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エピソード0



 



 朝風呂に入り、歯を磨き、朝食を食べる。いつもとなんら変わらない朝。変わったことといえば、隣の部屋のおばさんがいつもよりうるさいくらいだ。

 林堂冬理りんどうとうりは都内にあるアパートに住んでいる。高級住宅地に大豪邸を建てられるくらいの金はあるが7年間住み続けてきた小さな部屋は居心地が良く、一度も引越しを考えたことがない。きれい好きの性格もあってか部屋には埃ひとつなかった。冬理は左腕につけた腕時計を見た。ブルガリの高級時計。…針は午前8時30分を指していた。

 「予定どうりだ。」

 今日は10時に“ボス”から呼び出しを受けている。“ボス”の本名は春川奈津実はるかわなつみといって世界で活躍する大物企業家だ。でもなぜアパート暮らしの冬理がそんな大物企業家に呼び出されるのか…。それには、冬理の仕事と春川の裏の顔が関係していた。

 

 冬理の仕事、それは“怪盗シーフ”。泥棒とは違った鮮やかな手口で盗みを働く仕事。そして春川は冬理達シーフにミッションを与えるボスだ。春川の下では冬理以外のシーフも働いている。ざっと20人くらいだろうか。 

 今日はそのミッションの次のターゲットを言い渡される。冬理は宝石や石像、絵画といった高価な物を次々と盗み、春川からもらった報酬で暮らしてきた。もう3年も続けているのに一度も捕まりそうになったことがない。冬理は自分でも不思議に思っていた。

 9時00分…

 「そろそろ行くか。」

 冬理はそうつぶやいて愛車ロールス・ロイス ゴーストの鍵を手に部屋を出た。昔春川に、「車ってあれだろ、あのーあれだ、あぁーもういい。とにかく静かなとこが好きなんだよ。」と半ば意味不明なことを話したのを思い出した。

 指紋認証をし鍵を開ける。冬理にしか開けることが出来ないようになっているなかなかのセキュリティだ。エンジンをかけ、ナビに「春川事務所」と慣れた手つきで入力する。春川事務所は冬理の自宅から車で30分位のところにあった。

 「10分前には着いとかないとうるせぇんだよな。」と言いながらゴーストを発車させた。

 

 ゴーストは静かなエンジン音で国道を走っていく。スピーカーからは冬理が好きなYUIの曲が流れていた。透き通った歌声が心に響く。冬理はこの感覚が大好きだった。車はすいすいと進んでいく。今日はいつもより道がいていて20分程度で着いてしまった。

 (ちょっと時間潰すか)

 冬理はポケットからセブンスターを取り出し、口にくわえる。火をつけようとした時、春川事務所に女が入っていくのが見えた。いつもミッションを受けるときは冬理一人だけだったので不思議に思い、つい呼び止めてしまった。

 「おいあんた」

 女が声に気づき振り返る。

 「何?」

 すらっとした顔立ちでスタイルも良かった。

 「あんたも春川ボスに呼ばれたのか?」

 「ええそうよ。…ってことはあなたも怪盗シーフなのね」

 女がフッと微笑んだ。

 これが冬理の新しいパートナーとの出会いだった…


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