美術室
「クククク。」
今日何度目かの笑いが込み上げる。
楽しいなぁ。こんな喧嘩をしたのはあいつとの以来か。
別に戦闘狂でも破壊衝動があるわけでもない。ましてや二重人格でもない。
でも何でだろうな、とっっても楽しい。
両親を失って空になった俺に刺激を与えてくれる。
その上まだ残っていたものさえも取り上げられちゃあ、こんな状況は刺激的過ぎる。
「ずっとヘラヘラしてて気持ち悪いな。楽しんでいるなら結構だが。」
「さっきまでヘラヘラしてた奴には言われたくないなぁ。ククク、まあ俺とお前で同じ顔の方がキモいけどな。ハハッ。」
脛を摩ってる友慈の横を通り階段を駆け足で降りる。
さて、
また職員室まで行ってどうにかドアをこじ開けたいところだけど、さすがに読まれてるかもしれない。
それに疲れてきたから、一旦最初に居た教室にでも隠れるか?
そういえば、観客が居たがあいつはどうしてるんだ?
あいつがおそらく友慈とグルだろうが、場合によっては協力を仰げるかもしれない。
ただの面白い事好きのバカだと助かるんだが。
そんなわけで俺は2階の元居た場所に向かった。
去年まで通ってた教室の廊下に着くと、幽は瞑っていた目を見開いた。
その瞳は、いつか見た時のように紅く不気味だった。
前は片目が黄色のオッドアイのように見えたが。
「お前、まだそこに居たのかよ。」
「悪い?これでも一応観戦はしてるわよ?階段での戦いは面白かったわ。これからのも期待してるわ。」
こいつどこから見てたんだよ。
「ああそうかい。ところで、」
「協力ならしないわよ。」
「…それは残念だ。」
そう言えば預言者だったな。
友慈とグルであれば『自称』が前に付くけれど。
「ええ。でもあなただけに限った事じゃないわ。彼にも協力はしないから。」
「信用しろと?」
「お好きに疑って頂戴。あなたからの信頼に価値があるのかは疑問だけど。」
「あっそ。」
「あなたは私を疑ってるようね。」
「勝手に解釈してろ、じゃあな。」
これ以上話していてもおそらく無駄。
それに同じ場所に停まっていると友慈に見つかってしまう。
移動中の鉢合わせもだが、隠れてない現状では変わらない。
それに今は鉢合わせた時のための武器を取りに来ているのだから。
武器さえあればもっと優位に友慈と戦え、迎撃にもこちらから出向くことも出来る。
とにかく今は武器を。と息巻いていると、倒れていた死体に足を引っ掛けてしまった。
よろめきはするが転ばなかった。
足元を見る。
そこには仰向けの、ゲストとして呼ばれた俺の親の仇の死体と、弾切れのため放り出した友慈から借りたリボルバー式の銃。
武器と言えば武器だが。
念のために拾った。
出来るかは別として洋画でよく見る銃の柄での攻撃、友慈が予備の弾を持っているなどの可能性を考慮してだ。
「ちなみに大山くんは今、職員室の前辺りにいるわよ。」
「…協力しないんじゃなかったのかよ?」
「バカね〜、そういう時は私の独り言という事にして一言礼を言って去って行くのが基本でしょ。まったくもー。ほら、分かったらさっさと行った行った。」
手であしらわれた。
さて、階段の前に来たが…
マドンナの言うことは信用は出来ないし、友慈は俺の裏をかいてくるかもしれない。
どちらもありそうだから困る。
とりあえず。
物(武器)欲に駆られ、下に降りることにした。
階段の終わり付近で立ち止まり、影と足音の確認。
幸いこちらから影は伸びていない。
下駄箱の方にも目をやるが人影を感じなかった。
廊下を遠くまで見据えてみても友慈の気配はなかった。
マドンナが言った後に上に登って行ったのかもしれない。
その真実はどうでもいいが。
職員室に向かう。
近づくに連れ周りを警戒しながら進む。
そして、到着。
開かない事を確認して策を練ろうと、ドアのスライドを試したら、ドアは簡単に「ガラガラ」と音を立てて開いた。
ドアの、音と簡単に開いた事への驚きで後ろへ飛び退く。
自分でも驚くほどの勢いで。
再び周りを警戒。
友慈の気配は職員室からもなく、音を嗅ぎつけて来られるかもしれないので、第一目的地の職員室の中に身を潜めた。今度は遅めに音をあまり立ないように閉めた。
鍵をかけたら逆に怪しまれるかもしれないと思い、鍵をかけずに一旦適当な教師の机の下に隠れた。
しばらく時間が経ったはずだが、誰も入ってくる様子は無かった。
警戒を緩めず机の下から出た。
隠れている間に目が慣れたので、辺りの物になるべくぶつからないように、幾つかの鍵が吊るされてる木の板に向かった。
そこで美術室の鍵を探していると、当然他の教室の鍵も目がつく。
その中から武器になりそうな物がありそうな、なんとも曖昧だが可能性が大きい部屋、理科室、調理室,それに加え目的の美術室の鍵をそれぞれ音を立てないように慎重にとった。
