中身
「あ」
起きて気づいた。
また遅刻だ。
「はぁ…」
気が重いな。
昨日と同じやりとりをする。
また廊下で彼とあった。
「よう、また遅刻か?」
「そっちこそ」
「まあな。俺は問題児だから。」
「なにやったの?」
「いろいろ。主に遅刻と早退かな。」
「大変だな。」
「お前は?」
「ただの寝不足。」
「なんだ、一緒か。」
「他に理由あるか?」
「言われてみれば思い付かないな。」
「だよな。」
「じゃあ俺、こっちだから。」
「じゃあ。」
授業中の教室のドアを開け、先生に紙を渡す。
そのまま自分の席に着く。
ぐしゃぐしゃの教科書とノートを用意し、当てられない程度には勉強してるフリをした。
放課になって幽が来た。
「修行は終わった?」
「ああ。なんとかな。」
「それで覚醒して何か思い出した?」
「いや、特には。」
「そう。アレは置いてきたの?」
「持ってこれるかよ。」
「その気になればいつでも呼べるんでしょ?」
「やってみなきゃ分からねぇ。」
「なら、
悪意には気を付けなさい。」
「あ?なんだそれ。」
「忠告はしたわよ。」
唐突な奴だ。
左右の目の色が違った。
ま、そういう事だろう。
そして、掃除の時間に案の定。
まあ昨日の今日だ。
くだらねぇ。
「昨日、言った事分かってねぇようだな。」
「…」
「なら覚悟は出来てるよな?」
「けっ、弱いくせに調子にのるからだ。」
「二度と古霧に近づくんじゃねぇぞ!」
「向こうから来たって言い訳は通じないぞ。」
「だっさww」
悪意。
これが悪意か?
いいや、これは悪だ。
なら、ここで。
こいつら全員を。
「やめろ」
立ち上がろうとする目の前に制服姿の月上静江が立ちはだかった。
「おい、誰だよこの美人。」
「知らないのか!?3年の静先輩だ。」
「何やっても絵になる美しさ。」
「古霧に隠れてるけど、相当だぞ!」
「なんでこんなところに?」
「どけよ」
「そんな事をしても無意味だ。」
「関係ない」
「覚醒したなら分かるはずだ。」
「だからどうした」
「お前は…誰だ?」
何かの糸が切れた気がした。
「助けに来たのかと思ったけど違うみたいだな。」
「誰がこんな奴助けるんだよ。」
「それもそうか。」
「いやぁ直近で見ると綺麗だわぁ。」
「な。あいつボコせばまた来てくれるんじゃね?」
「おっしゃ、じゃあ毎日やったるか?」
「いいねぇ!」
遠くなる声達。
俺まだ立ち上がれていなかった。
「またやられたの?」
「…」
「手、貸そうか?」
「…」
「そう、なら自分でなんとかしなさい。」
「なぁ…お前は誰だ?」
「…ふーん、舐めた事聞くわね。」
手を差し伸べていた幽は、俺の手をとって自分の胸に当てた。
「知りたい?
私の全部。」
「古霧から離れろ!!」
「懲りない奴だな!」
またこいつらか…
「これは徹底的に躾けないといけないな。」
一人がハサミを取り出した。
「お、将来美容師の腕見せちゃう?」
「退いてろ」
幽を抱き寄せてそのまま立ち上がる。
「テメェが古霧に触るんじゃねぇ!!」
激昂した一人が、ハサミを奪って駆けてくる。
「来い」
握る手のひらに確かな柄の感触。
それを振り上げて、ただ相手に振り下ろす。
大丈夫だ、この剣は触れられない。
切られた事に気付かないように、半身がそれぞれに左右、後方の壁にぶつかった。
水溜りを踏んだ様な汚い音と、鮮やかな鮮血の通り雨。
濡れた幽は、唯一ほくそ笑む。




