情け
気がつくと仰向けに倒れている。
嫌な予感がしたので咄嗟に何かを躱した。
音を置き去りにした何かが、さっきまでいた所に突き刺さる。
遅れてきた音でそれに気付く頃には次の攻撃が来ていた。
身体が勝手に動いた。
見てから動いたんじゃ遅いから、きっと生存本能なんだろうか。
俺にそんなスキルや蓄積された経験はないから。
なるべく素早く簡潔に状況を把握するとしたら、
ユウジが負けた。
そんな相手に俺が勝てる訳が無い。
逃げるしか無い。
相手は化け物の中でも更に化け物だ。
寒気を感じる程の無表情と当たったら確実の攻撃。
なんだコイツは、なんなんだコイツは。
防ぐ事も許されなさそうなのに、キツイ攻撃ばかり。
ふと目に、月明かりを反射した剣が映った。
気を取られた隙に攻撃。
絶対に避けられない。
「「!?」」
攻撃が来ない。
目を開けるとすぐそばに静江がいた。
「こうも情けないとは…
呆れ果てて失望すらしない。」
その目冷たく、明らかに見下していた。
「やはり分かりきっていた事だ。
今のお前じゃこいつには勝てない。」
「おいおい、邪魔すんなよ。」
「悪いが、今日はここまでだ。」
「そりゃないぜ、そっちから呼び出しといてよ。」
「だから『悪い』と言っている。」
「くくく、じゃあ選手交代しようぜ。
そいつは全く歯応えがなかったからな。」
その笑みに体が震える。
「言葉が通じないな。
今日の所はこれで終わりだ。」
一緒即発の状況で欠伸が聞こえた。
「ねぇ、早く帰りましょ。
眠くて眠くて、
退屈で。」
幽だった。
「そういう訳だ。」
「はぁ…次はもう少しマシな奴を呼ぶか、
アンタが相手してくれよ。」
未だに伸びてる2人を軽々抱えて何処かへ消えた。
「さあ、お開きだ。
お前も呼び出したのに悪かったな。」
「…いや、きっと僕なんかじゃ相手にはならなかったよ。命拾いしてよかった。」
「…そうか。」
4人目も帰っていった。
「情けないわね。
立てる?」
微笑んで手を差し伸べる幽。
「ほっといてくれ。」
「そういう訳にもいかないのよ。」
「…なんで俺にこだわるんだ?」
「自意識過剰なの?
まあ、今はあなたが必要だからだけど。」
「そうか。
今の俺で役に立てそうか?」
「まさかそんな訳。」
「だよな。」
「だから、強くなればいいじゃない。
今日で思い知ったでしょ?」
「…俺に水をかけさせたのもお前がやらせたのか?」
「いいえ、それは彼らが勝手にやった事よ。
まあ動機はあなたにあるみたいだけど。」
「元凶はお前だよ。」
「あれ?そうだっけ?」
「気楽でいいな。」
「いいでしょ?
さあ、私達も帰りましょ。」
「ああ、じゃあな。」
「いつまでも寝てないで早く私を家まで送りなさい。」
「俺じゃなくてもそいつがいるだろ。」
「私を送った後であなたは静江と修行するの。」
「俺の意見は?」
「あると思う?」
「じゃあそいつの意見は?」
「ないわ。
ね?」
何も言わない静江。
「ほら、さっさとしなさい。」
「はぁ…」
思わず出たため息。
なんて情けない。
その後のことはよく覚えていない。
いつの間にか家にいて、
朝起きたら身体中が痛かった。
そして、誰かが朝食を用意してくれていた。
長らく空いてしまいすみません。