そして、理科室の鍵を右の、調理室の鍵を左のポケットに入れて、余った美術室の鍵は自分で握りしめ、音を立てないように分散した。
校長室のトロフィーでもふんだくろうとしたが、残念ながら職員室からでも入れなかった。
とりあえずは職員室を出て再び美術室へ向かった。
職員室を出る時と、ポケットが揺れて正義から貰った鍵と他の鍵が擦れて鳴る金属音に心底脅かされた。
友慈を恐れているのかもしれないし、ただ"鬼ごっこ"という遊びに真剣になっているだけかもしれない。
ただ、開始した時より心臓の鼓動は速くなっている。
異常に高かったテンションも少しずつ落ち着きを取り戻している。
おかげで訳も分からなかった体の震えも止まった。
職員室まで来た時と同じ道を辿り美術室に着いた。
途中の調理室は美術室がダメだった時と最終手段の切り札としてとって置くためスルーした。
美術室の付近には誰も居らず、床の友慈の体温も残ってなかった。
少し気を緩め、鍵を差し込む。
そのままゆっくり回し解錠する。
ここで一旦周りを見渡すも誰の気配もなく、ゆっくりと鍵を抜き取りドアに手を当て慎重に開ける。
「バンッッ!!」
開けてる途中に、向こう側からドアの窓に手が勢い良く張り付いた。
「うわあっっ!?」
俺は心臓が飛び出しそうなほど驚き、そのまま腰を抜かす。
張り付いていた手が離れ、代わりに顔が浮かび上がった。
窓に反射した自分の顔。ではなく、友慈の顔。
その顔は満面の笑みで、俺が倒れているのを確認すると、更に嬉しそうにしてドアを開けて出てきた。
「アッハハハハハ。『うわあっっ!?』だってさ、アッハハハハ、フフフ。」
ドアに手をつき下品な笑いをする。
さらには俺の下手くそな、と言いたいが何もかもが同じなこいつの場合はモノマネの域を超えている。
明らかな挑発。
だが、今は高速で打ち続ける自分の心臓を落ち着かせるのに必死だった。
「…ハァ…ハァ…ハァ…」
「フフフフ、どうしたんだよそんな必死になって?ん?何で俺が先に美術室に居るかだって?」
嬉しそうに俺を見下しながら自慢を続ける。
まあこっちから聞く手間が省けたが。
「簡単だ。この学校の美術室は、美術準備室と共通の鍵なんだよ。昔美術の先生に聞かなかったか?『俺の前の先生が2回も準備室の鍵を失くしちゃったからこれ以上の再発を防ぐ為に鍵と鍵穴を変えたらしい。』って。ちなみにその先生は翌年異動になったらしい。」
そんな話は覚えてないな、美術でやったことすら微かなのに。
「それが?」
「ん?ああ、簡単だ、簡単だよ。
お前が持ち出したのは"美術室の鍵"で、
俺が持ち出したのは"美術準備室の鍵"ってだけさ。」
そういってポケットから『準備室』と書かれているキーホルダーがぶら下がる、美術室の鍵とまったく似た鍵をジャラジャラと取り出した。
「この鍵は他の一部の鍵と違って美術の先生が管理するから、美術の先生の引出しに入ってたぜ。」
一部の鍵はおそらく体育館への渡り廊下とかマスターキーの事だろう。
しかし、盲点だった。
板には全ての鍵が揃ってかけてあった。さらにこいつが職員室に入ったかどうかは確認出来ないし。
やはりこいつには考えが読まれるって事か。
こんな先回りまでして下らない事を。
心臓の鼓動が幾分かマシになり、腰にも力が入る。
今度は金的か?とも思ったが、やはり読まれているだろうと思い大人しく立ち上がった。
友慈はその様子を笑顔で見守っていた。
尻に付いた埃を払い、一歩友慈から離れる。
「怖気付いたか?」
離れた分以上に距離を詰めて急速にパンチを繰り出す。と見せかけてそのまま振り返り走る。
結果、友慈はまったく避けようともせず、微動だにしない。つまり追っても来てない。
ただ笑顔だった。
フェイントは失敗だったが、離れる事が出来たので十分だ。追ってくる様子もない。
そのまま奥の階段を目指す。
が途中でさっきの出来事がフラッシュバックする。
おそらく、このまま近い理科室に向かってもまた準備室の鍵で開けれられるかもしれない。
たとえ鍵が共通なのが美術室だけだったとしても、友慈は絶対に何らかしらの対策を取っているだろう。
遠回りになってしまったが、調理室に向かおうか。
…読まれてそうだな。
とりあえずは…
今回はなんとか周1。
ですが書いてて自分でもいろいろ突っ込みどころがありました。
お許しください。
最近も忙しく、書いてる途中にLINEでいろいろ連絡が来て、後書きで書こうとしていたことが諸々忘れてしまいました。
突っ込みどころの解説だった気がするんですが…
少々適当な後書き(いつもな気が…ウッ、頭が…)ですが、今回はこのあたりで。
それでは




