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The Second Button

作者: 春暉

皆さんお久しぶりです、春暉です、生きています←


やっと大学受験も終わったので、また暇な時間を利用して小説という名の爆弾を投下して行きたいと思います。いえい。



 この話は私、山崎志織やまさきしおりが、卒業を控えた憧れの先輩、早川大祐はやかわだいすけの第二ボタンを貰うべく奮闘するハートフルストーリーである。ばきゅーん。




***




「というわけで、只今より作戦を実行します」


「ひとついいか?」


 挙手をし、私に発言してきたのは同じクラスの小野祥司おのようじくんだ。


「なんだね、小野参謀官?」


「参謀官て・・・、まぁいいや。それよりこの状況を説明してくれ」


「見ての通り、張り込みだ」


「違う。ストーカーだ」


 この状況、つまり、私と小野くんが公園のベンチの影に隠れて憧れの早川先輩が来るのを待っている状況なのだが、どうみても張り込みじゃないか。何故ストーカー呼ばわりされねばならない。

 年が明けてもう二ヶ月が経とうとしている今日のこの頃、雪こそ降らないが寒空の下でじっと座っておくのは辛いものがある。一応厚着をしてきてはいるが、それでもぶるぶると震えてしまう。


「大体、大祐さんがここ通るかもわかんねえじゃん」


 小野くんは寒くないのか、まったく震えていない。少し忌々しい。


「ふっ、愚問だな。早川先輩は毎週日曜の午前10時から11時の間、いつもこの公園をランニングのコースとして通ることは既に調査済みだ」


「お巡りさん、ここにストーカーがいます」


 小野くんが引いた目でこっちを見てくるが、そんな視線私の早川先輩に対する燃え盛る情熱の前には夏場の蚊に等しい。


「なぜ俺を巻き込む。せっかく部活が休みの日なんだぞ」


「それは私一人では緊張するからだ」


「なんつー暴君」


 小野くんは早川先輩の後輩で同じサッカー部に所属している今日は珍しく部活が休みの日らしい。それを聞いたら利用しない手はないじゃないか、ということで、私は小野くんをメールで公園に呼び出し、一緒に早川先輩が通るのを待っているのだが・・・。


「おかしいな、先遣隊からの連絡が遅いぞ」


「今度は中二病かよ。てか、先遣隊て何?」


「早川先輩の家の付近を真波まなみに巡回させてるのだよ小野参謀官。早川先輩を見かけたら連絡を入れるように指示していたのだ」


「・・・もう突っ込むのも疲れる。でもよく真波も引き受けたな」


「まぁアレだ、ジャ○ーズのヌード写真集を」


「もういい聞きたくない」


 そう、小野くんと同じくクラスメイトの相原真波あいはらまなみは大のジャ○ーズファンで、そんな彼女にエサ(ジャ○ーズのヌード写真(合成))をちらつかせたらイチコロなのだ。そうしてエサでつった真波を早川先輩の家付近に配置し、先輩がランニングをしているところを見かけたら私に連絡をいれるように言っておいた。私って天才。自分怖い。

 そんなことを言っていると、ポケットで携帯が振動するのに気づいた。

 恐らく真波からの連絡だ。


『ごめん、コンビニで立ち読みしてたら本来の目的忘れてた。てへぺろ』


「・・・」


「さすが真波だな」


 横から携帯の画面を見てきた小野くんが哀れんだ声でそう言った。どうせ読んでた本は週間ジャ○ーズとかいう雑誌だろう。今度会ったら真波の目の前で好きなメンバーのページに落書きしてやる。


「仕方ない。こうなれば時が来るまで座して待つのみ」


 そう言って私はベンチの影から出てきて、ベンチに腰を下ろした。

 それにならって小野くんも「はぁーあ、時間の無駄使い」と言いながら私の横に座ってきた。

 なんだかんだ言うけど、小野くんは優しい。


「てか、大祐さんに何の用なの?」


「それは・・・秘密よ」


「・・・ふーん」


 髪の毛を乱暴に揺らしながら、びゅーんと風が吹く。

 そしてその日、太陽が沈み始める時間まで私は先輩を待ったが、結局会えなかった原因を真波に押し付けたのは言うまでも無い。




***




「・・・というわけで、君たちは・・・」


 意識がはっきりしてきた時に聞こえてきた声は聞き慣れないもので、ぼやける視界を見渡せば割と緊張した雰囲気。そうだった、今は卒業式だ。うっかり背伸びをしそうになった自分を戒める。

 私が座ってる席は丁度二年生の最右翼、つまり、退場する三年生を直に見れるポジションだ。

 先ほどまで夢の中でみていたころの私なら神の采配だと言わんばかりの興奮状態になるだろうが、あいにく、今の私はそんなことを思うほどの熱は帯びていない。

 しかし、先輩に出会った時じゃなく、あの時を夢で見るとは、自分でも自嘲してしまうくらいの馬鹿野郎だ。ふっ、と笑みをこぼすと隣の女子が「どうしたの?」と聞いてきたが、なんでもないと言ってごまかした。そう、なんでもないことなんだ。


「卒業生、起立!」


 卒業する約三百人が立つ。

 離れていても分かる背中、ずっと見てきた背中。

 私も卒業しなきゃなぁ、と柄にもないことを思っていると、ポロリと頬を伝う一滴に気づき、自分の想いの大きさに改めて馬鹿馬鹿しさを感じる。


「退場!」


 卒業生が一人ずつ出口へと向かって歩いていく。

 私と同じように泣いている人も居れば、清々しい笑顔を作っている人も居る。

 滲む視界を袖で無理矢理こじ開け、最後に一目だけ、見ておきたい。

 そして、あの人の顔が見えた。

 とてもキレイな顔で笑ってる。

 あぁ、片想いできてよかったなぁと思っていると、


「あ、」


 目が合った。

 ・・・、え、ちょ、なぜ目が合う。ていうかなぜ私がここにいると分かった。そりゃあ最右翼だし、全身見えるし、気づく可能性は高いけど。ちょっと待って混乱なう。

 内心最高に焦っている間にも先輩は私を見つめて出口へと進む。すると先輩は突然胸の辺りをもぞもぞし始めた。なんだろうと思っていると、先輩は私めがけて何かを投げてきた。キャッチすると、それはずっと前に私がほしかったもの。

 驚いて先輩を見ると、先輩は私のほうを指差しながらいたずらっ子みたいな顔で


『う、い』


 と、声に出さず、私に言ってきた。


 周りの子がなんか騒いでいるけど、今の私には何も聞こえなかった。


 私の心は昔を思い出したかのように暴れ始め、熱を帯び始めた頬はまるで林檎みたいで。


 私、山崎志織は、まだまだ早川大祐から卒業できそうにありません。



 END

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