第18章 はっくしょん!
「おらっ!」
「ひぃいい!!」
クラリットは殴られる瞬間、手に隠し持っていた細かい草クズを牙の顔目掛けて放り投げた。
「うわっ! 汚ねぇ! ぺっぺ!」
顔面に張り付く草を振り払う牙。このとき、牙の怒りのボルテージはさらに上昇した。
「てめぇー、この期に及んでこんな子供みたいなことしやがって、ただじゃすまさね……は……は……はっくしょ!」
突如、くしゃみをした牙。そして、その牙を見て薄ら笑いを浮かべるクラリット。
「ふふふ、牙さん。かかりましたね!」
「はっくしょん! はっくしょん! はっくしょん! てめぇ、はっくしょん! なに、はっくしょん! しやがった! はっくしょん!」
牙のくしゃみは止まる気配がなく、しゃべるのも大変なほどであった。
「さっき牙さんが吸い込んだ草クズ。あれは『くしゃみ草』という草を細かくしたものです。さっき土下座している間に、細かく千切っていたんですよ! 気付きませんでしたか? 『くしゃみ草』が鼻に入ると、どんな人でも必ずくしゃみが出るんです。本当は、異物を飲み込んだときに無理やり吐かせるために使う漢方草の一種なんですが、先ほどたまたま森で生えているのを見つけたので、隠し持っていたんですよ!!」
クラリットは『ペイント』の魔法の使いすぎで魔力が切れた後、牙にまた怒られることを予想していた。どうにかして自分の身を守らないと……。そう思ったクラリットは頭の中の知識をフル動員して考えた。そのとき、魔法学校の薬草学の授業で習った『くしゃみ草』が森に生えていることに気がつき、『くしゃみ草』を使って牙の暴行から身を守ることを考え付いたのだ。
「はっくしょん! はっくしょん! はっくしょん! ゆる、はっくしょん! ゆるしてやるから、はっくしょん! このくしゃみ、はっくしょん! どうにかしろぉおおお!!!!! はっくしょん!!」
クラリットは見事、その“知識”で『ぼこぼこタイム』を回避することに成功した。
『ぼこぼこタイム』を期待していたみなさん、今回は『ぼこぼこタイム』はなしです。ごめんなさい。
~用語解説~
『くしゃみ草』
この草が鼻に入るとどんな生物でも必ずくしゃみをしてしまう。本来は異物を飲み込んだときに、無理やり吐き出すために使われる漢方草である。そこら辺に生えている。あまり珍しいものではない。もし、この用語解説を読んで、次の展開を思いついてしまった人がいたら、忘れてもらいたい。この先の展開はきっと、その予想通りになるからだ……。
『魔法学校』
魔法使いを育てる学校のこと。この学校を卒業しないと、プロの魔法使としてみとめられない。学費は年間200万円。図書館の設備は充実しているし、学食もおいしいよ! 先生はみんなやさしいし、単位を落としてもちゃんと補修を受ければ大丈夫! だから、そこの君! ぜひ、オープンキャンパスに来てくださいね。まってるよ♪
近年、少子化で生徒が少なく、赤字経営が続いているようだ……