本当に一日リセットしたのか?
一瞬、俺は頭がくらくらしたような気がして、目を閉じた。
「てっかさぁ、それって無駄なんじゃね?」
「そうそう。そうなんだよねぇ」
俺の耳に女の子たちの声が聞こえてきた。
ゆっくり目を開けた俺の目の前に広がっている光景は驚きだった。
さっきまで、家の近くの公園にいたはずなのに、今いるのは学校を出たばかりの通りである。
周りには下校中の俺と同じ高校の生徒があふれている。
あの話は本当だったのか?それとも、俺の頭は狂い始めているのか?
そうだ。あの話が本当なら、俺の手にはあの装置があるはずだ。
そう思って、俺は立ち止まって、あの装置を持っていたはずの左手を見たが何も無い。俺は慌てて、ズボンのポケットも調べてみたが、やっぱりない。
その時、手に触れたスマホを取り出して、時計を見た。
7月7日。それは昨日だ。
やっぱり、あの装置は本物だったのか?
一日前に戻ったから、俺の手にはあの装置がないのか?
俺の鼓動は高鳴り、頭の中はいろんな事が駆け巡っている。
あれは本当の話だったのか?
だとしたら、もったいない話だ。
明日、あれをもう一度手に入れられるのか?
未来は変わるものなのか?
あれを手に入れたら、俺は色々人生をやり直せるじゃないか。
ほっておければ、俺の頭の中はあの装置の事でいっぱいになる。
しかし時々冷静な俺がよみがえってきて、本当に頭がおかしくなった訳じゃないよなと、この検証を始める。
俺の頭の中はあの装置を事実と受け止める俺と、そんな訳ないだろうと言う俺が葛藤を繰り返し、ぐちゃぐちゃの頭のまま、駅に向かって歩き始めた。
そんな俺は少しぼぉっとしていたのかも知れない。
県下一危ない高校の奴らとぶつかってしまったのだ。
「てんめぇ。どこに目つけてんだよぅ!」
俺もそれなりの体格だが、相手が悪い。さっきの?明日の?中学生のようにはいかない。
何しろ、相手はオレたちゃ県下一のワルだぜと言う変なプライドを持った奴らが三人である。
ここは一つ、逃げるか。しかし、面倒な事が嫌いだとか言って、運動もほとんどしていない俺ではすぐに息がきれるだろう。
どうしようかと迷っていると、いきなり胸倉をつかまれて、歩道脇の店の壁に押し付けられた。
「おい、聞いてんのか?」
ここで、俺に本当に力があれば、その手を逆に掴んでねじ上げるんだろうが、そんな技は間違っても持ち合わせていない。