双子
やっぱりダメだった。
「ジェミニって言うと、双子ってやつか?さっぱりだな。」
公園で寝転んでいるんのも変なので、ベンチで話すことにした。
「まあ、待てって。ジェミニと似た単語で『ジェミナイト』ってあるだろ?作者はそれを間違えたんだよ。そして、ジェミナイトの意味は"対にすること"っていう意味もあるんだってさ。」
沈む夕日とその光に照らされて足下から映える影を指差して言った。
「そんであの絵は"光"と"影"を表してる。よくありがちかもしれないが、だから面倒くさいとも言える。その呪いにかかったものは、かかった時から別の、もう一人の自分が構成される。その自分はいつ産まれたか誰が親なのかも分からずに、いつの間にか自我を持ち、そして、もう一人の自分と出会う運命になっている。それを知っている。」
一呼吸置いて説明を続けた。
「そして、出会った時に使命を課せられる。だが、それは従っても従わなくってもどっちだっていい。だけど、それは人それぞれとはいうが、ほぼ殺すようになっている。どういうわけか、共存はありえないらしい。お前、もう会ってんだろ?もう一人の自分と。」
やっと繋がった。
ドッペルゲンガーと聞いて頭の片隅で何か引っかかっていたそれの正体がやっと分かった。
あいつだ。俺と同姓同名の。
「ああ。たぶんもう会ってると思う。でも、それは何年も前だ。お前の説明通りだと、既に殺されててもおかしくないんじゃないか?」
「やっぱりか…そいつが何を考えてるかまでは俺も分からんけど、おそらく既にお前を狙っているだろう。これから気をつけろよ。ま、案外この会話も聞かれてるかもな。」
「え?」
慌てて周りを見渡す。
人の気配はしない。
わざわざ人通りの少ない公園を選んだのだから当然だが、それでも隈なく見渡す。
夕日に照らされる影を探し、まさに人影も見当たらなかった。
安堵して、顔を友人に向けると、面白可笑しくケラケラ笑っていた。
「アハハハ。ま、まあ、怒んなって。ただ、警戒はしとけよってことで、フフフ、だから男に言うのもあれだけど、夜道に気をつけろよ、ククッ。」
もはや怒る気力も無く、呆れていた。
グゥゥ〜
なんとも腑抜けな音が聞こえた事で更に呆れる。
だけど、気持ちは同じだったので、
「よし、飯でも食いに行くか!」
「お、いいねぇ!てか、さっきの音で余計に腹減っちまった。どっかに行こうぜ!」
ということで、夕飯を食べに行くことになった。
場所は昼と同じ店ではなく、別の店に向かった。
「牛丼か、いいね。ガッツリ行こうや!」
ピッ
「大盛りにするんだ。じゃあ、俺は特盛りかな?」
ピッ
「な!ここでも張り合うか!?よし、いいだろう。俺も特盛りにする。さらに生卵もプラスだ!」
ピッ
「おいおい…まあ負ける気もないし、財布も余裕あるからここは…特盛りプラス温泉卵にさらに味噌汁だぜ!」
ピッ ピッ
「なんだと!?だが、甘いぜ、味噌汁なんて甘えだ!俺は豚汁で行く…!さらにさらにポテトサラダセットも付ける!」
ピッ ピッ
「なん…だと…!?ならば、ならば禁断の肉皿も付けちゃいます!さらにこちらはシーザーサラダも付けちゃう!」
ピッ ピッ
「くぅぅぅ!な、なら、こっちはアイスだって付けちゃうもん!」
ピッ
「や、やるなぁ…!こうなったら、さらに牛丼並をもう一杯…!」
「くっ!なんだとぉ!な、なら「待て!」
な、なんだよ!?」
「フフ、浅はかだな…愚かで滑稽だ…!」
「な、何がだよ!」
「貴様は自分の財布の中身も把握していないのか?」
「なっ!?抜かった!図ったなぁぁあ!」
「ハハハ、これで貴様は帰りの金がなくなったな。哀れなり、愚かなり。」
「て、てめぇ!」
「おっと、早くどきましょう、邪魔になりますよ、おっほほほ。」
「クソー、次は覚えてろよ!」
「まあ、今回は俺の勝ちってことで。」
カウンターではなく、背もたれのあるテーブル席に行った。
「ふぅ…さすがに疲れたな。まだ身体中が痛いよ、まったく。」
「誰のせいだ、誰の。まあ俺も疲れたが。」
互いにジジくさく椅子に腰を下ろす。
このためでもあるが、もう一つは、
店員の顔が引きつるくらいの大量注文のため。
注文用紙を受け取りに来た店員の顔に苦笑いが浮かんでいた。
この時間帯はまだ夜のピークでもないので油断していたのだろう、ダルさ全開のその背中にエールを贈った。
「可哀想だな、あの店員も。」
「同じことを言わせるなよ…
それよりももう一つ話がある。それは「お水です。」」
明らかに不満そうな声で店員が2人分も水を運んで来てくれた。
こいつの話を遮って。
「あ、ありがとうございます。」
大量注文の後ろめたさもあるので、一応お礼を言った。
聞き流すような形でその店員はすぐに厨房に戻って行った。
「で?」
水を飲んでから聞く。
「俺が何したってんだ…」
「俺を容赦無く殴った。」
「だからそれはお前が…あ、そうだ。この話よりさっきの話の続きだ。」
「ん?別に今更どうしようもなさそうだから気にしてないけど?」
「能天気というか達観してるな。いや、そうじゃなくてだな。呪いを解く方法がある、というかあった。」
「過去形って事は俺は絶望していいって事だよね?」
「いや、解く方法が減ったてだけで、あるっちゃあるんだよ。それで、解く方法だが、本当は完全に呪われる前だが、カードを持ち主に返すのがもっとも簡単だったな。」
「へー、でその持ち主はお前か。」
「ああ、一応そうだな。」
(一応?)
