第6章 アンヴァサラの惨劇
『アンヴァサラの惨劇』とは、人類にとって、恐怖の歴史の一つだ。
アンヴァサラという大型モンスターには、『感知能力』が備わっていた。当時、『感知能力』の存在を知らなかった人類は、視界を遮るものが多い廃国へとアンヴァサラを誘い込み、死角から魔法や弓を使い攻撃を与えた。いつもどおり、相手の攻撃が当たる心配など誰もしていなかった。自分達は安全な場所から、ただ的に攻撃を当てるだけ、これはただのゲームだ。そんな気持ちで討伐に参加したハンター達は数分後、地獄を見た。
「ぎゃああああ!!」
一人のハンターの悲鳴を皮切りに、その廃国に血の雨が降り注いだ。
「うわぁああああ!!」
瓦礫の裏側に隠れていたハンターも
「ひぃひいいい、た、たすけでぇー!!」
草陰に隠れていたハンターも
「うぎゃーーー!!」
みんな殺された。視覚では捉えることの出来ない死角にいたハンターをつまみ出し、ヒネリつぶす大型モンスター。
結局、討伐に参加したハンターは皆死亡した。そして、数十人のハンターの命だけでは足りなかったアンヴァサラは、『感知能力』を持つ大型モンスターに対して、対策も心の準備も出来ていない人間を、次々と殺していった。
最終的に、アンヴァサラは1万の人間を殺し、3つの国を滅ぼした。さらに、人類の希望とされる『12騎士』のうち、3人の命を奪った。人類最強の12人の騎士。そのうちの3人の死亡は、『感知能力』という新しい能力の脅威をまざまざと人類に知らしめ、人類の記憶に恐怖と共に『感知能力』の存在を刻んだ。
これが、世に語られる『アンヴァサラの惨劇』である。