告白
次の日、まぶしい日差しが舞い降りる校庭は、その光を反射して目の前の光景は輝いている。そんな校庭の中を校舎から校門に向かって歩いている白い夏制服の生徒たちも輝いて見える。
それはただの視覚的なまぶしさだけではない。気分を落ち込ませる試験も終わり、今日の授業も終わった。そして、まじかに迫った夏休みが、みんなのその解放感をさらに高めているため、みなの表情が輝いているのだろう。
こんな時は気分も緩み、ガードも緩くなっているに違いない。もちろん、奈央だってそうだろう。これは絶対逃してはならないチャンスだ!
校舎の下足箱のところで、奈央を待ち構えている俺はそう思い、心の中で気合を入れるため、ガッツポーズを決めた。
奈央より一足先に教室を俺は飛び出してきたのだから、奈央は後からやって来るはずだ。
まだか?まだか?
俺の心は逸る気持ちと、やっぱり止めておきたい気持ちが入れ混じっている。
俺は気持ちを落ち着かせるため、ポケットに左手を突っ込み、あの装置を握りしめる。
これがあれば、問題ない。振られたって、それは無かった事にできる。
よしっ!
俺はそう心の中で気合を入れ、右拳に力を込めた。
しばらくする、廊下の角を曲がって、奈央が友達二人と一緒に現れた。
友達がいる。
想定しておくべきとこだったが、奈央の事だけでいっぱいいっぱいの俺はそんな事、想像もしていなかった。
どうする?
少し迷ったが、答えはすぐに出た。
やるっきゃない。
左手に触れるあの装置が、俺に勇気をくれるようだぜ。
上靴をしまい、自分の靴に履き替え、こちらにやってこようとする奈央。
立っている俺に気付き、ちらりと目を向けたので、俺は熱い視線を奈央に送った。
奈央の視線も、俺の視線と絡み合ったが、すぐに目をそらした。
ここで、俺の事をじっと見つめ続けてくれれば、脈ありだろうが、すぐそらすと言うのは気が無いか、照れているかだ。この判断は難しい。
俺は男らしく、ぐいっと奈央に向かって、歩き出す。ここまで来たら、言うっきゃないだろう。俺はチキンなんかじゃねぇ。
「黒石さん」
俺は汗を吹き出し、少し体が震えているのを感じながらも、奈央に声をかけた。ここまでした以上、もう後戻りはできねぇぜ。これぞ、背水の陣っちゅう訳だ。