少し気がかりだったが、話の続きを待つ。
「それを俺に返してくれれば、呪いが消えたんだがな。
だが、もう完全にお前に取り憑いたので手遅れだな。」
「そうだったんだ。」
「それでもう一つは「お待たせいたしました。」」
ゴトッ
そう言って店員はまたもやこいつの話を遮って注文の品を置いた。
丼ものじゃなく、味噌汁系やサラダ系を運んできた。
「もうしばらくお待ちください。」
そいってまた厨房に戻って行った。
「なんなんだあいつは?えーっと…どこまで…そうだな、これか。」
持ってきた物を注文と照らし合わせてそれぞれの近くに分割している中、一人芝居にひと段落ついたようだ。
「ドッペルゲンガーと和解なんて事を考えるなよ。忠告だ。奴は完全にお前を殺しに来る。迎撃してもいいが、逃げるのが無難だろう。そして、関わろうとするな、救おうなんて思うな。これだけかな?」
「分かった。分かったけど、それって「はい、お待たせいたしました。ご注文の品は以上です。」」
今度は俺が割って入られた。
まあ、何はともあれ食べるとしよう。
「まあ、いいや。やっと飯だ。いただきます。」
「だな、いただきます。」
「あ、そこの人はいいの?」
「え!?あ、そっか、見えてるんだったな。別にいいんだよこいつの分は。だって食べられないし。」
「そうなんだ。食べきれなかったらあげようと思ってたんだけど。」
「なんなら俺が食ってやろうか?」
「だったら、俺が食う。」
「地味に酷くね?」
返事をせずに黙々と食べることに専念した。
「俺、放置プレイとか趣味じゃないんだが、そろそろ泣いていいか?」
「はよ食えや。」
「あ、はい。」
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした。」
店から出て行く時に、調理で大変だったろうが、まだ片付けも残っている事への謝罪代わりに感謝を伝えた。
「ふぅ、食った食った。」
「身体中痛いのに、食べ過ぎでマジで動けね。もっとゆっくり。」
「はぁ、まったく。死なない体のくせに身体は頑丈じゃないとはこれいかに、だな。」
「うぅ…家に帰るまで持つかな…?」
「え?何が?ちょ、吐くとかやめてよ!いや、マジで!」
「うるさい、それに余計に…うっ…」
「す、すまんからマジで。ヤバイなら早く帰らないとな。」
「いや、だからゆっくりと。
やば、出…うっ…」
「うお!ちょ、何で俺に殴られてた時は大丈夫だったのになんで!?」
「や、ヤバかった…お前に吐きかけても自分にもかかると思うと何とか耐えられた…」
「最悪だなお前!なんか今日はいろいろ傷ついたんだけど!?」
「俺も傷つけられらんだが、物理だが…おェ…」
「無理すんなってば…ほら、少しはましになったろ?ペース上げるぞ。」
「わ、分かったからちょっとこっち来て。」
「な、何だ?肩貸すくらいいいけどよ。」
「いや、吐きそう。」
「おい、止まったんじゃ「死なば諸共よ…」
やっぱ最悪だこいつ!」
「じょ、冗談なのに、そんなに叫ばれると、マジで…」
「え?嘘でしょ?俺が悪かったから早まるな。頼むから。」
「とか言ってたらいつの間にか家が目の前に…」
「マジか!」
「でも吐きそう。今食道辺りに迫ってる。」
「マジか!後ちょっとだ、頑張れ!」
「ごめん、俺そう言われるの嫌いなタイプだから…」
「そうだったっけ?いや、すまん。えーっとなんて言え「てな訳で今日は泊まってけよ。」」
「は?」
「まんまと騙されたな。」
「な、騙してのか!?」
「いや、半分本当。」
そう言って家へと駆け込み、便器へ吐瀉物を吐きかける。
「おいおい、大丈夫かよ。」
そう言いながらも背中を摩ってくれるこいつには本当に感謝だな。
「うぅ…もう、なんとか大丈夫、そうだ。」
「そうか。そうは見えないがまあ大丈夫だろう。悪いがちょっと台所借りるぞ。」
「別にいいよ。」
俺は顔を洗いに、友人は何やら台所にそれぞれ向かった。
