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贈りもの  作者: lycoris
1.離別
27/73

カムバックスクール

すみませんでしたあああああ!!!

「何?」

驚いている俺を見て幽は不満そうな顔をした。

「え、いや。やっぱり知ってたんだなーって思っただけだけど。」

「やっぱり信用して無かったのね。前に言ったでしょ、私は予言が出来ると。当然貴方の身に何が起きたのかもだいたい知ってるわ。」

幽は呆れるように説明した。

「何で俺なんだ?」

聞かれるのが分かっていたように、先程の説明を(まと)めるかのように。

「そんな事までは知らないわ。逆にあなたは自分に何か心当たりはないの?ここまで来るとさすがに偶然じゃ済まないわよ。」

言われてから初めて自分に心当たりが無いか探してみた。

だが、無い物は無い。

心当たりではなくとも、原因を考えてみたこともあって

自分の中には疑問しか残っていなかった。

頼みの綱として聞いてみたもののやはりダメだったようだ。

「心当たりなんて…俺が知りたいぐらいだ。」

「そう?じゃあ本当に低い確率の偶然なのかもね。ともかく私の用はこんなお喋りじゃなく伝言なのよ。」

確かに今までの話は、こいつの様子だとどうでもいい事のようだ。

利益を得られなかった以上俺にとっても不毛な話になり変わって、自分でもどうでもよくなってきていた所だった。

「へー。それで俺に何の伝言?」

「今日の日付は分かるかしら?」

それがどうした?伝言と関係あるのか?などと詮索しようとしたが、思えば確かに最近気絶してばかりのようでまともに日付感覚はなかった。

今日は何日なんだ?と言われてから無性に気になってきて病室内のカレンダー探した。

必死に見渡してると、幽は俺の頭上を指差して

「明日には退院出来るって言ったら『今週の土曜日、夜の学校にて待つ。』だって。」

と告げた。

「は?」

(ゆび)()す方向に釣られ後ろをを振り返る。

指し示した所にはカレンダーがあり、幽はちょうど火曜日の辺りを目掛けて指差していた。

日付確認が終わると次はさっき幽が言った言葉を頭の中で繰り返す。

「えーっと?」

間が空いてようやく理解が追いついた時には幽は扉を開けて出て行こうとしていた。

「待って!それって誰だよ!?」

慌てて聞いたが分かっていたように幽は扉を明けてから振り返り際に「あなたのよく知る人物よ。それと、あなたのお友達さんは無事のようね、良かったわね。それじゃ、じゃあね?」

