかもよ?」

「それは嫌だけど、

でもお腹空いたし。」

「俺は用事があるから帰るよ。

他を当たって。」

「待ってよ、だってお腹空いたし。」

「やだ。」

「お願いだから、

お腹空いたんだよ?」

「ダメ」


「おっと!」

来ると分かっていてもやっぱり怖いな。

「何で止めるの?」

迷いなく喉元を掴みに来た。

「ダメって言ったから。」

止める事は出来たけど、力では勝てそうにない。

なんせ相手は飢えているから。

「離してよ、お腹空いてるんだから。」

「いい加減諦めて他に行ってくれ。」

「ダメだよ…だってもう、お腹…」

声が震えている。

今更になって男の全身を見ると傷だらけだった。

「隠れて、隠れて隠れて。

隠れて隠れて隠れて隠れて!

やっと逃げられたのに!

なのに…お腹空いて…姉ちゃんも死んで…」

顔の血は返り血なのか?

共食いは身をもって知っている。

「何で!?何で僕ばっかり!こんな目に!!」

このままだと振りほどかれる。

掴んだ手を掴まれた。

さらにその手を俺が掴む。

「お腹空いた!お腹空いた…!

お腹空いた!!!」

きっと少しでもズレていたら自分も。


すると横から腕が伸びて来て、

男の首元を抑え込むと、

逆の手で隠された男の頭部が嫌な音をたてて目の前に現れた。

「大丈夫?」

男を髪の毛で持ち、ぶら下げて笑う男。

やっと解放された腕の感触を確かめる。

「はい、なんとか。」

「そうか、それは良かった。

って君は!」

そう驚かれたらこっちも何だか見覚えがある気がする。


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