顔を洗い、台所に近いリビングのテーブルの椅子に腰掛ける。
「おーい、何やってんだよー?」
「もう少しだからちょっと待ってろ。」
言われたとおり待っていると友人が料理を片手にやって来た。
「ほれ。出した後ってちょっとお腹減るだろ?」
「確かにそうだけども、勝手に冷蔵庫を漁るなよ。」
「いやー、お前家全然変わってねーもん。場所と外装が変わっただけで、中も前とほぼ同じとこに同じ家具とか置かれてたからね。」
「それは引越しを嫌がってた俺に親が気を利かせてだな。いや、それは理由になるのか?」
「まあ、いいじゃねぇか。言っちゃ悪いがどうせその親も今は居ないんだしな。」
「まあな。お、以外とイケるじゃん。」
「気にしないたまだと分かってたけど、さすがだな。
あと、それは二日酔いとかの食欲ない時にも言いらしいぞ。ビールにつまみにもなるそうだ。」
「なんかジジくさいな。その人に教えてもらったのか?」
「まあな、何でも独身を生き抜く術なんだと。」
「へー。」
「て、もう全部食っちまったのかよ。確かに少なめだったけど。」
「いや、もう疲れ果てたから寝ようかなーって。ふぁ〜あ。」
大きな欠伸とともに身体を伸ばす。
「よいしょっと、じゃあ、お前は空いてる部屋でもそこのソファでも使って寝てくれ。じゃあ、おやすみ。」
お前は一体どこで寝るんだよ。と聞きたくなったが、行き先の部屋のドアから見えた大人びた雰囲気の部屋でだいたいは分かった。
それは無意識かどうか、結局あいつは気にしてるんじゃないか。
それは前から知ってた事だったし、今日は大人しく寝よう。
家の戸締りを確認して、リビングのソファ
の横にあった、マッサージチェアで寝ることにした。
たまにはこういうのもいいかな、と窓辺から月を見上げ、熱くなった瞳を覆うように瞼をそっと閉じた。
はぁ、今日は本当に疲れた。
ベットに体を投げ売って、閉じかけている瞳と薄れゆく意識の中で今日の出来事を振り返った。
やっぱりあいつといると、楽しいな。
とても懐かしい気になる。
人が気持ちよく今日のおさらいをしている中、容赦無く睡魔が横殴りに襲ってくる。
頭を強く叩かれたように意識が飛びそうになる。
それでも思い返すことをやめなかった。
なんだか、懐かしい香りまでする。
あいつは、変わってなかったな。
良かった。良かった。
なんで父さんと母さんが居ないんだ。
こんなにも匂いがするのに。
「くぅ…っ…!」
ベットのシーツを握りしめていた。
そして自然と涙が流れていた。
懐かしさからか、悲しさからか。
分からない。
分からないままに睡魔に飲み込まれた。
次の日、目が覚めると、もう太陽は一番高いところより少しは西に傾いてた。
どうやら眠りこけていたらしい。
周りを見渡すと、自分の部屋ではないが良く知っている部屋。
そうだ、昨日はこの部屋で寝たんだったな。
何でだっけ?
部屋を出て、顔を洗って用を足す。
この一連の動作で昨日のことを思い出した。
そういえば、あいつがいないな。
家に泊まったはずの友人の姿を探す。
家中どこにも見当たらなかったが、案の定リビングのテーブルの上に丁寧にも置き手紙があった。
内容はバスの出発時間と「見送り入らない」という旨が書かれていた。
「どっちだよ、まったく。」
服を着替え、靴を履き、財布とハンカチを持って、戸締りを確認し、見送りに出かけた。
今週も今週とて間に合いませんでしたか。
なんか、勢いがついてパッーと書いてたらいつもより特大になって、いつの間にか日付が変わってまして、いえ、面目ないです。
そろそろキャラに名前をつけないと表現が難しく苦しんでます。
何かいい案はありませんかね?
一応考えてはいますよ。
あと、プレゼントは前々から考えてたので。
いやー、思い付いても書く頃には忘れてるこの辛さ。
そろそろ本気で考えます。
それと、主人公は目が覚めてから、顔を洗うのとついでに歯も磨いてます。
これで面子が保たれるはず。
それでは




