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贈りもの  作者: lycoris
1.離別
20/73

決戦

遅れて申し訳ございません。

少々長いですがよろしくお願いします。

「ハァ…ハァ…」

肩を大きく上下させて息を整えようとする。

その隙すらも与えんと迫る相手の拳。

誰の目から見ても一方的だった。

こちらの攻撃は当たらず、相手の攻撃のみが鋭くささる。

何度もよろけ、倒れるがそれでも立ち上がり続けた。

相手もそろそろ疲れてきたのだろうか、段々とペースと型が乱れてきている。

だが、それ以上にこちらは疲労困憊している。

体中が痛い。

何度か関節技や鳩尾などの急所を狙われたりしたが、それでもなお立ち上がった。

相手はやっと疲れの色がはっきり見えてきた頃合いだ。

こちらはフラフラをとっくに超えて、ただ揺られながら立ち続ける。

第1ラウンドの奇襲に失敗してカウンターを受けた時に気絶して以来、今はまだ気絶していない。

だが、そろそろ限界に近かった。

瞼が重い。

体がだるいし、痛い。

それでも、

それでも負けたくない。

心の中にあるそんなちっぽけな支えのみで今も立ち上がり続けている。

服はもう砂まみれ。

一部が元の色を認知しづらいほどに砂が被さっているほど。

相手の攻撃から痛みがだんだんと減っていっているように感じる。

痛みに慣れたのか、相手が疲れてきているのか。

どちらにしろチャンスだと思った。

ここで最後の力を振り絞り、ちゃんと狙いをすましてカウンターに出る。

躱されはしなかったが、受け止められてしまった。

そのまま腕を引っ張られ、見事な一本背負いをくらった。

背中に激痛が走る。

相手もさすがに膝に手をつき息を整えている。

相手のしなやかだった動きにかなり余裕が見られなくなってきた。

だが、こちらはもう立ち上がるほど、気力はあるが体が反応してくれない。

ただただ、投げつけられたままの体制で息を整えているだけ。

相手の追撃の様子はない。

この状況だけ見れば『負け』で勝負がついている。

だが、俺だけではなく向こうもまだ決着していないと思っているようで、ただ息を整えこちらの様子を観察するように伺っている。

だが、それは見下しているようにも見えた。

ただ無表情に何も問いかけず、こちらを見ている。


一方こちらは一向に呼吸が整う気配が無く、むしろだんだんと乱れて、息苦しささえ感じる。

胸元が、心臓の辺りが痛む。

その痛みにつられて仰向けから蹲るように横を向き手で、服の上から左胸の辺りを握り丸まる。

「うぅ…うっ…!⁉︎」

何だこの痛みは⁉︎

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

こんな痛みは初めてだ。

いつまでも収まりそうにない、むしろ悪化している。

苦しい。息ができない。痛い。

それらの思考だけが頭を駆け巡る。

だが、"それら"以外のものが頭の片隅に小さく残っていた。

『負けたくない』

そんなものだけで、痛みに対抗しようと、朧げに目を見開く。

そこには鎌の切先のようなものがあった。

だが、それはしっかりとじゃなくぼんやりと。

そこから少し首を傾け自分の頭上を見上げる。

と、そこには当然あいつの顔が無表情にこちらを見つめていた。

だが、あいつの顔以外に知らないサラリーマンのような男と、その反対側先ほど夢に出てきたのとそっくりな死神が鎌を持ってこちらを、ニッコリと笑顔で見ていると言うよりは眺めているに近かった。