端的にそれだけを言い放ってから去って行った。

だが、淡々と紡がれる言葉とは裏腹にその表情は子供のような笑顔で、さらには手まで軽く振ってから去って行った。

何だったんだ、と思う間もなく再び病室に人物が入ってきた。

ちょうどいい入れ替わりのタイミングで。

中に入ってきたのはナースさんで、表情はにこやかだった。

「お見舞いはもういいの?」

幽が置いて行った果物を見ながらナースさんが聞く。

笑顔の理由はやはりこれか と素っ気なく答えた。

「そうですけど、たぶんナースさんが考えてるようなものでは無いんで。」

ナースさんはそれでも笑顔を絶やさず、

「あら?わざわざ言われて外で待っていたのに。」

と不満そうな顔をせず不満を漏らした。

あの医者か、頭を(かか)えたくなる程に呆れた。

「あれ?器具とっちゃったの?」

そういえばそうだった。

さっきまで拘束されてて不自由だったのを忘れていた。

「はい、さっきの子に外してもらいました。じゃないと、ろくに会話も出来ませんので。」

「それもそうね。あまりにも自然だったから私も忘れちゃってたわ。でも、その様子だと大丈夫そうね。どこか痒いところとかない?」

ナースさんが少し心配そうな目で俺の体を見つめる。

「はい、特にないです。」

「そう!なら本当に良かったわ。やっぱり若いって良いわね。回復力と言うか、元気が違う!」

ナースさんはそう元気に、何かを期待するように言ったが

、あまり下手な事を言ってしまわないように黙るしか出来なかった。

「あら?そこは突っ込む、もしくはフォローする所でしょうが!まったく、コレだから最近の若い(もん)は。」

呆れるように言い放ったが、これまた俺のツッコミを期待しているようだ。

「そうですね、でもナースさんだって「そうは言っても歳には勝てないのよ!私だって取りたくて年を取ってんじゃないわよ!」

自分で言ってて悲しくは無いのか…

ツッコミを邪魔されたことよりも呆れが上回った。

この人の相手もなかなか面倒だ。

そう思いながらも心の何処かではこの会話を楽しんでいたようで、身体が軽くなったようで、気持ちもだいぶ安らいでいた。

その後もしばらくナースさんとの漫談のような会話を続けているといつの間にか眠っていた。

「どうやらまだ、そうとう疲れが溜まってたみたいね。体にも、心にも。ゆっくりとお休み。」

子供を寝付かせる母親の様だった。

ナースは花瓶の花の水を替えてから、不要となった拘束具を回収して静かに病室を出て行った。


次の日、目が覚めると目の前が眩しかった。

そこにはカーテンと窓を開けていたナースさんがいた。

「あれ、起こしちゃった?ごめんなさいね。それと、おはよう。」

釣られて挨拶する。

「あ、おはようございます。」

目をこすりながら周りを見渡す。

そういえば入院していたんだったな と改めて実感した。

只今(ただいま)水曜日午前10時零々(れいれい)分。お目覚めはいかがですか?」

まるでアナウンス嬢かのように現時刻を教えてくれた。

本人は軽くふざけたつもりだろうが今の俺には助かる。

「ふぁあー…そうですか、ありがとうございます。」

欠伸(あくび)交じりに幽の言っていたことが確かだと認識した。

「疲れてるみたいだし、まだ寝ててもいいんだよ?」

「いや、別に…ふぁ〜」

言う割りには欠伸が止まらない。

(まぶた)も懸命に擦り続けるも、目糞は十分とれたが未だ重いままだ。

眠気が押し寄せて止まらない。

こんな朝を迎えたのはいつぶりだろうか?

いや、あんなに心地のいい眠りはいつ以来だろうか?

両親が殺される前は夢など起きた時は忘れてしまっていたほどのものだったが、殺された後は自分から睡眠した数など3回と無い筈だ。

思えばあの時から急速に色々な出来事が起きている気がする。

だが、そのおかげか、今日はここ最近では珍しいほどの快眠だった。

こんな事を考えてから『もう一度寝たい』と思うも、なかなか寝付けず、逆に冴えてしまっていたようだ。

少し惜しい気もするが、ふかふかの布団に包まれるだけでも中々の至福だ。

潜り込み、枕に頭を押し付けるように寝る体制を取った。

その状態で目だけを開けているとナースさんが話しかけてきた。

「あら、やっぱり寝付けないって感じ?そりゃあ2日間寝込んでたと思ったら、昨日の夕方に突然目が覚めてそれで人が話してる途中に寝ちゃうんだもんね。もう寝疲れちゃったんじゃない?」

確かにその可能性もあるが、たぶん考え込んでしまったからだと思う。

そんな事をナースさんに言うわけにもいかず、

「かもしれませんね。そういえば、僕はいつになったら退院出来るんですか?」

とりあえず、今分かる限りの状況を寝起きの頭で整理しようと思った。

「そうね。外傷は驚くことに(ほとん)ど治ったみたいだし、望むのなら昼過ぎに精密検査を(おこな)って内部も大丈夫か確認してからね。治ってたなら今日中には退院出来るわよ。まあ、夕方頃にはなってるでしょうけどね。」

「そうですか、ありがとうございます。」

情報提供に感謝し、考えをまとめようと布団を鼻先まで被る。

「それじゃ、考え事の邪魔しちゃいけないし、私はこれで。何かあったらいつでもナースコールして頂戴(ちょうだい)。飛んでは無理だけど駆けつけるから。」

部屋の整理や簡易清掃を終えたようでナースさんが病室から出て行った。

気が利くありがたい人だ。

が、扉を()める前に

「あ、お昼ご飯は2時間後だから。こんな中途半端な時間だと朝食は終わってるのよね、ごめんなさいね。」

これだけ言い残し扉を()め切った。

お喋りじゃなかったら今頃結婚でもしてそうなのに、残念な人だ。

と、指輪をはめていないナースさんの手を思い出して憐れんだ。

それにあのお喋りが自分を(みずか)ら“おばちゃん”と呼ばせている様にも思える。


少し脱線してしまった思考を戻す。

考えは1時間ほどかけて納得のいくものにまとまった。

それから今後のことも考え、いや妄想に近いものかもしれない、想像をしていると病室の扉が開いた。

この病室には他にもベッドがあるものの現在使われているのは俺の1箇所のみ。

なので当然この病室を訪れたものは何らかしら俺に用事があるということだ。

「どうしたんですか?」

ナースさんが気まずそうに答えた。

「いやあ、申し訳ないんだけど。さっき食事を作る人に『多めで!』て頼んだんだけど、ちょうど先生が来ちゃって怒られたのよ。それと後、悪いんだけど、先生が『いきなり多く取らせるのもどうかと思うから、今日ところは点滴で様子を見よう。』だってさ。食べたいんなら抗議して来てもいいけど?」

