鋏
不思議と体は痛くない。
朝食は美味しかった。
久しぶりに時間に余裕があったので、のんびりと着替えて家を出た。
しばらく歩くと同じ服を着た生徒たち。
今日は遅刻じゃない。
校門で先生に挨拶をした。
「おはよう。体はもういいのか?」
「?特に問題ないですよ。」
「ならよかった。授業中に寝るなよ。」
「はーい。」
多分寝る。
教室に着くと自分の席に別の生徒が座っていた。
退いてくれと頼むと、ここは俺の席だと言われた。
何故かと聞くと昨日席替えをしたのだと。
「じゃあ俺の席は?」
「俺が知るかよ。」
まあそうだわな。
「こっちだよ。」
気さくに教えてくれたこいつは、確かあの時の4人目。
「今日からよろしくね。」
何を馴れ馴れしくこの野郎は。
「ああ、短い間だけな。」
「いやいや、そう言わないで末長くさ。」
「どの口が言うんだ。」
「この口だよ。」
自慢気に大きく口を開けて、真っ赤な口腔内を見せつける。
「分かった分かったから、
いつ続きやるんだよ?」
「や、さすがに万全の君には勝てないよ?」
「何でだ?あの時順番待ちしてただろ?」
「弱った所、せめて余った所だけでも頂ければと思ってたんだけどね。
邪魔が入っちゃった。」
「俺より強いんだろ?」
「そんな事ないよ。
僕一人じゃ君には勝てないよ。」
「…じゃあなんで俺が万全だって?」
「さっき先生と話してたじゃん。
あ、別に普段から着けてるわけじゃなくて、今回は偶々だよ。」
「へー、そう。
じゃあ構わないでくれ、敵同士だろ。」
「そー言わないで、同族の同学年で同クラス、さらには隣の席なんだから仲良くしようよ。
せっかくだからさ。」
「嫌な予感がする。
ロクなことがなさそう。
よって却下。
あとうるさい。」
「厳しいなあ。
ちょっとくらいいいじゃんか、
ねぇ古霧さん?」
「ええ、ほんとケチ。」
振り返ると幽が居た。
「おはよう。」
「…なんでお前がそこに居るんだよ。」
「挨拶も返さないほどケチなのね。
あなたが眠っている間に席替えしたのよ。」
「はぁ、ほんともう、勘弁してくれ…」
いじける様に机に伏せる。
「嫌よ。」
笑っている幽が想像出来る。
「僕も古霧さんとお近づきになれて光栄だよ。」
「よろしくね。」
先の事はあんまり想像出来ない。が、きっとロクな事はない。
頼むから出来るだけ放って置いてくれ。
兎にも角にも朝から 腹が減った。




