劔の意思
「いつまでやってるんだ?
あとどのくらいかかる?」
静江は木の上から見物していた。
「知るか!」
怒りに任せて振っても空振り。
「遊んでるんじゃないだろうな?」
「ふざけんな!」
当たらない。
「大真面目だ!」
「なら早くしてくれ。」
「うるせぇ!」
休み無くもなく振り続ける。
「休憩だけは一丁前にとるか。」
「うるせぇ…」
こいつと話してると余計疲れてくる。
剣自体は片手で振り回せるほど、そんなに重くはない。
日も沈んで空気は涼しい。
が、何やってんだろうな、俺。
「私も暇じゃないんだ。」
「…俺に付き合ってる時点で十分暇だろ。」
「それは命令だからだ。」
「そりゃあ悪かったな。」
「なら早くしてくれ。」
「それで割れたら苦労しねぇんだよ。」
「覚醒すればいいだろう。」
「簡単に言うな。
大体なんだよ【覚醒】って。」
「知らん。」
「無茶言うなよ…」
呆れて物も言えないとはこの事。
第一俺は既に覚醒してる。
それが起きる、目が醒めるの覚醒じゃない事も分かってる。
もうこれ詰みなんじゃないか?
「お前、もう一人の自分と一つになったんだろ?」
「だからどうした。」
なんで知ってるんだよ。
「何か変わったか?」
「変わらねーよ。」
「 お前に望みはあるか?」
「ないよ。なんとなく生きてるだけだ。」
無意識に口調が強くなる。
「そうか。
なんでお前なんだろうな。」
うるせぇ
分かりきったことを聞くんじゃねぇ!
そんなの俺が!
一番!
「知るかよぉ!!」
それでも岩は割れない。
たまに突いたりもしたが、そもそも剣が岩に触れない。
もう月がだいぶ高くなった。
「じゃあ、お前の願いはなんだよ?」
久しぶりの会話。
休憩がてらに話しかけた。
「そんな事も忘れたのか?」
「あ?」
「…そんな事はもう…忘れた。」
なんなんだコイツ。
「なら、生きてて楽しいかよ?」
「楽しいから生きてるのか?」
いや。
いいや。
「生きてるうちに楽しいことはあったか?」
「ああ。」
「そいつは羨ましい。」
「お前だってなかった訳じゃないんだろう?」
「最近はないな。だから」
「死ぬか?」
「いや、
つまらない。ただそれだけだ。」
畑でも耕す様に振り続ける。
「その剣は振るう者の願いを叶える。
ただし扱えるのは覚醒する者のみ。
その願いが心と一致した時のみ。」
「ヒントならもっと早く言ってくれないかな。」
「それじゃあ意味がない。」
「いや、今までの時間は全く無意味だ。
「なら今すぐ終わらせてみせろ。」
「はぁ…」
あいつを食べて色々分かった。
が、あいつの考え、存在、理由の根本が分からない。
「なあ、なんでお前、生きてたんだ?」
「ボケが始まったか?」
「お前じゃない。お前に聞いてるんだ。」
…。
分からない。
だが、いつかきっと分かる様な気はした。
自分だから。
なら、まだ死ねない。
「腹減ったな。」
「ああ。」
「何か食ってくか?」
「終わったらな。」
「終わったぞ。」
「は?」
「触ってみろ。」
颯爽と木から飛び降りる静江。
「確かに切れてるな。」
「だろ?」
「いつ覚醒した?」
「知らん。」
なんとなく、黙っておいた。
「…」
無言で瞳を覗き込んでくる。
「早く帰ろうぜ。」
「…。
ここから一人で帰れるか?」
「こっちのセリフ?」
「ならいい。」
「あ、待てよ、飯は?」
「今日は忙しい。
また今度誘ってくれ。」
「そうか、じゃあな。」
「ああ。」
静江は向こう岸まで飛んで、そこからあっという間に見えなくなった。
そういえば、明日も学校だったな。
今度こそ自分の家の鍵を開けた。
そこで急な眠気に襲われ、自室まで行って眠った。
あ_あ ̄
ってやつが覚醒ですね