「いや、いいです。わざわざありがとうございました。」

「そう?育ち盛りだからこれからはちゃんと食べなきゃダメよ?」

「はい。分かりました。」

本当にいい人だ、この人は。

どちらかと言うと腹は()いている方だが、たぶん明日には何かを大量に食べているだろうから特に気にしなかった。だが、ナースさんの計らいには感謝をしている。

「それじゃ、くどいかも知れないけど何かあったらしっかり読んでね?それじゃ。」

元気一杯だが、扉の開閉は静かなものだ。

本当に出来た人だ。


ナースさんが居なくなってから病室は寂しいものとなった。

自分の呼吸と窓から吹く風のみが音を立てる。

暇に耐えかねて、部屋中を視線だけで捜索する。

身体は自由に動かせるが、"暇ではあるが面倒臭い"というダメダメな心情だったからだ。

グルリと見回すも何度か繰り返してきたので大体の場所は把握出来ていた。

分かっているものに興味は湧かず、捜索はすぐに終わり再び退屈が襲った。

ふと、隣を見ると俺が着ていた着替えが紙袋に入っていた。

どうやらナースさんが昼飯の報告の時に一緒に持って来てくれていたらしい。

もはや言葉じゃ言い表せない程に完璧な人間だと思った。

そんなナースさんがわざわざ持って来てくれた服に着替え、布団の上に寝転がった。

そのまま何かを考えるでもなくただボーっとしていると、医者が入って来た。

「やあ、おはよう。見た感じ暇そうだね?」

相変わらずこの医者はヘラヘラしていた。

「それじゃ身体検査をしようか。まずは起き上がって椅子に座ってくれると助かる。」

無言で言われたことを実行する。

医者と向き合う様に座ると医者は聴診器をセットした。

この部屋には花瓶に入った花はあるが、男二人だけで花がない。

ということは、服くらい自分であげろということだ。

「はい吸ってー。はい吐いてー。吸ってー。吐いてー。じゃあ今度は後ろ向いて。はい吸ってー。吐いてー。」

何もおかしなところもなく順調に検査は続いた。

「何処か身体が痛むところは?」

そう言いながら腹部を押して痛さ検査していた。

「はい、特には大丈夫です。」

医者は立ち上がった。

「そうかー。じゃあ精密検査とか必要ないみたいだからこれで退院していいよ。」

前回と少し違う点があったので聞いてみた。

「あの、今日は刑事さんは?」

「ああ、彼ね。こう見えて彼も私も忙しい身なんだ。だからこうして呼び出すのも面倒だから暇を見つけて君の様子を見に来たんだよ。」

意外 というほどでもなかった。

職業を考えれば当然といえば当然だ。

前回がたまたまだったのだろう。

「そうですか、ありがとうございました。」

「いやいや、どういたしまして。ここの治療費とかは後日でいいよ。君、今いろいろと大変らしいから支払いは後日で。」

この人とはあまり合わないかもしれないが、案外いい人のようだ。

「あ、ありがとうございます。」

「はっはっはっは。」

わざとらしく高笑いしながら病室を出て行った。

俺もこのままここに居てもすることが無いので、自宅に戻ることにした。

俺の持っていたスーパーでの商品以外は大体紙袋に入っていたので、特に準備することもなく、荒らした布団を戻すだけだった。

シワを治す作業をしていると再びナースさんが入って来た。

「あら、わざわざ直してくれなくてもいいのに。それに洗濯するものだからって、まあ直してくれてありがとうね。これ以上は私がやるから安心して。忘れ物は無いわよね?それじゃあお大事に。」

