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贈りもの  作者: lycoris
2.覚醒
51/73

中身

「あ」

起きて気づいた。

また遅刻だ。

「はぁ…」

気が重いな。


昨日と同じやりとりをする。

また廊下で彼とあった。

「よう、また遅刻か?」

「そっちこそ」

「まあな。俺は問題児だから。」

「なにやったの?」

「いろいろ。主に遅刻と早退かな。」

「大変だな。」

「お前は?」

「ただの寝不足。」

「なんだ、一緒か。」

「他に理由あるか?」

「言われてみれば思い付かないな。」

「だよな。」

「じゃあ俺、こっちだから。」

「じゃあ。」


授業中の教室のドアを開け、先生に紙を渡す。

そのまま自分の席に着く。

ぐしゃぐしゃの教科書とノートを用意し、当てられない程度には勉強してるフリをした。


放課になって幽が来た。

「修行は終わった?」

「ああ。なんとかな。」

「それで覚醒して何か思い出した?」

「いや、特には。」

「そう。アレは置いてきたの?」

「持ってこれるかよ。」

「その気になればいつでも呼べるんでしょ?」

「やってみなきゃ分からねぇ。」

「なら、

()()()()()()()()()()()。」

「あ?なんだそれ。」

「忠告はしたわよ。」

唐突な奴だ。

左右の目の色が違った。

ま、そういう事だろう。



そして、掃除の時間に案の定。

まあ昨日の今日だ。

くだらねぇ。

「昨日、言った事分かってねぇようだな。」

「…」

「なら覚悟は出来てるよな?」


「けっ、弱いくせに調子にのるからだ。」

「二度と古霧に近づくんじゃねぇぞ!」

「向こうから来たって言い訳は通じないぞ。」

「だっさww」

悪意。

これが悪意か?

いいや、これは悪だ。

なら、ここで。

こいつら全員を。

「やめろ」

立ち上がろうとする目の前に制服姿の月上静江が立ちはだかった。


「おい、誰だよこの美人。」

「知らないのか!?3年の静先輩だ。」

「何やっても絵になる美しさ。」

「古霧に隠れてるけど、相当だぞ!」

「なんでこんなところに?」


「どけよ」

「そんな事をしても無意味だ。」

「関係ない」

「覚醒したなら分かるはずだ。」

「だからどうした」

「お前は…誰だ?」

何かの糸が切れた気がした。


「助けに来たのかと思ったけど違うみたいだな。」

「誰がこんな奴助けるんだよ。」

「それもそうか。」

「いやぁ直近で見ると綺麗だわぁ。」

「な。あいつボコせばまた来てくれるんじゃね?」

「おっしゃ、じゃあ毎日やったるか?」

「いいねぇ!」

遠くなる声達。

俺まだ立ち上がれていなかった。


「またやられたの?」

「…」

「手、貸そうか?」

「…」

「そう、なら自分でなんとかしなさい。」

「なぁ…お前は誰だ?」

「…ふーん、舐めた事聞くわね。」

手を差し伸べていた幽は、俺の手をとって自分の胸に当てた。

「知りたい?

 私の全部。」

「古霧から離れろ!!」

「懲りない奴だな!」

またこいつらか…

「これは徹底的に躾けないといけないな。」

一人がハサミを取り出した。

「お、将来美容師の腕見せちゃう?」

 「退いてろ」

幽を抱き寄せてそのまま立ち上がる。

「テメェが古霧に触るんじゃねぇ!!」

激昂した一人が、ハサミを奪って駆けてくる。

 「来い」

握る手のひらに確かな柄の感触。

それを振り上げて、ただ相手に振り下ろす。


大丈夫だ、この剣は触れられない。



切られた事に気付かないように、半身がそれぞれに左右、後方の壁にぶつかった。

水溜りを踏んだ様な汚い音と、鮮やかな鮮血の通り雨。

濡れた幽は、唯一ほくそ笑む。


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