その死神の鎌の持ち方に少し違和感を覚え、気になってその鎌の先を辿ると、見事に自分の左胸辺りを、

心臓をえぐり出さんとするように構えられていた。

その鎌を振り上げれば心臓を遠くに飛ばせるんじゃないかと思える構え方で、下からすくい上げる形だった。

そして、その鎌の先は僅かに心臓に届いぬようにも先だけ刺さっているようにも見える。

しかし、サラリーマンもこの死神と鎌もぼんやりとしか見えない。

その点では相手も同じだが、これだけははっきりと区別ができた。

だが、それだけしか出来ず、重い瞼を閉ざした。



次に目を覚ますのには1分とかからなかった。

意識下では何十分と眠っていた感覚だった。

だが、眠ったからには回復はしていえる。

先ほどまで感じていた限界が嘘だったように、体が思うように動く。

それでも、動かすたびに痛みは生じた。

体が動く、いや、体が動かせるだけでもその痛みを我慢、忘れるには十分だ。

息も不思議と整っている。

試しに拳に力を入れてみる。

痛みは感じるが確かに握れている。

それを確認し、頭に大きく残っている『負けたくない』という感情に身を任せる。

軟らかいとは言えないような地面に手をつき、のそのそと起き上がる。

相手は帰ろうとしていたのか、こちらに背を向けて顔だけ振り返った。

そして、立ち上がるこちらの姿を見て無表情だった顔が少し笑っているように見えた。

すぐさま再戦となった。


やはり結果はいつまでも変わらず、一方的にやられるばかりだった。

再びダウンをさせられた時、胸がズキンと痛み、それは一瞬だけだったが、今度は両目が焼けるような感覚がした。

熱いというよりは痛い。

だが、それだけのことだと片手だけで片方を抑え痛みを堪えて立ち上がった。

片手で片目を抑えたままタックルをしかける。

本格的なものでないから、当然ひらりと避けられたし、そのままの勢いで転ぶなんてこともなかった。

だが、相手に後ろを取られてしまった。

振り返りざまに裏拳をはなつ。

当たらないこと分かっていた。

だが、かするとも思っていなかった。

相手は確かに息が乱れているがまだなだ余裕を残しているように見えたのに。

かすりはしても当たらなかった拳を逃すはずもなく掴まれ関節技を決められる。

本気の締め上げに堪えきれず目を抑えた手で妨害を図る。

ボディに見せかけたアッパーが刺さったがそれでも技が途切れる様子はなく、攻撃の隙を突かれ一気にトドメに入られた。

まるでダンスのように腕を締めながら回転してその勢いで骨を折りにかかった。

回転でバランスを崩し、腕まで折られ、その場で片手だけ着いて這いつくばるしかなかった。

必死に起き上がろうとした時、ボディを入れられ機能する片手で抑えようとしたところに、顔面をめがけてのストレートが入る。

無防備だった頬に一撃をくらって、顎が外れるのと同時に「人って案外飛ぶんだな。」と吹っ飛ばされに思った。

完全に負けた。

認識したくない事実が突き付けられた。

体が地面に着いた時には自然と涙が溢れていた。

堪えようとするが、逆に漏れ出して止まらなくなっている。

相手もさすがに動揺していた。

「はぁ…どうしたんだよ、お前。」

めんどくさそうに聞こえるが、今の今まで(一方的だが)喧嘩をしていたのだから、その区切りのため息だ。

返事をしようにも息が整わず、さらに嗚咽しているのだから返答に少し間が空いた。

「ハァ…ハァ…お、俺は、ウグッ。負けたウッ、くない…ヒック…」

「はぁあ?」

疑問なのか聞き取れてなかったのか、今は判別出来なかったが、もう一度言ってやる。

「ウゥ…負けたく、ン…ないック…。負けたくない、ング、だぁ!ッ」

言った後に目の痛みが引いてくのを感じた。

「そりゃまたどうして?」

急に真剣な顔つきになってさらに問い詰めてくる。

「ま、負けるのは、もう、い、嫌なんだ!ッ。こ、これ以上は、もうっ!!」

鼻水をすすりながら、途切れに、どもりながらも自分の意思を強く表明した。

「何に?って聞いても無駄そうだな。じゃあ、どうして負けたくないんだ?」

手で頭を抑えながら「やれやれ」と言わんばかりに問う。

さすがに昔の付き合いが有って分かってはくれているが、さすがに分かってくれないようだ。

「負けたくない、からだ!」

涙も収まって来て、調子が戻ってきた。

目の痛みが引いてくのと同時に目が熱くなっていった。

涙のせいでも痛みのせいでもないようだ。

だが、それは気になる事はなく、自然と馴染んで、むしろ心地良いくらいにも感じる。

そう思った時、体の痛みがさらに薄れ、立ち上がるまでに痛みが消えた。

「まだ、立つのか…お前は。」

言葉はそこで区切られた。

相手の顔には驚きが現れていた。

そして言葉はこう続けられた。

「こうも負けたくないとは…だけど、おかげで俺も『負けたくない』負けたくなったよ。」

呆れられたのか調子づかれたのか、どちらにせよ相手が本気を出してくれるようだ。

「後はいい。さあ、俺を倒してみろ!」

最初の一言は独り言のように聞こえた。

だが、二言目のは確実に挑発だ。

当然のような挑発にどっぷり乗っかる。

「うおおおおお!!」

雄叫び上げて避けられるとわかって突っ込む。


すみません、仕事のトラブルでスランプに入って話が上手く浮かびませんでした。

そのお詫びと言うか、結構長めに書きました。

本当はもっと続けて書きたかったんですか、これ以上さらに待たせるのは申し訳ないので更新です。

長らくお待たせして本当にすみません。

続きも出来るだけ早めに書いて投稿しようと思っております。


それでは

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