()かされるように病室を追い出した。

ナースさんなりに気をつかてくれたのだろう。

本当にありがたい。

「はい、ありがとうございました。」

「はいはい、お大事にねー。」こちらがお辞儀すると、優しい笑顔で手を振ってくれた。

それを受け軽く手を振りかえして病院を出た。

本当にこの病院にはお世話になった。

出来るだけ世話にはならない方が良いんだろうが、今度大怪我してもこの病院だといいな などと不吉な事を考えながら帰路についた。


久々の自宅。

鍵を開けて入ると少し新鮮に感じた。

同時に懐かしさが込み上げてきた。

ふと、リビングに入ると母が「あら、おかえり」と夕飯を作る片手間に出迎えてくれる。

そんな事はありえないのに、そんな事を考えてしまった。

父に関しても同様に、ありえない妄想に浸りながら、部屋の様々を回った。

一向に自分の足音だけが家中に響く。

こんな事をしても虚しいだけなのに。

足が止まらない。

最後に自分の部屋の前に立ち止まった。

俺の居場所は、今この家に存在する者にとって唯一に部屋はここだけだ。

目元が熱くなる。

やはりまだこの唐突に訪れた孤独への寂しさは慣れないらしい。

せっかくあいつが遠くから励ましに来てくれたのに。

気にしなくてもいいはずなのに、気になって仕方なかった。

なので、これ以上考えが浮かばないように寝ることにした。

部屋に入り、そのまま布団に倒れこんだ。

同時に埃も舞うが気になどならず、そのまま目を強く瞑りひたすらに思考を逸らすように眠ろうとした。


目を覚ましたのは翌日の朝6:30

自分にとって珍しく早起きをしてしまった。

することは無いが、自然と習慣化した足が、体がリビングに向かう。

自分のコップを取り、冷蔵庫でキンキンに冷えているお茶を注ぐ。

椅子に座り、一口飲んだだけなのに頭がキーンとなった。

ここしばらく誰も触っても飲んでもいなかったんだ、そりゃあ冷えきっているはずだ。

不意を突かれたことで目が覚めた。

完全にではないが、まとまな思考が出来るほどに。

そんな時目についたのは電話機だった。

留守番電話を示す明かりの点灯が目まぐるしく繰り返されている。

それは目に悪いし、何より留守電を入れてくれた相手にも悪い。

特にするべきこともないので、だるい体を引きずって受話器を取りに行った。

そして、留守番電話のボタンを押すと、機会音がが鳴り、聞き取りづらい機会声の女性がアナウンスを始める。

送信者は担任で、内容は『退院したら一報をくれ。』だそうだ。

電話番号を見るにおそらく携帯電話からのようだ。

それなら問題は無いかとその電話番号に掛け直した。

「はい、もしもし?」

しばらくコールが鳴った後、気だるそうな先生の声がした。たぶん寝起きなんだろう。

だが、罪悪感など湧かなかった。

「もしもし、先生ですか?俺です。留守番電話を確認したので掛け直しました。」

これを聞いて一気に先生の声色が変わった。

「えっ?本当にお前なの!?」

予想外の驚きように思わず唇が緩む。

「ええ、そうですよ。昨日退院したんです。」

「おぉ…!そうなんだ、よかったな!あぁっと、そうだ。それで今日から学校は来れそうか?」

面倒だから嘘でもつこうかと思ったがあまり休むと将来良くないことになるらしいから大人しく真実を答えた。

「はい、大丈夫だと思います。」

「そうか、なら気をつけて来いよ。それじゃ学校でね。」

「はい、それでは。」

先生から切ると思ったがどうやらお互いに気を使って(俺は面倒くさいから)切っていないようだ。

沈黙で間が空いて、耐えかねてか先生が口を開いた。

「あ、そっち

ブツっ。

電話が切れた音を確認して受話器を元の場所に置く。

先生、タイミングが悪かったですね。


それから、朝食なんてのは家に置いてなかったので、久々の制服に着替えてから、鞄を準備し家にしっかり鍵を閉め学校へ 向かう途中にあるコンビニに向かった。


というわけで、一気に病院を後にするまで書き上げましたが、相当時間を食いました。

こんな筈じゃなかったのに!

それに(ともな)い今回はかなり長めになりました。

たぶん自分の中で最長です。

そんなわけで、いつもより誤字脱字が目立つと思いますが、皆様のフォロー力で脳内変換をお願いします。

それと、ナースさん推しでしたが、スペックは三十路ほやほやの美人さんということで。

さらに主人公の名前も今更ながら「大山(おおやま) 友慈(ゆうじ)」に決まりました。

主人公の名前が最後に決まるとはなんとも…



はい、早くとか言っていつも通りの週1更新になってしました。

すみません。

言い訳ですが、一昨日寝落ちしてしまった所為でそれをまとめるのに大変でした。

それと病院を脱すると宣言してしまったので思いのほか長くなってしまいました。



はい、後書きもいつもより長くなってしまいました。

文字数も限られてるとは言え、そんなギリギリまで書くこともなくネタもないので、今回はこれで。


それではまた次回もいつも通り より少し頑張ります。


ではでは


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